【SDGs】持続可能な社会とは?必要とされる取り組みと課題

「持続可能な社会」という単語をよく目にするようになったと感じている人も多いのではないでしょうか。地球環境や将来の世代のために、持続可能な社会を目指すことは非常に重要です。

本記事では、持続可能な社会の定義や、日本や世界でおこなわれている取り組みについて詳しく解説します。わたしたち一人ひとりができる取り組みも紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

持続可能な社会とは?

持続可能な社会とは、現在の世代の要求を満たしながら、将来の世代が必要とする地球環境や自然を損なわない社会のことです。1987年に当時のブルントラント・ノルウェー首相が公表した概念で、「環境と開発は共存し得るもの」として環境に配慮した節度のある開発が重要という考え方が元になっています。

技術の発展によって豊かで便利な暮らしができていますが、そのために地球環境の悪化を招いているという現状があります。例えば、温室効果ガスの排出量の増加によって地球の平均気温が上昇し、大きな問題となっています。このままの状態が続けば、将来世代の暮らしに深刻な影響をもたらすでしょう。それは避けなければなりません。

しかし、地球環境のために今すぐすべての社会活動や経済活動を止めることは困難です。そこで、現在の世代の暮らしを維持しながら、将来の世代も地球で安全に暮らし続けられる「持続可能な社会」という考え方が注目されています。

地球の課題「SDGs(持続可能な開発目標)」について

持続可能な社会を目指すために立てられた具体的な目標が、「SDGs(持続可能な開発目標)」です。SDGsは2015年の国連サミットで採択された、世界的な取り組みです。

SDGsは17のゴールと169のターゲットが設定されていて、2030年までに達成を目指しています。具体的なゴールの内容は、以下のとおりです。

ゴール 概要
1.貧困をなくそう 世界中で極度に貧しい暮らしをしている人をなくす
2.飢餓をゼロに だれもが安全で栄養のある食料を手に入れられるようにする
3.すべての人に健康と福祉を 伝染病や予防できる病気を減らし、すべての人が基礎的な保健サービスを受けられるようにする
4.質の高い教育をみんなに 性別を問わず、すべての子どもが質の高い教育を受けられるようにする
5.ジェンダー平等を実現しよう すべての女性に対するあらゆる差別をなくす
6.安全な水とトイレを世界中に だれもが安全な水とトイレを使えるようにする
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 再生可能エネルギーの割合を増やし、エネルギー効率をよくする
8.働きがいも経済成長も それぞれの国の状況に応じて、経済的な豊かさを目指す
9.産業と技術革新の基盤をつくろう 持続可能な産業化をすすめ、雇用とGDPに占める農業・漁業など以外の割合を増やす
10.人や国の不平等をなくそう 差別的な法律や政策をなくし、人びとの格差を減らす
11.住みつづけられるまちづくりを すべての国で持続可能なまちづくりをすすめ、安全な家に安い値段で住めるようにする
12.つくる責任つかう責任 ごみや捨てられる食料を減らし、環境に害を与えないようにする
13.気候変動に具体的な対策を それぞれの国で気候変動への対応を政策に入れる
14.海の豊かさを守ろう あらゆる海の汚染を防ぎ、海の生態系を回復させる
15.陸の豊かさも守ろう 陸や淡水地域の生態系や森林などを回復させる
16.平和と公正をすべての人に あらゆる形の暴力や拷問をなくし、法律によって平等にものごとを取り扱うようにする
17.パートナーシップで目標を達成しよう 発展途上国への国際的な支援を行う

 

SDGs(持続可能な開発目標)における問題点3つ

SDGsの実現を目指すのは重要なことですが、簡単に達成できるものではありません。SDGs実現への問題点として、以下の3つが挙げられます。

  • 社会全体で取り組むテーマが多い
  • 先進国に取り組みが偏っている
  • 進捗状況に遅れがある

それぞれの問題点について、詳しくみていきましょう。

社会全体で取り組むテーマが多い

SDGs実現のために、個人でできることに取り組むのは非常に重要なことです。ごみやフードロスを減らすなど、個人で取り組める目標もあります。しかし、設定された17のゴールの多くは社会全体で取り組むべきテーマで、個人の活動だけでは難しいのが現実です。

例えば、貧困や飢餓をなくしたりジェンダー平等を実現したりするのは、個人では難しいでしょう。国や社会が一丸となって取り組まなければ、実現は困難です。

また、目標が壮大でそもそも実現が難しいテーマがあるという問題もあります。例えば「1.貧困をなくそう」のターゲットのひとつに「1日1.25ドル未満で生活する人々を2030年までにゼロにする」ことが挙げられていますが、難易度は非常に高いです。

先進国に取り組みが偏っている

SDGsのための取り組みのなかには、発展途上国だけでは対応が難しいものも少なくありません。先進国に取り組みが偏っているのも、SDGsの問題点のひとつです。

例えば、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの導入には、莫大な費用がかかります。新しい技術を取り入れるためには費用がかかり、国によってはSDGsより自国の経済成長を優先させたい場合もあるでしょう。

