ロス&ダメージとは?どんな問題があるか、気候変動のリスクを解説

 

Corn crop growing in drought conditions, green maize field on dry land with mud cracks

ロス&ダメージとは、気候変動によるさまざまな被害が世界的に問題化する中で、自然災害などへの適応能力が低く、対策が追いついていない発展途上国への悪影響を指します。2023年にドバイで開催されたCOP28では、そのような発展途上国への新たな支援策として資金措置を施すことを決定しました。

本記事では、ロス&ダメージの概要や具体的に生じている問題について解説します。環境対策に関心のある経営者や企業の担当者の方はもちろん、学生のみなさんも、ぜひ最後までご覧ください。

ロス&ダメージとは?

ロス&ダメージとは、気候変動による悪影響が引き起こす「損失と損害」のことです。とくに、適応能力の低い発展途上国はこれらの悪影響を避けられず、大きなダメージを受けると考えられています。気候変動による悪影響とは、干ばつや洪水、海面上昇による土地の消失、豪雨、竜巻などです。

気候変動対策には、温室効果ガスの排出量削減による「緩和」対策と、社会的・経済的システムを調整することによって被害を回避する「適応」対策の2つがあります。このどちらの対策でも対処できないもの、及び回避できなかったものがロス&ダメージです。

ロス&ダメージはすでに途上国で大きな問題になっている

ロス&ダメージは、先述したように気候変動への適応能力が低い発展途上国で深刻な問題につながりやすく、すでに問題化している国もあります。

例えばバングラディシュでは、塩水侵入による地下水の塩化、ブータンではモンスーンの変化による洪水や土砂崩れの増加、ミクロネシアでは海岸侵食など、すでに多くの地域で大きな被害が発生しているのが現状です。

すでに適応能力を超えて悪影響が出ている地域もあり、被害額は6,000億ドルにものぼるといわれています。バングラディシュなどの発展途上国を対象とした研究レポートによれば、被害があった地域の60〜96%もの住民が、気候変動に起因する被害の影響を長期的に受け続けています。

ロス&ダメージに対するCOP28での成果は?

2023年に開催されたCOP28では、ロス&ダメージに対応するため、基金を含む新たな資金措置の運用を決定しました。日本もこの採択を受け、1,000万米ドルを用意する必要があるとを表明しています。

発展途上国がロス&ダメージにおける救済援助を先進国に強く求める一方で、先進国の間では長年にわたりさまざまな議論が交わされてきました。救済する仕組みを一度作ってしまえば、長期にわたり負担し続けなければならないことから、先進国側から強い反発の声が上がっているのも事実です。

そもそも発展途上国のロス&ダメージが、温室効果ガスの排出による影響だと証明することは難しいといえます。また、どの国がどの程度損害の原因を作っているかを測ることも不可能なため、現時点で先進国に援助を強制することはできないのが実情です。

ロス&ダメージ基金の運用に関する概要

COP28で採択されたロス&ダメージ基金の対象となるのは、気候変動の影響を強く受ける発展途上の各国です。先述したように、先進国の中には強い反発を示す国もあるため、はじめの4年間は先進国による資金の拠出は義務化せず、世界銀行が運営することとなっています。

先進国の拠出は任意でありながら、すでに拠出をすると表明している国もいくつかあります。日本以外では、アメリカが1,750万米ドル、イギリスが4,000万ポンド、ドイツが1億米ドル、UAEが1億米ドル、EUがドイツを含め2億2,500万ユーロを約束済みです。とはいえ、基金の規模や詳細についてはまだ決まっておらず、今後検討していくとされています。

気候変動による影響の重大さを改めておさらい

ロス&ダメージの原因となっている気候変動の悪影響について、改めてどのようなものがあるのか確認しておきましょう。

気温上昇:熱中症などの病気や山火事が増加する

気候変動による影響の1つ目が、気温の上昇です。温室効果ガスの濃度が高まることによって地表の温度が上昇し、気温も上昇します。

1980年代以降、10年ごとに気温はどんどん高くなっており、猛暑日や熱波の日も増加しています。とくに北極圏の気温上昇は顕著で、地球全体の平均の2倍以上の速度で高温化が進んでいるといわれています。

