エネルギーミックスとは?わかりやすく簡単に解説

複数のエネルギーを組み合わせて発電することを、エネルギーミックスと呼びます。電力を安定的に確保するためには、ひとつのエネルギーに頼るのではなく、複数のエネルギーを組み合わせてリスクを分散させることが重要です。

本記事では、エネルギーミックスの概要や、なぜ必要か、また日本と世界のエネルギーミックスの現状について解説します。環境負荷の少ない発電方法を知りたい方や、自社に再生可能エネルギーを導入したいと考えている企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。

エネルギーミックスとは?わかりやすく簡単に解説

Net zero factory, where renewable energy sources like solar and wind power manufacturing processes, reducing carbon emissions to zero

エネルギーミックスとは?

エネルギーミックスとは「電源構成」とも呼ばれ、電気を生み出す方法をひとつに限定するのではなく、さまざまな発電方法を組み合わせることを指します。発電の際に使用するエネルギーには石油・石炭・天然ガス・原子力・太陽光・水力など複数ありますが、どのエネルギーにもそれぞれ長所と短所があります。

例えば、石油や石炭、天然ガスを使用する火力発電においては、発電効率が良く発電量のコントロールもしやすい一方で、二酸化炭素を排出することや、資源を枯渇させてしまう恐れがあることなどがデメリットとして挙げられるでしょう。

それぞれの発電方法のデメリットを補い、電力の安定的な供給を目指すためには、エネルギーミックスの考え方が必要です。

エネルギーミックスが必要な理由

エネルギーミックスが必要とされる理由を考える際には、S+3Eを知っておく必要があります。S+3Eとは、電気を生み出す際の大前提である「Safety(安全性)」に加え、「Energy Security(安定供給)」「Economy(低コスト化)」「Environment(環境への配慮)」の3つを表す言葉です。電力を作る際には、S+3Eを実現できるようエネルギーを組み合わせることが重要とされています。

特に、エネルギーの自給率が低いうえに消費量が多い日本においては、電力を安定的に確保するための工夫が欠かせません。電力が不足するリスクを防ぐためにも、複数のエネルギーによる発電を組み合わせることが重要です。

実際に、日本では1973年に原油価格の大幅な高騰(オイルショック)が起こりました。また、2011年の東日本大震災では福島第一原子力発電所で事故が発生し、原子力発電所の稼働が見直されることとなりました。

発電方法を分散させることで、あるエネルギーによる発電が難しくなった際にも、他のエネルギーで電力をまかなうことができます。特に、発電に必要なエネルギーのほとんどを輸入している日本においては、自給率を高める意味でもエネルギーミックスを実現させることが重要です。

2030年のエネルギーミックス実現目標と日本の現状

政府は、2030年までにエネルギーミックスを実現させるとして、目標を達成するためのさまざまな取り組みを行っています。日本では電力の約81%を火力発電によって得ている現状があり、今後は火力発電以外の発電方法の割合を増やすことが課題です。

また、2030年はエネルギーミックスを実現すると同時に、2013年度比で46%の温室効果ガスを削減することも目標として掲げられています。環境に配慮するため、再生可能エネルギーの導入や、省エネルギー施策を進めることなども政府が行っている取り組みのひとつです。

さらに、2030年までにエネルギー自給率を30%に引き上げることも、目標として掲げられています。火力発電が主流である日本においては、石油や石炭などの燃料が自国で生産できないことから、燃料を輸入に頼らざるを得ない状況です。

しかし、エネルギーミックスの推進によって再生可能エネルギーの導入が進めば、二酸化炭素の排出を抑えられるだけでなく、燃料の輸入を減らし、エネルギー自給率を高めることにもつながります。

エネルギーミックスの理想の割合は?

エネルギーミックスの理想の割合とは、先述したS+3Eをバランスよく実現できる電源構成にすることです。政府は、2030年までに火力発電を56%、原子力発電を20〜22%、再生可能エネルギーを22〜24%の割合にすることを目標として取り組みを進めています。

現時点においては火力発電が約81%、原子力発電が約3%、再生可能エネルギーが約16%であることを考えると、火力発電への依存を減らすことが重要な課題であるといえるでしょう。その中で、政府が行っている取り組みには以下のようなものがあります。

・再生可能エネルギーの導入促進

・安全性を確保したうえで原子力発電の再稼働を進める

・火力発電の二酸化炭素排出量を減らす

・省エネの支援制度を設ける

国の取り組み以外にも、消費者が再生可能エネルギーの導入や省エネルギー家電を購入・利用することで、エネルギーミックスへ貢献することも可能です。

世界各国のエネルギーミックスの現状

日本以外の国では、どのようなエネルギーミックスへの取り組みが行われているのでしょうか。

世界の国々、特に先進国においては、化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーにシフトしている国が多く存在します。例えば、カナダでは再生可能エネルギーによる発電が60%以上を占めています。また、ドイツやスペイン、イギリスなどの欧州各国でも、再生可能エネルギーの比率は30%程度と、比較的高いことが特徴です。

