脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは?脱炭素社会に向けてできることは?
地球温暖化や温室効果ガスが、世界規模で問題視されていることは多くの方がご存知でしょう。特に近年は、脱炭素・低炭素・カーボンニュートラルなどの言葉を見聞きする機会が増えてきました。 環境問題は各国が協力して取り組むと同時に、私たち一人ひとりが個人でできる対策も行うことが重要です。まずは、言葉の意味を正しく知り、脱炭素社会に向けて私たちにできることは何か一緒に考えてみましょう。
脱炭素社会とは?低炭素やカーボンニュートラルとの違いは?
カーボン(carbon)は、英語で炭素を意味する言葉です。脱炭素・低炭素・カーボンニュートラルはいずれも炭素に関連した言葉で、どれも同じようなものと捉えている方もいるかもしれません。 しかし、厳密にはそれぞれの言葉の意味は異なります。以下でわかりやすく解説しますので、何となく知っている方も再確認してみてください。
脱炭素社会:二酸化炭素排出量ゼロを実現した社会
脱炭素社会とは、地球温暖化の最たる原因である二酸化炭素の排出量をゼロに抑えることに成功した社会のことです。脱炭素社会が実現すれば、温室効果ガスの大気中の濃度が薄まり、地球温暖化の抑止につながります。 環境汚染に対する危機感が徐々に世界に広がり始めたのは、1960年代頃からです。その後、1972年には環境問題に対する初の国際会議が開かれました。以降、地球温暖化の具体的な施策を義務化した1997年の京都議定書や2015年のパリ協定などを経て、現在は世界各国が「脱炭素社会」の実現を目指しています。 温室効果ガスには、メタン・一酸化二窒素・フロン類などが含まれますが、大部分を占めるのが二酸化炭素です。二酸化炭素は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に含まれる炭素が燃やされることで発生します。 つまり、電気を作るのにも車に乗るにも化石燃料が使われているということです。燃料を動力とする乗り物や工場だけでなく、私たちが生活するだけでも二酸化炭素は排出され、地球温暖化を誘引しています。 温暖化対策のためには、一部の地域や企業だけではなく地球規模で脱炭素化に取り組む必要があります。そのため、二酸化炭素を人為的に排出する120以上の国で、2050年までに二酸化炭素の排出をゼロとする脱炭素社会の確立を長期目標に掲げました。
低炭素社会:二酸化炭素排出量削減を実現した社会
脱炭素社会を目指す前の段階として、過去には「低炭素社会」を目標にしていた時代もありました。1997年に京都で行われた国際会議で「京都議定書」が採択された頃に目指したのが、低炭素社会です。 低炭素とは、二酸化炭素の排出量を低く抑えるという意味で、二酸化炭素排出量の削減が実現できた社会を意味します。この頃にはまだ脱炭素には程遠かったため、低炭素という言葉が使われるようになりました。ちなみに、低炭素社会という言葉は、2008年に出された「低炭素社会づくり行動計画」に基づいて使うようになったのが経緯です。 京都議定書にはそれまでになかった具体的なルールが盛り込まれており、会議に参加したすべての先進国が温室効果ガス排出量を2012年までに約5%削減することを義務付けています。 実際の数値目標を掲げた京都議定書によって、主要先進国は地球温暖化防止のために今まで以上の危機感を持って取り組むこととなりました。ちなみに、日本は京都議定書で掲げた当時の目標を達成したことが国連の審査で認められています。
カーボンニュートラル:二酸化炭素排出量を実質ゼロにすること
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素排出量が実質ゼロの状態であることを意味します。実質ゼロとは、プラスマイナスゼロの状態のことで、人間が排出した二酸化炭素と植物が吸収した二酸化炭素がプラスマイナスゼロになる状態を目指すものです。 二酸化炭素は、炭素を含む化石燃料が燃焼したときや、人間や動物が呼吸をしたときに排出されています。一方で、植物は二酸化炭素を吸収し、酸素を作り出す光合成を行っています。この排出と吸収をプラスマイナスゼロにした状態が、カーボンニュートラルです。 現代社会では、二酸化炭素の排出量を完全にゼロにするのはかなり難しいものですが、排出した分の二酸化炭素を植物が吸収してくれれば、地球温暖化の進行を抑えることができます。 削減しきれなかった二酸化炭素を森林などに吸収してもらうために、森林保全や植林活動を行って脱炭素社会を目指しているのがカーボンニュートラルの取り組みです。
カーボンニュートラルとゼロカーボンの違いは?
