カーボンニュートラルがおかしいと言われる理由は?矛盾点や課題を解説

Forest pine and spruce trees. Log trunks pile, the logging timber wood industry. Generative Ai

日本では、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。しかし、実際にはカーボンニュートラルが実現する兆しが見られず、そもそもカーボンニュートラルの取り組み自体がおかしいと、疑問を抱いている方が多いことも事実です。

本記事では、カーボンニュートラルがおかしいと言われている理由や、具体的な矛盾点について解説します。問題の解決策についても紹介しているので、環境問題に興味のある方や、企業の環境分野の担当者の方はぜひ参考にしてください。

そもそもカーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルがおかしいと言われる理由を解説する前に、まずはカーボンニュートラルの概要をおさらいしておきましょう。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を減らし、吸収する量を多くすることで両者を均衡させ、実質の排出量をゼロにすることを指します。

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出をゼロにすることと混同されがちですが、実際には温室効果ガスを排出しないことではない点に留意しておきましょう。日本では、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しています。

以上の点を踏まえ、なぜカーボンニュートラルがおかしいと言われるのかをみていきましょう。

カーボンニュートラルがおかしいと言われる理由

カーボンニュートラルがおかしいと言われる理由は、主に以下の5つがあります。

未だ課題が多く、達成は困難だと考えられている

まず、カーボニュートラルには多くの課題が残っており、達成が容易でないことが挙げられます。温室効果ガスは、そのほとんどが先進国によって排出されています。しかし、パリ協定に著名した先進国諸国では、依然として多くの温室効果ガスを排出している現状があることから、そもそもカーボンニュートラルの取り組み自体に疑問を抱く声もあります。

例えば、温室効果ガスを排出する大きな原因である化石燃料は、未だ主要なエネルギーとして使用されているのが現状です。日本では、発電方法の約70%を化石燃料を使用した火力発電に頼っており、温室効果ガスの排出を少なくすることと矛盾している現状があります。

天候に左右されず安定的な発電が可能な火力発電は、実用的でコストも少ない発電方法です。そのため、代替エネルギーへの切り替えが進まず、カーボンニュートラルの達成が難しいのではないかと疑問視されているのです。

化石燃料の代わりとなるエネルギーには、自然の力を活用した再生可能エネルギーが挙げられます。しかし、再生可能エネルギーは導入コストが大きいことから、なかなか普及が進んでいないのが現状です。

実質的に化石燃料の利用を許容しているように見える

先述したように、カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出をゼロにするものではなく、排出量から吸収量を差し引いて、実質ゼロにすることを指します。化石燃料の使用を制限しているわけではないため、実質的に化石燃料の使用を許可しているとも考えられるでしょう。

化石燃料の使用が許容されている背景には、各国のさまざまな経済事情が絡んでいます。化石燃料は多くの温室効果ガスを排出してしまう一方で、人々の生活に大いに役立っていることから、カーボンニュートラルの推進にはジレンマが生じている状態です。このジレンマを解消しない限り、カーボンニュートラルの実現は難しいのではないかとされています。

国家間で格差が生まれ、途上国にとって不平等な状態に陥っている

カーボンニュートラルの現在の取り組みは、途上国にとって不利であることも、おかしいと言われる理由のひとつです。温室効果ガスの排出量は、現時点で先進国が圧倒的な量を占めています。しかし、温室効果ガス削減に向けた取り組みは、途上国も同じように求められており、不平等と言わざるを得ない状況が発生しています。

カーボンニュートラルの排出基準が、生産ベースになっていることも問題です。生産ベースでの計測は、途上国の発展を阻害することにもつながります。これからインフラを整えたり、経済成長を図ろうとする国にとっては、カーボンニュートラルの取り組みに納得できない部分が少なからずあるでしょう。

また、温室効果ガスの増加による気候変動などの影響は途上国のほうが受けやすく、このことも不平等さの要因のひとつとされています。

対象範囲や検証基準が定まっておらず不明確

カーボンニュートラルは、実は明確な対象範囲が決まっていません。そのため、何をもって達成したかの基準も曖昧であり、平等な検証ができないことも問題とされています。

対象範囲とは、例えば地球全体で実現するのか、国や地域を対象とするのか、企業ごとに達成すべきなのか、などです。対象範囲や基準が明確でなければ、達成したかどうかを検証することも難しく、平等さに欠ける側面もあります。

