カーボンプライシングとは?④〜カーボンプラシイングにおいて今後企業が取り組むべきこと〜【専門家インタビュー】
今後ビジネスを進めるうえで重要なのが、カーボンニュートラルを意識した経営を行うことです。ここでは、企業が取り組むべきカーボンプライシングへの具体的な対策や、既存の企業の導入事例について専門家に伺いました。初心者からカーボンニュートラルに詳しい方まで参考になる記事となっているので、ぜひ参考にしてください。
有村 俊秀
アイ・グリッド・ソリューションズ社外取締役
早稲田大学・政治経済学術院・教授
環境経済経営研究所・所長
同・高等研究所・所長
●専門
気候変動、省エネルギー、大気汚染等の環境・エネルギーの問題を経済学的なアプローチで研究。
特にカーボンプライシングを中心とした市場メカニズム(環境税や排出量取引)を用いた環境政策が専門。
GXに向けて企業が今後取り組むべきこと
カーボンプライシングやGXに興味がある企業に向けて、まず何から始めれば良いのか伺いました。また今後企業を存続していくうえで、なぜカーボンニュートラルやGXが重要になるのかについても併せて解説します。
ー数ある企業の中で、カーボンプライシングやGXに全く興味がないという企業もあれば、興味はあるけど知識がなくて「何から始めれば良いかわからない」という企業もたくさんあると思います。そんな企業に向けて、まず具体的にどういった行動や対策ができるのか教えていただけますか。
よく言われるのが、省エネ対策ですね。どの会社でも電気を使っているので、「電気の消費量を抑制しよう」という省エネ活動がひとつできます。やり方としては、使っている装置を新しい装置に変えて効率を上げるのも良いですし、エネルギーマネジメント(エネルギー使用の見える化)を使って電気の使い方を節約するというのもあると思うんですよ。
次に、使っている電力のCO2を減らす。電力を再生可能エネルギーに変えていくっていうのは現実にできるオプションなので。さらに「自分たちで発電しちゃうおう」っていう場合は、太陽光パネルを設置して発電・創エネすることもできます。それが今の世の中かなと思いますね。
ー例えばそういった取り組みを自社のサイトなどで発信すれば、「私たちも省エネに取り組んでいますよ」というアピールにもなるのでしょうか?
そうですね。むしろそういうことをやっていかないと、いろんなビジネスの仲間に入れない雰囲気ができていて。例えば、RE 100(※100% 再生可能エネルギーに取り組む企業を結集した世界的なイニシアチブ)というグループがあるように、企業によっては「再生可能エネルギーを100%使っている企業としか取引しませんよ」というところも出てきています。GoogleとかAppleもそうです。「そういった企業と取引するなら、自分たちもグリーンになっていかないといけないな」という流れができていると感じます。
「Microsoft」のカーボンプライシング導入事例
先進企業の取り組みの一例として、Microsoftが実際に行っているカーボンプライシングの事例を紹介します。2030年までにカーボンネガティブ(CO2の排出量よりも吸収量のほうが多い状態のこと)を目指すMicrosoft社の取り組みとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
ーなるほど。今GoogleやAppleのお話が出ましたが、他にも先進企業の事例があれば教えていただけますか?
アメリカの企業でいうと、有名なのはマイクロソフトが「インターナルカーボンプライシング」に取り組んでるんですよね。インターナルカーボンプライシングっていうのは、簡単にいうとカーボンプライシングを「会社の中でやってしまおう」というものです。仮想的な価格を想定して「投資判断をカーボンプライシングも踏まえてやろう」っていうのはいろんな企業でやってることなんですけど、マイクロソフトは事業所ごとにCO2料金を課して、本社のほうに集めちゃうんですよね。
ー会社内でお金の移動が完結しているということですか?
そうなんですよね。もうちょっと易しいバージョンだと、「仮想的にCO2が1トンあたり2,000円かかったら、この投資は見合うか?」みたいなことを考えながら行う方法があります。マイクロソフトはさらにその先を行っていて、本当にお金をかけて企業内でいろいろやり取りしてるっていうのは先進的な取り組みですね。
ー企業間でお金を取引してるというのは、どういうことなのでしょうか。そのお金は何に使われているんですか?
マイクロソフトの場合は、そのお金でさらにイノベーションしたりするんだと思いますね。
アイ・グリッド・ソリューションズに今後期待すること
僕はいつも授業で、カーボンプライシングがある世界では「CO2を出さないビジネス」が一番儲かると言っていたんですが、実例ってそんなに無くて。それがようやく出てきたなというのをアイ・グリッドさんを見ていて感じていて、それはすごく面白いし期待してるっていうのが学者としてのひとつの意見であり感想ですね。
もう1つは、日本では脱炭素を「地域」というコンセプトをベースにしながらやっていこうという流れがあって、そこに貢献できるのかなという点にもすごく期待していますね。特に、災害とか電力が不安定な要因に対処できるというところもニーズがあると期待しています。
【コラム】SDGsに興味津々!早稲田大学の取り組みと学生の意識について
実は、早稲田大学でも積極的にカーボンニュートラルへの取り組みが行われているそうです。最後にその具体的な動きについて紹介します。
実は早稲田大学も「カーボンニュートラル宣言」っていうのをやっていまして。2030年にはCO2をゼロにするという目標を掲げているんですが、大学は一応教育研究機関なので、3本柱にしています。1つ目はCO2をゼロにすること、2つ目は研究開発でイノベーションにしてCO2ゼロになって貢献すること、3つ目は人材育成でカーボンニュートラルに貢献することです。
早稲田大学ではすでに「カーボンニュートラルリーダー副専攻」っていうのを始めていまして、普通、法学部の学生さんだったら一般的に法学士になるし、商学部の学生さんだったら「商学部の卒業生」という肩書きになりますよね。その人たちが副専攻でカーボンニュートラルの授業を何単位か取ることで、「専攻は経営学だけど、副専攻はカーボンニュートラルリーダー」というふうに名乗れるようになります。そういう形で人材育成に協力しようという試みを始めていますね。
ー他の大学でもそういう取り組みはあるのでしょうか?
結構いろんな動きがあって、早稲田の場合は東京の大学だからできないんですけど、広島大学なんかは広島県の広々としたところにキャンパスがあるらしくて、そのキャンパスに太陽光パネルを置いて「今すぐCO2ゼロにしよう」みたいな。そういう話も聞こえてきています。東京の大学の場合は(土地の広さ的に)そういうのはできないので、代わりに副専攻みたいなことをやっていますよね。
ー大学生の方が授業を受けることで副専攻を名乗れるのは、学生さん自身の意識も高くなりそうでいいなと感じました。
今はカーボンニュートラルへの関心が高い学生が多くて、(副専攻は)すごく人気があります、おかげさまで。僕も今年「カーボンニュートラルと社会」という科目のコーディネーターをやっているんですけど、定員200名のところあっという間に250名くらいの応募があって、定員いっぱいでやっているくらいです。
以上で専門家インタビュー「カーボンプライシングとは?」全4回の連載を終了いたします。
ご覧くださりありがとうございました。
▷カーボンプライシングとは?連載
・カーボンプライシングとは?①〜種類や国内外にもたらす影響について〜
・カーボンプライシングとは?②~今後カーボンニュートラルに関連する企業は増える?!~
・カーボンプライシングとは?③~カーボンプライシングの世界と日本の動向~
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