気温が高くなると熱中症などの病気が増加したり、屋外での労働ができなくなったりと、健康や生活面に大きな影響を及ぼします。また、気温上昇によって土壌が乾燥し、山火事が発生しやすくなることも問題です。近年では、気温上昇や生態系の乱れによって引き起こされる山火事の被害が世界各国で深刻化しています。

干ばつ増加:水不足により生態系の脆弱性が悪化する

気候変動による水不足の被害も深刻です。水不足が加速すると、生態系の脆弱性を高めることにつながります。また、干ばつが進むと破壊的な砂嵐が起こる危険性もあり、砂漠地帯が拡大することで農作物の収穫に悪影響を及ぼしてしまうことも問題のひとつです。

農作物の収量低下は、生産国が大きなダメージを受けることはもちろん、輸入国でも価格高騰などのダメージを受けることにつながります。

干ばつによる総生産被害額は1983年から2009年の27年間で約1,660億ドルにものぼるという研究結果もあり、大きな被害をもたらしていることは明らかです。また、干ばつによって植物が減少すると二酸化炭素の吸収量も低下するため、さらなる温室効果ガスの増加を招く可能性があります。

海の温暖化:沿岸地域や島を脅かし海洋生物を危険にさらす

気候変動によって上昇した熱の多くは海が吸収するため、海面水温の上昇につながります。海面水温が上がると、水の堆積が増えたり、氷床が溶けたりして海面が上昇し、沿岸地域をはじめとする人々の生活がおびやかされることが問題です。

また、海は熱を吸収するだけでなく、大気中の二酸化炭素を吸収する働きもあります。二酸化炭素を多く吸収して酸化した海は、牡蠣やサンゴなどの炭酸カルシウム結晶構造の海洋生物にとって望ましくない環境です。

昨今ではサンゴが死んでしまうことにより、サンゴに集まる多様な海洋生物が生きられず生態系が大きく崩れる事態も発生しています。

食料不足:飢餓と栄養不足が世界中で増える

気候変動によって農業や漁業、牧畜などがこれまでどおり行われなくなると、飢餓や栄養不足が世界中で増えていくでしょう。すでに干ばつによる穀物の収量低下や、海洋生物の減少による魚介類の捕獲量減少が問題化しています。

また、気温上昇による家畜の病気や免疫力の低下、ストレスの増加など、畜産業にもさまざまな悪影響が現れています。北極圏などの寒い地域では狩猟にも影響を及ぼしており、すでに食料供給の打撃を大きく受けている国があるのが現状です。

健康リスク増大:心身ともにあらゆる病気のリスクが上がる

気候変動は地球環境へのリスクが問題視されがちですが、人間の健康にも大きな影響を及ぼします。例えば、気温上昇による熱中症や熱ストレスによる免疫低下のリスク、ダニや蚊が増加することによる感染症のリスクなどです。

また、自然災害による避難生活での精神的ストレスなど、人々の健康をおびやかす要因は多岐にわたります。気候変動によって失われる命は、地球上で毎年約1,300万人にものぼるといわれています。発展途上国においては医療体制が整っていない国も多く、すべての人に対応できないことも生存率を下げる大きな原因となっているのかもしれません。

気候変動を抑えるには脱炭素社会の実現が必須

気候変動による地球や人間への悪影響を抑えるためには、一刻も早く脱炭素社会を実現することが不可欠です。発展途上国の中には、すでに気候変動による悪影響を強く受けている地域があり、多大な損失と損害をもたらしています。

全人類が二酸化炭素を減らす努力をすることはもちろん、すべての企業が脱炭素に取り組むことで、より多くの温室効果ガス削減につなげることが可能です。

アイ・グリッド・ソリューションズでは、太陽光発電事業を中心に、脱炭素社会を実現するためのビジネス支援を行っています。環境事業への取り組みを考えている経営者の方や企業担当者の方や、環境問題に興味がある学生のみなさんは、アイ・グリッド・ソリューションズの公式WEBサイトや、他のコンテンツもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

▷関連記事

COP28とは?これまでの軌跡や開催概要、成果についてわかりやすく解説

気候変動で私たちに起きる健康リスクとは?

温室効果ガスとは?排出の原因や種類について簡単に解説

▷グリラボSNSのフォローお願いします!!

Twitter @gurilabo

▷アイグリッドグループ

 

シェア