たとえカーボンニュートラルを実現したという国や企業が現れたとしても、何を持って達成と言っているのか、信憑性に欠けてしまうでしょう。

カーボンニュートラルによって新たな問題が生まれる可能性がある

カーボンニュートラルの取り組みによって新たな問題が発生する懸念から、おかしいと言われることもあります。

例えば、バイオマス発電です。バイオマス発電とは、植物などの生物資源を燃やして発電する方法を指します。バイオマス発電の原料である植物は、もともと二酸化炭素を吸収する自然界の有機物であることから、燃やす際に二酸化炭素を発生させたとしても、温室効果ガスの排出量は実質ゼロになると考えられています。

しかし、バイオマス発電を実現するために森林を大規模に伐採することは、生態系の破壊につながる見方もあります。また、森林が減少することにより二酸化炭素の吸収量も少なくなるため、カーボンニュートラルとは矛盾してしまうとも考えられるでしょう。

また、二酸化炭素を地中に貯める技術であるカーボンキャプチャーは、膨大なコストがかかるうえ、地震を引き起こす可能性もあるとされており、慎重に取り組む必要があります。

カーボンニュートラルの問題点を解決するには?

このように、カーボンニュートラルはさまざまな観点からおかしいと言われており、実際に課題も多く見られます。カーボンニュートラルの問題点を解決するためには、以下のような改善や対策が必要です。

二酸化炭素の排出量を消費ベースで計測する

カーボンニュートラルは2024年現在、生産ベースでの計測が採用されており、途上国にとって不利な状況です。そこで、消費ベースでカーボンニュートラルを計測することで、国家間の不平等を小さくできる可能性があります。

消費ベースとは、例えば1つの商品が開発されたとして、その製品を使用したときに排出される温室効果ガスを計測することを指します。現在は、製品を開発する際に排出した温室効果ガスを計測しているため、開発する国が不利になりやすく、排出の実態もわかりにくいことが課題となっています。

消費ベースなら、その製品を使用した国の排出量としてカウントされるため、エネルギーを使用している実態がわかりやすくなります。温室効果ガスがどこから排出されているのかが明確になれば、カーボンニュートラルの実現も現実的なものとなっていくでしょう。

実用的な新技術を開発する

カーボンニュートラルを実現するためには、実用的かつ少ないコストで運営できる技術を開発することも重要です。先述したように、現時点では再生可能エネルギーの導入はコストが高く、別の環境問題発生への懸念もあります。このようなカーボンニュートラルの問題を払拭できる、実用的な新技術が開発されることが待たれます。

昨今では、化石燃料の代わりに合成メタンや合成石油などをエネルギー源とする技術開発も進んでいます。課題が解消しないまま現在の方法を続けるより、このような新技術が実用化されることを待つことも、ひとつの解決策といえるかもしれません。

カーボンニュートラルに向けて何から取り組めばいいか迷う方はアイグリッドへご相談を

カーボンニュートラルの実現には問題や矛盾点も多く、各国の取り組みの実態もつかみにくいことから、一部ではおかしいと言われています。実際にカーボンニュートラルには課題も多く、本当に実現できるのか不安に思っている方もいるでしょう。

しかし、カーボンニュートラルの達成可否にかかわらず、個人や企業が環境問題に取り組むことが、少なからずカーボンニュートラルに貢献することは事実です。節電や節水、太陽光発電の導入など、私たちもできることから始めていきましょう。

アイ・グリッド・ソリューションズでは、再生可能エネルギーの普及を通じて環境問題解決への取り組みを行っています。AIを用いて、オンサイトPPAや蓄電池を活用したGXソリューションも提供しています。環境問題に貢献したい気持ちはあっても、何から取り組めば良いかわからない企業の方は、ぜひ一度アイ・グリッド・ソリューションズまでお問い合わせください。

▷関連記事

脱炭素に向けて利用できる補助金を一挙公開!低コストで再エネを導入しよう

【必読】脱炭素経営とは?企業が取り組むメリットと基礎知識

気候変動対策におけるNDCとは?わかりやすく解説

 

▷アイ・グリッド・ソリューションズ関連はこちらをチェック

 

シェア