需要が高まるGX人材とは?育成や採用の課題についても解説
企業では、国が目標として掲げるカーボンニュートラル達成を実現するために、GXへの取り組みが急がれています。しかし、GX自体がこれまでになかった概念であるため、GXに関する経験や知識がある人材がそもそも少なく、育成や採用の障害となっていることが課題です。
本記事では、近年需要が高まっているGX人材の概要と、育成や採用における課題について解説します。GX人材を探している企業の方や、就職・転職を検討中の方はぜひ参考にしてください。
求人需要が上昇し続けているGX人材とは?
GX人材とは、一般的に脱炭素やカーボンニュートラルの業務に携わる人材のことを指します。また、脱炭素に関わる「サステナビリティ推進部」や「カーボンニュートラル推進部」などに命名された部署で働く人のことを指す場合もあります。
GX人材はこの数年で生まれた概念であるため、明確な定義があるわけではなく、職種の定義も特に決められていません。
カーボンニュートラルの実現に向け、各企業においては、脱炭素を推進する部署やチームの立ち上げが行われています。しかし、実際にそのような部署で働いている人材が、カーボンニュートラルへの深い知識があるかというと、そうではないことがほとんどです。そのため、企業では専門知識を持った人材を確保することが急がれています。
転職市場においてGX人材の求人は6倍にも増えている
リクルートが公表しているデータによれば、2016年から2022年の間に、GX求人の数は約6倍に増えています。特に、政府が「カーボンニュートラルを2050年までに実現する」と宣言した2020年からの2年間で、大きくGX求人の数が伸びていることが特徴です。
GX人材の採用活動はどの業界でも増加傾向にあり、どの業界においてもGX人材が求められています。そのような中でも、特に化学業界メーカーとIT通信業界のGX人材ニーズが大きく高まっており、GX人材を目指している方にとってはチャンスといえるかもしれません。
GXの重要性がますます増えている近年において、今後もGX人材の募集は増加してくことが予想されます。
参照:リクルート
実際に転職したGX人材の数も3倍ほどに急増している
ここ数年で、GX人材の需要が約6倍に伸びている中で、実際にGX人材として転職した人も約3倍と急増しています。同様に、カーボンニュートラル宣言が出された2020年から大きく伸びているのが特徴です。
しかし、GX人材に転職する人は増加しているものの、実際には求人数の半分程度までしか人材確保が追いついていないのが現状です。GX人材の概念自体が新しいため、そもそも経験者が少ないことが理由と考えられます。
企業は経験者を採用するのではなく、今後活躍が期待できる素質のある人材を見抜き採用することで、人材確保の可能性が広がるでしょう。人材不足によってGX事業を進められなければ本末転倒なため、企業側も覚悟を持ってGX人材を採用していく必要があります。
また、GX人材の転職者が少ない背景には、求人を「どこで見つけたらよいかわからない」というのも、原因のひとつになっていると考えられます。GX人材の求人窓口がわかりやすくなれば、GX人材に転職する人も今後グッと増えていくかもしれません。
そもそもなぜいまGXが必要なのか?
GXが求められている理由には、国際的にカーボンニュートラル達成への需要が高まっていることが挙げられます。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素の排出量と吸収量を同じにすることで、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにしようという取り組みです。
日本を含む世界では、大気中の二酸化炭素が増えすぎたことによる地球温暖化の影響で、干ばつや気温上昇など、さまざまな被害が起こっています。被害をこれ以上広げないためにも、カーボンニュートラルを実現して地球温暖化を食い止めることが人類の急務です。
化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を推進するGXは、カーボンニュートラルに大きく貢献します。特に、エネルギーの自給率が低く、輸入した化石燃料に依存している日本においては、GXの達成は安定した電力供給にもつながります。GXの達成は、カーボンニュートラル実現に欠かせないステップといえるでしょう。
GX人材の確保や育成における課題
GXに関する専門知識を持つ人材は一握りであるため、どの企業においても人材確保が難しい現状があります。
将来的にGX人材になり得る人材を確保できたとしても、社内に育成できる知識を持つ人がいなければ、GX人材に育て上げることはできません。また、外部の講師を招いて育成するとしても、費用や育成するまでの時間がかかります。人材・コスト・時間のリソースが不足している中小企業では特に、GX人材の育成まで手が回っていない状況です。
