森林環境税とは?基礎知識や問題点をわかりやすく解説

地球温暖化が進むなか、日本では地域環境保全のために「地域グリーンニューディール基金」を創設して地方自治体を支援するなど対策を進めてきました。しかし、森林保護の財源が足りない課題があり、2024年度より「森林環境税」の課税に踏み切ることになりました。

本記事は森林環境税とは何か、地方自治体に財源が渡される仕組みや使い道、問題点などについて、わかりやすく解説します。森林環境税は住民税に上乗せされる形で徴収される身近な税金でもあります。この機会に内容を理解しておきましょう。

森林環境税とは?


森林環境税(森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律施行令)は、2024(令和6)年度から、国内に住所のある個人に一律で年1,000円課税される国税です。2014年より住民税には1,000円の復興特別税が上乗せされてきました。この復興特別税と入れ替わる形で、2024年から同額の森林環境税が徴収されます。

森林環境税の目的は、大きく分けると次の2つです。

  • 気候変動抑制の国際的な協定「パリ協定」で定めた目標を達成するための、地方財源の確保
  • 近年被害が拡大している山林災害を防ぐ森林整備のための財源確保

いずれの目的においても、森林保護が主な使い道になります。森林には温室効果ガスの削減や、土を固定して土砂崩れを防ぐ働きや、雨水を地中に蓄えて急激な流出をやわらげ水を浄化させる役割があります。気候変動が著しくなりつつある現代において、森林環境税は重要な財源となるでしょう。

森林環境税の徴収方法や仕組みについて


出典:森林環境税及び森林環境譲与税|総務省

復興環境税は、納税者が住む市町村の個人住民税均等割と併せて、一律年1,000円徴収されます。ただし、住民税に上乗せされる形ですので、赤ちゃんや子どもなどの未成年の人や、所得が一定以上にならない人などは対象外です。

全国で徴収した年約600億円の税収は、いったん政府が回収します。そして回収した全額を国が「森林環境譲与税」として都道府県・市町村へ譲与する仕組みです。

森林環境譲与税は、私有林人工林面積が50%、人口が30%、林業就業者数が20%の按分率で配分されます。例えば、東京都は森林は少ないものの人口が多いため、多額の森林環境譲与税が譲渡されます。

上図において、2019年度から森林環境譲与税が譲与されているとあるのは、前倒しで譲与がスタートしたためです。気候変動や災害対策は待ったなしの課題ですので、2024年度からの課税を待たずに別財源を使って譲与をはじめました。

森林環境税の種類

森林環境を保全する税金には、先に解説した国による森林環境税のほかに、地方自治体が独自に課税している税金もあります。2つの種類を比較しながらみていきましょう。

地方自治体が課税する森林環境税

国の森林環境税が検討されるより前に、各地方自治体は独自の森林環境税を地方税として導入していました。例えば、静岡県は2006年から、荒廃森林の整備のために「森林(もり)づくり県民税」を課税しています。また、長崎県は2007年から、森林環境の保全のために「ながさき森林環境税」を課税しています。

このように税金の名称は各自治体で異なりますが、主に県内の森林環境の整備改善や自然環境の保全などを目的に、独自の森林環境税を導入しています。この流れは2003年ごろからはじまり、2019年には全国37都道府県に広がりました。

国が課税する森林環境税(2024年〜創設)

国が課税する森林環境税とは、この記事のテーマである「森林環境税」です。この森林環境税は国税であるのに対して、地方自治体の独自の森林環境税は地方税という違いがあります。また先に解説したように、森林環境税は森林環境譲与税と一対になって制度化されているのが特徴です。

森林環境税・森林環境譲与税に関する問題

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森林環境税の目的や意義に対して、反対する人はおそらく少ないでしょう。しかし、森林環境税の使い道や課税の仕方で問題点も指摘されています。

具体的な使い道が不明

森林環境譲与税の使い道は、各自治体の裁量に任されるため、使い道があいまいになるという意見があります。森林環境譲与税は「森林整備及びその促進に関する費用」や「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に使うという縛りはありますが、具体策は地方自治体の担当者に一任されています。実際、森林・林業の担当職員がいない自治体や、1人で担当しているような自治体は多く、「お金を渡されても何をしてよいのかわからない」というケースも多いようです。

ただし、森林環境譲与税の使途については、各自治体がインターネットなどを通じて公表することになっています。そのため、住民が使い道を監視することは可能です。

参考:森林環境税及び森林環境譲与税 (3)地方公共団体別の取組状況|林野庁

4-2 森林環境税の二重負担が発生している

森林環境税の導入によって、自治体が独自に導入している森林環境税との二重課税になるという問題も指摘されています。2種類の森林環境税は、森林保全を目的とする点で重なる部分があるため、納税者から不満の声が上がっています。

このため、今後は国の森林環境税と地方自治体の森林環境税で、使い道の区別、差別化を明確にしなければなりません。また、ムダ使いを防ぐために、使い道をもっと厳格にするべきだという意見もあります。

まとめ

森林環境税は気候変動と増加傾向にある山林災害に対処するための国税で、2024年から課税がはじまります。住民税に上乗せされる形で徴収される身近な「血税」であるだけに、森林環境税の使い道をしっかり見極めていきたいところです。

グリラボではSDGsや環境に関するトピックを定期的に配信しています。温室効果ガスの削減や再エネ活用など、いろいろなテーマをわかりやすく解説していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。

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