カーボンニュートラルと似た言葉に、ゼロカーボンという言葉があります。実は2つに明確な違いはなく、いずれも二酸化炭素の排出と吸収をプラスマイナスゼロにするという意味合いを持っているのが特徴です。 企業や団体が、二酸化炭素の排出量をプラスマイナスゼロにするための目標をかかげる際によく使われるのが、ゼロカーボンという言葉です。環境省は、2つは完全に同じではないものの、明確に差はないと謳っています。ほかにも、ネットゼロという言葉を使うこともあります。 地球温暖化による大規模な気象災害は、地方公共団体や企業にとっても重要な課題です。ゼロカーボンを実現するためには、地方公共団体・企業・住民が一丸となって取り組む必要があり、その活動を「ゼロカーボンシティ」と呼んでいます。 活動内容は主に、省エネ推進・再生可能エネルギーの利用・ごみの減量・リサイクル・自然環境の保全・環境教育などです。それらの活動を通して、二酸化炭素の排出量と森林などの吸収量を差し引きゼロにし、温暖化の防止や、災害に強く暮らしやすい街づくりをすることを目的としています。
カーボンニュートラルとカーボンオフセットの違いは?
ゼロカーボンに加えて、カーボンオフセットという言葉もあります。カーボンオフセットとは、二酸化炭素を相殺する、埋め合わせするというニュアンスを強く持つ言葉です。カーボンニュートラルと似ている意味ですが、少しニュアンスが変わります。 カーボンニュートラルは、自分が排出した二酸化炭素と、自分が投資して育てた森林が吸収する二酸化炭素とで差し引きをし、ゼロを目指す方法です。 カーボンオフセットも実質ゼロを目指すことには変わりありませんが、減らせなかった二酸化炭素の排出量を、自分が投資したもの以外の手段で埋め合わせることで、間接的に削減するという手段を意味します。 自分が投資したもの以外の手段とは、脱炭素に取り組んでいる企業や団体の二酸化炭素削減量をクレジットとして購入することにより、実質ゼロになるよう埋め合わせをするということです。つまり、地球温暖化防止に貢献している企業や団体に資金提供をするということになります。 カーボンオフセットのクレジットには、森林保全事業・再生可能エネルギー事業・温暖化防止活動プロジェクト・海外熱帯雨林地域の整備事業などがあります。地球温暖化防止に貢献している団体に資金提供をすることで、活動を後押ししてオフセット(埋め合わせ)することになるのです。
なぜいま脱炭素社会化やカーボンニュートラルが重要なの?
脱炭素社会化やカーボンニュートラルがいま重要であることの背景には、産業や技術の発達が大きく関係しています。 世界の年平均気温は、わずかな上昇と下降を繰り返しながらも、1891年の統計開始以降は確実に上昇傾向にあります。長期的に見ると100年に0.73℃の割合で上昇しており、工業化以前の頃と比べると1℃以上も高くなっているのが特徴です。特にここ数年の上昇幅が大きいのも特筆すべき点といえます。 この勢いで進むと、2100年には約6℃も上昇してしまう計算に。世界的に気温が6℃も上昇することは、大きな気象災害・気候変動・自然生態系の変化・経済活動の鈍化・人間の健康状態悪化などに深刻な影響を及ぼすものです。 すでにフィジー共和国やモルディブなど標高の低い地域では、温暖化による海面上昇のため今世紀末には国土が消えると危惧されています。温暖化は、グリーンランドや南極の氷床を融かして崩壊させるだけでなく、寒い地域の永久凍土を融解させる力も持っているのが難点です。 今までとは降雨パターンも変化し、台風や洪水などの被害規模も大きくなるほか、熱帯地域で発生するマラリアなどの感染症の範囲も広がる可能性があります。 農作物の生産にも困難をきたし、世界的な食糧難を引き起こすとの見方もあります。人類の未来のためには、いまから真剣に脱炭素に取り組み、カーボンニュートラルの実現を目指さなければならないのです。 参照:気象庁
脱炭素社会におけるパリ協定の内容や経緯とは?
