GX推進法とは?問題点も含めわかりやすく解説

2023年5月、脱炭素社会に向けた取り組みの方法や考え方を示した「GX推進法」が成立しました。基本方針概要では、GX経済移行債の発行やカーボンプライシングの導入など、具体的な政策が明示されています。本記事では、GX推進法の内容や、問題点について詳しく解説します。投資を通じて環境問題に貢献したい人や、脱炭素への取り組みを進めたいと考えている企業担当者はぜひ参考にしてください。

GX推進法とは?わかりやすく概要を解説

GX推進法とは、2023年5月に国会で成立した、今後の日本におけるエネルギー政策の方向性を定めた法案です。正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」であり、全79条の条文で構成されています。

GX推進法は、グリーントランスフォーメーション(GX)に向けた国際的な投資競争の加速を背景に、日本でも2050年のカーボンニュートラル実現と産業競争力の強化、経済成長の実現に向けてGX投資を推進させることを目的としたものです。以下で、主なGX推進法の5つの法定について詳しく解説します。

① GX推進戦略の策定・実行

1つ目は、GXの推進戦略の策定と実行です。GXを計画的に進めるための戦略案は政府が策定しなければならないと定めたもので、経済産業省が目標や方向性、施策内容などを作成し、閣議決定するとしています。

② GX経済移行債の発行

2つ目は、GX経済移行債の発行です。GX経済移行債は、脱炭素事業に用途を限定した国債の一種です。国が発行するGX経済移行債を投資家に購入してもらうことで、その資金を脱炭素への取り組みに当てます。

国債には個人向けのもの、法人や団体向けのもの、法人・個人どちらも購入できるものなどさまざまな種類がありますが、GX経済移行債は個人向けにも発行することが予定されています。

個人向け国債は少額から購入できるため、多くの国民がGX投資を通じて脱炭素社会に向けた支援を行えるようになることがメリットです。国では今後、投資拡大に向けて投資教育を行う専門的な公的機関を創設することも検討しています。

GX経済移行債の発行は2023年度から2032年度までの10年間で20兆円規模とされており、集めた資金は2050年までにカーボンプライシングから得た財源で償還される予定です。カーボンプライシングの詳細については、次の項目で詳しく解説します。

③ 成長志向型カーボンプライシングの導入

3つ目は、成長志向型カーボンプライシングの導入です。カーボンプライシングとは、企業が排出する二酸化炭素に価格を付け、排出量に応じて税金や負担金を徴収することで、温室効果ガス排出量の制限を試みる政策手法です。

カーボンプライシングには、化石燃料から排出される二酸化炭素に課税する「炭素税」や、企業ごとに排出量の上限を設けて過不足分を売買する「排出量取引」などがあります。

世界では、すでにEUをはじめとした多くの国がカーボンプライシングを導入しています。日本でも、今回のGX推進法の設立に伴い、成長志向型カーボンプライシング構想が打ち出されました。

成長志向型カーボンプライシングでは、2028年から化石燃料賦課金が、2033年からは排出量取引が導入されます。

化石燃料賦課金は、化石燃料の輸入事業者に対して二酸化炭素の排出量に応じた賦課金を徴収するものです。排出量取引は、発電事業者に対して一部有償で二酸化炭素の排出枠を割り当て、その量に応じて特定事業者負担金を徴収するものです。

カーボンプライシングによる規制と先行投資による支援を組み合わせることで、企業が積極的にGXに取り組む土壌を作ることを狙いとしています。

④ GX推進機構の設立

4つ目は、GX推進機構を設立することです。経済産業省の許可によりGXにかかわる新たな機構を設立することを述べたもので、第54条で以下のような業務を行うことが規定されています。

  • 民間企業によるGX投資への支援
  • 化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収
  • 特定事業者排出枠の割当てや入札など、排出量取引制度の運用

