【比較】「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の違いは?それぞれのメリットを紹介
電気事業者が無償で太陽光発電設備を設置し、発電した電気を企業や個人が購入して使うPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)が普及してきています。しかしPPAにはいろいろな種類があり、用語の違いがよくわからなくなる方も多いのではないでしょうか。「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の違いもその1つです。
今回は「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」の違いとは何か、それぞれの概要、メリット・デメリットなどを、わかりやすく解説します。具体的な企業事例も紹介していますので、読み終わればオンサイトPPAとオフサイトPPAの違いを理解したうえで、導入計画のイメージが持てるようになるはずです。
オンサイトPPAとオフサイトPPAの違いを比較
オンサイトPPAとオフサイトPPAは、需要家(企業や団体など)が発電事業者から再生可能エネルギーを長期購入する契約です。発電事業者が所有する発電所がオンサイト(自社)の場合はオンサイトPPA、オフサイト(敷地外)の場合はオフサイトPPAと呼ばれており、以下のような違いがあります。
オンサイトPPA | オフサイトPPA | |
供給方法 | 発電事業者→需要家 | 発電事業者→小売電気事業者(一般送電網)→需要家 |
設置場所 | 自社敷地内 | 自社敷地外(遠隔地) |
設置スペース | 必要 | 不要 |
初期費用 | 不要 | |
メンテナンス・管理費用 | 不要 | |
発電規模 | 小規模~中規模 | 中規模~大規模 |
発電量の増量 | 設置スペースによって限りがある | 増量しやすい |
電気料金 | 必要(安め) | 必要(高め) |
再エネ賦課金 | なし | あり |
非常用電源としての利用 | しやすい | しにくい ※一般送電網を経由するため |
補助金制度 | 環境省「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」 各自治体の補助金制度 | 環境省「オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電供給モデル創出事業」 ※2022年8月現在で終了済み |
契約期間 | 15年~25年程度 |
次項からは、上表の違いを具体的に理解できるように、オンサイトPPAとオフサイトPPAの概要、メリット・デメリット、導入事例を解説していきます。
オンサイトPPAとは?
オンサイトPPAとは、発電事業者(PPA事業者)が需要家の敷地内に発電設備を設置して、電気を提供する仕組みです(以下の図参照)。
引用:初期投資での自家消費型太陽光発電設備の導入について ~オンサイトPPA と リース~|環境省
電気を利用するまでの流れは以下のとおりです。
1.需要家が発電のための敷地を貸す
2.発電事業者が太陽光発電設備を設置して、その後のメンテナンスや管理も請け負う
3.需要家が電気を使う
4.利用した電気量に応じて需要家が発電事業者に料金を支払う
オンサイトPPAが向いているのは、自社敷地内に発電所を設置する十分なスペースがあり、費用をかけずに太陽光発電設備を導入したい企業です。脱炭素化や電気料金の変動リスク回避、非常用電源としての活用などの取り組みを、コスト面の負担なく実現できます。
ただし自社の施設内とはいえ、太陽光発電設備の所有権は発電事業者にあるため、契約中は発電しなければなりません。したがって自社の建て替え予定が15年~25年間程度ないことが条件になります。
メリット
ここではオンサイトPPAの主なメリットを5つ紹介します。
①初期費用ゼロ
発電設備費は発電事業者が負担します。企業への導入では数百万~数千万円、場合によっては数億円もの初期費用がかかりますので、これがゼロになるのは大きなメリットです。もちろん分割返済や契約完了後の請求もありません。
②メンテナンス・管理費用も無料
メンテナンス・管理費用も発電事業者の負担です。点検作業の計画や実施、業者の手配なども発電事業者に任せられるため、手間もかかりません。太陽光発電設備は平均して20年~30年使いますので、大きなコストカットにつながります。また、自然災害による破損など、想定外のコストも抑えられます。
③電気料金を安くできる
オンサイトPPAで発電事業者に支払う電気代は、一般の電力会社より割安です。仮に年間1,000万kWhの電気を購入していたとしましょう。削減額は利用状況によって違いますが、もしオンサイトPPA導入によって「19円/kWh→17円/kWh」になれば、「2円×1,000万kWh=2,000万円」のコストカットが見込めます。
④再エネ賦課金がかからない
