
温室効果ガスとは?排出の原因や種類について簡単に解説
地球温暖化の主な要因といわれている温室効果ガス。環境に関する議論でよく耳にするキーワードですが、地球温暖化とどのように関わっているのか、どうして排出量が増加しているのかなど、よくわかっていない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、温室効果ガスの性質や種類にはじまり、排出の原因や削減に向けた各国の対策などを解説します。
温室効果ガスとは?
温室効果ガスとは、太陽光の熱を蓄え、地表の温度を一定に保つ働きを持った気体のことです。英語では「Greenhouse Gas」といい、頭文字をとって「GHG」とも呼ばれています。
太陽光で温められた熱を持った空気は、赤外線として地表から宇宙に向かって放出されています。温室効果ガスはこの赤外線を蓄積・放出する性質を持っており、放出される熱を大気に留めて、温度を上昇させる働きがあります。温室効果ガスがなければ、地球の平均温度はマイナス19℃になるといわれており、現在の地球で生物が繁栄できる環境が保たれているのは、温室効果ガスの働きによるものです。
しかし、産業革命以降、人類が排出する温室効果ガスの量が急増し、これが地球温暖化の一因になっていると考えられています。そのため、温室効果ガスの削減に向けて各国が取り組んでいるのです。
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温室効果ガスの排出量の割合
温室効果ガスは1つの気体を指すのではなく、いくつか種類があります。その中でも、圧倒的に排出量が多いのが二酸化炭素(CO2)です。人類が排出する温室効果ガスのうち、実に75%を占めており、そのうち化石燃料に由来するものが65%を占めています。
引用:1-03 温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量 | JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター
温室効果ガスの種類については、次項で解説します。
温室効果ガスの種類
環境省などによって年間排出量が把握されている温室効果ガスとしては、次の6種類があります。
名称 | 特徴 | 発生する原因 |
---|---|---|
二酸化炭素(CO2) | 地球温暖化に最も大きな影響を与えている気体。炭酸ガスともいい、炭酸飲料やドライアイスに使われている。 | ・化石燃料、木、プラスチックの燃焼 |
メタン(CH4) | 二酸化炭素に次いで排出量の多い温室効果ガス。天然ガスの主成分であり、都市ガスに使われている。 | ・天然ガスの採掘・家畜のげっぷ・水田や沼地における植物の分解 |
一酸化二窒素(N2O) | 二酸化炭素の310倍の温室効果を持つ。全身麻酔等の笑気ガスで使われている。 | ・燃料の燃焼・工場活動・窒素肥料の使用 |
ハイドロフルオロカーボン類(HFCs) | オゾン層を破壊しない代替フロンの一種。二酸化炭素の数百~数万倍の温室効果がある。 | ・冷蔵庫やエアコンの冷却システム・スプレー缶 |
パーフルオロカーボン類(PFCs) | 代替フロンとして用いられている。非常に強い温室効果があるため、厳重な排出規制がなされている。 | ・半導体基板の洗浄剤 |
六フッ化硫黄(SF6) | 優れた絶縁性能があり、電気機器に広く使用される代替フロン。二酸化炭素の数万倍の温室効果があり、排出規制がある。 | ・電力供給システムの絶縁体 |
三フッ化窒素(NF3) | 代替フロンの一種で、強い温室効果があり、世界での使用量は増加傾向にある。 | ・小型電子回路などの製造 |
温室効果ガスが増えている原因
温室効果ガスは、私たちの生活におけるさまざまな活動によって排出されますが、主な原因としては次の2つがあげられます。
- 化学燃料の消費
- 森林の減少
それぞれ、詳しく解説します。
化石燃料の消費
人類が排出する温室効果ガスの75%を占める二酸化炭素は、主に石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃料することで発生しています。
化石燃料は、現在の私たちの生活を支える主要なエネルギー源です。例えば、火力発電所における発電では化石燃料が必要不可欠ですし、自動車を動かすのに使うガソリンも化石燃料です。他にも、ゴミを焼却処分する際にも大量の化石燃料を消費します。
このように、化石燃料は私たちの便利な生活に欠かせない重要な資源となっています。しかし、人類の生活が豊かになるほどに「大量生産・大量消費」の文化が当たり前となっていき、世界の温室効果ガス排出量は2013年まで増加の一途を辿っていました。
森林の減少
森林面積が減少したため、植物による温室効果ガスの吸収量が低下していることも一因です。
世界の森林面積は減少の一途を辿っており、2000年から2010年の間には毎年平均で520万ヘクタールもの森林が減少しました。森林減少の主な原因は、農地への転用や過剰な伐採といわれており、特に南アメリカやブラジルなど熱帯地域の森林が著しく減少しています。
温室効果ガスに対する世界・日本の取り組み
2021年に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、「人間の影響が気候システムを温暖化させてきたことは疑う余地がない」という、確定的な見解が示されました。
大気中に占める温室効果ガスの割合は、過去80万年間で前例のない水準に達していると考えられており、実際に地球の平均温度は2011~2020年の間で1.09℃上昇しています。このまま温室効果ガスの量が増加し続けると、今世紀末までに平均気温が3.3~5.7℃上昇すると予測されています。
