森林破壊の地球への影響とは?原因と対策、今私たちにできることまとめ

森林破壊による地球温暖化や大規模な森林火災などを耳にすることが増えました。

「森林破壊の現状や対策がよくわからず不安になる」「自分にも何かできることはないか」などと、日々思っている人は多いのではないでしょうか。  

この記事では森林破壊による地球への影響や、その原因、世界や日本が取り組んでいる対策などをわかりやすく解説します。

また、個人でできる取り組みも紹介していますので、環境保護に関心を持っている方は、具体的にどのようなアクションが必要なのか参考にしてください。  

森林破壊とは?

森林破壊とは、森林の伐採や、土壌汚染、地球温暖化など人間の活動が原因で森林が消失してしまうことです。

森林には主に以下の働きがあります。

  • 生態系のバランス維持 ・二酸化炭素吸収(地球温暖化防止)
  • 天然のダム・浄水
  • 土砂保全 ・資源(木材、キノコや果物などの食料など)を育む  

 

森林破壊とはこれらの重要な機能、自然の恵みを失うことにほかなりません。

つまり森林破壊が進めば、単に森林が失われるだけでなく、特定の動物が絶滅したり、食料不足に陥ったり、異常気象が増えたりするなど、さまざまな悪影響が生まれます。  

特に現在では、森林が減ってCO2吸収量が少なくなったことから地球温暖化が進むことが大きな問題となっており、世界中で森林破壊を食い止めようとする動きが活発になりました。  

森林破壊の現状

実際のところ、世界と日本の森林破壊はどの程度であり、またどのように状況が推移してきたのでしょうか。  

まず世界の現状を森林減少面積の推移でみてみましょう。  

引用元:世界森林資源評価(FRA)2020 メインレポート 概要

世界の森林のうち約45%は熱帯地域に分布しており、1990年~2020年までの30年間で減少した森林の9割も熱帯地域のものです。

詳しく見ると、最も森林減少が多いのはアフリカで、1年間で平均約441万ヘクタールもの森林が失われています。さらに、南米で約296万ヘクタール、アジアで約224万ヘクタールと続きます。

一方、中国で約194万ヘクタール、オーストラリアで約45万ヘクタールなど、森林が増加している国も存在します。とはいえ、減少スピードの方が圧倒的に早く、世界で森林減少が進んでいることに間違いありません。

一方、日本の現状をみますと、日本の森林面積は以下のようにほぼ横ばいで、国土の約3分の2にあたる約2,505万ヘクタールが森林で占められています。

引用:森林資源の現況 森林面積の推移|林野庁

これをみる限り、日本には森林破壊がないように思えますが、実際には別の問題を抱えています。

日本では、森林面積に変化がない一方、長年手入れされていない放置林の割合がどんどん増加しており、木材としての価値低下や土砂災害の危険性が懸念されています。また、国産木材を放置している分、低価格の外国産木材を大量に輸入しており、間接的に世界の森林破壊に加担していると考えると、この点も日本の課題といえるでしょう。