参照:環境省

⑤ 進捗評価と必要な見直し

5つ目は、進捗評価と必要な見直しです。GX推進法の具体的な施策は2023年時点で検討段階のものが多く、今後の状況によってアップデートしていくことがすでに予定されています。GX投資の実施状況をタイムリーに把握し、施策がこれで良いのか、見直すところがないかなどを常に評価していく必要があります。

特に化石燃料賦課金や特定事業者負担金については事業者への影響が大きいため、その時々に応じて必要な対策を行うことが不可欠です。附則第11条では、GX推進法の施行後2年以内に、必要な法律上の措置を行うことを規定しています。

GX推進法には問題点もある

GX推進法は、さまざまな問題点も指摘されています。以下で大きな課題を2つ紹介します。

そもそもGX推進法の導入が遅い

GX推進法における具体的な施策であるカーボンプライシングの導入は、先ほど紹介した通り2028年からです。排出量取引を行うのはさらに5年後の2033年からで、日本が表明している2030年までに46%の温室効果ガスを削減する目標には間に合わないことが予想されます。

諸外国では1900年以降すでに60ヶ国以上で導入が進んでいることを鑑みても、日本は出遅れていると言えるでしょう。

法的な強制力がなく企業の自主性に依存している

GX推進法では、あくまで企業の積極的な脱炭素への取り組みを支援することに留まり、法的な強制力がありません。

少なくとも2033年までは企業の自主性に任せることが決まっており、制度への参加や目標達成の有無などは規定されておらず、参加しない企業に対する罰則もありません。法的な強制力がない制度では、二酸化炭素排出削減の大きな効果は見込めないほか、公平性に欠けていることも問題です。

また、炭素価格が国際的な水準に比べて低いことも問題だと言われています。GX経済移行債の20兆円から試算すると、日本の炭素価格は2028〜2050年の平均で二酸化炭素1トンあたり2,750円です。しかし、1トンあたり2,750円では地球規模でのカーボンニュートラル実現に間に合わない可能性が高く、今後引き上げを検討する必要があります。

日本はGXの推進に世界で大きく遅れをとっている

日本は世界的に見て、GXの推進に大きく遅れを取っているのが現状です。

「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が実施した報告書によると、2023年のSDGs達成度ランキングは1位がフィンランド、次いでスウェーデン、デンマークと、北欧がトップ3を占めています。

その後もドイツ、オーストリア、フランスとEU諸国が続き、日本は21位と低い結果に留まっています。二酸化炭素の排出量が例年多いアメリカ(39位)や中国(63位)、インド(112位)などよりは高いものの、世界的に見ると遅れをとっていると言わざるを得ない状況です。

日本は2017年にSDGs達成度ランキングで11位を獲得したことをピークに、その後はゆっくり下降を続け、2023年に初めて20位台に落ち込む結果になりました。

報告書に記載された目標13「気候変動に具体的な対策を」では、取り組みの進み具合に深刻な問題があると評価されています。日本は資源に乏しいため、未だ化石燃料への依存度が高いことが大きな課題です。

参照元:朝日新聞デジタル

IGSは持続可能な脱炭素社会を目指す企業グループ

脱炭素社会に向けてGX推進法が定められたものの、世界的に見ると地球環境問題への対策に大きな遅れをとっている日本。カーボンプライシングの導入時期や炭素価格の見直しなど、今後改めて検討していくことが期待されます。

アイ・グリッド・ソリューションズは、エネルギー問題におけるさまざまな解決策を提供している企業です。GXソリューション事業では、自家消費型太陽光発電所を建設し、クリーンエネルギーを地域の企業に供給する仕組みを実現しています。再生可能エネルギーを余すことなく有効活用し、化石燃料からクリーンエネルギーへの転換に貢献中です。

2022年5月には、持続可能な脱炭素社会の実現を目指す企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」にも加盟し、他企業との連携も図っています。クリーンエネルギーへの転換に興味のある人は、ぜひアイ・グリッド・ソリューションズのWebサイトもご覧ください。

 

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