オンサイトPPAでは再エネ賦課金がかかりません。このことが電気料金の安さにも関係しています。再エネ賦課金は2012年の0.22円/kWhから、2021年の3.36円/kWhまで年々上昇を続けています。今後も再生可能エネルギー普及によって上昇が見込まれることから、再エネ賦課金がかからないオンサイトPPAのメリットが大きくなるでしょう。
⑤補助金制度を活用できる
国と自治体は再生可能エネルギー活用による脱炭素化を進めており、オンサイトPPAにも補助金を出しています。具体的な補助金制度は後ほど説明します。
デメリット
オンサイトPPAには、デメリットもあることを知っておきましょう。
①契約期間が長い
オンサイトPPAの契約期間は、一般的に15年~25年と長期にわたります。発電事業者は初期費用とメンテナンス・管理費用を、月々の電気料金で回収して利益を出さなければならないからです。契約期間中の移動や廃棄はできないため、長期的な計画を立てたうえで契約する必要があります。
②契約終了後のメンテナンスは自己負担
契約満了後に設備と所有権を譲り受けた場合は、メンテナンスコストが自己負担になります(契約条件によって異なります)。
自家消費や売電できることはメリットですが、老朽化したシステムを維持するためのコストを想定しなければなりません。また、廃棄費用もかかります。
③発電事業者からの審査が必要
十分な発電量が見込めない場合や、設置が難しい場所などの場合は、発電事業者に断られる可能性があります。
導入事例について
バローホールディングス(HD)は、アイ・グリッド・ソリューションズとVPP Japanと連携し、グループのホームセンターや物流センターなど50施設にオンサイトPPAによる太陽光発電設備を導入いたしました。
導入施設では、再エネ100%での運営を行っている時間帯も実績として出てきています。
バローHDでは、2030年までにCO2排出量を20年度比で40%削減することをサステナビリティビジョン2030として掲げており、そのアクションへの一環として施設への太陽光発電設備の導入を推進しています。
参考:バローHD、グループ50施設にPPAで太陽光発電、余剰電力を他社に供給|DIAMOND Chain Store
オフサイトPPAとは?
オフサイトPPAは、発電事業者(PPA事業者)が一般送電網を介して、特定の一般需要家に電気を提供する仕組みです(以下の図参照)。
発電所の所有者が発電事業者である点はオンサイトPPAと同じですが、次の2点が異なります。
- 発電設備が電力を利用する場から離れた発電事業者保有の敷地にある
- 送電時に小売電気事業者を経由する
電気を利用するまでの流れは以下のとおりです。
1.需要家と発電事業者が契約を結ぶ
2.発電事業者が太陽光発電設備で発電して小売電気事業者に送電
3.小売電気事業者が需要家に送電
4.需要家が電気を使う
5.利用した電気量に応じて需要家が発電事業者に料金を支払う
オフサイトPPAは、敷地内に発電所を置くスペースが十分確保できない企業におすすめです。初期費用とランニングコストをかけずに太陽光発電設備を利用できます。例えば、設置スペースを確保しにくい都心部に複数の事業所があるような場合に、遠隔地の発電所から一般送電網を介して電力を確保できます。
メリット
オフサイトPPAのメリットは、オンサイトPPAと同様で次のとおりです(理由も変わりません。)
- 初期費用ゼロ
- メンテナンス・管理費用も無料
オフサイトPPAならではのメリットは、複数の事業所に送電できることと、発電量を増やしやすいことです。それぞれ解説します。
①複数の事業所に送電できる
オフサイトPPAは小売電気事業者を経由しているため、太陽光発電した電気を複数の事業所に送れます。例えば、1つの発電所から「自社」「自社工場」「子会社」などへ送電できるわけです。
ちなみにオフサイトPPAでは、一度小売電気事業者に売電する形になりますので、低圧発電所も設置できます。
②発電量を増やしやすい
オフサイトPPAは自社の敷地面積にとらわれる必要がないため、発電量を増やしやすい面があります。もちろん発電事業者と交渉する必要はありますが、オンサイトPPAより拡張性を持てるでしょう。
実際、事業で使用する電力をすべて再生可能エネルギーでまかなう目標を掲げるRE100加盟企業などが、オフサイトPPAを活用しています。自社の敷地だけでは限界があるため、オフサイトPPAで発電量を増やすわけです。
デメリット
オフサイトPPAのメリットは、オンサイトPPAと同様で次のとおりです。
- 契約期間が長い
- 発電事業者からの審査が必要
オフサイトPPAに特有のデメリットは以下のようにやや多いため、導入の際は注意が必要です。
①電気料金削減効果が低い
オフサイトPPAは発電事業者から電気を購入する点では、オンサイトPPAと同じですが、小売電気事業者に支払うグリッドコスト(託送料金)や需給調整の料金などが加算されます。したがって、オンサイトPPAと比較すると電気料金削減効果は低くなります。