森林破壊の原因

森林破壊の主な原因は、以下の3つです。  

  • 過剰な森林の伐採
  • 焼畑農業の増加
  • 地球温暖化によって起きる森林火災  

れぞれについて、詳しく解説します。  

過剰な森林の伐採

世界の人口爆発や食料不足、エネルギー不足を背景に、過剰な森林の伐採が進んでいます。

特に被害が大きいのは、違法伐採と土地利用の転用の2つです。

 違法伐採とは、その国の法律で定められた伐採区域、量、面積に反して伐採することです。

例えば、国が所有する森林に勝手に侵入して、木を切り倒して転売するなどの行為があります。

こうした伐採は直接的に森林破壊につながるだけでなく、不当に安価な木材が流通することで、後ほど詳しく説明する持続可能な林業にも悪影響を与えています。

  土地利用の転用とは、短期的な利益や自社の利益のために森林をプランテーション(大規模農園)や商業施設などに変えてしまうことです。

この場合、先進国やその国の富裕層が公共の利益を害しているケースが少なくありません。  

焼畑農業の増加

焼畑農業とは、森林を焼き払って肥料に変えることで農地にする方法です。

開拓負担が少ないことから特に熱帯地域、亜熱帯地域でよく使われる手法で、現在はほぼなくなりましたが日本でも古代から用いられています。

焼畑農業は森林の回復力とバランスを取っている限りは有効な方法ですが、過度に行うと森林と土地の使い捨てにすぎません。

この問題点は農業従事者も知っていますが、農民の増加や作物増産を求める市場経済によって、焼畑農業をしなければならないケースが多いことが問題です。  

地球温暖化によって起きる森林火災

地球温暖化によって春の雪解けが早くなり夏の温度が上がりますと、乾燥して発火しやすい条件が整い、森林火災が増えてしまいます。

地球温暖化とは、電気などのエネルギーを得るために石油や天然ガスなどを燃やすとCO2やメタンなどの「温室効果ガス」が発生して、地球規模で気温が上昇する現象です。

具体的には、カリフォルニア州などのアメリカ西部における森林火災の発生頻度が、1980年代なかば以降、1970~1986年に比べて約4~6倍に急上昇して大きな被害を出しています。

また、オーストラリアでは2019年7月から半年間で1,000万ヘクタールの森林が焼失するなど、世界各地で大規模な森林火災が問題になっています。

日本では地球温暖化の影響による森林火災はほぼなく、多くはタバコの不始末など人間が引き起こしているケースが大半です。

しかし、距離が近い朝鮮半島では、すでに地球温暖化に起因する干ばつによるとみられる森林火災が発生していることを考えると、将来的に対策が必要になるかもしれません。  

森林破壊による世界や日本への影響

森林破壊は人や動植物の活動と気候に悪影響を与えています。

ここでは特に重要な以下の3点について、詳しく解説します。  

  • 野生生物の絶滅
  • 人々の生活への影響
  • 気候変動への影響  

 

野生生物の絶滅

世界自然保護基金(WWF)とロンドン動物学会が2020年に発表した「生きている地球レポート2020」によると、「生きている地球指数」は、1970年時点と比較してマイナス68%でした。

「生きている地球指数」とは、ほ乳類、鳥類、両生類、は虫類、魚類の個体群を1970年当時を1として表す指標ですので、要するに地球の生物多様性が、わずか半世紀ほどで68%も失われたということです。

世界の「生きている地球指数(LPI:Living Planet Index)」

  出典:生きている地球レポート2020

  これほど急激な変化が進む背景には、森林破壊のほかにも、海や土壌、大気の汚染、乱獲など複数の原因が重なっています。

そのため同レポートは、“地球環境の回復と経済の発展とを両立させる「グリーン・リカバリー(※)」の実現にむけて、国、地方自治体、事業者、すべての人々がひとつになって具体的な施策を行動に移すとき”と結んでいます。  

※withコロナの経済対策と連動して、脱炭素で循環型の社会を目指すこと

引用:生きている地球レポート2020  

 

人々の生活への影響

森林破壊とは、自分の生きる場所を自ら破壊し、劣化させる行動にほかなりません。

その結果、次のような影響が出ます。

  •  疫病の蔓延

森林破壊によって地球温暖化が進むとマラリア、黄熱病、デング熱などの伝染病を媒介する生物が増加します。その結果、主に熱帯・亜熱帯地域で発生していた疫病が世界中で発生するようになると警告されています。  

  • 食糧生産の悪化

森林は貴重な食料庫ですが、森林伐採や土地の転用などによって、キノコ、果実、山菜などが収穫できなくなってしまいます。森林をプランテーションに変えることで生産力が上がるケースもありますが、長期的にみれば生産量が減るケースが少なくありません。