脱炭素社会への一大転換点となったのが「パリ協定」です。パリ協定とは、2015年12月にパリで開催された「国連気候変動枠組条約締結国会議」で採択された世界的なルールブックです。 パリ協定には、産業革命以前の平均気温の上昇を1.5℃程度にまで抑えること、今世紀後半にはカーボンニュートラルの実現を目指すことなどが盛り込まれています。それまでのルールと異なるのは、温室効果ガスを排出している先進国だけに削減義務を課すのではなく、発展途上国も含めている点です。 気候変動枠組条約に加盟している197カ国すべてに適用されており、各国は具体的な目標を独自に策定して提出し、5年ごとに成果を公表しなければなりません。また、次の5年間では、それまでの削減量を上回るよう対策する必要があります。 パリ協定では、当時のアメリカ大統領オバマ氏の手腕で、予定よりも早くルールブックの制定に至りました。このことからもわかるように、世界各国が連携し、危機感を持って地球温暖化防止に今から取り組むことが重要なのです。
カーボンニュートラル実現に向けた「脱炭素ドミノ」ってなに?
脱炭素ドミノとは、脱炭素社会に向けた取り組みや意識が全国に伝播し、広がる様子のことをいいます。 カーボンニュートラル実現のためには、国の政策や企業だけに任せるのではなく、私たちにとって身近な地域ぐるみで脱炭素化に取り組むことが必要です。地方自治体、地域の企業、住民が一丸となり、身近な社会や暮らしの脱炭素を目指して成長することが、温暖化防止や防災、生活の質向上につながります。 再生可能エネルギーなど地域の資源を最大限に活用し経済を循環させることは、地方創生プロジェクトとしても効果的です。 そのために「地域脱炭素ロードマップ(行程表)」を作成し、先行して2030年までにモデルケースとなる全国100カ所の地域を定めることにしました。この取り組みや意識、脱炭素社会化が次々に広がる様子を「脱炭素ドミノ」と表現しています。
脱炭素社会やカーボンニュートラルに向けて日本が行っている取り組みは?
日本では、菅元首相や現岸田首相が国会や記者会見でたびたび脱炭素社会に向けた「経済・社会の大変革」の施政方針を示してきました。実際にはどのような取り組みが行われているのか、以下で主な取り組みの内容を解説します。
グリーン成長戦略
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」として、特に温室効果ガス削減に努めてほしい14種類の産業に対して、具体的な実行計画を策定しました。これを略して「グリーン成長戦略」といいます。 14種類の産業は、エネルギー関連産業・輸送/製造関連産業・家庭/オフィス関連産業の大きく3つに分けられるのが特徴です。政府は、予算・税・金融・規制改革/標準化・国際連携などの政策を総動員し、それらの産業を後押しして大胆なイノベーションを起こしたい考えです。 具体的には、以下のような施策を打ち出しています。
・グリーンイノベーション基金の創設
・脱炭素化の効果が高い製品を製造する際の設備への税制優遇
・再エネ省エネなどの技術への民間投資促進
・新技術普及のための規制緩和や強化
・日本の先端技術提供による国際貢献
RE100
「RE100」は「Renewable Energy 100%」を略した言葉で、直訳すると「再生可能エネルギー100%」を意味します。つまり、企業が使う電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目指す取り組みのことです。 RE100では、世界各地の製造業・製薬業・アパレル産業・テクノロジー産業などのさまざまな分野の企業が参画して、2050年までに再生可能エネルギー使用に完全移行することを表明しています。 日本の環境省は、世界の公的機関に先駆けてアンバサダーとしてRE100へ参画し、普及促進活動を行うとともに、環境省関連の官舎や施設で率先して再生可能エネルギーの導入に取り組んでいるのが特徴です。 RE100加盟企業は、RE100達成のための活動報告書を毎年事務局に提出しなければなりませんが、RE100が達成できれば原油価格の高騰などに影響されない安定した経営が可能になります。 リスク回避につながり、資金繰りや事業計画が立てやすいのもメリットです。また、環境問題と真摯に向き合う企業として投資家からの評価も上がるでしょう。
