【2021年最新】TCFDとは?日本のTCFD賛同企業一覧も紹介
SDGsへの注目とともに、各企業が“持続可能な社会活動”について発信することが増えています。それに伴い、「TCFD」への賛同を表明するプレスリリースを出す企業も目立つようになりました。まだまだ一般的には聞きなれない言葉であり、あまり詳しく内容を知らない人も多いかもしれません。サステナビリティな社会を実現するにあたり、TCFDは企業にとっても重要な取り組みです。
この記事では、TCFDの概要や取組みの内容、日本における賛同企業や事例などを紹介します。
そもそもTCFDとは?
TCFDとは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略語であり、「気候関連財務情報開示タスクフォース」のことを指します。国際金融の規制や監督を行う金融安定理事会によって、G20の要請を受けて2015年に設立されました。
TCFDの目的は、投資家や金融機関が適切な投資判断を行えるよう、気候変動に関する財務情報の任意開示を企業にうながすことです。現在の地球は、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出により地球温暖化が進んでいます。これらの気候変動は、人々の生活に様々な変化を与えるだけでなく、企業の事業活動や収益にも影響を与える可能性があります。
著しい気候変動が企業の財務状況に与えるインパクトは、投資家や金融機関にとっても重要な情報です。企業の将来における一貫性や比較可能性、信頼性、明確性といった指標を、投資家や金融機関が評価しやすくなるためです。
これまでも、CO2排出量の開示や、排出量削減など環境問題に配慮する取り組みは、各企業が任意で行なってきました。しかし、TCFDは環境に対する取り組みそのものを求めるのではなく、気候変動によって企業が受けるインパクトを調査・分析し、開示することを求めています。そこが、SDGsやESGといった取り組みと大きく異なる点です。
TCFD | 企業に対し、気候変動によって事業活動や財務に受けるインパクトを調査・分析し、情報開示をすることを求める投資家や金融機関が企業を評価しやすくすることが目的 |
SDGs | 持続可能な社会を達成するために、世界が取り組むべき具体的な目標国や社会に対し、目標に沿った行動や取組みを促す |
ESG | 環境、社会、ガバナンスの頭文字をとった、企業の投資の新しい判断基準企業は、ESG投資家に向けて、環境を考慮した事業活動や社会問題に取り組んでいることをアピールする |
TCFDの賛同企業数の推移
2017年6月に、自主的な情報開示のあり方が示された「TCFD報告書」が公表されて以降、TCFDへの賛同を表明する企業は世界中で増え続けています。
2022年1月時点において、世界全体でTCFDへの賛同を示した企業数は、29722972社でした。日本においては、2019年から急速に賛同企業が増え始め、2022年1月時点で687687社の企業・機関が賛同を公表しています。この企業数は、アメリカ、イギリスを抑えて、世界トップの値です。
出典:TCFDコンソーシアム公式サイト
また、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンスコード(上場企業が行う企業統治におけるガイドライン)においても、TCFDによる情報開示を求める項目が盛り込まれました。このことから、今後もTCFDに賛同する企業はさらに増加していくものと考えられます。
2021年に加盟した日本の賛同企業一覧
日本に賛同している企業は、TCFD公式サイトで確認することができます。フィルターの「Location」で「Japan」を選択すると、日本国内の企業のみを表示することも可能です。
その中から、賛同企業の一部をご紹介します。
ピジョン
ベビー用品やマタニティ用品などの製造・販売を行っているピジョンは、以前から経営における「サステナビリティ」を重視する会社です。同社は、「この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にすること」をミッションとしており、「赤ちゃんとお母さんを取り巻く社会課題の解決をする」というビジョンを持っています。この考えから、ESGやSDGsに関する基本方針の制定やサステナビリティ経営の推進、生物多様性の保全を目的とした自然保護の取り組みなどを行ってきました。
TCFDへの賛同を表明したのは、2021年12月です。今後は、TCFDの提言を踏まえて、気候関連リスクや機会の分析を行い、ガバナンス、戦略、リスク管理の観点から情報開示を積極的に行っていくと述べています。
2020年の取り組み進捗状況
森永乳業