  •  紛争の拡大

近年、森林の所有権を巡る紛争が頻発しています。その背景には人口爆発と地球温暖化による食料、資源の枯渇や、経済活動の拡大があり、その結果、内紛が起きたり諸外国企業と現地住人が争ったりするケースが増えているからです。貴重な森林を失うことは飢えに直結しやすく、深刻な問題に発展しかねません。  

気候変動への影響

森林は大気中のCO2濃度を減らす役割を担うため、森林破壊は地球温暖化につながり、気流や雨量の気候変動を引き起こします。

環境省のレポートによれば、このまま化石燃料に依存する社会が続けば、世界平均気温が2.4~6.4℃まで上昇して北極海の氷が消滅し、予想を超えた異常気象が起こるリスクもあるということです。

また、数百万人単位の洪水被害者が出たり、猛暑による死者が増えたりするなども予想されています。

  出典:森林の減少と温暖化

 森林減少によって増える温室効果ガスの排出量は、世界全体の排出量の約2割に相当します。

このため地球温暖化と気候変動を防ぐためには、森林保護が極めて重要です。そして、これほどの大規模な取り組みで成果を出すには、国や地域の施策だけでなく、個人レベルの積極的な参加が欠かせません。  

世界・日本が取り組む森林破壊への対策

世界と日本は、森林破壊を放置しているわけではありません。ここでは世界や国レベルでの大規模な取り組みとして、 下記 の3つを解説します。  

  • 国連環境開発会議(UNCED)
  • SDGs
  • RSPO(パーム油を持続的な資源にする取り組み)

国連環境開発会議(UNCED)

国連環境開発会議(UNCED)とは、別名「地球サミット」とも呼ばれる、1992年に開催された環境と開発をテーマにした国連会議です。

この会議の成果は、大気中のCO2削減に関する国際的な枠組みを定めた「気候変動枠組条約の採択」や、「生物多様性条約の署名」など多岐にわたりますが、森林保護についても「森林原則声明の採択」があります。

森林原則声明の採択とは、世界各国で協力して森林破壊を防ぎ、植林を進めようとするものです。

 参考:国連における森林問題への取組 1 世界の森林の減少・劣化|外務省  

この森林原則声明に関連して、日本も森林問題への取り組みを以下のように表明しています。

  ” 森林問題を巡っては、従来から、特に熱帯林を中心として急速な減少・劣化の進行等が指摘され、1992年6月UNCED(国連環境開発会議、通称「地球サミット」)で採択された『アジェンダ21』第11章「森林減少対策」には、熱帯林、温帯林、北方林を含む全ての種類の森林の多様な役割・機能の維持や、森林の持続可能な経営及び保全の強化等が挙げられている。また、UNCEDでは「森林原則声明」(注)も採択された。”

出典:国連における森林問題への取組|外務省  

(注)「森林原則声明」(”Forest Principles”)

正式名称:「全ての種類の森林の経営、保全及び持続可能な開発に関する世界的合意のための法的拘束力のない権威ある原則声明」

森林に対する各国の主権の確認、森林の保全・回復及び持続可能な経営の実施に向けて各国は努力し、国際社会は協力すべきこと等、森林の保全、持続可能な経営・開発の実現に向け国レベル、国際レベルで取り組むべき15項目の内容を規定。

SDGs

SDGsとは、貧困や飢餓、個人の人権や健康、自然保護や新しい産業構造など、世界共通で取り組むべき課題を17の項目にまとめ、それぞれに具体的な目標(ターゲット)を定めた国際的な開発目標です。

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、日本では「持続可能な開発目標」と訳されます。

SDGsで特に森林破壊と関連があるのは、以下の2項目です。

13_気候変動に具体的な対策を15_陸の豊かさも守ろう

併せて各項目に設けられたターゲットのうち関連性が高い内容も引用して紹介します。    

項目番号 開発目標 ターゲット
13

気候変動に具体的な対策を

・気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む(13.2)
15

陸の豊かさを守ろう

・2020 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる(15.2)   ・2030 年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に加担しない世界の達成に尽力する(15-3)   ・自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020 年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる(15.5)