カーボンプライシング
脱炭素社会へ向けた取り組みの中で、カーボンプライシングが注目を集めています。カーボンプライシングとは、二酸化炭素そのものに価格を付けることで排出量の抑制を目的とした経済的手法です。 政府によるカーボンプライシングとして、二酸化炭素排出量に応じた「炭素税の課税」があります。ほかにも、企業ごとに二酸化炭素排出量の上限を決めておき、限度を超えた企業と限度を下回る企業間とで排出枠を売買することで実質ゼロを目指す「排出量取引制度」など、幅広く展開されているのが特徴です。 カーボンプライシングは、民間企業でも取り入れられています。代表的な取り組みが、カーボンオフセットの説明で触れた「クレジット取引」です。クレジット取引とは、二酸化炭素の削減価値に価格を付けて、クレジットや証書化して売買する方法のこと。 世界的に、脱炭素社会化や地球温暖化防止に向けての積極的な取り組みが成されるなか、大きな責任の一端を担う企業としても、社会的責任を果たし国際貢献する必要があります。企業努力が評価されればステークホルダーの満足度も向上し、企業価値をも高めてくれるでしょう。
COOL CHOICE
COOL CHOICEとは、脱炭素社会に向けての啓蒙活動を表す言葉で、地球温暖化防止のために賢い選択をしようという意味があります。つまり、脱炭素社会につながるよう温暖化対策に貢献する電化製品や、商品、サービスなどを利用しようという取り組みです。 先述したような企業対象の取り組みとは異なり、COOL CHOICEは一般の消費者である国民を対象とした運動のことをいいます。 賢い選択として挙げられる一例は、以下のとおりです。
・エコカーを買う
・省エネ家電を選ぶ
・公共交通機関を利用する
・冷房の設定温度を1℃上げる
・宅配便を1回で受け取る
など 官民一体となって、身近な生活で上記のような賢い選択をすることを国民に呼びかけているのがCOOL CHOICEです。
脱炭素社会やカーボンニュートラルに向けて企業が行っている取り組みは?
海外や国内の企業でも、積極的に脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。以下に企業ごとの事例を紹介するので、参考にしてみてください。
・Google LLC
Googleでは、2030年までに実質ゼロではなく完全な脱炭素を目指しており、24時間365日電力をすべて再生可能エネルギーで賄うことを目標としています。過去には世界に先駆けていち早く温暖化対策に取り組み、2007年には既にカーボンオフセットを行い、カーボンニュートラルを達成した初めての企業になりました。
・アスクル株式会社
サプライチェーン全体で温室効果ガス削減に取り組み、2030年までに排出量ゼロを目指しています。具体的には、温室効果ガス排出量の少ない商品の仕入れ、再生可能エネルギーの導入、電気自動車への切り替えなどを含む「5つの約束」を掲げているのが特徴です。
・イオン株式会社
イオンでは、2025年までにイオンモールに再生可能エネルギーを100%導入すると宣言しています。2030年までに、中小のモールも含めて完全再エネ化を目指すという目標をかかげているのも特徴です。また、商品・物流事業で発生する温室効果ガスをゼロにすることも、あわせて目標に設定しています。
・ヤマハ発動機株式会社
ヤマハは、従来のバイクのエンジンを2ストローク型から、排気煙の少ない4ストロークエンジンに切り替えました。これによりクリーン排気が可能になったため、2050年までに2010年比で90%以上削減すると目標を掲げています。
参考:Google LLC 参考:アスクル 参考:イオン 参考:ヤマハ発動機
脱炭素社会に向けて世界各国で行われている取り組みは?
