【事例あり】SXとは?SDGsやDXとの違いをわかりやすく紹介
SDGsによって「サステナビリティ」という言葉が広まるにつれ「SX」という言葉を耳にする機会が増えました。SXはサステナブルな社会を実現する上で欠かせない取り組みであり、一般企業に対しても社会課題への貢献が求められる現代のビジネスシーンにおいて、重要性の高い言葉です。
この記事では、SXに関する基礎知識を解説するとともに、企業の取り組み事例や類語との違いを紹介します。
SX(サステイナビリティー・トランスフォーメーション)とは
SXとは「Sustainability Transformation(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」の略称で、「企業のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」の両立を目指す考え方です。経済産業省が設置した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」によって、2020年に提唱されました。
「企業のサステナビリティ」とはビジネスモデルや事業の優位性などを中長期的に持続化・強化することです。「社会のサステナビリティ」とは気候変動や感染症の流行といった社会の不確実性に備えて、将来的な社会の姿を構築することを指します。
現在、投資家の間でも企業成長と社会課題の解決を同時に目指さなければ経済拡大を維持できないという考えが広まっています。企業と投資家が対話を深め、新たな価値創造につなげることがSXの目的です。
SXが注目されている理由
SXが企業や投資家の注目を集めるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか。代表的な3つの理由を解説します。
世界情勢の変化
現在、世界情勢の変化が激しいことから、社会の不確実性が高まっているといわれています。
代表的な例としては、地球温暖化による気象変動があげられます。世界規模の気温上昇によって自然災害や食料危機などが発生しており、経済だけでなく人々の日常生活にも多大な影響を及ぼしています。ほかにも、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック、急激な技術革新、グローバルサプライチェーンの寸断など、従来の社会システムを大きく変容させるような事象が相次いでいるのです。
企業はこれらの不確実性に備えつつ、事業成長を持続させなければなりません。そのためには、自社の利益だけでなく社会全体の持続性にも貢献することが求められるため、SXに取り組む企業が増えています。
投資家への影響
SDGsが広まったことも相まって、投資家の間では「ESG投資」という考えが主流になりつつあります。ESG投資とは「Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)」の頭文字を取ったもので、社会課題や環境問題に配慮した経営を行っている企業に優先して投資する手法です。
前述の通り、企業が事業成長や利益拡大を維持するためには、同時に社会課題の解決を目指さなければなりません。環境問題や貧困、食糧問題などを放置していては、経営リスクを高める可能性があるためです。
SXへの取り組みを表明すると、これらの経営リスクに対する備えをしていることのアピールになり、ESG投資家からの投資拡大が期待できるのです。
企業イメージの向上
環境問題や社会課題の解決に積極的な姿勢を示せるため、社会における企業イメージの向上になるというメリットもあります。
地球温暖化が急速に進む現代では、異常気象やそれに伴う自然災害が頻発するようになり、世界的に環境問題に対する意識が高まっています。一般消費者についても例外ではなく、SDGsなどのサステナブルな取り組みに積極的な企業を重視する傾向が高まっているのです。
特に、ミレニアル世代でこの傾向が顕著であるといわれています。SXによってミレニアル世代からの好感を得ることで、ビジネスチャンスの拡大が期待できます。
SXに必要な3つの要素
「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」の取りまとめによると、SXの実現には「3つの要素」が必要とされています。
企業としての「稼ぐ力」の持続化・強化
1つ目は、企業の「稼ぐ力」の持続化・強化です。
企業の経営体制や事業内容に持続性がなければ、SXの実現は不可能です。そのため、まずは企業の強みや事業の優位性、ビジネスモデルを強化し、企業持続性を高める必要があります。「企業のサステナビリティ」ともいわれており、中長期的な視点で事業ポートフォリオや経営マネジメントの見直し、イノベーション創出を想定した種まきを行い、企業のサステナビリティを高めることを目指します。
社会のサステナビリティを経営に取り込む
2つ目は、社会のサステナビリティを経営に取り込み、中長期的な経営リスクやビジネス機会を経営に反映させることです。
前述で説明した通り、不確実性が高まっている現代社会において、企業が持続的に成長するためには社会課題への取り組みが必要不可欠です。あわせて、社会の将来像を予測しながら、予想される経営リスクにも備えなければなりません。また社会の変動はリスクであるとともに、新しいビジネスチャンスの可能性も秘めています。
これらの将来的なリスクや機会を把握し、具体的な経営に反映させることで企業の持続性がさらに高まるのです。
企業と投資家による対話
SXの実現においては、投資家との対話も欠かせません。SXは中長期的な取り組みであり、短期的な利益や業績を求める投資家からの理解が得られない可能性があるためです。
例えば、SXでは将来的なリスクやイノベーションに対する先行投資、経営の多角化、社会奉仕活動などが重要なテーマとなりますが、これらは直近の利益とは結びつかず、投資家の理解を得にくいテーマです。