②再エネ賦課金がかかる
オフサイトPPAではPPAモデルのなかで唯一 再エネ賦課金がかかります。これによって電気料金削減効果も低くなってしまいます。
③非常用電源として活用できないリスクがある
オフサイトPPAでは発電所と事業所の距離が離れているため、中継施設がダメージを受けた場合は、たとえ発電所が稼働していても非常用電源として活用できないリスクがあります。このため停電時のBCP(事業継続計画)を強化したい場合には、あまり向きません。
導入事例について
セブン&アイ・ホールディングスは国内初のオフサイトPPAの導入事例です。首都圏のセブンイレブン40店舗から排出されるCO2の排出量を50%削減するため、太陽光発電の導入量約0.8MW、年間発電量886MWhの契約(20年間)を結びました。
首都圏のような大規模な発電所を確保しにくい場所では、オフサイトPPAのメリットが大きくなります。セブン&アイ・ホールディングスでは千葉県千葉市にある老朽化した野球場後に、約1900枚の太陽光パネルを設置して電力を確保しています。
土地が整備されていたこともあり、太陽光発電所の設置工事はわずか約2カ月で完了し、スピーディーな稼働につながったということです。
参考:NTTがセブンイレブンに再エネ提供、国内初の「オフサイトPPA」に|日経XTECH
オンサイトPPAとオフサイトPPAに関する疑問
ここではオンサイトPPAとオフサイトPPAについてよくある質問を2つ取り上げ、解説します。
どちらが需要が高いの?
日本で主流なのはオンサイトPPAです。
PPAの導入を検討する企業の多くは、工場の屋根などのように広く、かつ利用していないスペースを有効活用したいと考えています。この場合にはオンサイトPPAが向いています。脱炭素化や電気料金のコストカットといった課題に取り組む際は、「費用をかけずにできる範囲で取り組みたい」と考える企業が多いのでしょう。
一方、オフサイトPPAを導入する場合は規模が大きくなりやすいため、契約のハードルは高くなります。実際、オフサイトPPAの導入事例は、事業で使用する電力をすべて再生可能エネルギーでまかなうような、高い目標を掲げている大企業が中心です。
世界的にみても、東南アジアをはじめとして、オンサイトPPAが主流の国が多いのが実状です。
補助金制度はある?
オンサイトPPA、オフサイトPPAのそれぞれに補助金制度があります。
オンサイトPPAに対する補助金の例
環境省の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」があります。これは屋根などを活用した太陽光発電の導入支援制度で、オンサイトPPAにも適用可能です。太陽光発電システム単独では定額4万円/kWの補助ですが、産業用蓄電池とセットで導入すれば定額5万円/kWに上がります。
オンサイトPPAの補助金は各自治体も実施していますので、最近のチェックしてみるとよいでしょう(以下表参照)。この点でもオンサイトPPAのほうが企業が導入しやすい面があります。
管轄 | 名称 | 概要 |
---|---|---|
東京都 | 地産地消型再エネ増強プロジェクト事業 | CO₂を排出しない「ゼロエミッション東京」実現を目指す事業 |
神奈川県 | 自家消費型太陽光発電等導入費補助金 | 再生可能エネルギー発電設備と蓄電池の設備費用の一部を補助 |
宮城県 | 第三者所有モデル太陽光発電導入支援事業費補助金 | 太陽光発電の推進のために法人その他団体を支援する制度 |
オフサイトPPAに対する補助金の例
オフサイトPPAの補助金制度では、環境技術普及促進協会の「オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電供給モデル創出事業」が挙げられます。太陽光発電システムなどの補助対象経費の3分の1(上限1億5千万円)の補助がありましたが、2022年度で打ち切られており、2022年8月時点では再開の予定はありません。
まとめ
気候変動問題への対応が急務とされるなか、無償で太陽光発電を導入できるオンサイトPPA、オフサイトPPAが注目を集めるようになりました。エネルギー自給率の課題を抱える日本においては、外的要因による電力コストの変動や、再エネ賦課金の上昇が重要な経営課題になっている背景もあり、各企業で導入が進んでいます。
オンサイトPPA、オフサイトPPAには、それぞれ特徴がありますので、自社に合った方法を選べます。このうち日本で主流なのは、シンプルな仕組みでスモールスタートしやすく、災害停電時にも強いオンサイトPPAです。
アイ・グリッド・ソリューションズのグループ会社であるVPPJapanは、クリーンエネルギーを年間1億kWh創出している国内No.1の事業者です。VPPJapanではオンサイトPPAを推進していますので、ぜひご相談ください。
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