2015年のパリ協定をきっかけに、世界各国で脱炭素社会に向けた温室効果ガスの削減に取り組んでいます。 2021年の国連に寄せられた報告書によれば、各国間での取り組みに少なからず温度差が見られるのは否めませんが、脱炭素に積極的な姿勢を示す国もあり、一定の効果を挙げています。以下に一例を紹介します。
・アメリカ
アメリカの大規模な自然災害は生存基盤に関わる脅威であるとし、気候変動に関わる温暖化対策を緊急重要課題としています。 バイデン大統領は、トランプ政権で一旦は離脱したパリ協定に復帰し、2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言した。2035年までに発電部門の脱炭素を目指すと公約したほか、洋上風力発電量の倍増、国土と海洋の保全活動などを策定しています。
・中国
全世界の温室効果ガス総排出量の約30%を占めている中国。パリ協定後も排出量の減らない中国に対して、非難の声が上がるのも無理はありません。それらの声を受けて習近平国家主席は、2060年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明しました。 具体的な案として、新エネルギーを利用した電動自動車市場への補助金を出すなどして、新車販売における新エネルギー車の割合を引き上げることとしています。
・イギリス
グリーン成長戦略として2024年までに、温室効果ガス排出の削減対策を施していない石炭火力発電所の廃止を決めました。また、2040年を目途に、化石燃料由来の動力を必要とするガソリン車とディーゼル車の新車の販売を停止することも表明しています。再生可能エネルギー関連の事業者に積極的な支援を行っているのも特徴です。
脱炭素社会やカーボンニュートラルに向けて個人でできることはある?
ここまでの解説で、世界各国や企業がいかに危機感を持って地球温暖化対策に真摯に取り組んでいるかが理解できたはず。では、私たち個人は脱炭素社会やカーボンニュートラルにどのように貢献できるのでしょうか。
日常生活で使用するエネルギーを見直す
日常生活で使用するエネルギーを見直すことで、脱炭素社会化に向けて貢献することにつながります。普段使用するエネルギーを、太陽光発電などの再生可能エネルギーに見直すことを検討してみてください。 再生可能エネルギーとは、太陽光・太陽熱・風力・地熱など自然由来のエネルギーを指します。地球資源として自然界に常に存在しており枯渇する心配のないエネルギーなので、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しません。 石油・石炭・天然ガスなどの化石由来のエネルギーと異なり、再生可能エネルギーはクリーンなエネルギーとして需要が高まっています。最近では電力自由化などに伴い、再生可能エネルギーを自宅に取り入れる人が増えているのもポイントです。
省エネを心がけて生活する
化石エネルギーで発電した電気やガソリンなどの消費を抑えることも、脱炭素につながります。つまり、生活の中で省エネを意識するだけでも二酸化炭素の排出量は減らせるということです。具体的な方法を下記に解説します。
家電の使い方や設定に気を配る
家庭でエネルギーを使うものは多岐にわたりますが、なかでも代表的なものが家電です。特に、冷蔵庫は四六時中電気を消費する家電であり、使い方次第で電力消費量が大きく異なります。 夏と冬で使い分けられる「強」と「弱」などのスイッチがある冷蔵庫は、季節によって設定を切り替えてみてください。外気に適した温度設定にすることができ、消費電力削減につながります。また、開閉の時間をなるべく短くしたり、食品を詰め込みすぎたりしないことも省エネにつながる重要な心がけです。 暖房便座も省エネ設定にし、使わないときは蓋を閉めて熱が逃げないようにしましょう。室内の温度は、夏は28℃、冬は20℃と環境省により推奨されています。 エアコンの温度設定を極端に上げたり下げたりすることなく、扇風機やサーキュレーターなどを効果的に使って消費電力を抑えましょう。また、白熱電球を消費電力の少ないLED電球に変えるのもおすすめです。
