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カーボンニュートラル燃料とは?トヨタ・ホンダの事例も紹介

カーボンニュートラルを実現するために、企業や一般家庭においては脱炭素への取り組みが急がれています。昨今、化石燃料に頼らない発電手段として開発されているのが、カーボンニュートラル燃料です。

本記事では、カーボンニュートラル燃料の概要や注目されている理由、メリット・デメリットなどを解説します。実際に導入している企業の事例も紹介しているので、あわせて参考にしてください。


カーボンニュートラル燃料とは?

カーボンニュートラル燃料とは、燃料の製造から使用までの過程において、大気中の二酸化炭素を増やさない燃料のことです。代表的なものとして、二酸化炭素と水素を合成させてできる合成燃料があります。

二酸化炭素と水素の合成燃料の場合、燃焼するタイミングで二酸化炭素を排出します。しかし、発電所や工場などで排出された二酸化炭素を集めたものを燃料として再利用するため、トータルで考えると大気中の二酸化炭素を増やしていないことから、カーボンニュートラルであるとされています。

カーボンニュートラル燃料には、他にもいくつか種類があります。廃油・都市ゴミ・木くず・草などから作られる航空燃料のSAFがその例です。また、水の電気分解や工場の副産物などから作られる水素や、動植物を原料に作られるバイオ燃料もカーボンニュートラル燃料の一種です。

カーボンニュートラル燃料は何に活用できる?

カーボンニュートラル燃料は、以下のような場面で主に活用されます。

・自動車

日本では2030年代頃に、販売されるすべての自動車が電気自動車になるといわれています。しかし、既存の自動車がなくならない限り、エンジンで動く車がゼロになるわけではありません。そこで出てくるのがカーボンニュートラル燃料です。2024年現在、国内の自動車メーカーが主体となり、カーボンニュートラル燃料の実用化に向けたさまざまな取り組みが進められています。

・航空機、船舶

前述したSAFのように、カーボンニュートラル燃料は航空機や船舶の燃料としても活用できます。

・石油精製業

石油精製業とは、石油製品を製造する事業を指します。昨今ではカーボンニュートラルへの取り組みにより、石油の需要が減少しつつあります。しかし、石油精製業の燃料設備や内燃機関はカーボンニュートラル燃料を製造する際にそのまま使えることから、石油精製業者はカーボンニュートラル燃料の製造を新たなビジネスとして活用することが可能です。

カーボンニュートラル燃料が注目されている背景

カーボンニュートラル燃料が注目されている背景として、地球温暖化の加速が挙げられます。地球温暖化をこれ以上進行させないためには、化石燃料を使用しないこと、二酸化炭素を排出しないことが重要な鍵となるでしょう。

二酸化炭素を回収し、燃料として再利用するカーボンニュートラル燃料は、地球温暖化を抑制するために必要な燃料のひとつです。特に、カーボンニュートラルへの取り組みが緊急の課題となっている運輸産業においては、カーボンニュートラル燃料の導入は大きな意味があるといえます。

日本では、2050年までにカーボンニュートラル達成を宣言しています。多くの場面でカーボンニュートラル燃料が活用されるようになれば、目標が実現される可能性が高まるでしょう。

カーボンニュートラル燃料のメリット

カーボンニュートラル燃料を活用することで得られるメリットについて、詳しく解説します。

二酸化炭素の排出量を削減できる

前述のとおり、カーボンニュートラル燃料は二酸化炭素を回収して再利用する燃料です。燃料を使用する際には二酸化炭素が排出されますが、作られる段階で二酸化炭素を回収しているため、全体でみると大気中の二酸化炭素は差し引きゼロである、という考え方です。

これまでのように一方的に二酸化炭素を排出する化石燃料とは異なり、大幅に二酸化炭素の排出を削減できると考えられています。また、二酸化炭素を出さない燃料の開発も進められており、将来的には本当の意味で脱炭素な燃料になる可能性も期待できます。

エネルギー密度が高くパワーが大きい

二酸化炭素と水素を合成したカーボンニュートラル燃料は、化石燃料に匹敵するほどエネルギー密度が高いといわれています。エネルギー密度が高いことは、優れたパワーを発揮できることを示します。

これまで化石燃料が使用されてきた理由のひとつは、そのエネルギー密度の高さにありました。カーボンニュートラル燃料が化石燃料と同じパワーを発揮できるとわかった今、化石燃料に代わる有力なエネルギーとしての期待が高まっています。

