脱炭素と消費
見直そう、フードロスやファストファッション

Why and What is Decarbonization?どうして今、脱炭素?

パタゴニアが中古ショップで問いかけるものは?

こんにちは。脱炭素についてのこの連載も5回目です。前回までは発電や移動によって出てくる二酸化炭素について書いてきましたが、今日は暮らしの中にあってとても身近で、けれども気がつきにくい、消費にまつわるCO2について考えてみたいと思います。

2021年8月20日、アウトドアメーカーのパタゴニアが国内初の中古品ショップをオープンさせました。渋谷の旗艦店の中に、パタゴニアブランドのユーズド商品を集めた期間限定ポップアップストアを設けたのです。

ご存知のように、パタゴニアは世界有数の環境配慮型企業として知られています。筆者は2000年にこのパタゴニア渋谷店でリュックサックを買ったときのことを今も憶えているのですが、お会計をすると「有料でもよければ簡素な紙袋に入れることができる」と告げられて驚きました。日本でレジ袋が有料化されたのは2020年のこと。それより20年も前に、パタゴニアではすでに紙袋もプラスチックバッグも無料配布をやめていたのです。

さて、中古のシャツ、アウター、パンツなどの自社ブランド商品を集めた冒頭のポップアップストアでは「新品よりもずっといい」「必要ないものは買わないで」といったラディカルなキャッチコピーが躍ります。また、店内に修理ブースもあり、パタゴニア製品をミシンで直している姿を客は直接目にすることができます。

パタゴニアプレスリリースより(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000021813.html

日本だけで、年間1億トン近いCO2がファッションから

なぜパタゴニアがわざわざこのようなことを行うのでしょうか? それは、既存のアパレル産業がこれとは真逆のビジネス構造になっているからでしょう。「古くて愛着のあるものより、新品をもっと」「必要のないものでも、どんどん買って」というのが、この20年間にメジャーなものとなったファストファッションが暗にアピールしてきたメッセージです。

パタゴニアプレスリリースより(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000064.000021813.html

日本国内で供給されている衣類の製造から廃棄処分までに排出されているCO2はなんと9500万トンにも上り、これは世界のアパレル産業の4.5%を占めます。また衣類のほとんどは輸入品ですから、それらのエネルギー消費と二酸化炭素排出は諸外国に負担させていることになります。

環境省もこのことは問題視していて、2021年4月には「海外の多くの資源と環境負荷によって私たちのファッションが支えられている。『大量生産・大量消費・大量廃棄』から『適量生産・適量購入・循環利用』への転換が重要だ」ということを小泉進次郎環境大臣がアパレル大手各社との会合で述べています。

フードロスは資源もお金ももったいない

家庭などから出る衣類ゴミは年間79万トンに上りますが(2020年)、そのうち再使用されたのは15万トン、リサイクルされたのは12万トンにとどまり、51万トンはそのまま廃棄処分となっています。買っては捨てるという消費サイクルを見直すこと、また処分の際の行き先を考えることが求められています。買うときには長く使えるよいものを選ぶこと、また、処分する際には自治体のリサイクルや、ショップの回収ボックスに持ち込むことなどを心がけるとよいですね。

また、大量の廃棄が問題になっているのは、ファッションにとどまりません。

フードロスという言葉も近年知られるようになってきました。まだ食べられるのに廃棄される食品のことです。この食品ロスの廃棄も大きなエネルギーのムダであり、不要な二酸化炭素の排出につながっています。フードロスによって出るCO2は世界で約36億トンといわれており、これは全世界のCO2排出量の約8%にも上ります(2014年・JAICAF)。

また、このフードロスを1人あたりの金額に直すと年間で19,000円、量にするとおにぎり250個分にも相当します(2019年、横浜市調べ)。例えば4人家族であれば実は1年で8万円近い食費がムダになっていることになり、環境面においてはもちろんのこと、経済的にも見逃せない損失だといえるでしょう。

食品の廃棄を減らす取り組みが次々と

2021年8月23日から、各地のスターバックスコーヒーではドーナツ、ケーキ、サンドイッチなどのフードの割引販売が始まりました。スターバックスコーヒージャパンによると、フードロスの削減を目指して、その日の各店舗の在庫状況に応じて閉店3時間前からフードの20%引きを行うとのこと。テスト販売をしたところカスタマーの反応もよく、全店に広げていくことになったそうです。

スターバックスコーヒージャパンのプレスリリースより(https://www.starbucks.co.jp/press_release/pr2021-4359.php

コンビニやスーパーマーケットでも、賞味期限の近づいた商品に割引シールを貼って購買を促すお店が出てきています。お店は廃棄を減らすことができ、お客は少しおトクに買い物ができて、環境面ではフードロスが減る。この三方よしの取り組みはますます今後も広がっていくことでしょう。

個人の家庭では、食品を「買いすぎない」「正しく保存して長持ちさせる」「ムダなく使い切る」ことを心がけることで、フードロスを減らすことができます。また昨年からのコロナ禍で、飲食店での需要が減り、ダブついてしまった食品を割引で販売するサービスが盛況を見せています。そういったアプリやサービスを活用することで、食品ロスの削減に貢献することもできるかもしれません。「食品 ロス 通販」などのキーワードで検索できますので、興味のある方はチェックしてみてください。

▷関連記事

Why and What is Decarbonization?どうして今、脱炭素?
バイデン主催の環境サミットが終了 欧米各国が削減目標を上方修正へ

Why and What is Decarbonization?どうして今、脱炭素?
脱炭素とモビリティ CO2排出量が少ない移動手段は?

Why and What is Decarbonization?どうして今、脱炭素?
身近な電気こそ低炭素に。あなたの選択で、地球にやさしく

Why and What is Decarbonization?どうして今、脱炭素?
脱炭素と夏のエアコン 使い方や型式で、CO2は変わる?

▷グリラボSNSのフォローお願いします!!

Twitter @gurilabo

▷アイグリッドグループ

  

シェア