車よりバスや電車など公共交通機関を積極的に利用する
ガソリン車やディーゼル車が排出するガスには、二酸化炭素が含まれます。各地で発生する道路の渋滞が、排ガス量を増加させているのも難点です。アイドリングストップは、燃料の消費を抑えエンジンの寿命を伸ばすとともに、排気ガスに含まれる二酸化炭素の排出を抑えるメリットもあります。 しかし、それ以前に渋滞を作らないよう、自家用車ではなく、バスや電車などの公共交通機関を利用することも二酸化炭素排出の削減につながります。電気自動車やハイブリッドカー、燃料電池自動車などに買い換えるか、必要なときだけカーシェアリングを利用するというのも1つの方法です。
ゴミが減るよう工夫する。分別やリサイクルも徹底する
ゴミの減量も脱炭素社会に向けた取り組みとして有効です。今では各地で一般的になったゴミの分別は、燃えるゴミの低量化とリサイクル資源の有効活用に欠かせません。 燃やすゴミを減らせれば、焼却する際の二酸化炭素排出量が減らせます。また、リサイクルやリユースできるものを増やすことで、燃えるゴミの量を減らすことにもつながっているのがポイントです。 燃えないゴミで再利用できないものは、粉砕処分をして最終的には埋め立て地に埋められます。しかし、準好気性埋立構造が未導入の埋立処分場では、メタンガスが放出されることに。メタンガスも温室効果ガスに含まれるもので、地球温暖化の大きな要因の一つです。 埋め立てることでしか処分できないものを減らして、リサイクルやリユース可能なものを積極的に利用しましょう。 そのためには、ゴミを正しく分別できていることが大前提です。各自治体のホームページでは、ゴミの出し方が詳しく記載されていますので、分別方法に自信のない方は再確認してみることをおすすめします。
食生活を健康的でサステイナブルなものにする
サステイナブルは、持続する、持続可能などを意味する言葉です。脱炭素社会実現のため、環境省からは「サステイナブルで健康な食生活の提案」が発表されています。 私たちが日常的に口にする食品においても、スーパーや飲食店などへの輸送・消費者への配送・廃棄処分などの工程で温室効果ガスが大量に排出されていることを意識しなければいけません。 もし地球温暖化が続けば、世界の気候が変動し、洪水や干ばつなどの自然災害が起きやすく、農作物の生産にも大きな支障をきたします。脱炭素社会化のためには、サステイナブルなものに変えていく意識を持つ必要があるのです。 ほかにも、輸入や長距離輸送の必要性をなくして排ガスを減らすため、地産地消を心がけた食材選びをすることも重要に。 世界的な問題になっている食品ロスでは、食品を作ったり廃棄したりする度に二酸化炭素を排出しています。食品を買い込みすぎず必要な分だけ買う、賞味期限の近いものから買って食品ロスを出さない、多く作りすぎず食べられる分だけ作るなど、私たちができることはたくさんあるはずです。
サステナブルファッションを取り入れてみる
ファッション産業は、製造工程における燃料の使用や、流行の移り変わりによる商品のライフサイクルの短さが原因となり、地球温暖化などの環境負荷が世界的に問題視されている産業です。 洋服の製造・着用・廃棄までのプロセスに対して、人や環境に配慮したサステイナブルな取り組みを行うことが急務に。それらの持続可能な取り組みのことを、「サステイナブルファッション」と呼んでいます。 短サイクルでの買い替えを控え、一着を長く大切に着ることを心がけるために、企業は長く愛用することを前提とした丁寧な商品づくりを行うことが重要です。 また、消費者ができる心がけには、以下のようなものがあります。 ・サイズアウトした子ども服はリサイクルする ・手を加えて新たなデザインにリメイクする ・傷んだ部分はリペアして長く着る ・洗濯表示を確認して正しくケアする ・古着ファッションを楽しむ 上記のようなポイントを心がけるだけで、環境負荷を減らし脱炭素に貢献することができます。
