ペロブスカイト太陽電池とは?メリットやデメリットを含め簡単に解説
太陽電池と聞くと、工場の屋根や広大な土地にずらりと設置された大きなパネルを想像される方が多いでしょう。そのような従来からあるシリコン太陽電池に代わり、近年注目されているのがペロブスカイト太陽電池と呼ばれるものです。
薄くて軽く、設置場所を選ばないといった、これまでの太陽光パネルとは異なる特徴を持つペロブスカイト太陽電池は、再生可能エネルギー拡大の切り札となるのでしょうか。ここでは、ペロブスカイト太陽電池の概要やメリット、課題などを解説します。再生可能エネルギーの導入をお考えの企業の方も、ぜひ参考にしてください。
ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ化合物を用いた太陽電池を指します。軽量で折り曲げ可能などの特性を持つことから、設置する場所を選ばないなどのメリットがある太陽電池です。
まず、ペロブスカイト太陽電池は印刷や塗布で製造できることや、シリコン太陽電池よりも少ない材料で製造できることから、低コスト化が期待できます。また、ガラスや貴金属を使用しないため、重さをシリコン太陽電池の10分の1程度まで軽くできることもポイントです。ペロブスカイト太陽電池は、その曲げやすさも特徴で、形を変形して設置することもできます。
これまで、太陽光パネルというと、屋根の上や広い土地に設置することが通常でした。ペロブスカイト太陽電池であれば、建物の壁や窓、電気自動車、衣類やバッグなど、さまざまなものに取り付けることが可能です。
ペロブスカイトについても詳しく理解しておこう
ペロブスカイト太陽電池について理解を深めるには、そもそもペロブスカイトとは何なのかを知っておく必要があります。ペロブスカイトとは、「灰チタン石」という鉱物のことで、灰チタン石は特殊な結晶構造を持っています。この特殊な結晶構造を持つものを、総称してペロブスカイトと呼んでいます。
ペロブスカイトは、力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である圧電材料として、ガスコンロの自動点火装置などに使われています。このペロブスカイトを応用して、ペロブスカイト構造を持つ有機ハロゲン化鉛を用いることで太陽電池の開発に成功したのが、宮坂力教授率いる、桐蔭横浜大学の研究グループです。
ペロブスカイト太陽電池は再エネ拡大の切り札!主なメリットを解説
ペロブスカイト太陽電池が普及すれば、再生可能エネルギーの拡大に大いに貢献することが期待できます。ペロブスカイト太陽電池の3つのメリットを詳しくみていきましょう。
柔軟で薄く軽量。さまざまな箇所に設置できる
ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽量、かつ折り曲げられる特徴があるため、これまで太陽光パネルを設置することが難しかった場所にも簡単に設置できるようになります。従来のシリコン太陽電池は大きくて重さもあり、硬くてかさばる特徴から、設置箇所が限定的でした。
一方で、フィルムのように薄くて軽いペロブスカイト太陽電池であれば、建物の屋根はもちろん、建物の壁や窓、車、宇宙空間、ドローン、衣服など、あらゆるものを発電場所として活用できるようになります。
材料費や製造費を抑えて低コスト化が図れる
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン太陽電池と比較して材料費や製造費が少なく、低コストで作れることもメリットです。
まず、ペロブスカイト太陽電池は印刷技術や塗布によって大量生産が可能なため、製造にかかる時間短縮やコスト削減が期待できます。また、ペロブスカイトは厚みが31マイクロメートルほどと大変薄く、材料も従来の20分の1程度で製造できるとされており、材料費の面でも低コスト化を図れます。
ペロブスカイト太陽電池は、シリコン太陽電池のように、材料に希少性の高い金属を使わないことも特徴です。日本で入手しやすいヨウ化鉛やメチルアンモニウムを使用するため、材料費や輸入コストを抑えることにもつながります。
また、シリコン太陽電池を屋根の上に設置する際は架台が必要ですが、ペロブスカイト太陽電池では不要なため、部品や設置コストも抑えることが可能です。
材料を日本国内で調達可能。エネルギー自給率の向上につながる
ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素は、日本国内で十分な量を調達できることもポイントです。世界におけるヨウ素の生産量は日本が第2位、シェア率は29%です。推定埋蔵量にいたっては、世界1位といわれています。
ペロブスカイト太陽電池を作るための材料が国内で手に入れば、輸入に頼る必要がなくなるため、世界情勢や為替にかかわらず安定的に生産することができます。
火力発電が主流である日本においては、発電の原料となる化石燃料を輸入に頼っており、エネルギーの自給率が低いことが課題の1つです。ペロブスカイト太陽電池が広まることで、再生可能エネルギーの普及に大きく貢献することはもちろん、エネルギー危機の回避にもつながっていくでしょう。
ペロブスカイト太陽電池が普及しない理由やデメリット、課題は?
