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火力発電のデメリットとは?メリットも含めてわかりやすく解説

日本では、発電方法の8割以上を火力発電に頼っています。安定的に電力を供給できるなどのメリットもある一方で、地球全体に関わる大きな問題も抱えています。この記事では、火力発電のデメリットや課題について、メリットも含めて解説しているので、ぜひ参考にしてください。

火力発電とは?

火力発電

火力発電とは発電方法の一つで、化石燃料を燃やしてできたエネルギーによって発電するシステムです。日本では、複数の発電方法の中で火力発電による発電がもっとも多くの割合を占めています。火力発電は細かく分けるとさらに4つの方法があり、その中でもメジャーなのが「汽力発電」といわれるものです。

汽力発電とは、化石燃料を燃やして蒸気を発生させ、その蒸気を発電機につながったタービンにぶつけて羽を回すことで、エネルギーを生み出す方法です。発生した蒸気は復水器で冷却され水に戻り、再び蒸気となってタービンを回すために使われます。

汽力発電の他には、化石燃料を燃やした際の燃焼ガスでタービンを回す「ガスタービン発電」や、気力発電とガスタービン発電を組み合わせた「コンバインドサイクル発電」などがあります。

また、非常用電源などの小規模な発電に利用される「内燃発電」といったものもあるのが特徴です。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を介して化学エネルギーを機械エネルギーに変換することで、発電機を回します。

火力発電のメリット

火力発電は日本国内において広く採用されている理由を紹介します。

安定的な発電が可能

火力発電は燃料を燃やして発電するため、天候に左右されることなく、燃料さえあれば安定的に供給ができます。降水量によって左右される水力発電や、天気や風量によって左右される太陽光発電、風力発電に比べると、必要な電気量をしっかり確保できることがメリットです。

原子力発電も供給の安定性といった意味でメリットは大きいですが、2011年の東日本大震災以降、原子力発電所の稼働が縮小されているという現状があります。十分な電力を生産するには、火力発電の力が現時点では不可欠といえるでしょう。

エネルギーの変換効率が高い

火力発電はエネルギーの変換効率が高いこともポイントです。エネルギーの変換効率とは、発生させたエネルギーを電気に交換できる割合を指します。変換効率が高ければ高いほど、無駄を出さず効率的に電力として活用できるということです。

関西電力の資料によると、エネルギー変換効率が一番高いのが水力発電で80%、続いて変換効率が高いのが55%の火力発電(LNG)とされています。

参照:水力発電の概要 役割・特徴|関西電力

出力調整が柔軟にできる

電気の出力をコントロールしやすいことも、火力発電の特徴です。電気は真夏や真冬に需要が大きくなるなど、季節によっても使用量が大きく異なります。必要なときに必要な分だけ供給できることは、電気のロスを減らすことにもつながります。また、電力が不足するという事態も避けることが可能です。

太陽光発電や風力発電などの自然に頼った発電方法の場合、天候によって発電量が左右されるためすぐに電気量を増やすことができません。電化製品や精密機器などあらゆるものに電気が使われている現代では、電気が不足しないことも重要なポイントといえるでしょう。

狭い土地でも発電所が建設できる

火力発電所は比較的狭い土地でも建設できるため、コストが低く工期が短いといった点もメリットとして挙げられます。水力発電や風力発電、原子力発電は広大な敷地を必要とするほか、住民の理解に時間がかかったり、地方にしか建てられなかったりと、さまざまな制約が出てしまうのが難点です。

狭い敷地に建てられる火力発電は、送電による電気のロスを抑えやすいという特徴もあります。

 

火力発電のデメリット

メリットの多い火力発電ですが、それ以上に大きなデメリットもあります。以下では、火力発電の問題点を3つ紹介します。

地球温暖化の原因になる二酸化炭素を大量に排出する

火力発電の最大のデメリットといえるのが、二酸化炭素の排出量が多いことです。地球温暖化対策として全世界で二酸化炭素削減に取り組む中、火力発電は地球温暖化を促進させる大きな要因となってしまいます。

日本はパリ協定において、2030年までに2013年比で26%の二酸化炭素削減を目標に掲げています。しかし、このまま火力発電を続ければ、パリ協定の目標達成には遠ざかっていく一方です。

原子力発電の利用に制限がかかっている中、安定的に電気を供給するには、火力発電の力が不可欠といえます。原子力発電の安全性に関するデメリットと、火力発電の二酸化炭素排出量に関する問題のはざまで、今後どのように電力を供給していくかが大きな課題となるでしょう。

燃料を輸入に頼っているため価格変動が激しい

火力発電の原料となる化石燃料は日本国内で採ることができないため、ほとんどを海外からの輸入に頼っています。そのため、国際情勢によって急激な価格変動が起こりやすいこともデメリットの一つ。2022年4月現在起こっているロシアとウクライナの戦争においても、電気代やガソリンの価格が高騰するなど各家庭へダイレクトに影響を与えています。

国際情勢は日本国内で調整できるものではなく、いつ何が起こるか予測することも難しいのが現状です。何か問題が起こり燃料が輸入できなくなれば、電力不足に直結してしまう点は大きなデメリットといえるでしょう。

燃料資源が有限なため枯渇の恐れがある

火力発電の原料である化石燃料は、地球が長い年月をかけてつくりあげた有限な資源です。このまま使い続けていれば、いずれなくなるときがやってきます。現時点では、この先50年程度で化石燃料が枯渇するのではないかとされており、今から対策を練っておくことが重要です。

日本の火力発電の現状や課題

現在日本では、火力発電による電気の生産がもっとも多いのが現状です。昔はさらに火力発電の比率が高く、1973年のオイルショック時には化石燃料依存度が94%ありました。

その後、原子力発電や再生可能エネルギーの開発が進み、化石燃料依存度が81.2%まで減少。しかし、2011年の東日本大震災で原子力発電の安全性が疑問視されるようになり、再び火力発電の割合が87.4%まで増加しました。

世界が「脱炭素」や「カーボンニュートラル」というキーワードに向かって進む中、このまま火力発電を続けることは好ましくないのは明らかです。また、今回のロシアによるウクライナ侵攻のように、いつ国際情勢が悪化するかもわからない状況で、化石燃料に依存し続けるのも危険でしょう。

燃料を輸入に頼り切っている国である以上、火力発電を少しづつでも減らしていく対策を考える必要があります。

参照:2019—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|経済産業省

まとめ

火力発電のメリット・デメリットや、今後の課題について解説しました。地震が多く土地の広さにも限りがある日本では、火力発電のメリットが大きいことも否定できません。

しかし、環境問題や価格変動の問題を考慮すると、このまま火力発電を続けていくことは現実的ではないといえます。火力発電の割合を徐々に減らすとともに、再生可能エネルギーなどの選択肢を増やしていくことが、今後の大きな課題といえそうです。

 

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