企業は投資家との対話の機会を積極的に設けて、SXによる投資家へのメリットや社会的意義、方針などを丁寧に説明していかなければなりません。
SXの取り組み事例
ここでは、実際にSXに取り組み社会からの注目を集めている企業の事例を紹介します。
住友商事(株)
総合商社である住友商事では「サステナビリティ推進部」を設置し、ステークホルダーからの要請に応えながら、グループ全体のサステナビリティを推進しています。自社事業において重要な6つのマテリアル(重要課題)を定めて、事業活動や社会活動を行っています。
具体的には、再生可能エネルギー事業や蓄電池のリユースプロジェクト、エネルギーの安定供給事業など、マテリアルごとに事業を立ちあげています。
また世界中のグループ社員が対話する「100SEED」という教育制度も特徴的です。全社員に対して良質な教育の機会を平等に与え、SXへの理解を深めています。
ネスレ日本(株)
ネスレは「食の持つ力で人々の生活を豊かにすること」を信条に、自社の持つグローバルなビジネスリソースや専門知識を活かして、人々と地球の健康な未来を創造することをサステナビリティの方針としています。
具体的には、一次サプライチェーンにおける森林破壊ゼロや自社製品のプラスチック使用率削減といった取り組みを実施しています。特に注目を集めたのは『キットカット』の紙パッケージ化です。大袋タイプ製品の外袋の紙化を進め、「第44回木下賞 包装技術賞」を受賞しています。
これらの各プロジェクトを通して、2018年以降のCO2排出量を400万トン削減することに成功しました。
温室効果ガス排出量実質ゼロのプレッジ(約束)から1年 | サステナビリティ | ネスレ日本 企業サイト | Nestlé
富士通(株)
富士通は、2020年に企業パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と刷新し、経営方針としてサステナビリティを打ち出しました。パーパスの実現に向けて、人権・多様性、ウェルビーイング、環境、コンプライアンス、サプライチェーン、安全衛生、コミュニティといった7つの重要課題を設定し、取り組みを進めています。
また社会活動ではなく事業としてサステナビリティに取り組むため、グローバルな事業ブランド「Fujitsu Uvance」を設立しました。富士通の強みであるテクノロジーを活かし、顧客のSXを支援したり、様々な分野の企業と連携して新しいエコシステムを生み出したりなど、社会課題の解決を目指しています。
Fujitsu Uvance : Fujitsu Japan
SXに類似した言葉とそれぞれの違い
環境問題や社会課題に関する議論の中で「DX」「GX」「SDGs」といった言葉を耳にすることがあるでしょう。これらのSXとよく似た言葉について解説します。
SX | 企業と社会、双方のサステナビリティを両立し、不確実性に備えた社会構造を生み出すこと |
---|---|
DX | テクノロジーを用いてビジネスや日常生活に革新をもたらし、新しい価値を創造すること |
GX | 化石燃料に頼った社会構造を変革し、経済成長と環境保護を両立させること |
SDGs | 17のゴールと169のターゲットから構成された、持続可能な世界を目指す国際目標 |
SXとDXの違い
DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。IoTやビッグデータなどのテクノロジーを用いてビジネスや日常生活に革新をもたらし、新しい価値を想像することを指します。
一方、SXとは企業と社会のサステナビリティを両立して推し進める概念です。どちらも現代社会において注目を集める言葉ですが、目的や意義が大きく異なっています。
SXとGXの違い
GXは「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション」の略称で、経済成長と環境保護の両立を目的とした取り組みです。従来の化石燃料に依存したエネルギーを再生可能エネルギーに切り替え、社会システムや産業構造を根幹から変革することで、CO2の削減と経済成長を同時に推し進めます。
GXは環境問題の中でも温室効果ガスの削減に重きを置いており「カーボンニュートラル」を実現する上で重要な施策のひとつとなっています。SXは貧困や人権問題といった社会課題の解決もテーマとしており、その点が異なります。
SDGsとSXの違い
SDGsは「Sustainable Development Goals(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の略称であり、2015年の国際サミットで採択された持続可能な世界を目指す国際目標です。17のゴールと169のターゲットから構成されており、先進国と発展途上国が一丸となって達成に向けた取り組みを推進しています。
SXもサステナブルな社会を目指すものであり、そのために企業が行うべき具体的な行動や目指すべき将来像を示しています。その意味で、SXはSDGsを実現するために欠かせない変革のひとつといえるでしょう。
まとめ
SXとは、企業と社会のサステナビリティを同時に推し進める取り組みです。企業がSXに取り組むと社会課題に積極的な姿勢をアピールすることができ、企業イメージやESG投資家からの評価向上といったメリットが期待できます。SDGsやカーボンニュートラルの達成においても、SXは欠かせないテーマとなるでしょう。
その上で、企業は投資家と積極的に対話の機会を持ち、理解を得る姿勢が必要になります。中長期的な取り組みであるSXは、短期的な利益を求める投資家から理解を得にくいテーマです。SXの社会的な意義やメリットを丁寧に説明し、時間をかけて同意をとっていきましょう。
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