家を丸ごと省エネにする「HEMS」も
HEMSとは、Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を略した言葉で、簡単にいえば家庭で使用するエネルギーを管理するシステムのことです。 HEMSは、太陽光発電などの創エネ機器・作ったエネルギーを蓄える蓄エネ機器・エアコンや冷蔵庫などの省エネ家電をそれぞれネットワークで結ぶことにより、電気量を可視化できるという特徴があります。 また、通信機能を持つ家電を導入すれば、スイッチのオンオフなどがスマホから遠隔操作できるため、節電にもつながるのが魅力です。エネルギーの無駄をなくせば、二酸化炭素排出量も減らせます。 ほかにも、以下のようなメリットが挙げられます。
・使いきれずに余った電気は蓄電して貯めておくことができる
・電力会社の災害などによる停電にも左右されず使いたいときに電気が使える
・余った電気は電力会社に売ることができる
電気を自給自足することは、地球にとっても家計にとってもやさしい暮らしができるということです。
ゼロカーボンアクションも知っておこう
ゼロカーボンアクション30とは、脱炭素のために何ができるかということや、衣食住・買い物・移動などの日常生活における行動の指針を環境省が示したものです。 リストは、電気等のエネルギーの節約や転換・住居関係・移動関係・食関係・衣類・ファッション関係・ごみの削減・買い物/投資・環境活動のカテゴリ別に分類されています。脱炭素社会やカーボンニュートラル実現のために、日々の暮らしに取り入れてみましょう。
電気等のエネルギーの節約や転換 |
1. 再エネ電気への切り替え |
2. クールビズ・ウォームビズ |
3. 節電 |
4. 節水 |
5. 省エネ家電の導入 |
6. 宅配サービスをできるだけ一回で受け取る |
7. 消費エネルギーの見える化 |
住居関係 |
8. 太陽光パネルの設置 |
9. ZEH(ゼッチ)= ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス |
10. 省エネリフォーム |
11. 蓄電地(車載の蓄電池.・蓄エネ給湯機の導入・設置 |
12. 暮らしに木を取り入れる |
13. 分譲も賃貸も省エネ物件を選択 |
14. 働き方の工夫 |
移動関係 |
15. スマートムーブ 徒歩、自転車・公共交通機関で移動 |
16. ゼロカーボン・ドライブ |
食関係 |
17. 食事を食べ残さない |
18. 食材の買い物や保存等での食品ロス削減の工夫 |
19. 旬の食材、地元の食材でつくった菜食を取り入れた健康な食生活 |
20. 自宅でコンポスト |
衣類、ファッション関係 |
21. 今持っている服を長く大切に着る |
22. 長く着られる服をじっくり選ぶ |
23. 環境に配慮した服を選ぶ |
ごみを減らす |
24. マイバッグ、マイボトル、マイ箸、マイストロー等を使う |
25. 修理や補修をする |
26. フリマ・シェアリング |
27. ごみの分別処理 |
買い物・投資 |
28. 脱炭素型の製品・サービス |
29. 個人のESG投資 |
環境活動 |
30. 植林やごみ拾い等の活動 |
参照:環境省
まとめ
このまま温室効果ガスが増え続けると将来的にどうなるか、そうならないために取り組まれている脱炭素社会化やカーボンニュートラルとはどういうものなのかなどについて解説しました。 いくら脱炭素社会やカーボンニュートラルに向けて国や企業が活動を行っても、個人が何もしなければ地球温暖化は防げません。地球や人間の未来のために環境を改善することは、人類の責務です。まずは、できることから始めてみましょう。
▷グリラボSNSのフォローお願いします!!
Twitter @gurilabo
▷アイグリッドグループ