乳製品の販売・製造を行う森永乳業は、2021年3月 からTCFDへの賛同を表明しました。同社は2019年度から“ESGを重視した経営”を掲げており、もとより「事業活動が環境に与える影響だけでなく環境が当社の事業活動に与える影響を評価し対応します」という環境方針を掲げていました。
サステナビリティについては、「省エネルギー、廃棄物削減に取り組みながら安全・安心な商品を製造し、サステナブルな社会づくりに貢献します」という基本方針を策定し、気候変動への対応、食品ロスや産業廃棄物の削減、用水をはじめとした資源の効率利用による使用抑制などに取り組んでいます。
各取り組みについてはKPIを設定し、毎年発行する「サステナビリティデータブック」の中で進捗状況を報告しています。
サステナビリティデータブック2021
OKI
情報通信事業やメカトロニクス事業を主軸とするOKIは、2019年5月にTCFDの提言に沿った情報開示・発信と、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを強化すると発表しました。
環境に関する取り組みとして、2019年4月にOKIグループ中長期環境ビジョン「OKI環境チャレンジ2030/2050」を発表し、気候変動の緩和や適応に向けた活動を推進しています。具体的には、製品自体の省電力化などを中心としたライフサイクルCO2排出量の削減、道路交通システムによる交通渋滞の抑制を通したCO2排出の削減への貢献、防災システムの提供など、事業における環境負荷の緩和に取り組んでいます。
また、気温が3~4℃上昇した場合の気候が財務にあたえるリスクのシナリオ分析を行い、戦略を策定。その内容は、グループが作成するIR資料の中で報告されています。
OKIレポート2021
TCFDの賛同に関する疑問
TCFDに賛同を表明する方法は?
TCFDに賛同を表明するには、TCFD公式サイトにアクセスし、企業情報や担当者情報を英語で記入または選択肢から該当項目を選択します。
具体的には、以下の情報が求められます。
<企業情報>
・会社名
・業界
・地域
・国
・WebサイトのURL
・時価総額
・運用資産
<担当者(記入者)情報>
・氏名
・Eメールアドレス
・電話番号
・役職
・敬称・肩書
また、賛同を表明した企業は、以下の4つの項目について開示を要求されます。
<①ガバナンス(企業統治>
・リスクと機会に対する取締役会の監督体制
・評価と管理を行う経営者の役割
<②戦略>
・短気・中期・長期のリスクと機会、事業・戦略・財務計画に及ぼす影響
・様々な気候変動シナリオに基づく検討を踏まえた組織戦略の対応力
<③リスク管理>
・リスクの選別・評価のプロセス
・リスク管理のプロセス
・組織の総合的リスク管理への統合
<④指標と目標>
・リスクと機会を評価する際に用いる指標
・Scope1,Scope2と該当するScope3のGHG排出量
・リスクと機会を管理するために用いる目標とそれに対する実績
TCFDに企業が賛同するメリットは?
TCFDに賛同することには、企業にとってなにかメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットを2つご紹介します。
投資家からの投資増加が期待できる
最も大きなメリットは、投資家や金融機関からのESG投資が期待できることです。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった言葉で、持続可能な世界の実現と企業の中長期的な成長のために重要な観点とされています。
ESGに配慮している企業に投資することを「ESG投資」といい、近年、急速に規模が拡大しているジャンルです。2018年における世界のESG投資額は全投資額の3分の1を占めており、5年間で3倍に成長しています。
気候変動から受ける影響を調査・分析し、持続可能な事業活動を目指すTCFDへの賛同は、ESG投資家から評価される可能性が強まります。
経営リスク管理と対策を強化できる
TCFDへの賛同を表明した企業は、気候変動が事業や財務に与える影響を調査・評価し、それに対する戦略や対策を策定して公開する必要があります。事業リスクや具体的な対策の検討を進めることは、リスク管理や環境問題、災害対策などの知見を社内に蓄積することにつながります。
これらの知見は、他の経営リスクが訪れた際や災害発生時などにも役立てることができるでしょう。
まとめ
TCFDへの賛同を示すことで、企業は将来の地球環境や気候変動に対するリスクに関心を持ち、対策を講じていることを社会に表明できます。それは、サステナビリティな社会の実現に繋がるだけでなく、投資増加やリスク耐性強化といったメリットを企業にもたらします。
SDGsやESG投資への注目がさらに高まる中、今後もTCFDに賛同する企業の数はますます増加していくでしょう。
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