
TNFDとは?TCFDとの違いも含めてわかりやすく簡単に解説

Earth Day or World Wildlife Day concept. Save our planet, protect green nature and endangered species, biological diversity theme. Group of wild animals and flock of butterflies with globe in hand.
環境問題への取り組みについて、企業が外部に示すための枠組みのひとつにTNFDがあります。TNFDは2021年に発足し、2023年に最終提言が公表された比較的新しい国際的な枠組みのため、知らない方も多いかもしれません。
本記事では、TNFDとは何か、設立された背景やTCFDとの違いについて解説します。将来的にTNFDに参画することが義務化される可能性もあるため、企業担当者の方や環境問題に興味のある方はぜひ確認してください。
TNFDとは?
TNFDとは、「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略です。日本語では「自然関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれています。企業が、自然環境の変化や生物多様性に関する情報を適切に開示するために設けられた枠組み、もしくは枠組みを構築するための国際的な組織そのものを指します。
TNFDは、企業が自然環境に良い影響をもたらす方向で資金を使うよう変化させることを目的としており、環境保全や自然回復力を促すことを目指すものです。自然資本の中でも、とくに生物多様性を守ることに焦点を当てていることが特徴です。
TNFDが設立された背景とは?
多くの産業は自然そのもの、もしくは自然がもたらす恩恵に依存しています。世界経済フォーラムが指摘した内容によれば、林業や農業、建設、電力などの産業は自然への依存度が高く、また直接依存していなくてもサプライチェーンを通じて間接的に依存している産業が多く存在しています。例えば、航空・観光、鉱業・金属、不動産などがそれにあたります。
自然の恩恵に依存し続けることで自然破壊が進めば、自然消失のリスクが高まることはもちろん、将来的に多くの産業で事業を継続することが難しくなるでしょう。経済に大きなダメージを与えてしまう前に、企業が自主的に自然を守るための活動に取り組むことが求められています。そこで設立されたのがTNFDです。
自然を守るためには、陸・海・淡水・大気における生態系を壊さないよう配慮し、すでに破壊してしまったものに関しては、回復に向けて努力していかなくてはなりません。企業が自然を保護するためのアクションに資金を回すには、投資家が適切な投資を行う必要があり、そのための判断材料としても役立つのがTNFDです。
TNFDに似たTCFDとの違いは?
TNFDに似た組織に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)があります。タスクフォースとは、緊急性の高い問題を解決するために一時的に設けられる組織のことを指し、TCFDも国際的な課題を解決するための組織のひとつです。
企業活動が気候変動に大きな影響を与えている背景から、世界的にCO2の排出を抑制するため、企業が脱炭素への取り組みについての情報開示を行う枠組みとして設立されました。TCFDは、2021年に設立されたTNFDに先駆けて、2015年に設立されています。
TNFDが自然資本や生物多様性といった自然全般に関するタスクフォースであるのに対し、TCFDは主に気候変動を重視した情報開示を求めています。
情報開示の枠組みとして、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクト管理」「指標と目標」の4つの柱を採用していることは共通していますが、TNFDのほうがより幅広い範囲の情報を開示する必要があります。
TNFDの最終提言v1.0で変更が加わったポイント
2021年に発足したTNFDは、2023年9月に最終提言v1.0が発行され、それまでのベータ版に多少の変更点が加えられました。以下で、具体的な内容を紹介します。
TNFDで開示が推奨されている項目
TNFDで開示が推奨されている項目は、先述した「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクト管理」「指標と目標」の4つを柱とした全14項目です。大きな変更点としては、ガバナンスに「C」が追加されたことと、リスクとインパクトの管理から「D」が削除されたことの2点です。4つの柱の概要と、変更点について簡単に解説します。
・ガバナンス
ガバナンスは4つの指標の中でもっとも重要とされ、自然と関わる企業の管理体制について説明するものです。「A:自然関連の依存、影響、リスク、機会に関する取締役会の監視」など、A〜Cの3つの項目を開示することが推奨されています。今回追加されたガバナンスCは、組織の人権方針やエンゲージメント活動などについて開示するよう求めた内容です。
・戦略