国内エネルギー自給率向上につながる

カーボンニュートラル燃料の普及は、国内エネルギー自給率向上にもつながります。日本では主なエネルギー資源である石油の多くを輸入に頼っており、エネルギーの自給率は10%前後と非常に低い状態です。化石燃料で発電しているエネルギーをカーボンニュートラル燃料に置き換えることができれば、エネルギー自給率の向上にもつながるでしょう。

さらに、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーとあわせれば、石油に頼らない脱炭素エネルギーの割合を大幅に増やせる可能性が高まります。カーボンニュートラル燃料の普及は、エネルギーの安定供給にも役立つということです。

カーボンニュートラル燃料のデメリットと課題

次に、カーボンニュートラル燃料のデメリットや課題点についてみていきましょう。

高いコストがかかる

カーボンニュートラル燃料は、製造コストが高い点がデメリットとして挙げられます。国内の水素を活用して二酸化炭素との合成燃料を製造すると、1Lあたり約700円かかるとされています。

海外から化石燃料を輸入する場合は、1Lあたり300〜350円程度のコストで済むため、カーボンニュートラル燃料のほうが2〜3倍以上のコストがかかる計算です。今後カーボンニュートラル燃料を普及するにあたっては、どのようにコストを下げるかが課題となるでしょう。

実用が技術的にまだ難しい

現時点では、カーボンニュートラル燃料を製造する十分な技術がない点も課題として挙げられています。日本における合成燃料の技術は研究中の段階であり、すぐに実用化できるものではありません。

例えば、カーボンニュートラル燃料の原料となる二酸化炭素を大気中から直接回収するDAC技術では、回収する際に必要なエネルギーをどこから調達するかが問題となっています。実用化するためには、二酸化炭素を排出せずコストもかからない方法を見つけていく必要があるでしょう。

安定的に原料が調達できない

カーボンニュートラル燃料は、安定的に原料を調達することが難しい点も問題です。SAFやバイオ燃料などは、穀物や植物油などの食料と競合してしまうリスクがあるからです。カーボンニュートラルの需要が高まれば、原料の奪い合いが発生することも懸念されます。

カーボンニュートラル燃料の開発に取り組む企業の事例を紹介

最後に、カーボンニュートラル燃料の開発に取り組む企業の事例を2つ紹介します。

トヨタ

自動車メーカーのトヨタでは、出光興産やENEOSなどと共同でカーボンニュートラル燃料の開発を試みています。具体的には、日本における自動車市場でのカーボンニュートラル燃料の導入シナリオや、導入の際に必要な諸制度の検討などです。また、日本におけるエネルギーの安定供給などの観点から、カーボンニュートラル燃料を製造できる可能性の調査も行っています。

トヨタでは、2007年に、バイオ燃料とガソリンの混合燃料を搭載した「フレックス燃料車」をブラジルで導入しています。今後も、カーボンニュートラル燃料の搭載が可能なエンジンの開発を視野に入れ、カーボンニュートラルの実現方法を模索していくことが期待できます。

ホンダ

同じく自動車メーカーであるHondaでは、2050年までにすべての製品と企業活動全般においてカーボンニュートラルの達成を目指しています。

毎年開催されているHondaエコマイレッジチャレンジでは、2024年よりカーボンニュートラル燃料クラスを新設することを発表しました。Hondaエコマイレッジチャレンジとは、Honda4ストロークエンジンをベースにし、1Lあたり何km走行できるのか、アイデアと技術を競うスポーツです。

また、Hondaは58.5%をカーボンニュートラル化した高性能成分を燃料にすることに成功しており、実際にF1ではこの燃料が導入されています。一般のエンジン車にカーボンニュートラル燃料が使用される未来も、そう遠くないかもしれません。

できることから脱炭素に取り組もう

カーボンニュートラル燃料は、コストや技術面で課題が残るものの、開発が進めば日本のエネルギー自給率が大幅に向上する可能性も期待できる燃料といえるでしょう。化石燃料に頼らない発電方法として、今後技術が発展していくことが望まれます。

化石燃料から脱却し、カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーを導入することもひとつの方法です。アイ・グリッド・ソリューションズでは、太陽光発電とAI技術を組み合わせた再生可能エネルギーの導入を支援しています。脱炭素社会に貢献したいものの、何から取り組めばいいかわからない企業担当者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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