経済省の「GX実現に向けた基本方針」の概要|企業が押さえておきたい知識とは?

2023年2月、経済産業省は「GX実現に向けた基本方針」を公開しました。2050年にカーボンニュートラルを実現するための具体的な方針をまとめたもので、企業活動を続けるうえで押さえておきたい内容も記されています。

本記事では、「GX実現に向けた基本方針」の概要をまとめて解説します。環境問題に配慮した企業活動を行うために、ぜひ参考にしてください。

「GX実現に向けた基本方針」とは?

「GX実現に向けた基本方針」とは、2023年2月10日に政府によって閣議決定された方針です。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、化石燃料の使用をできるだけ減らしてクリーンなエネルギーを活用するための変革およびそれを実現するための活動のことをいいます。※

2022年夏よりGX実行会議や各省における審議会で、脱炭素・エネルギー安定供給・経済成長の3つを同時に実現するための検討が進められてきました。それを踏まえて取りまとめられたのが「GX実現に向けた基本方針」です。

※参考:経済産業省「知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?

「GX実現に向けた基本方針」を決めた背景

GXを実行するために、日本政府は2022年7月から岸田内閣総理大臣を議長とするGX実行会議を開催してきました。GX実行会議や各省での審議会で議論した内容やパブリックコメント等を取りまとめ、2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました。※

※参考:経済産業省「「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました

「GX実現に向けた基本方針」の概要

「GX実現に向けた基本方針」は、大きく分けて以下の2点について記載されています。

  • エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取り組み
  • 「成長志向型カーボンプライシング構想」等の実現・実行

ここでは、「GX実現に向けた基本方針」にどのようなことが記載されているのか、概要を解説します。

エネルギーの安定供給に向けたエネルギー政策

まず、「エネルギー安定供給の確保を大前提としたGXの取り組み」に記載されている内容について解説します。

再生可能エネルギー主力電源化

2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーの主力電源化が必要です。2021年に政府が改定した「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度の電源構成について36〜38%を再生可能エネルギーとすることが明記されており、それに向けて基本方針では「今後10年間程度で過去10年の8倍以上の規模で系統整備を加速させる」としています。

具体策としては、北海道からの海底直流送電の整備や、洋上風力の導入拡大に向けた「日本版セントラル方式」の確立、地域と共生した再エネ導入のための事業規律の強化などが挙げられました。

原子力発電の活用

2022年12月に示された「GX実現に向けた基本方針(案)」では、原子力の活用についての方針も取り入れられていました。正式に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」内にも、原子力発電についての記載があります。

原子力の活用については、安全性の確保を大前提としたうえで、廃炉を決定した原発の敷地内での次世代革新炉への建て替えの具体化が方針とされました。次世代革新炉とは、現在の原子炉と比較して安全性や燃焼効率の高い発電施設のことです。

水素・アンモニアの導入促進

「その他の重要事項」として、さまざまな分野で活用が期待されている水素やアンモニアの導入促進についても明記されています。特に水素は水から生成できる点や製造方法が多岐にわたることから注目を集めており、国内の余剰な再生可能エネルギーを用いて製造・利用することでエネルギー自給率の向上が期待されています。

「水素分野で世界をリードするための制度設計を行う」とも明記されていることから、政府は特に水素に力をいれる方針であると伺えるでしょう。

「カーボンプライシング」の実現・実行

カーボンプライシングとは、炭素税やエネルギー課税など炭素排出に価格をつける仕組みのことです。「GX実現に向けた基本方針」のなかで、政府は「成長志向型カーボンプライシング構想」について明記しました。

成長志向型カーボンプライシング構想では、今後10年間に150兆円を超える官民GX投資を実現するために、国が総合的な戦略を定めるとしています。具体的には、GX経済移行債を活用した先行投資支援やGXに先行して取り組む事業者へのインセンティブ、「GX推進機構」によるリスク補完策の検討・実施などが盛り込まれました。

 

脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革に向けて

脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革に向けて、以下の2つの取り組みも進められています。

  • アジア・ゼロエミッション共同体構想など国際展開戦略
  • 経済産業省によるGXリーグ

上記2点の概要を、以下で解説します。

 

3-3-1 アジア・ゼロエミッション共同体構想など国際展開戦略

世界の二酸化炭素排出量の約半分は、アジアの国々によるものです。アジアのCO2排出量削減の重要性が高まっているなか、2022年1月に岸田首相がアジア各国のエネルギートランジションを進めるために協力することを目的とした「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想」を発表しました。※

2023年3月にはAZEC閣僚会合やAZEC官民投資フォーラムを開催し、ベトナム・マレーシア・フィリピンなどアジア各国の閣僚等と脱炭素化に向けた協力等について意見交換を実施しています。

※参考:経済産業省「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合を開催します

経済産業省によるGXリーグ

日本国内の取り組みとしては、経済産業省による「GXリーグ」が挙げられます。GXリーグは2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みについて議論する場で、取り組みを進める企業や政府、金融機関や研究機関などが参加しています。

2022年4月時点で、440社がGXリーグに賛同しました。検討会やワーキンググループ、シンポジウムなどが随時行われています。

GXリーグについては下記の記事でも詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。

関連記事▷【脱炭素社会】GX(グリーントランスフォーメーション)とは?基礎知識と事例6つ

 

GX実現に向けた基本方針で企業が知っておきたいこと

中小企業等がGXに取り組む際には、カーボンニュートラル実現への対応策について「知る」・自社のCO2排出量等を「把握する(測る)」・CO2排出量等を「削減する」という3つの段階があります。

段階に応じた支援やサプライチェーンにおける脱炭素化の推進が重要なため、3つの段階について以下で紹介します。

知る

まず、カーボンニュートラル実現のために自社がどのような対策に取り組むべきなのか知っておく必要があります。例えば、中小企業基盤整備機構が設置しているカーボンニュートラルに関するオンライン相談窓口や、環境省が公開している脱炭素経営推進ガイドなどの活用が挙げられます。

把握する(測る)

CO2排出量の削減施策に取り組むために、まず現状として自社が排出しているCO2量を把握することが大切です。「GX実現に向けた基本方針」内では、省エネ診断事業の強化や簡易的に排出量算定が行えるよう国の電子報告システムを改修するといった対応が記載されているため、中小企業はこれらの支援策を活用できます。

削減する

中小企業がCO2排出量を削減するための支援策として、「GX実現に向けた基本方針」では省エネ・CO2排出量削減を促進する設備投資支援や、グリーンに資する革新的な製品の開発などが挙げられています。また、中小企業支援機関や地域の金融機関等が、脱炭素の取り組みを進める中小企業をプッシュ型で支援する体制を構築することも記しています。

まとめ

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府は「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定しました。この基本方針には企業がCO2削減などに取り組む際にも知っておきたい内容が多く含まれているため、概要を把握しておきましょう。

アイ・グリッド・ソリューションズでは、企業や地域の脱炭素化をサポートするGXソリューション事業などを行っているので、環境に配慮した経営を目指す企業はぜひご相談ください。

グリラボでは、このような脱炭素に関する最新情報やニュース等について発信しています。CO2排出量の削減や環境に配慮した経営に取り組む企業担当者の方は、ぜひ他の記事もチェックしてみてください。

▷関連記事

【初心者向け】CO2排出量削減へ向けた日本企業の取り組みまとめ

【必読】脱炭素経営とは?企業が取り組むメリットと基礎知識

インターナルカーボンプライシング(ICP)とは?仕組みをわかりやすく解説

▷グリラボSNSのフォローお願いします!!

Twitter @gurilabo

▷アイグリッドグループ

シェア