COP28とは?これまでの軌跡や開催概要、成果についてわかりやすく解説
2023年12月に開催された、気候変動に関する国際会議「COP28」。今回はどのような採択や成果を得たのでしょうか。
COP28の概要や成果を、これまでのCOPの軌跡とともに解説します。環境問題に関心のある人は、ぜひ1つの知識として役立ててください。
COPとは?基礎知識をおさらい
COPとはそもそも何なのか、またどのような議論がされている場なのかについて解説します。
そもそもCOPとは?
COPとは「Conference of the Parties」の略であり、締約国会議のことです。締約国会議とは、条約を結んだ国々で行う会議を意味し、数多くある国際条約の最高決定機関として設置されています。締約国会議ではさまざまな内容で会議が行われますが、中でもよく報道されているCOPは、気候変動に関するものです。
2023年現在は198の国や機関が参加しており、気候変動に関する会議が毎年開かれています。この会議の目的を達成するために定められた具体的な枠組みが、京都議定書とパリ協定です。COPでは、2020年以降の枠組みであるパリ協定に焦点を当てた議論が毎年行われています。
COPではパリ協定に関する詳細なルールが議論されている
2015年のCOP21でパリ協定が採択されて以来、COPではパリ協定に関する詳細なルールについて毎年議論を重ねてきました。
2018年のCOP24では実施方針が決定し、2021年のCOP26では市場メカニズムに関するルールが決定されています。市場メカニズムとは、温室効果ガスの排出削減分をクレジットとして国際的に移転し、取引を行う仕組みのことです。
上記のように、COPでは毎年パリ協定に関するルールについて議論されており、年ごとにより詳細なルールや対策が定められています。
2022年のCOP27では気候変動対策の実施にフォーカス
2022年に開催されたCOP27では、気候変動対策の実施に焦点が当てられ、アメリカ・フランス・ドイツ・日本など約100ヶ国の首脳が集まりさまざまな議論が行われました。COP27の議論のキーワードは、「緩和」「適応」「ロス&ダメージ」です。
「緩和」は気候変動緩和に向けて温室効果ガスの排出量を削減すること、「適応」はすでに起きている気候変動への備えと対策です。「ロス&ダメージ」は、地球温暖化により生じる自然災害に起因する悪影響に対し、防災対策や健康被害対策などを講じることを指しています。
COP27で採択された「シャルム・エル・シェイク実施計画」では、COP26で決定した内容をより具体化した以下の内容が盛り込まれました。
・「1.5度目標」の重要性を再確認
・各国の2030年目標を「1.5度目標」と矛盾がないよう強化する
・「ロス&ダメージ」に関する基金を設置
2023年COP28の開催概要や得た成果は?
2023年12月に開催されたCOP28では、どのような議論が行われたのでしょうか。以下で、開催概要や得られた成果を紹介します。
COP28はドバイで開催。日本からは岸田総理が出席
COP28は、2023年12月1日にアラブ首長国連邦のドバイで開催されました。日本からは岸田総理が参加し、首脳級ハイレベル・セグメントにてスピーチを行っています。以下で、スピーチの概要を紹介します。
・COP28では、パリ協定の目標に向けた世界の進捗状況を評価する仕組みである「グローバルストックテイク」を初めて完了させるが、その一方で世界はまだ「1.5度目標」を達成するための軌道に乗っていない
・軌道修正のためには経済全体の削減目標の設定と、2025年までの排出量ピークアウトが必要
・G7広島サミットで日本が取りまとめた「多様な道筋の下でネット・ゼロという共通の目標を目指す」ことを世界で協力して実現するべきである
・日本ではGXを加速させ、アジアでの排出量削減を主導する形で世界の温室効果ガス削減に貢献していく
・日本では最大限のクリーンエネルギー導入を図ること、また「再エネ容量を3倍にする」などの議長国UAEが掲げる目標に賛同する
・エネルギーの安定供給を確保したうえで、日本における排出量削減対策が行われていない火力発電所の新規建設を終了する
主要な論点やテーマ
COP28の主要論点と、それぞれの概要を簡単に解説します。
・グローバル・ストックテイク(GST)
気候変動対策の世界の進捗評価(GST)第1回目の完結と、成果物の発表
・緩和野心の向上
すべての締約国が2030年に「1.5度目標」と整合するよう、排出削減目標を設定することについての議論
・適応
COP26で採択された「適応」に関する世界全体での目標設定と作業計画の実施
・ロス&ダメージ
COP27で設置が決定した基金を含め、ロス&ダメージに対応するための新たな資金面の措置についての議論
・気候資金
気候資金における年間1,000億ドルの早期達成と、2025年以降の合同資金目標に関する議論
再生可能エネルギーの発電容量3倍へ。110ヶ国以上が合意
COP28では、2030年までに世界全体の再生可能エネルギー発電容量を3倍に引き上げ、かつエネルギー効率を2倍にすることに110ヶ国以上が同意しました。しかし、化石燃料を減らすための具体的な方法についての答えは出ておらず、今後議論を進めていく必要があるとしています。
排出削減について、対策がとられていない化石燃料の利用から段階的に廃止すべきであるという声が相次いだものの、各国で温度差もあることから成果が出るには至りませんでした。
アメリカは脱石炭連盟に参加すると表明
アメリカは脱炭素連盟に参加することを表明し、排出削減対策がとられていない火力発電所の新規開発を行わないことを発表しています。また、既存の火力発電所も段階的に廃止し、「1.5度目標」の達成に向けた取り組みを強化していくと述べました。
日本の岸田総理によるスピーチでは、火力発電所の新規建設を行わないことを表明している一方で、既存の火力発電所の廃止については明確にしていません。これにより、G7の中で脱炭素連盟に参加していない国は日本のみとなりました。
63ヶ国が冷房関連の温室効果ガス排出を大幅削減する誓約に参加表明
アメリカ・カナダ・ケニアなどの63ヶ国では、冷房に関する温室効果ガスの排出削減への目標「Global Cooling Pledge」に参加することを表明しました。Global Cooling Pledgeは冷房による温室効果ガス排出を抑制する目標であり、今回初めて世界共同で焦点を当てたものです。
目標は、2050年までに冷房関連排出量を22年度比で68%以上削減すること、2030年までにエネルギー性能の最低基準を確立することなどです。アメリカの気候変動問題担当であるケリー大統領特使は、「すべてのセクターで冷房関連の排出量を削減し、かつ持続可能な冷房を多くの人が使えるよう道筋を示したい」と述べています。
COP28の結果をもとに国をあげて最先端の取り組みが必要
COP28では、これまでよりさらに具体的に世界各国が取り組むべき対策が明確になりました。日本でも脱炭素に向けた取り組みは着実に進んでいるものの、稼働中の火力発電所の段階的な廃止など、今後取り組むべき課題は多くありそうです。
カーボンニュートラル実現に向けて、今後も国をあげて最先端の対策を世界と協力しながら行っていく必要があるでしょう。
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