気候変動対策におけるNDCとは?わかりやすく解説
脱炭素社会を実現するために、世界ではさまざまな脱炭素の取り組みが行われています。その一貫として、2015年のCOP21で採択されたパリ協定において、温室効果ガスの排出削減目標を各国が提出することを義務化しました。その目標のことを、NDCと呼びます。
本記事では、NDCの概要や日本におけるNDCの内容、各国が掲げる具体的な目標などを紹介します。脱炭素の取り組みにおいて企業が取り組むべきアクションについても解説しているので、企業の担当者をはじめ、環境に興味のある方はぜひ参考にしてください。
NDCとは?
NDCとは、Nationally Determined Contributionの略であり、直訳すると「国が決定した貢献」という意味です。簡単にいえば、NDCとは、世界の国々がパリ協定において5年ごとに提出することが義務化されている「温室効果ガスの排出量削減目標」のことです。
パリ協定では、5年ごとにNDCを提出することに加え、内容の更新も行うことが義務化されています。NDCでは、各国が気候変動の影響にどのように対応していくのか、また、目標を実現するにあたって、他国からどのような支援が必要なのかなどについて言及しています。
2015年に開催されたCOP21に先駆け、2013年に行われたCOP19では、NDCの貢献案を、COP21の開催までに作成することが各国に提案されました。このNDCの貢献案(草案)のことを、INDC(intended nationally determined contribution)と呼びます。
日本のNDCの内容は?
日本では、2015年7月にINDCが決定されました。内容は、2030年度に、2013年度と比較して温室効果ガスの排出および吸収量を-26%まで下げることです。その後、2020年3月にNDCが決定され、INDCで掲げた目標に加え「その水準にとどまることなく、中長期の両面で温室効果ガスのさらなる削減努力を追求していく」としています。
また、2020年10月には、日本が2050年カーボンニュートラル宣言を行ったことを踏まえ、目標を更新しています。INDCで公表した「2013年度比で-26%」という目標値を、-46%まで引き上げました。また、-50%の高みに向けて、さらに挑戦していくことも同時に表明しています。
NDCとは別に長期成長戦略も存在する
パリ協定においては、NDCとは別に、長期的に温室効果ガスの低排出を目指す戦略を作成し、報告することを推奨しています。これが、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」と呼ばれるものです。日本では、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を決定し、国連に提出しています。
2020年10月には、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることを、菅元総理が所信表明演説において宣言しています。また、2021年10月には、2050年カーボンニュートラル実現に向けた長期的な戦略や考え方を示す「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」についても、国連へ提出しています。
「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」には、目標実現に向けた基本的な考え方、長期ビジョン、対策・施策などが盛り込まれています。
各国の2030年目標も要チェック
日本以外の国がパリ協定において掲げた、2030年目標をそれぞれ紹介します。
・アメリカ:2005年度比で-50〜-52%
・中国:温室効果ガス排出量のピークが2030年よりも前になることを目指す。また、2005年度比でGDPあたりの温室効果ガス削減量を-65%以上とする。
・ヨーロッパ諸国:1990年度比で-55%以上
・インド:2005年比でGDPあたりの温室効果ガス排出量を-45%
・韓国:2018年度比で-40%
・ロシア:1990年度比で-30%
・サウジアラビア:2019年度比で2.78億トン削減
・オーストラリア:2005年度比で-43%
・カナダ:2005年度比で-40〜-45%
・イギリス:1990年度比で-68%以上
上記の国のうち、アメリカ・ヨーロッパ諸国・韓国・オーストラリア・カナダ・イギリスは、2050年のネットゼロ実現を表明しています。また、中国・ロシア・サウジアラビアは2060年までに、インドにおいては2070年までに実現することを表明しています。
出典:外務省
脱炭素において企業が取り組むべきことは?
前述のとおり、温室効果ガス排出ゼロに向けて、日本や各国では脱炭素の目標を掲げています。その中で、企業ができる脱炭素の具体的な例を3つ紹介します。
省エネの推進
まずは、省エネの推進が挙げられます。例えば、建物を建てる際はネット・ゼロ・エネルギー(ZEH)を基準にしたり、既存の建築物を生かし、断熱改修を行うことでエネルギーの高効率化を図ったりすることなどが考えられるでしょう。
使用する設備を省エネ性の高いものに切り替えることも1つの方法です。使用する電気量を減らすためには、エアコンの極端な温度設定をしないことや、エレベーターの使用を控えることなどが考えられます。
不在時には室内の照明を消すよう徹底したり、人感センサーを導入したりすることも効果的です。LED照明工事を行えば、消費電力を抑えることにつながり、省エネ推進に役立ちます。
また、送電線による電力のロスを減らすため、電気を使用する場所の近くに発電所を設置する努力も必要といえます。企業だけではできない取り組みもありますが、行政や市民と協力しながらできることから進めていきましょう。
主力電力を再生可能エネルギーにする
日本は先進国の中では再生可能エネルギーの普及に遅れをとっているため、企業が再生可能エネルギーの普及を推進することで、脱炭素への大きな一歩へとつながります。
再生可能エネルギーとは、化石燃料ではないエネルギーのことです。再生可能エネルギーは、太陽光や風力、バイオマスなどの自然から得られるエネルギーであり、人々が消費をし続けても枯渇しないことが特徴です。有限の資源である化石燃料とは異なり、再生可能エネルギーは自然界に存在するため生産し続けることができます。
また、再生可能エネルギーは二酸化炭素を排出せずにエネルギーを生産できるため、脱炭素に大きく貢献します。
日本では、大手企業を中心に再生可能エネルギーの導入が進みつつありますが、全体でみると普及率はそこまで高くありません。多くの企業が再生可能エネルギーに転換することで、国内における脱炭素を推し進めることにつながるでしょう。
化石燃料の使用が多い産業の改革
化石燃料の使用が多い産業を改革することも、重要なポイントです。代表的なものとして、自動車産業が挙げられます。自動車は多くの部品から成り立っており、重工業や鉄工業など、化石燃料を大量に使用する産業と深くかかわっています。
日本の自動車産業は世界中で大きなサプライチェーンを有しているため、自動車産業を改革することで世界中に大きな影響を与えられるでしょう。
また、脱炭素の取り組みには、自動車の燃料であるガソリンの使用を減らすことも不可欠であり、EVの導入も急がれます。日本では欧米諸国と比較してEVの導入が遅れているため、今後はEVの開発や販売を国内で進めていくことが大きな課題となるでしょう。
そのほか、国民の公共交通機関の利用を促すことや、リモートワークを定着させて通勤不要にするなど、そもそも移動をしなくて良いように社会を変革していく取り組みも重要です。
脱炭素経営へどう取り組めばいいか悩んでいる企業はアイ・グリッドにご相談を
世界各国が掲げる、自国の温室効果ガス削減目標「NDC」について解説しました。NDCで提出した目標を国が実現するためには、企業や国民の協力が不可欠です。企業は再生可能エネルギーの導入や省エネ推進など、できることから脱炭素への取り組みを進めていきましょう。
再生可能エネルギーを導入したくても、何から始めれば良いかわからないと悩まれている企業の担当者は、ぜひアイ・グリッド・ソリューションズまでご相談ください。太陽光発電設置による再生可能エネルギー導入のサポートはもちろん、電力コスト削減やBPC対策として有効な方法もご提案いたします。
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