2023年にフォーバルGDXリサーチ研究所が行った調査によれば、「GX人材の育成や採用を進めてきたいか」という問いに対し、「積極的に進めたいと思う」「進めたいと思う」と答えた企業の合計は28.6%にとどまりました。つまり、そもそもGX人材の育成を考えていない企業が多いということです。
また、「GX人材の採用を進めるための活動ができているか」という問いに対しては、「全くできていない」「あまりできていない」と答えた企業の合計が、92.6%にまで及んでいます。GX人材の採用活動ができない理由は、「できる人材がいない」点が一番大きいようです。
GX人材に求められるもの
GX人材の需要は、今後ますます伸びていくことが予想されます。GX人材にはどのような能力が求められているのか、3つ解説します。
GXへの興味関心や専門知識、それらを得ようとする力
GX人材は、企業の脱炭素やカーボンニュートラルに関連する業務を行うため、これらの専門知識を持っていることは必須といえます。また、気候変動やESG経営などへの興味・関心を持ち、常に新しい知識をアップデートしていける能力や意欲も重要です。例えば、以下のような知識です。
・国際的な脱炭素の枠組み(パリ協定)に関する知識
・二酸化炭素排出量の算定や削減に関する知識
GXの概念はまだ新しいため、自ら情報を収集していくことが大切です。また、GXは国内だけでなく国際的に活発化している取り組みであるため、情報の更新スピードが早いことも特徴です。国際的な変化が国内の企業に大きな影響を及ぼす可能性もあるため、GX人材には常にアンテナを張っておく姿勢が求められるでしょう。
また、GX人材のニーズは近年急増したため、これまで経験したことのない業務に携わることも考えられます。常に新しい情報を得ながら、自らモチベーションを維持していけることが、GX人材にとって重要なスキルの一つです。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力が高いことも、GX人材に求められる能力の一つです。GXに携わる業務では、社内外のさまざまな人とのコミュニケーションが発生します。例えば、社内の多数の部署や、社外の専門家、ステークホルダー、サプライチェーンなどとの関わりです。業務には、以下のようなものがあるでしょう。
・自社の経営課題を把握し、解決策を社内で提案する
・ステークホルダーと協力しながらGXを推進する
GXは、他部署や社外の関係者との協力なしに実現することはできません。そのため、GXに関わる業務は、他の業務と比較しても特に高いコミュニケーションスキルが求められます。
言い換えれば、はじめは経験や専門知識に乏しくても、コミュニケーション能力や交渉能力などの対人スキルが高い人材であれば、GX人材の有力候補になり得るとも言えます。
適応力や推進力
変化に柔軟に対応しながらプロジェクトを推し進めていけることも、GX人材に求められる能力です。GXに関するプロジェクトでは、常に変化の連続であることが予想されます。
新しい概念であるGXは、法律による規制や標準化などが設けられていない領域も多く存在します。自社でルールを策定し、社内に提案していくことも、GX人材が行うべき業務のひとつでしょう。
例えば、二酸化炭素の排出量を見える化しようとする際、社内やサプライチェーンからどのようにデータを集めるのかを検討することは、GX人材の業務といえます。
GX人材には、社内外の関係者と話し合った内容を調整したうえで、新たなルールやシステムを構築していく能力が求められます。
GX人材を確保して育成するためには、アウトソーシングの活用も重要
GX人材の専門知識を持つ企業に育成を依頼したり、外部の人材にDX業務を丸ごと依頼したりする方法もひとつの手段です。GX人材を確保できる企業はまだまだ少なく、育成や採用に関しても社内のみで取り組みを進めるには限界があります。
GXに関わるアウトソーシングサービスには、以下のようなものがあります。
・GXに関する知識を体系的に学べる講座を提供してくれるサービス
・GX人材を専任スタッフとして現場に提供してくれるサービス
アウトソーシングを活用する際の注意点としては、事前にどのような使い方をするのか明確にしておくことです。また、アウトソーシングのコストを無駄にかけないためにも、どこからどこまでを依頼するかを決定しておくことも重要といえます。
アイ・グリッドにはGXのプロが集結!GXに関するご相談や求人応募はこちらまで
カーボンニュートラル実現に向けて、今後はどの企業においても化石燃料からの脱却を推進するGXに取り組む必要性が増していくと考えられます。企業のGX人材の育成・採用に関する課題は多いものの、企業・転職者ともに、GXへの理解を少しずつでも広げていく努力が必要です。
アイ・グリッド・ソリューションズでは、全国に自然を壊さない太陽光発電所をつくり、安定した100%クリーンな電力を提供しています。環境に優しく災害に強い次世代施設を構築し、企業の成長を支援する「GXソリューション事業」も展開しています。
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