バイナリー発電とは?仕組みやメリット・デメリットを解説

再生可能エネルギーのひとつである地熱発電の方法のひとつに、バイナリー発電があります。バイナリー発電とは、水よりも沸点が低い液体を沸騰させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回す方法です。

本記事では、バイナリー発電の詳しい仕組みや従来の地熱発電との違い、メリット・デメリット、将来性などについて解説します。環境問題に関心のある方や、自社の活動に生かしたいと考えている企業担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。

バイナリー発電とは?仕組みやメリット・デメリットを解説

White steam billows from the geothermal power plant in Hellisheidi, Iceland, contrasting with the snowy peaks of Iceland’s breathtaking winter scenery in this aerial

バイナリー発電とは?仕組みを解説

バイナリー発電とは、主に地熱発電で利用される発電方法を指します。地熱発電は火力発電や原子力発電と同様に、蒸気によってタービンを回し発電する方法です。

地熱発電では本来、マグマによって熱せられた熱水や蒸気が150℃以上なければ直接タービンを回すことはできません。そのため、水よりも沸点の低い媒体、例えばアンモニアやフロン、ペンタンなどを先に沸騰させ、その蒸気でタービンを回す方法が採用されています。これが、バイナリー発電です。

バイナリーとは、英語で「2つの」という意味があります。従来の方法では1つのサイクルで蒸気や熱水を利用していたのに対し、バイナリー発電では作動媒体である液体を沸騰させるサイクルと、その蒸気によってタービンを回すサイクルの2つがあることから、こう呼ばれています。

バイナリー発電で利用した熱水は、温度が低下したものを温泉や野菜の温室栽培などに再利用することも可能です。例えば、80℃の高温の温泉はそのまま温泉として利用できないため、本来であれば適温まで冷ましてから使う必要があります。しかし、バイナリー発電で熱水を使用すれば、温度は自動的に低下するため、効率的に温泉施設の運用が可能です。

バイナリー発電と地熱発電の違いは?

地熱発電は、火山の下で高温になったマグマの熱で熱せられた地熱流体を取り出し、タービンを動かす発電方法です。地熱発電には主に2通りの発電方法があり、そのひとつがバイナリー発電です。

地熱発電のもうひとつの方法として、フラッシュ発電があります。フラッシュ発電は200 ℃以上の蒸気で直接タービンを回す方法で、坑口付近の温度が200℃以上ある、高温の熱水や蒸気が得られる場所に適しています。

ただし、火山大国の日本といえども150℃以上の熱水を得られる場所はそう多くありません。バイナリー発電であれば、より低温で蒸気を作れるため、地熱発電をより広く活用することが可能となります。

バイナリー発電機はどこに設置される?

バイナリー発電所は、地熱を利用するため火山付近に設置することが一般的です。そのほか、製鉄所や清掃工場などに設置されるケースもあります。工場から出た排水や熱を利用して発電機を動かすことで、電気代の節約や資源の有効活用につなげることが可能です。

まれに、船舶にもバイナリー発電機を設置することがあり、排熱エネルギーを電気に変えて利用します。

バイナリー発電のメリット

バイナリー発電は、従来の地熱発電やその他の再生可能エネルギーと比較していくつかのメリットがあります。代表的なものとして、以下の3つが挙げられます。

低温度帯の熱や温水が有効活用できる

先述の通り、バイナリー発電では、水蒸気のみで発電するには温度が不十分である熱水や温水を利用します。日本には、温泉に適した温度やそれよりも高い温度の熱水が豊富に存在しますが、発電に使えるほど高温な熱水はそう多くありません。

バイナリー発電は水よりも沸点が低い液体を使うことから、地熱流体が最低70℃程度あればタービンを回せる蒸気を作れます。つまり、これまで活用できなかった温水や熱水を有効利用することが可能です。

また、バイナリー発電で熱水を使用する際、温泉に利用するには高温すぎる熱水も自動的に冷やされ、適温に近づきます。バイナリー発電を温泉地で活用すれば、一石二鳥の効果を得られるでしょう。

従来の地熱発電よりも開発が容易

バイナリー発電は、従来の地熱発電で必要とされる大規模な設備が不要です。火山大国の日本では、地熱発電は大きなポテンシャルを秘めています。それでもなかなか普及が進まない背景には、設備の開発費用が高いことが原因として存在していました。

