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脱炭素の関連銘柄について徹底解説!今後伸びる産業分野とは?

投資対象として近年注目されている脱炭素の関連銘柄。脱炭素社会の実現に向け、さまざまな企業で温室効果ガス削減をはじめとする事業や取り組みがなされています。今後の成長性を期待して、脱炭素の関連銘柄への投資を考えている人もいるでしょう。

この記事では、脱炭素とはどのようなものか、目的や重要性をわかりやすく解説したうえで、脱炭素銘柄に投資する際のコツやポイントを紹介します。長期的な視点で脱炭素の関連銘柄に投資したい人はぜひ参考にしてみてください。

脱炭素の関連銘柄とは?

脱炭素の関連銘柄とは、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーなどの事業を行う上場企業の株式のことです。温室効果ガスは地球温暖化の要因とされており、排出量の削減は全世界で取り組むべき課題となっています。

このような脱炭素関連銘柄への投資は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)に配慮している企業に投資する「ESG投資」に含まれます。従来の投資は売上や利益といった財務的な指標を重視していましたが、ESG投資は「環境・社会・企業統治」といった財務以外の情報を重視して投資する手法です。

ESG投資については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。

関連記事:ESG投資とは?【みるエネルギー辞典】 | グリラボ

そもそも脱炭素とは?

脱炭素とは、地球温暖化の要因となる二酸化炭素をはじめとする「温室効果ガス」の排出量をゼロにしようとする取り組みです。2015年に開催されたパリ協定では、世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑えるよう努力を続けること」が掲げられました。

これを受けて日本では2020年10月に菅総理大臣(当時)が、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロ(カーボンニュートラル)にする脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言しています。

脱炭素について詳しく知りたい人は以下の記事でご確認ください。

関連記事:【図解あり】脱炭素とは何か?どこよりもわかりやすく簡単に解説! | グリラボ

カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた「実質的な温室効果ガスの排出量」をゼロにすることを意味します。具体的には、電気やガソリンなど人為的に排出される二酸化炭素から、森林をメインとする植物が吸収する二酸化炭素の量がプラスマイナスゼロとなる状態を指します。

このカーボンニュートラルを実現するために、さまざまな企業が脱炭素関連の事業や取り組みを進めているのです。カーボンニュートラルについては以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。

関連記事:脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは?脱炭素社会に向けてできることは? | グリラボ

脱炭素関連で注目されているキーワード5つ

ここからは、脱炭素関連で注目されているキーワード(産業)を紹介します。注目されているキーワードに関連する企業に投資することで、将来性が期待できる可能性があるのでぜひチェックしてみましょう。

洋上風力発電

洋上風力発電とは、その名のとおり海洋上で行う風力発電のことです。従来の地上での風力発電は、発電するために十分な風力を確保できる、騒音被害を避けるために近隣に住宅がないなどの条件が厳しく、適した土地が限られています。

この問題を解決すべく、新たに注目されているのが洋上風力発電です。日本は洋上風力発電の拡大・整備を進めています。2019年に施行された「再エネ海域利用法」では、2040年までに3,000万~4,500万kWの洋上風力発電設備の導入目標を掲げています。

これに伴い、洋上風力発電機の開発や技術を研究する企業や、風力発電の関連製品を生産する企業が注目されています。

代表的な銘柄(コード)には、「住友電気工業(5802)」「レノバ(9519)」「五洋建設(1893)」などがあります。

参考:洋上風力発電の導入促進に向けた取組|経済産業省資源エネルギー庁

水素エネルギー

水素エネルギーは二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして注目されています。電気や、石油・天然ガスなどの化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなどさまざまな資源から作ることができ、利用しても二酸化炭素が出ないため、日本では次世代を担うエネルギーとして注目されているのです。

水素エネルギーの関連銘柄には、水素の製造や輸送・貯蔵する技術を開発する企業があります。また水素と酸素を利用して発電する燃料電池(FC)や燃料電池自動車(FCV)を開発・製造する企業も関連する銘柄です。

代表的なものには「岩谷産業(8088)」「三菱化工機(6331)」「日本石油輸送(9074)」などがあります。

アンモニアエネルギー

アンモニアエネルギーも、水素と同じく発電する際に二酸化炭素を出さないエネルギーです。水素と異なり、燃料を輸送する際に圧縮や冷却がいらないため輸送コストを抑えられるため、こちらも次世代エネルギーとして注目されています。またアンモニアには水素分子が含まれているため、アンモニアの形で運んで利用する場所で水素を取り出すという活用方法も期待されています。

関連銘柄には「日揮ホールディングス(1963)」「中外炉工業(1964)」「宇部興産(4208)」などがあります。

EV(電気自動車)

EVとはElectric Vehicleの略語で、日本語では電気自動車と呼ばれるものです。その名の通り電気を使って走るため、二酸化炭素を排出しない自動車として注目を集めています。 EVを生産するために欠かせない「パワー半導体」や、次世代のバッテリーとして期待されている「全固体電池」の分野は脱炭素銘柄として注目されています。

大手コンサルのボストンコンサルティンググループの調査によると、世界の新車販売台数に占めるEVのシェアは2030年にガソリン車・ディーゼル車の合計を上回る51%まで伸びると予測しており、今後も拡大が期待できる分野といえるでしょう。

