5月はフェアトレード月間。フェアトレードを選ぼう、サステナブルな未来のために。<前編>

寄稿:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン

世界とつながっている私たちの日常。

今日、朝起きてから仕事を開始するまでに、皆さん、なにをされましたか?まず顔を洗って、服を着替え、目覚めのコーヒーを淹れ、朝食にパンやフルーツを食べたかもしれませんね。

「朝ごはんを食べ終えるまでに、あなたはすでに世界の半分以上に頼っているのです。」

これは、ノーベル平和賞受賞者でアメリカの公民権運動活動家、マーティン・ルーサー・キング牧師が、1967年に語った言葉です。

顔を拭いたそのタオルの原料のコットンは、インドの小規模農家によって栽培されたものかもしれません。バングラデシュの工場で縫製されたシャツを身に着け、朝食にエチオピア産コーヒーとエクアドル産のバナナを口にしたかもしれません。このように、私たちの日常は、実に多くの世界中の国々とつながっていることがわかります。日常を彩るたくさんの食べ物や日用品が、世界の国々から私たちのもとに届けられていますが、それらを生産している人々は、どのような暮らしをしているのでしょうか。

フェアトレードコーヒー

Photo: Ilkay Karakurt

例えばコーヒー。日本のコーヒー生豆輸入量は、EU、アメリカに次いで世界第3位と、日本は世界有数のコーヒー輸入国です。一次産品としては石油に次いで世界第2位の取引規模を誇る世界的な貿易産品であるコーヒーですが、生産地域の9割以上が開発途上国で、その多くが小規模農家です。コーヒー豆の買い取り価格は、生産現場とは遠く離れたニューヨークとロンドンの国際市場で決められます。需要と供給のバランスだけでなく、投機マネーも流入し、日々激しく値動きします。開発途上国の小規模農家が置かれた状況はさまざまですが、多くの場合、社会構造上、そして貿易構造上、不利な立場に置かれています。そもそも土地も小さく収穫量も限られている中、マーケット動向の情報や交通・輸送手段がなく、収穫物をお金に変えるには、村に買い付けに来る仲介業者に売るしか手立てがない。小規模農家の多くがそんな状況で暮らしています。そうなると、どうしても不利な立場に追いやられがちになり、時に生産コストすらまかなえない価格であっても売らざるを得ません。そのような状況では、子どもを学校に行かせることもできず児童労働に繋がったり、環境を守りながら品質のいいものを作ることができなくなったりと、負の連鎖に陥りがちです。

フェアトレード生産者

Photo: Christoph Köstlin

生産者が買い叩かれているような状況では、この先も手間暇かけて品質のいいものを作っていこう、とはなかなかなりません。いかにしてコストを抑えるかを考え、森林を伐採してより手間のかからない農作物に切り替えたり、時に効率を求めて農薬を多用したりと、環境へのダメージにも繋がります。近年は気候変動の影響も深刻で、気温上昇と降雨パターンの変化が引き起こす収量減や品質の低下、病虫害の被害拡大で、2050年にはアラビカコーヒー豆の栽培地は半分にまで減少してしまうとも言われています。収穫量の低下は、当然、生産者の手取り収入にも直結し、生産者の貧困にさらに拍車をかけています。そこに加え、長引く新型コロナウィルス感染症の影響は、さらに大きな打撃を生産者や子どもたちにもたらしており、対策は待ったなしの状況です。

 

サステナブルな未来を目指すフェアトレードのしくみ

通常の貿易すべてが、問題のある生産や取引をはらんでいるわけでは決してありませんが、私たち消費者から一番遠いところにいるサプライチェーン末端の小規模農家や労働者の方々には、往々にしてしわ寄せがいきがちです。環境に無理な負荷を与えることなく生産していくのに十分な価格になっているかどうか、そして何よりも、生産者とその家族にとって、人間らしい暮らしができるのに十分な価格になっているかどうか、貿易の価格交渉の現場において、そのような要素はほとんど加味されることなく価格が決定していきます。

私たち消費者は、これから先もずっと美味しいものや品質のいいものを当たり前に購入できると思いがちです。しかし、生産者が品質の良いものを作り続けていくためには、生産者の労働環境や生活水準が保証され、また自然環境にもしっかりと配慮がなされる持続可能な生産と取引のサイクルを作っていくことが重要です。そこで考え出されたのが「フェアトレード」です。人と地球に配慮して生産された開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易のしくみ。それが「フェアトレード」です。

私たちフェアトレード・ラベル・ジャパンも構成メンバーとなっているフェアトレード・インターナショナルでは、フェアトレードの国際基準を設定しています。持続可能な生産と生活のために必要な「フェアトレード最低価格」を定めており、国際市場価格がどんなに下落しても、フェアトレードの取引においては、買い手は「フェアトレード最低価格」以上を生産者組合に保証するルールです。

また生産者組合や地域全体の社会発展のための「プレミアム」も別途、取引量に応じて買い手から直接、生産者組合に保証されます。それにより、安定して環境を守りながら生産に励むことができ、皆で地域をより良くすることが可能になるのです。

フェアトレードCLAC

Photo: CLAC

 

買い物の際、目印になる国際フェアトレード認証ラベル。

第三者が定期的に監査をし、国際フェアトレード基準を遵守して生産・取引されていることが確認された商品にのみ、この認証ラベルの表示が許可されています。

 

フェアトレードラベル

 

国際フェアトレード認証ラベル

5月はフェアトレード月間。ミリオンアクションキャンペーン始まります!

毎年5月第2土曜日は「世界フェアトレード・デー」と呼ばれ、世界中で一斉にフェアトレードに関するイベントが行われます。これに合わせて、日本でも以前より5月を「フェアトレード月間」と位置づけ、日本全国でさまざまイベントが行われてきました。フェアトレードへの注目が集まりやすい5月、一つのテーマのもとで全国横断的に協働でフェアトレードの発信ができたら、より大きな社会的インパクトをもたらすことができるのではないか。そう考え、私たちフェアトレード・ラベル・ジャパンでは、昨年から「ミリオンアクションキャンペーン」を展開しています。

本キャンペーンは、フェアトレード月間である5月1カ月間かけて、「商品購入」や「SNS投稿」、「イベント参加」などフェアトレードに関するアクション数の目標達成を目指すキャンペーンです。全国各地の企業や小売店・飲食店、フェアトレードの普及・啓発活動を行う市民団体や学生団体、自治体なども参加する国内最大のフェアトレードキャンペーンで、初開催した昨年は目標100万を大きく上回る119万アクションを達成しました。今年は150万アクション達成を目指します。この機会に多くの方にフェアトレードを知り楽しんでいただけるよう、日本全国のお店やレストラン、企業、学校、自治体等も参加して、様々なイベントや仕掛けを用意しています。期間中、SNSを通じて情報をシェアしたり、キャンペーン参加店舗でフェアトレード商品のお買物を楽しんだり、味わったり、イベントに参加したりと様々な方法で誰でも参加することができます。

皆さんのアクションをお待ちしています!

フェアトレードミリオンアクションキャンペーン

■■フェアトレード ミリオンアクションキャンペーン2022開催概要■■

https://fairtrade-campaign.com/index.html

<期間>:2022年5月1日(日)~5月31日(火)
<主催>:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン

<アクション対象>フェアトレード商品の販売数、イベント参加者数、SNSハッシュタグ数、メディア掲載数、寄付数など

 

寄稿:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン

 

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