 もちろん、例えば森林破壊の背景にある貧困問題(項目1「貧困をなくそう」)や、違法伐採を減らすための経済循環(項目12「つくる責任つかう責任」)など、ほかにも関連する項目は数多くあります。

全体的なイメージとしては、林野庁が作成した以下の図が参考になるでしょう。  

我が国の森林の循環利用とSDGsとの関係

出典:森林×SDGs|林野庁  

RSPO(パーム油を持続的な資源にする取り組み)

パーム油はアブラヤシから採れる油で、マーガリンや食用油、加工食品、洗剤などに幅広く、大量に使われています。

パーム油の使用用途

出典:パーム油 私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの |WWF JAPAN   

上昇を続けるパーム油の生産量

出典:パーム油 私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの |WWF JAPAN  

このパーム油は他の油に比べて安価に大量生産できることから、大規模なアブラヤシ農園が多く開かれ、これが森林破壊になるケースが少なくありません。

特に主要生産国のマレーシア・ボルネオ島では、大きな問題になっています。

そこで、非営利組織のRSPO(パーム油を持続的な資源にする円卓会議)は、環境・社会課題に配慮した持続可能なパーム油の生産や取引が標準になるように、国際認証制度を運営しています。

パーム油の生産や製造、販売などに携わる企業は、信頼感やブランド価値を得るためにRSPOの会員になって認証を受けようとするため、市場全体が持続可能な構造に変わっていくというわけです。  

森林破壊を止めるために私たちができること

個人レベルで森林破壊を食い止めたり、森林破壊による地球温暖化を抑えたりすることはできるのでしょうか。

実は身近にできる取り組みはいろいろあります。  

目的 具体例
森林破壊を少しでも減らすためにできること ・RSPOの認証マークが付いた商品を購入する   ・森林認証(森を守るマーク:FSC®)の付いた商品を購入する(※認証は生物多様性や環境保護に配慮した林産物の調達事業者に与えられる)   ・持続可能な森林経営を支援する「フェアウッド・キャンペーン」に参加する(森林破壊の問題や消費者のつながりを各地のトーク&スライドショーで学べる) など
森林破壊による地球温暖化を防ぐためにできること ・自動車利用を控えて、電車移動にする   ・エアコン、暖房を控えるなど、省エネを心がける   ・太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用する など

  上記の例のうち、住宅に太陽光発電を導入するには高額な初期費用が必要ですが、電気プランの見直しによって似た効果を得る仕組みが注目されています。

例えばアイ・グリッド・ソリューションズは、商業施設や物流施設の空いた屋根のスペースに太陽光発電を設置し、CO2を排出しないエネルギーを生み出しています。

生み出された電気は、再エネ100%の電気ブランド「スマ電CO2ゼロ」として一般家庭にも届けられています。

この取り組みは、森林を破壊することなくエネルギーを発電する仕組みとして、環境省の「グッドライフアワード(※)」にて環境大臣賞最優秀賞を受賞しました。

アイグリッドはデジタルテクノロジーを活用し、グリーンなエネルギーを余すことなく地域に循環させることで、再エネの普及や環境保護に貢献しています。

※環境省が主催している地域循環共生型の環境と社会によい活動を応援するプロジェクト

関連記事:アイ・グリッド・ソリューションズ 環境省「第9回グッドライフアワード」環境大臣賞 最優秀賞を受賞

まとめ

過剰な森林伐採や焼畑農業などによる森林破壊は、生態系を壊したり地球温暖化などを引き起こしたりするため、世界規模で取り組むべき問題になっています。

国が推進する大規模な対策もありますが、一個人としても森林を保護し、地球温暖化を防ぐ行動を心がけたいものです。

本記事では個人でもできる取り組みとして、省エネ行動や再エネの電気プランへの切り替えも紹介しました。

みなさんのできる範囲から、森林破壊を防ぐ行動を起こしてみてはいかがでしょうか。


 

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