代表的な銘柄には、「菱洋エレクトロ(8068)」「東京エレクトロン(8035)」「三菱電機(6503)」などが挙げられます。

参考:BCG調査|世界の電動車(xEV)シェアは2030年に51%へ。日本では2030年に55%、ハイブリッド車が引き続きシェアを維持

CCS(二酸化炭素地下貯蔵)

CCSとは Carbon dioxide Capture and Storage の略語で、二酸化炭素の回収や貯留を行う技術のことです。具体的には、製油所や化学プラント、火力発電所で大量に排出される二酸化炭素を、ほかの気体から分離して集め、回収し、地下深くに貯留します。

CCSは既に排出された二酸化炭素の吸収・除去を担うため、日本政府が2050年までに実現しようとする脱炭素化(カーボンニュートラル)のために有効な技術として注目を集めています。

関連銘柄には、「三菱重工業(7011)」「東芝(6502)」「関西電力(9503)」などがあります。

脱炭素関連銘柄を選ぶコツ

ここでは脱炭素関連銘柄を選ぶ際のコツについて解説します。効率よく脱炭素関連銘柄に投資するために、参考にしてみてください。

ESGへの取り組みについて確認する

脱炭素関連銘柄を選ぶ前に、その企業のESG(環境・社会・企業統治)への取り組みについて調べることが大切です。ESGへの取り組みは、一般的に各企業のアニュアルレポートや統合レポートで確認できます。これらは企業が株主や投資家向けに経営内容を知ってもらうための資料で、年次報告書とも呼ばれます。決算情報などの財務的なものだけでなく、企業からのメッセージや事業戦略などさまざまな要素が盛り込まれています。

アニュアルレポートは通常、上場企業の公式サイトで公表されています。近年ESGを意識した経営が求められるようになり、アニュアルレポートにその情報を盛り込む企業が増えてきました。特に脱炭素関連の銘柄はESGの1文字目に当たる「環境(Environment)」との関りが深いため、必ずチェックするようにしましょう。

関連する企業で分散投資をする

本記事では脱炭素関連の5つのキーワードを紹介しましたが、1つのテーマに絞るのではなく複数のテーマを選んで分散投資することをおすすめします。なぜなら、テーマを1つに絞ってしまうと、そのテーマがうまくいかなかった場合に損をする可能性が高くなってしまうからです。複数のテーマに投資していれば、1つのテーマで値下がりしてもダメージが分散できます。

脱炭素関連の銘柄に限らず、投資のリスクを抑えるために分散投資は有効な方法です。投資は利益を狙える反面、損をするリスクもあります。気になるテーマをいくつか選んで投資し、損をするリスクを減らしましょう。

環境に良い影響がないと思われる企業は手放す

反対に環境に良くないと感じる取り組みを行っている企業への投資は、慎重に検討しましょう。すでにそのような企業の株式を保有している人は、その株式を手放すことも視野に入れることをおすすめします。

例えば、石炭や石油などの化石燃料やたばこといった産業については、海外の年金基金や資産運用会社を中心に投資を撤退する動きが加速しています。ただし、上記の産業でもこのような流れを受けてESGへの取り組みを始めている企業はあるので、前述したアニュアルレポートなどで最新の情報をチェックしておきましょう。

投資信託では「ESG指数銘柄」をチェック

投資信託で脱炭素関連銘柄に投資する際は、ESG指数に連動する銘柄(ファンド)をチェックしましょう。ESG指数とは、評価機関が企業を「環境(Environment)」・「社会(Social)」・「企業統治(Governance)」の観点から評価し、それらの取り組みが優れた企業で構成されている株価指数です。

ESG指数には、環境・社会・企業統治の3つのテーマを総合的に評価している「総合型指数」と、いずれかのテーマに特化した「テーマ指数」があります。総合型指数であれば脱炭素関連の取り組みが評価対象となっていることが一般的ですが、テーマ指数では女性活躍や ジェンダー・ダイバーシティに特化した指数もあります。テーマ指数に連動する銘柄を選ぶ際は、対象の指数が環境に特化したものか確認するとよいでしょう。

代表的なESG指数には以下のものがあります。  

  • FTSE Blossom Japan Index(総合型指数)
  • FTSE Blossom Japan Sector Relative Index(総合型指数)
  • MSCIジャパン ESGセレクト・リーダーズ指数(総合型指数)
  • MSCI ACWI ESG ユニバーサル指数(総合型指数)
  • S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数(テーマ型指数)

 

まとめ

脱炭素は地球温暖化や気候変動問題を解決すべく進められている世界共通のテーマです。企業には脱炭素に向けた取り組みが求められており、その貢献度が高い企業の注目度が高まっています。日本では「2050年までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする」目標が掲げられており、その実現に深く関わる脱炭素の関連銘柄は長期的な成長が期待できる可能性を秘めています。

脱炭素の関連銘柄に投資する際は、まず脱炭素やESGとは何かを理解したうえで、どの産業に投資するか検討しましょう。特定の銘柄を選ぶのが難しい場合は、ESG指数に連動する投資信託を選ぶのも一案です。

グリラボはエネルギーの世界をわかりやすく紹介しているメディアです。脱炭素やESGの知識を深めたい人はぜひ参考にしてみてください。

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