ペロブスカイト太陽電池はメリットの多い太陽電池ですが、デメリットや課題も存在します。
例えば、性能が安定しない点です。ペロブスカイト太陽電池は紫外線や湿度などの外的要因の影響を受けやすく、劣化しやすい特性を持ちます。開発当初に発表された寿命は5年とされ、耐用年数が20年程度であるシリコン太陽電池と比較すると寿命が短いことが課題でした。
材料に少量の鉛が使われているため、万が一外部に流出した場合の安全性も懸念点の1つです。今後、鉛を使用しないペロブスカイト太陽電池の開発が求められます。
ただし、開発が進むに連れてこれらのデメリットは解消されつつあります。耐久性に関しては、10年以上の耐久性を持つ製品の開発が国内メーカーによって進められているところです。
また、開発当初はエネルギー変換効率が3%程度と、シリコン太陽電池の変換効率と大きくかけ離れていたペロブスカイト太陽電池ですが、近年ではシリコン太陽電池に迫る14〜20%程度のエネルギー変換効率を実現しています。
ペロブスカイト太陽電池の普及に向けた現状の動きは?
国内のエネルギー自給率アップの鍵ともいえるペロブスカイト太陽電池ですが、実際に普及に向けた動きは進んでいるのでしょうか。2024年5月時点の現状を解説します。
政府がすでに活用を後押ししており、複数企業が開発を実施中
国内では、ペロブスカイト太陽電池の産業化に向けて政府が取り組みを後押ししています。2021年に「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」が立ち上げられ、2030年度までに一定条件下において14/kWh以下の発電コストを達成することが目標として掲げられました。
ペロブスカイト太陽電池の導入が予定通り進めば、2030年には年間約60トン、2050年には年間約1億トンのCO2削減効果が見込まれます。
実際に、政府の支援を通じて複数企業がペロブスカイト太陽電池の開発に取り組んでいます。例えば、積水化学工業では、ビルの壁面や小さな屋根に設置できるフィルム型の太陽電池を開発しています。東芝では、メニスカス塗布という印刷技術を用いて、エネルギー変換効率の高さと生産過程のスピーディーさの両立を目指した製品の製造に取り組んでいます。
また、株式会社カネカでは、建材と一体型のペロブスカイト太陽電池の開発に向けて、シリコン太陽電池の技術を使った技術開発に着手しているようです。
参照:経済産業省
今後は量産技術の確立や生産体制の整備、需要の創出が急がれる
ペロブスカイト太陽電池は日本で発明された技術であるものの、すでに中国やイギリスなどの海外でも急速な開発が進んでおり、量産化の動きも見られます。日本が海外との競争に勝ち抜くためには、2030年よりも早い段階で社会実装が必要な状況です。
政府は「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」において予算を追加するなど、基盤技術の開発や、量産技術の確立を急いでいます。また、ペロブスカイト太陽電池の産業化を確立するためには、導入目標の策定やビジネスモデルの普及など、需要を創出することも今後重要な課題です。
ペロブスカイト太陽電池を世界的に普及させるため、性能を評価するための国際標準化に向けた動きも進んでいます。国内での実装はもとより、世界への普及に向けた取り組みにも力を入れていかなくてはなりません。
ペロブスカイト太陽電池の導入にはPPAモデルの活用がおすすめ
ペロブスカイト太陽電池は開発段階であることや、実用化されて間もない新しい太陽電池であることから、一般企業が導入する際はPPAモデルを活用するのがおすすめです。
PPAモデルとは、発電事業者が所有する太陽光設備を、需要家である企業が自社で保有する敷地に設置するモデルを指します。設備を購入する必要がないため、初期費用をかけずに太陽光発電を導入できる点がメリットです。
現時点で導入費用が高額なことが課題であるペロブスカイト太陽電池は、PPAモデルを活用することで導入しやすくなるでしょう。
また、ペロブスカイト太陽電池は設置場所を選ばないため、より効率的に電力を発電することが可能です。大量に電気を生産することが期待できるため、今後は蓄電池の需要も高まっていくことが予想されます。
アイ・グリッド・ソリューションズのGXソリューション事業では、お客さまの状況に合わせて、屋根上はもちろん、カーポートへの太陽光パネル設置、蓄電池やEV導入など、様々な角度から脱炭素経営のサポートが可能です。再生可能エネルギーの導入を検討されている企業の方は、ぜひ一度アイ・グリッド・ソリューションズまでご相談ください。
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