一方、フランスは原子力大国とも呼ばれているように、70%程度を原子力発電が占めています。原子力への依存が高く、エネルギーの自給率も低いフランスにおいては、今後エネルギーミックスおよび脱炭素への取り組みを進めるべく、再生可能エネルギーの拡大も視野に入れています。

中国では、石炭による火力発電が約70%を占めており、日本と同様にエネルギーミックスが進んでいない状況です。しかし、中国では2030年までに風力発電と太陽光発電の総設備容量を12億kW以上にすることや、2060年までにカーボンニュートラルを実現することなどを明言しており、今後再生可能エネルギー大国になる可能性もあるとされています。

各電源の特徴もおさえておこう

エネルギーミックスを実現するために必要な電源は、主に以下のようなものがあります。それぞれの電源の特徴や、メリット・デメリットを確認しておきましょう。

火力発電

火力発電は化石燃料を燃やして発電するため、安定的かつ大量に電源を確保できることや、天候に関わらず24時間稼働できることが特徴です。また、出力を調整しやすいことから効率的な発電が可能なこともメリットといえます。

デメリットとして、二酸化炭素を大量に排出するため環境に負荷がかかることや、燃料の埋蔵量に限りがあるため、いつかは枯渇してしまう恐れがあることなどが挙げられます。また、経済情勢や政治によって燃料の価格や供給量が左右されやすく、エネルギー不足になるリスクが高いことも懸念点のひとつです。

原子力発電

原子力発電は、火力発電と同様に、大量かつ安定的に発電できる方法です。燃料であるウランは世界中に埋蔵されていることから、資源も比較的手に入りやすく、発電コストも安いことが特徴です。また、発電時に二酸化炭素を排出しないため、環境に負担をかけないこともメリットといえるでしょう。

一方、福島第一原子力発電所でもあったように、事故が起きれば人間や動物、植物などが放射性物質に晒されてしまうリスクがあります。また、使用済みの燃料をどのように廃棄するのかが確立されていないことも課題のひとつです。

水力発電

水力発電は再生可能エネルギーのひとつであり、水の流れをエネルギーに変換する方法です。再生可能エネルギーの中では、天候に左右されないため24時間稼働できることが特徴です。また、発電時に二酸化炭素を排出しないことや、効率的な発電が可能なこともメリットといえるでしょう。

ただし、水力発電は河川を利用することから、利権の問題や建設手続きの煩雑さに加え、開発に膨大な費用がかかります。これ以上開発することは現実的ではないのが現状です。

太陽光発電

太陽光発電は、二酸化炭素を排出しないことはもちろん、利用していないスペースを活用して設備を置ける導入のしやすさが特徴です。また、設備がシンプルなためメンテナンスが比較的容易であることも、普及が進んでいる要因のひとつといえます。

一方で、太陽光発電は太陽の光によって発電することから、天候や時間帯によって発電量が変わってしまうことや、発電量の調整ができないことなどがデメリットといえるでしょう。

風力発電

風力発電は風車が回る力を利用して発電する方法で、二酸化炭素を排出しないほか、太陽光と異なり夜間も発電できることが特徴です。また、風力発電はエネルギー変換効率が高いため、費用対効果が高いことも特徴といえるでしょう。風車は陸上だけでなく洋上にも設置できるため、海に囲まれている日本においては設置場所の選択肢も豊富です。

風力発電のデメリットとしては、風車が回る際に騒音がj発生することや、風がないと発電できないことから、出力調整が難しいことが挙げられます。

地熱発電

地熱発電は、マグマ周辺の熱をエネルギーに変換する方法で、火山大国である日本においては主力電源として将来的に有望だといわれています。地熱発電は気候に関わらず電力の安定供給ができるほか、蒸気や熱水を温泉などに再利用できるため、一度稼働してしまえば費用対効果も高いことが特徴です。

ただし、地下調査や掘削に大量のコストがかかることや、開発に失敗するリスクもあり、容易に開発を行えないのが現状です。また、地熱が得られる場所は温泉地であることが多く、温泉事業者との交渉や、景観を損ねないための工夫を行う必要があります。

エネルギーミックスの実現に向けて、できることから始めよう

本記事で解説したように、どの発電方法にもメリットとデメリットが存在します。それぞれのエネルギーの欠点を補い、安定的に電力を供給するためには、エネルギーミックスを実現させることが重要といえるでしょう。

特に、火力発電に必要な化石燃料を輸入に頼っている日本においては、火力発電に依存することのリスクは極めて大きいといえます。2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標と合わせ、エネルギーミックスを推進していくためには、二酸化炭素を排出せず、安全性も高い再生可能エネルギーへシフトしていくことが重要です。

再生可能エネルギーの導入を検討中の企業担当者の方は、ぜひ一度アイ・グリッド・ソリューションズまでご相談ください。

 

▷関連記事

温室効果ガスを減らすには?企業や個人がすぐに始められることを紹介

カーボンニュートラル燃料とは?トヨタ・ホンダの事例も紹介

日本での発電量割合は?再生可能エネルギーは普及している?

 

▷アイ・グリッド・ソリューションズ関連はこちらをチェック

 

シェア