【初心者向け】CO2排出量削減へ向けた日本企業の取り組みまとめ
国をあげて脱炭素に向けた取り組みが推進されていることもあり、CO2排出量削減に向けた環境アクションの実施を表明する企業が増えました。これまでは大企業が中心でしたが、環境に対する社会的な意識の高まりから、昨今では中小企業にも広がりを見せています。具体的に、どのような行動を起こせばいいのでしょうか。
この記事では、CO2削減に関する国内の動向や企業事例、実際に取り組める環境アクションを紹介します。
日本の政策からみるCO2排出量削減が注目される理由4つ
日本においても、CO2排出量削減にむけて様々な取り組みがスタートしています。その背景として、CO2削減に関する4つの政策を紹介します。
SDGs・RE100
SDGs とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月の国連サミットで定められた17項目の具体的な行動指標です。気候変動やエネルギー問題についても言及されており、環境負荷低減を目指す行動が求められています。
これを契機として、世界378社(2022年9月時点)が参画する国際的イニシアティブ「RE100」がスタートしました。RE100は「事業活動で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達する」ことを目標として、民間企業が自ら行動を起こす取り組みであり、日本からも72社が参加しています。
これらの国際的な動きから、世界中の国や企業が脱炭素に向けた取り組みを積極的に推進しているのです。
関連記事:【SDGs】持続可能な社会とは?必要とされる取り組みと課題
カーボンニュートラル宣言
2020年10月、菅政権は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」ことを目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明しました。カーボンニュートラルとは、CO2排出をゼロにするのではなく、排出量と吸収量を均衡させて、結果的にゼロにするという考え方です。
カーボンニュートラル宣言により、脱炭素に向けた取り組みが加速し、関連政策の決定や一般企業の自主的な取り組みのきっかけとなっています。
関連記事:脱炭素社会とは?日本国内での取り組みと、私たちにできること
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」とは、2050年カーボンニュートラルを達成するための具体的な施策であり、予算や税、金融、規制改革・標準化、国際連携など、広範囲に及びます。
特に、今後成長が期待される14分野の産業に対して高い目標が設定され、一般企業の再エネ活用やビジネスモデル変革などを目指しています。
改正温対法
さらに具体的な取り組みとして注目されているのが、2021年5月に制定された「改正温対法」です。
改正温対法は、正式名称を「地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案」といい、二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガスによる地球温暖化の防止を実行していくために制定された法律です。
大きく以下の3点について改正されました。
- 「2050年カーボンニュートラル宣言」が基本理念として法律に位置づけされた
- 地方自治体に対しても脱炭素の施策目標を追加した
- 企業のCo2削減を「デジタル化」「見える化」することが義務付けられた
この改正により、国だけでなく地方自治体や一般企業が一丸となり、脱炭素に向けた取り組みを継続的に実施しやすくなっています。
日本のCO2排出量削減へ向けた取り組み事例
脱炭素に向けて国が取り組みを強化する中で、一般企業での自主的な取り組みも目立つようになりました。国内における取り組み事例を紹介します。
ヤマトホールディングス
国内の物流最大手であるヤマトホールディングスでは、2030年までに温室効果ガスの排出量を2020年度比で48%削減するという中期目標を掲げています。
具体的な施策としては、次のような取り組みを進めています。
- 輸送で使用する自動車を、ハイブリッド車や電気自動車、電動アシスト自転車にシフト(2021年3月時点で電動自転車等を約4,100台、ハイブリッド車を約4,200台、電気自動車を約570台保有)
- 中型免許を持たなくても運転できる小型商用電気トラックを約500台導入
- 工場におけるLED導入や使用電力の再生可能エネルギー由来電力への切替
- 輸送物冷却用ドライアイスの削減