このような切迫した状況から、日本だけでなく世界中で温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが実施されています。詳しい取り組み内容を紹介していきましょう。
世界の取り組み
地球温暖化対策の世界的な契機となったのが、2015年の第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された「パリ協定」です。パリ協定は気候変動問題に関する国際的な枠組みであり、以下2つの目標が掲げられています。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- そのために、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
パリ協定の締結国には、温室効果ガス削減に向けた具体的な行動計画を決定し、5年ごとに提出・更新することが求められます。
日本の取り組み
日本では、2020年10月に、当時の菅政権が「カーボンニュートラル宣言」を発表しています。これは、2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」にするという意味です。そのためのステップとして、2030年時点では2013年に比べて温室効果ガス排出量を46%減らすという目標も掲げています。
これを踏まえて、2021年10月には「地球温暖化対策計画」を5年ぶりに更新しました。改定された計画は、2030年の削減目標をふまえて策定したもので、二酸化炭素以外の温室効果ガスも網羅的に把握し、2030年目標達成の裏付けとなる施策や対策を具体的に設定しています。
温室効果ガス削減のために企業ができること
2020年度の日本における二酸化炭素直接排出量のうち、約24%は産業部門が占めています。つまり、一般企業が温室効果ガス削減に向けた施策を取り入れ、事業活動を見なすことも非常に重要です。企業ができる取り組みとしては、次のようなものがあげられます。
- オフィス環境の改善
- 工場設備の改善
- 物流の効率化
- 再生可能エネルギーの調達
- ビジネスモデルなどの見直し
それぞれ、詳しい取り組み内容を解説します。
オフィス環境の改善
オフィス環境を改善し、業務で使うエネルギーを削減すると、温室効果ガスの減少につながります。例えば、オフィスの照明をエネルギー消費の少ないLED照明に替えたり、人のいない部屋での消灯徹底などを意識的に行うといいでしょう。ほかにも、次のような取り組みが効果的です。
- 人感センサーを導入する
- 省エネ型エアコンを導入する
- テレワークを推進する
- 残業専用フロアを設置する
- 離席時にパソコンの電源が自動オフになるよう設定する
工場設備の改善
工場設備では、化石燃料や電力を大量に使う機械や設備が多くあります。そのため、工場設備全体の省エネ化を図ると、多くの温室効果ガス削減が見込まれるだけでなく、設備コストの節約も期待できます。
- エネルギー消費効率の高い設備を導入する
- 作業場の空調効率を高める
- LED照明を取り入れる
物流の効率化
日本の二酸化炭素直接排出量のうち、17%は運輸部門が占めており、これはエネルギー転換部門、産業部門に次いで3番目に多い割合です。そのため、大手物流企業をはじめ物流業界全体が温室効果ガス削減に注力しており、さまざまなアプローチを試しています。
- 営業車や配送車をエコカーに切り替える
- 大型船や列車を活用して一度に多くの荷物を運ぶ「モーダルシフト」に取り組む
- 企業の枠を超えた共同配送を実現する
- トラックの積載効率をあげる
- 積み下ろしのプロセスを効率化し、アイドリング時間を削減する
再生可能エネルギーの調達
一般家庭よりもエネルギー消費量の多い企業活動において、重要なテーマとなっているのが、再生可能エネルギーの導入です。再生可能エネルギーは、太陽光や風力などを利用した温室効果ガスをほぼ排出しないクリーンなエネルギー源です。企業で使用する電力を再生可能エネルギー由来のものに変えると、温室効果ガスの大幅な削減が見込めます。
- 敷地内や建物の屋根に太陽光発電システムを設置し、自家発電を利用する
- 再生可能エネルギーで発電した電気を、小売電気事業者から購入する
- グリーン電力証書やJ-クレジットなど、再生可能エネルギーの環境価値を購入する
ビジネスモデルなどの見直し
ビジネスモデルを根本から見直す企業も増えています。環境負荷の少ない新しい製品の開発や、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を把握し、事業プロセスを見直すといった取り組みがあげられます。
- 環境に配慮した商品を開発し、主力事業として取り組む
- IT活用によって事業におけるアナログなプロセスを簡略化する
- 製品容器のリサイクルやリユースを前提に、素材を改善する
- サプライチェーン全体の事業プロセスを見直す
まとめ
地球温暖化の一因である温室効果ガス削減に向けて、世界各国がさまざまな施策に取り組んでいます。しかし、国の施策に任せるのではなく、一般企業において事業構造や業務プロセスの見直しを図ることも大切です。オフィスに滞在する時間の短縮やこまめな節電など、日頃の業務で小さく取り組めることから始めてみてはいかがでしょうか。
また、企業として温室効果ガス削減に取り組みたい場合は、外部の力を頼るのも一手です。アイ・グリッド・ソリューションズでは、太陽光発電システムやエネルギーマネジメントシステムなどのGXソリューションを総合的に提供し、新しい企業価値の創出を支援しています。
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