しかし、バイナリー発電で必要とされる設備には大掛かりな掘削が少ないため、費用や工期が短く、温泉施設などにも併設できます。山が多く平らな土地が少ない日本において、バイナリー発電は地熱発電の拡大に大いに貢献するでしょう。

時間や季節を問わず安定して出力できる

バイナリー発電に限らず、地熱発電は再生可能エネルギーの中でも安定的に電気を供給できる発電方法です。

例えば、太陽光発電は日照時間によって発電量が左右されるため、夜間に発電できないことはもちろん、天候や季節によっても発電量が左右されてしまいます。また、風力発電は風車が回ることで発電するため、風がないときは発電できず、安定的な電力供給が難しい一面があります。

その点、地下の熱を利用する地熱発電は、天候の条件もなく、夜間でも電気を生み出すことができるため、安定した出力が可能です。火力発電や原子力発電と同様に、需要と供給を一致させやすい地熱発電は、今後主力電源となっていくことも期待されています。

バイナリー発電のデメリット

大きな可能性を秘めているバイナリー発電ですが、もちろんデメリットも存在します。例えば、従来の地熱発電や火力発電などと比較すると、発電効率が低いことです。

バイナリー発電では、低い温度で沸騰した液体の蒸気でタービンを回します。液体が気化する際にも熱源を必要とするため、発電するために必要な熱量が減り、タービンの回転が遅くなりやすいでしょう。

また、媒体として利用するアンモニアや代替フロンなどの液体は、有害であったり、引火性があったりするものが多いため、安全性に配慮することが求められます。発電設備の故障などが起きた際には、近隣住民や環境に害を及ぼすリスクもあるため、管理体制をととのえ、安全対策を万全にしておくことが不可欠です。

日本でバイナリー発電は普及している?

日本では、2006年にはじめて大分県でバイナリー発電所が設置されて以降、全国各地にバイナリー発電所が設置されています。例えば、以下のような施設です。

・土湯温泉バイナリー発電所

福島県の温泉地にあるバイナリー発電所で、発電後の温水は旅館の温泉やエビの養殖事業に再利用されています。 

・森バイナリー発電所

北海道の地熱発電所でバイナリー発電を同時に行っています。

・JFEエンジニアリング千葉工場バイナリー発電所

千葉県の製鉄所で発生する排熱を利用し、最大1,000kWの出力を行っています。

このように、バイナリー発電所は徐々に拡大しているものの、現時点では大きく普及が進んでいるとはいえない状況です。資源エネルギー庁によれば、2016年時点における発電施設容量は合計約53万kWと、国内の電力需要の0.3%程度にとどまっています。

参照:経済産業省資源エネルギー庁|知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ「地熱発電」

バイナリー発電には将来性がある

日本は世界でもアメリカ、インドネシアに続く第3位の地熱資源を誇っており、潜在的なバイナリー発電の発電容量は2,347万kWにものぼります。この資源を有効活用できれば、バナリー発電が将来的に主力電源となる可能性も十分に考えられるでしょう。

地熱発電は、環境への負荷が少ないことはもちろん、温泉やその他の事業にも活用できるなど地域の活性化にもつながる発電方法です。なかでもバイナリー発電は設備の導入に広大な土地を必要としないことから、日本で取り組みやすい再生可能エネルギーのひとつであるといえます。

参照:経済産業省資源エネルギー庁|知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ「地熱発電」

できることから脱炭素に取り組もう

バイナリー発電は国内の地熱資源を有効活用し、かつ安定的に電力を供給できるメリットの大きい発電方法です。現時点では火力発電が主力電源である日本ですが、今後はバイナリー発電を拡大していくことで、再生可能エネルギーによって安定的に電力を確保できるようになることが期待されます。

バイナリー発電以外にも、環境負荷の少ない発電方法はいくつかありますが、なかでも太陽光発電は個人や企業で導入しやすい方法です。アイ・グリッド・ソリューションズでは、屋根上太陽光発電のPPAサービスをはじめとする、企業や地域社会の脱炭素化を進めるサービスを展開しています。脱炭素への取り組みをはじめる際は、まずはアイ・グリッド・ソリューションズまでご相談ください。

 

▷関連記事

火力発電のデメリットとは?メリットも含めてわかりやすく解説

地熱発電とは?メリット・デメリットを分かりやすく解説!

日本での発電量割合は?再生可能エネルギーは普及している?

 

▷アイ・グリッド・ソリューションズ関連はこちらをチェック

 

シェア