出典:https://www.yamato-hd.co.jp/csr/environment/climate_change.html
イオン
イオンでは「お客様とつくるサステナブルストーリー」を理念に掲げ、2025年までにイオンモール全店舗の使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを目標としています。消費者とともにできる取り組みを重視しており、次のようなアクションを実施しています。
- 一般家庭の余剰電力の買取り
- 脱炭素型住宅への移住支援など、脱炭素型ライフスタイルへの転換をサポートする商品の拡充や金融サービスの展開
- 地域の植生に樹木を植樹する活動
- 買い物袋持参活動
- 持続可能性の高いMSC認証商品やASC認証商品の積極的な展開
出典:https://www.aeon.info/sustainability/datsutanso/
コニカミノルタ
複合機やヘルスケア用品などを製造・販売するコニカミノルタでは、環境に配慮した商品の提供と、適正な機器の回収・廃棄を推進しています。具体的には、次の3つの指針を策定しています。
- 環境に配慮したソリューションを提供する
- 取引先より回収した自社製品は、分別してリサイクルを促進する
- 販売行為のない自社製品の回収は、広域認定制度回収システムを活用する
また、オフィス内でできる行動指針として、5つのアクションを定めています。
- オフィス内では省エネ・節電を推進する
- エレベーターの効率運用に努める
- 節約に努める
- ゴミの排出量削減及び再資源化に努める
- 購入時は環境に配慮されたものを選択する
出典:https://www.konicaminolta.jp/business/about/bj/environment/pdf/bj_environment.pdf
佐川急便
佐川急便では、環境対応車の導入や、モーダルシフトの推進、エコドライブによる燃料消費の抑制など、事業活動の合理化・効率化によってCO2削減を図っています。具体的な取り組みは、次の通りです。
- 天然ガストラック、ハイブリッド車、電気自動車など環境適合車の導入(2020年度末で14,489台を保有)
- 台車や自転車を使用した集荷
- トラックによる輸送を、CO2排出が少ない列車や船に切り替える「モーダルシフト」を推進
- 大型集約施設の活用によるトラック使用台数の削減
- 営業所23カ所の屋上に太陽光発電システムを設置
- 営業所や大型物流施設385カ所にLED照明を導入
出典:https://www.sagawa-exp.co.jp/sustainability/environment/carbonfree.html
バローホールディングス
東海地方を中心に店舗を展開するバローホールディングスでは
2030年までにサプライチェーンの温室効果ガス排出量を40%削減、2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを掲げています。
地域全体が一丸となって課題解決を行うために、次のような取り組みを実施しています。
・TCFD提言に基づき、複数のシナリオを用いて気候関連リスクと機会を評価
・温室効果ガスの排出量削減目標を定義
・電気、ガスなどの使用量を削減
・再生可能エネルギーへの代替や太陽光パネル設置による再生可能エネルギーの創出
・資源循環の促進
丸井グループ
商業施設を運営する丸井グループは、CO2排出の約8割が電力使用によるものです。そこで、2030年までに100%再エネ電力の切り替えと、2014年3月期比でCO2排出量46%削減を目標に掲げ、「RE100」にも加盟しています。電力以外にも、店舗運営に関連する多様な分野でCO2削減に向けた取り組みを実施しています。
- 売場照明のLED化
- 照明・空調設備の省エネ稼働
- 建物内での水資源有効活用
- 廃棄物量の削減および廃棄物の分別によるリサイクル率の向上(2022年3月期はリサイクル率は70.1%)
- 環境負荷の少ない包装材を使用、梱包材の回収・リサイクル
出典:https://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/theme03/environment_02.html
日本の企業がCO2削減に取り組むメリット
CO2削減に対する取り組みを表明することは、企業にとっても複数のメリットをもたらします。その中でも、代表的な2つのメリットを紹介しましょう。
投資家を意識したESG経営ができるため
ESG経営とは、環境問題をはじめとする社会課題への対策と経済成長を両立するために「Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)」の3つの要素に配慮した経営を行うことです。
