グリーンウォッシュとは?意味や日本での事例などをわかりやすく解説

Stop Greenwashing concept with advertising signboard in a rural scene with trees on background and hand holding a stop sign

環境問題に配慮した製品やサービスを提供する企業が増え、消費者の環境への意識も高まる中、新たな問題となっているのがグリーンウォッシュです。

本記事では、グリーンウォッシュとは何なのかを、問題点やリスク、実際に問題となったグリーンウォッシュの事例などと併せて解説します。環境問題に取り組んでいる企業の担当者は、自社が無意識のうちにグリーンウォッシュを行っていないかチェックするためにも、ぜひ最後までご覧ください。

グリーンウォッシュとは?

グリーンウォッシュとは、環境を意味する「グリーン」と、欠点を隠して良いものに見せかけることを意味する「ホワイトウォッシュ」を掛け合わせた造語です。

根拠がなかったり実態が伴わなかったりするにもかかわらず、企業が「環境問題に積極的に取り組んでいる」とアピールすることを指します。グリーンウォッシュを行うと、消費者や投資家が適切な消費や投資の判断を行うことができず、かえって環境問題が悪化してしまう可能性があります。

実際に欧州委員会の調査では、ホームページや広告、パッケージなどで環境問題に配慮していることをアピールしている商品や企業のうち、約53%は「根拠があいまいである、もしくは誤解を招くものである」としています。また、40%は「根拠がない」とされており、意図的であるかどうかに関わらず、多くの企業がグリーンウォッシュとみなされる行為を行っていることがわかっています。

グリーンウォッシュは6つに分類される

2023年1月にイギリスのシンクタンクNGOプラネット・トラッカーが発表した情報によると、グリーンウォッシュは6つのタイプに分けられるとされています。1つずつ内容をみていきましょう。

・グリーンクラウディング

他の情報に紛れ込ませることで、見せかけが発見されないようにすること

・グリーンライティング

自社が取り組む小さな環境配慮を積極的に紹介することで、自社の環境破壊的な計画や活動から消費者の目を背けさせること

・グリーンシフティング

環境対策への責任を消費者に転嫁すること

・グリーンラベリング

「地球に優しい」など不透明性の高い単語を使い、環境に配慮していると誤解をさせるようなマーケティングを行うこと

・グリーンリンシング

達成不可能な目標を掲げ、達成する前に目標を変更するなど、環境問題に取り組む姿勢を見せかけでごまかすこと

・グリーンハッシング

企業の経営陣が投資家の目をすり抜けるため、サステナビリティに対する最低限の情報しか報告しなかったり、情報を隠したりすること

参考:プラネット・トラッカー

グリーンウォッシュのリスクや問題点

グリーンウォッシュを行う企業が良くないとされる理由として、具体的なリスクや問題点を2つ解説します。

消費者が正しい選択をできなくなる

企業がグリーンウォッシュを行うと、消費者は製品が環境に配慮されたものであるかどうかの判断ができなくなります。近年では、商品を選ぶ際に環境への配慮があるかどうかを基準とする消費者が増えつつあるため、グリーンウォッシュによって本当に環境に良いものが選べなくなると消費者の満足度は下がってしまうでしょう。

また、グリーンウォッシュによって本当に環境に配慮した活動を行っている企業が見逃されると、サステナブルな活動をしている企業が損をしてしまうことにもつながります。企業にとっても消費者にとっても、悪影響が及ぶ可能性が高まるのです。

不正な資金集めが横行する

近年ではESG投資をはじめとし、環境に優しくサステナブルな活動を行う企業にお金が集まる仕組みが整ってきています。投資家から資金を調達するためには、企業は投資家に向けて環境への取り組みを積極的にアピールすることが不可欠です。

グリーンウォッシュによって投資家に偽りの報告をしたり、必要な報告をしなかったりすれば、環境に配慮した活動を行っていない企業でも不正に資金を集めることができてしまうかもしれません。

出資者に企業の間違ったイメージを与えてしまうことで、本来投資すべき企業に必要な資金が回らなくなる可能性が出てきます。

日本や世界各国ではグリーンウォッシュにどんな対応を行っている?