また、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」のターゲットとして、発展途上国への支援が含まれています。先進国では自国内での取り組みに加えて、他国への支援にも力を入れなければなりません。

進捗状況に遅れがある

SDGsは、全体の進捗に遅れが出ています。その原因のひとつが、新型コロナウイルス感染症の流行です。国際連合広報センターの「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」では、新型コロナウイルス感染症の流行によって、この数十年で初めて極度の貧困が増加したと記載されています。

また、アフガニスタンのタリバン政権では女性の活動が制限されていたり、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が発生したり、世界ではSDGsの達成を遠ざけるような出来事が起きているのが現状です。

SDGsの進捗は定期的にモニタリングが行われていて、国ごとの進捗度ランキングが発表されています。

2020年のランキングでは日本は17位でアジアでトップですが、ジェンダー教育など評価が低い項目もあります。ランキングでは先進国が上位、貧困状態や経済格差が大きい国は下位となっている傾向があり、さまざまな事情でSDGsの進捗に遅れが出ていることがわかります。

参考:JICA「より良い世界にするためのみんなの目標「SDGs」

持続可能な社会のための具体的な取り組み例【日本編】

ここからは、持続可能な社会のために行われている具体的な取り組みをみていきましょう。

はじめに、外務省が発行する「持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組」のなかから、日本で行われている4つの取り組みを紹介します。

3.保健

「3.すべての人に健康と福祉を」を達成するための取り組みとして、日本では2015年9月に「平和と健康のための基本方針」を策定しました。この方針ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取り組みを中心としています。

UHCとは、「すべての人が保健医療サービスを負担可能な費用で受けられる状態」を指していて、SDGsのターゲットのひとつにもなっています。2017年に東京で開催された「UHCフォーラム2017」では、2030年までにUHC達成のための取り組みを加速させるために「UHC東京宣言」が採択されました。

同フォーラムで日本は「エイズ・結核・マラリア患者の命を救い、約130万人の子どもたちへの予防接種を実施する」など、他国への支援も表明しています。

4.教育

「4.質の高い教育をみんなに」を達成するために、日本政府は「平和と成長のための学びの戦略」を策定しました。この戦略には、以下の3つの基本原則が定められています。

  • 包摂的かつ公正な質の高い学びに向けての教育協力
  • 産業・科学技術人材育成と社会経済開発の基盤づくりのための教育協力
  • 国際的・地域的な教育協力ネットワークの構築と拡大

引用:外務省「平和と成長のための学びの戦略

基本原則にはそれぞれ4つの重点分野が定められていて、紛争のある国や貧困地域の人々への支援や、理数科教育・工学教育への支援、国際機関との連携などが盛り込まれています。

日本はSDGsの進捗レポートで教育に関して評価されており、他国への支援を盛り込んだ戦略や宣言を発表しています。

5.女性

「5.ジェンダー平等を実現しよう」を達成するため、日本政府は2016年に「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表しました。

この戦略には「女性と女児の権利の尊重」「女性の能力発揮のための基盤整備」などが盛り込まれていて、インフラ整備や女子教育の拡大といった女性の活躍推進を目指しています。

これらを実現するため、2016〜2018年の3年間で女性行政官の育成や女子生徒の学習環境の改善、途上国の女性の活躍推進のために総額30億ドル以上の支援などを実施しました。

また、2018〜2020年の3年間で途上国の女性たちへ質の高い教育や人材育成の機会を提供するという表明も出していて、女性の教育や活躍推進のために積極的な支援を行っています。

11.防災

「11.住み続けられるまちづくりを」の達成のために、過去の自然災害の経験で培った知識や技術を活かして積極的な支援を実施しています。緊急時の援助はもちろん、事前の防災対策や災害復旧復興も支援しているのが特徴です。

これまで積極的に国際防災協力を推進してきた日本は、国連防災世界会議の第1回から第3回まで続けてホスト国となりました。2015年に開催された第3回国連防災世界会議は仙台で行われ、採択された「仙台防災枠組2015-2030」には日本政府の主張が多く取り入れられています。

また、各国に対して津波に対する意識啓発を呼びかけ、2015年の国連総会では11月5日を「世界津波の日」とする決議が採択されました。このように、自然災害の多い日本は、過去の経験を活かして「災害に強い世界」を目指した支援を進めています。

持続可能な社会のための具体的な取り組み例【世界編】

続いて、世界での取り組みをみていきましょう。SDGsは世界的な取り組みなので、当然ながら日本以外の国でもさまざまな取り組みが進められています。

ここでは、フランス・ドイツ・アメリカが実施している取り組み内容を紹介します。

フランス

フランスではSDGsが採択される前から、持続可能な社会のための取り組みを進めていました。SDGsのゴールの達成のために、これまで以上に対策を強化しています。

力を入れている取り組みのひとつが、プラスチックの廃棄物削減です。フランスでは海洋プラスチックごみを減らすため、他国に先駆けて使い捨てプラスチック製品の使用を禁止していました。