2006年に国連が「責任投資原則(PRI)」を提唱したことをきっかけに、投資家の間でESG経営を推進する企業は中長期的なリスク対策ができており、投資価値が高いとする意識が広まりました。ESG指標の高い企業を重視する投資手法を「ESG投資」といい、世界的な投資トレンドとなっています。
CO2削減に関する具体的な行動プランの公表は、投資家にESG経営をアピールすることにつながり、市場における自社の評価を高めることができるのです。
助成金や税制優遇を受けられるため
費用負担が障壁になっている企業も多いかもしれませんが、助成金や税制優遇を活用すれば導入費用を抑えることが可能です。
ここでは、代表的な制度として「グリーンイノベーション基金」を紹介します。
名称 | 支援内容 | 対象者 |
---|---|---|
グリーンイノベーション基金 | 政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期間の取組が必要な領域において、野心的な目標にコミットする企業等に対し、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する | ・従来の研究開発プロジェクトの平均規模(200億円)以上を目安 ・国による支援が短期間で十分なプロジェクトは対象外 ・社会実装までを担える、企業等の収益事業を行う実施主体 |
日本企業におすすめしたいCO2排出量削減の具体的な取り組み
環境に対する取り組みの必要性はわかっていても、具体的に何をすればいいのかイメージがわかないという企業も多いことでしょう。国内企業がとるべき、具体的な施策例を紹介します。
電力会社の見直し
最も取り組みやすい方法として、環境負荷の低い再生可能エネルギーを使用している電力への切り替えがあげられます。再エネ電力を扱っている電力会社と契約し直すだけなので、手軽に実施できるアクションのひとつです。
例えば、エネルギー関連のソリューションを提供するアイ・グリッド・ソリューションズでは、法人向けにCO2フリー電力供給サービスを用意しています。脱炭素への取り組みを外部にアピールできるだけでなく、コスト削減や消費者からの好感度向上といった効果を期待できる点もメリットです。
省エネ対策
こまめな消灯や空調の適温設定など、従業員が日頃の業務の中で実施できるアクションを設定し、企業全体で省エネ対策に取り組むことも方法のひとつです。前述で紹介した企業事例でも、日常業務で取り組める行動指標を従業員に啓蒙している企業は複数ありました。
アイ・グリッド・ソリューションズでは、企業が事業活動の中で実施するべき具体的な省エネアクションを数百個まとめており、サービスとして販売しています。すぐに取り組める手軽なアクションも豊富にありますので、こちらを導入するのも一手です。
【関連記事】省エネカテゴリーの記事一覧
自家消費型の太陽光発電の導入
社屋の屋上に太陽光発電設備を導入し、自家発電を行う方法もあります。自家消費型の太陽光発電はクリーンエネルギーであるだけでなく、災害時にも使用できる非常用電力としても注目を集めており、導入する企業は年々増加しています。
電気代が高騰する昨今においては、電力コストの削減を期待できる点もメリットです。導入費用が高額というイメージがあるかもしれませんが、補助金制度を利用することも可能です。また、会社の敷地を提供して事業者保有の発電設備を設置する「PPA」を利用すれば、初期費用の負担なしで太陽光発電を導入できます。
アイ・グリッド・ソリューションズの子会社であるVPPJapanでも、投資負担なしで太陽光発電設備を導入できる「オフグリッド電力供給サービス」を実施しています。手軽に自家消費型の太陽光発電を導入したい場合は、こちらを検討してもいいでしょう。
まとめ
SDGsや2050年カーボンニュートラル宣言を契機として、大企業だけではなく中小企業でも脱炭素に向けた取り組みが加速しています。国をあげて取り組みが推進されていることから、様々な助成金や税制優遇制度も整備されました。脱炭素に向けた対策を実施する際は、自社が活用できる制度がないか確認するといいでしょう。
大規模な取り組みでなくても、日頃の業務で取り入れられる環境アクションを実施するだけでも十分意義があります。まずは企業が実施できるアクションを調べて、従業員に啓蒙するところから始めてみてはいかがでしょうか。
▷関連記事
・CO2排出係数とは?計算方法や企業が知っておくべきことを解説
・脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは?脱炭素社会に向けてできることは?
▷グリラボSNSのフォローお願いします!!
Twitter @gurilabo
▷アイグリッドグループ