海外や国内における、グリーンウォッシュ企業への対応はどのようなものでしょうか。具体的な事例を紹介します。

海外では規制当局が禁止したり訴訟が起きたりしている

海外では、規制当局によるグリーンウォッシュ広告の禁止や訴訟が頻繁に行われています。例えば、欧州では2023年にドイツ最大の航空会社であるルフトハンザドイツ航空が調査の対象となりました。対象となった広告は「世界をつなぎ、その未来を守る」とのキャッチコピーで、環境への負担が少ないとの誤解を与えかねないと判断されたのです。

2020年にはイタリアの大手石油会社が、広告に根拠を示さないまま「グリーンである」という文言を用いたことで、500万ユーロの罰金を科されています。2022年にはノルウェーのH&M社がマーケティング統制法に違反する可能性のある主張を行ったとし、通告を受けた事例もあります。

また、アメリカではデルタ航空に対して消費者が訴訟を起こした事例もあり、消費者が問題意識を持って商品やサービスを選択していることがうかがえるでしょう。

日本でも消費者庁が措置命令を行った事例が出ている

欧米だけでなく、日本でもすでにグリーンウォッシュをめぐる取り締まりの動きが見られています。2022年、消費者庁は「生分解性」をうたうレジ袋やプラスチック製品に対し、合理的な根拠がないことから「景品表示法違反(優良誤認)」だとして10社に措置命令、そのうちの1社には課徴金納付命令を出しています。

生分解性は、特定の環境においては微生物の働きによって分子レベルまで分解されるものの、土の中や海中で必ずしも完全に分解されるわけではありません。企業が消費者に誤った認識を与えていることが問題視されている中、消費者庁は行政処分に踏み切りました。

消費者は広告の言葉に踊らされるのではなく、環境に関する知識を正しく身につけたうえでグリーンウォッシュを見極めることが、本当の環境保全につながっていく認識を持たなければなりません。

過去にグリーンウォッシュと指摘された事例

グリーンウォッシュは、誰もが知っている企業でも指摘された事例があります。例えば、2008年にトヨタ車がベルギーで販売したハイブリット車の広告について「Zero emissions low (CO2排出量ゼロの低さ)」と表現したところ、実際の数値の明示がないことからグリーンウォッシュであることを指摘されました。

また、一部の専門家からグリーンウォッシュであるとの非難を受けた広告として、コカ・コーラの「コカ・コーラ・ライフ」があります。「自然派志向」や「健康的な生活」という文言を用い、ラベルも赤色から緑色にすることで、「健康や環境に良い」イメージを与えたものです。

実際には通常のコーラの砂糖の量が10.6%であることに対し、6.6%の砂糖に減らしているだけであり、健康とはいえないと非難を受けています。

2018年に、プラスチック製のストローから紙製のストローに切り替えたマクドナルドも問題となりました。「100%リサイクル可能」とする紙のストローでしたが、実際には厚みのあるストローはリサイクルすることが難しいことから、ゴミとして捨てられていたことが判明したためです。

プラスチックを減らすことが果たして本当に環境への負担を減らしているのか、という点も疑問視されています。

グリーンウォッシュ対策のために、企業は7つの罪を理解しておくことが重要

企業が知らず知らずのうちにグリーンウォッシュを行うことを防ぐためには、7つの罪について理解しておくことが重要です。7つの罪とは、消費者がグリーンウォッシュを見極めるためのツールですが、企業側が活用することで、意図しないグリーンウォッシュを防ぐことにも役立ちます。7つの罪の詳細は以下の通りです。

・隠れたトレードオフの罪

ある側面においては環境に優しくても、別の側面において環境に負荷がかかっていることを隠すこと

・証明しない罪

根拠を示さないまま「環境に良い」と主張すること

・曖昧さの罪

定義が不十分で消費者の誤解を招きやすい表現や表示を行うこと

・偽りのラベル表示の罪

第三者からの評価がないにもかかわらず「認証済み」と主張すること

・的外れの罪

嘘ではないものの、環境に配慮した製品を求める消費者にとっては意味のない主張をすること

・まだマシの罪

同じカテゴリーの中で自社よりも環境に悪い製品やサービスと比較して、自社は「まだ良いほうである」と主張すること

・嘘をつく罪

嘘の広告や誇大表示を行い、消費者に環境に配慮している企業であると思わせること

真実の環境配慮へ取り組み、自社の環境価値を高めよう

上記で紹介した事例からもわかるように、グリーンウォッシュは悪意があって行っている企業ばかりではありません。中には、無意識のうちにグリーンウォッシュを行ってしまう企業もあるでしょう。

虚偽の報告や誇大広告を防ぐためには、なぜ環境に良いのか具体的な根拠を持って環境問題に取り組む姿勢が大切です。そのためには客観的な評価基準を参考にし、明確な目標設定を掲げるなど、有効な施策を打つようにしましょう。

客観的な評価基準とは、例えばRE100などのイニシアチブが提示しているコミットメントを参考にしたり、SBTのような目標設定フレームワークを活用したりすることなどが挙げられます。客観的なフレームワークを活用すれば、投資家や消費者にわかりやすく自社の取り組みを示すことにもつながるでしょう。

企業がグリーンウォッシュではなく本当の意味で脱炭素に取り組むことで、地球環境をより良い方向へ変えていくことができるのです。

アイ・グリッド・ソリューションズでは、企業の脱炭素経営を広く社会に告げるサポートもしています。環境配慮への取り組みを検討している企業の方は、ぜひご相談ください。

 

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