戦略では、組織の事業や戦略、財務計画に与える影響について、必要な場面で開示するものです。A〜Dの4つの項目を開示することが推奨されています。ベータ版から大きな変更点はないものの、自然への依存関係・影響・リスク・機会が、組織のビジネスモデルなどに与える影響についても開示するようマイナー修正されています。
・リスクとインパクト管理
リスクとインパクト管理では、自然への依存や自然に与える影響、リスク、機会を特定・評価し、優先順位を付けたうえで組織のプロセスを説明することなど、4項目の開示が推奨されています。最終提言v1.0では、ベータ版に存在した「D:自然関連の依存関係、影響リスク、機会への評価と対応において、ステークホルダーが組織にどのように関与しているか説明する」が削除されています。
・指標と目標
自然への依存や影響、リスクなどを評価したり管理したりする際の、指標や目標を開示します。3つの項目の開示が推奨されています。変更点はほぼありません。
LEAPアプローチ
LEAPアプローチとは、TNFDで企業が情報を開示するためのプロセスを指します。「Locate」「Evaluate」「Assess」「Prepare」のそれぞれの頭文字をとっていることから、LEAPアプローチと呼ばれています。
企業が自然関連の課題を見つけるために役立つとして、ベータ版では中心的なフレームワークとされていました。それぞれの単語が意味するものは以下の通りです。
Locate:自然との接点を発見する
Evaluate:依存と影響を診断する
Assess:リスクと機会を評価する
Prepare:リスクと機会に対応し、報告するための準備を行う
LEAPアプローチにおいても、TNFDの最終提言v1.0で変更点がありました。まず、全体のエンゲージメントとして、影響を受けるステークホルダーだけでなく「先住民」や「地域社会」も追加されていることです。また、Locate・Evaluate。Assessの3つにおいても、若干の追加や変更がなされています。
企業にとってTNFDへの取り組みは急務
すべての企業にとって、TNFDへの取り組みは急務となりつつあります。企業活動の多くは自然資本に依存しており、このまま自然をかえりみない活動を行い続ければ、地球上の多数の動植物が絶滅に追いやられてしまうことは明らかです。
2023年12月にIUCN(国際自然保護連合)が発表した情報によれば、世界では4万種を超える野生生物が「絶滅の危機が高い」と評価されています。
2022年4月からは、東京証券取引プライム市場の上場企業において、TCFDに基づき気候変動に関する情報開示をすることが実質義務化されています。大手だけでなく、今後は中小企業でも情報開示を義務化する流れが進んでいくと予想されます。
TCFDと関係の深いTNFDにおいても、最終提言v1.0が発行されて以来、多くの企業が情報開示を行っています。今後はTNFDに関しても、上場企業から義務化が進んでいく可能性があるため、どの企業も今のうちに情報開示ができるよう準備しておく必要があるでしょう。
日本でTNFDに参画している企業や団体は?
日本においてもTNFDに参画する企業や団体がみられ、大手企業を中心に以下を含む27団体が情報開示に取り組んでいます(2022年3月時点)。
・積水ハウス
・丸紅
・みずほフィナンシャルグループ
・キリンホールディングス
・金融庁
・環境省
今後はさらに、参画する企業や団体が増えていくと予想されます。
企業がTNFDに参画するメリット
企業がTNFDに取り組むことで、地球の自然保護につながることはもちろん、自社の事業活動においてもメリットが得られます。例えば、情報開示やそれに対する対策を行うことで、消費者や株主などのステークホルダーから信用を得て、会社の評価が高まることです。
社会的な信用が高まれば、投資家や金融機関からの資金調達がしやすくなり、事業の継続や新たなビジネスチャンスを掴むことにもつながります。
また、TNFDへの取り組みは自社と自然の関係を整理できることから、事業における新たなリスクの発見にもつながるでしょう。すでに気候変動対策への取り組みを行っている企業であっても、生物多様性に着目した情報開示を行うことで、また別の観点から経営を見直す機会にできます。
さらに、環境問題への取り組みによって就職活動中の学生にもアピールできるため、優秀な人材を確保できる可能性が高まることもメリットです。
アイ・グリッドは環境課題解決に取り組むエネルギーサービスプロバイダー
アイ・グリッド・ソリューションズは、発電・蓄電・売電・エネルギーマネジメントによる総合的なアプローチで脱炭素に取り組む企業です。令和4年には、分散型太陽光発電システムによる「再生可能エネルギーの余剰電力循環モデル」が、環境大臣表彰を受賞しています。
「再生可能エネルギーの余剰電力循環モデル」とは、AIやIoTを活用し、発電したエネルギーを地域全体で無駄なく使おうとする取り組みです。アイ・グリッド・ソリューションズでは、今後も再生可能エネルギー事業を中心に、テクノロジーを活用しながら、環境課題の解決に向けてさまざまなサービスを展開していくことを目指しています。
▷関連記事
・TCFDとは?わかりやすく簡単に解説!開示するものはなに?
・【2021年最新】TCFDとは?日本のTCFD賛同企業一覧も紹介
・【初心者向け】CO2排出量削減へ向けた日本企業の取り組みまとめ
▷グリラボSNSのフォローお願いします!!
Twitter @gurilabo
▷アイグリッドグループ