ストローやカトラリーなどは日本でも脱プラスチックが進められていますが、フランスではこれらだけでなく、2022年からティーバッグや無料の付録おもちゃなども使い捨てプラスチックの使用が禁止となりました。

そのほか、ファッション業界での取り組みも注目されています。パリでは古着市が盛んで、衣類用のリサイクルポストを設置してエコ素材として再利用するなど、衣類をごみにしないための取り組みも進められています。

ドイツ

ドイツもフランス同様に、持続可能な社会の実現のために長年取り組んできた国のひとつです。

ドイツでは、再生可能エネルギーの拡大に力を入れています。2022年3月に公開された「再生可能エネルギー法」の改正案では、2035年には国内の電力をほぼ100%再生可能エネルギーによって賄うことを目指す方針が示されました。

電力だけでなく、日用品の分野でもさまざまな取り組みが進められています。

例えば、ドイツの大手スポーツ用品メーカーのアディダスは海洋環境保護団体と提携し、海岸地域で回収されたプラスチック廃棄物を活用したスニーカーなどを製造し、販売しています。

アメリカ

アメリカは、トランプ大統領が2019年に気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」を離脱したことが大きな話題となりました。しかし、バイデン大統領が就任直後にパリ協定への復帰を決定し、2021年2月に正式に復帰が認められています。2021年4月に開催された気候変動サミットでは、アメリカが2030年までに二酸化炭素排出量を50〜52%削減することを約束しています。

また、パリ協定離脱中も、各州や企業では継続して持続可能な社会への取り組みが進められていました。例えばハワイ州は、再生可能エネルギーの利用などに取り組んでいます。ほかにも、ニューヨーク市では二酸化炭素排出量削減の実績を上げるなど、個別の取り組みも進められています。

持続可能な社会のためにわたしたちができること

持続可能な社会のためには国や社会全体で取り組むことが大切ですが、個人でもできることはたくさんあります。

最後に、持続可能な社会のためにわたしたち一人ひとりができることを紹介するので、ぜひ実践してみてください。

プラスチックの使用を減らす

近年、海に流出するプラスチックごみの問題が深刻で、海の汚染を防ぐことはSDGsのゴールのひとつにもなっています。

プラスチックごみを減らすために、使い捨てプラスチック製品の使用を減らしましょう。具体的な行動として、以下のようなものがあります。

  • エコバッグを活用してレジ袋の使用を控える
  • マイボトルを持参してペットボトル飲料の購入を控える
  • 紙ストローなどプラスチック以外の素材のものを使う

家電を見直す

2019年の環境省の調査では、世帯あたりの年間CO2排出量のうち65.3%が電気の使用に伴うものだったという結果が出ています。

そのため、普段の生活で温室効果ガスの排出量を削減するには、省エネを意識した家電の見直しが効果的です。電力の消費を抑えるために、以下のことを実践してみてください。

  • 省エネ家電に買い換える
  • エアコンの設定温度を調節する
  • 照明をつけっぱなしにしない

参考:環境省「令和2年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査結果の概要(確報値)」

電力会社を見直す

日本の主なエネルギー源は、石炭や石油などの化石燃料です。

化石燃料を用いた発電は温室効果ガスを排出するので、家庭で使用する電力に再生可能エネルギーを選ぶことも、持続可能な社会のためにわたしたちができることのひとつです。

家庭で再生可能エネルギーを使用するには、以下の方法があります。

  • 再生可能エネルギーを供給する電力会社に切り替える
  • 太陽光パネルを設置する

ここまで紹介してきたように、個人でも取り組めることはたくさんあるので、ぜひ毎日の暮らしに取り入れてみてください。

また、個人だけでなく企業でも持続可能な社会のための取り組みを進めています。例えばエネルギー事業を展開しているアイ・グリッド・ソリューションズでは、商業施設や物流施設の屋根に太陽光発電設備を取り付け、自然環境を壊すことなく再生可能エネルギーを生み出しています。

発電した電気は施設で使用するだけでなく、余剰電力を他店舗や周辺家庭で有効活用できる仕組みも構築しており、この取り組みは環境省主催のグッドライフアワードで「環境大臣賞 最優秀賞」を受賞しました。

関連記事:アイ・グリッド・ソリューションズ 環境省「第9回グッドライフアワード」環境大臣賞 最優秀賞を受賞

まとめ

将来の世代に負担を強いないよう、持続可能な社会の実現を目指すことは今を生きるわたしたち一人ひとりの責任であるともいえます。SDGsの達成は個人での活動だけでは困難ですが、だからといって個人が何もしなくていいということではありません。

持続可能な社会のために、個人や家庭で取り組めることは多くあります。本記事で紹介したように、プラスチックの使用を減らしたり再生可能エネルギー由来の電力に切り替えたり、できることから始めてみましょう。

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