いま世界で起きている課題とは?フェアトレードを選ぶことで私たちができること<後編>

寄稿:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン

あなたのその買い物が児童労働や森林伐採を生んでいるかも⁉

甘い甘いチョコレート。大好きなひとも多いと思います。チョコレートの主原料であるカカオは、平均気温27℃以上で高温多湿、一日の平均日照時間が5時間~7時間など、さまざまな気候条件がそろった赤道から南北緯20度以内の地域で生産されています。主要生産国は、コートジボワール、ガーナ、インドネシア、ナイジェリア、エクアドルなど、いわゆる開発途上国の国々がほとんどです。この世界的な貿易産品であるカカオの生産背景に、実はいまだ深刻な児童労働が存在しています。

児童労働とは、義務教育を妨げる労働や、法律で禁止されている18歳未満の危険・有害な労働のことを指します。世界の児童労働者数は1億6000万人(2021年ILO/UNICEF発表)にも上ります。世界の子どもの10人に1人が、学校に通うことができずに働かざるを得ない状況にあるのです。そして、それら児童労働の約70%は農林水産業に集中していると報告されています。

西アフリカのコートジボワールとガーナは、世界のカカオの60%以上を生産しているカカオの二大生産国ですが、カカオ生産に関連した児童労働の数は、この2カ国だけで156万人にも上ると報告されています(2020年シカゴ大学発表)。日本に輸入されているカカオの80%近くがガーナ産であることを考えると、この問題は決して他人事ではなく、私たち一人ひとりの日々の消費に密接に繋がっているといえるでしょう。

Francis Kokoroko

Photo: Francis Kokoroko

カカオ生産には、貧困、児童労働、森林伐採など、深刻な課題がつきまといます。カカオの生産者は小規模な農家が多く、カカオ豆の買取価格も低く抑えられており、生産者はなかなか貧困から脱却できず、結果、子どもたちを学校に行かせることもできず、児童労働がなくならないという負のスパイラルから抜け出せない状況です。カカオの樹齢も増し、そこに気候変動の打撃も加わって収量低下の課題もあり、ただでさえ貧困の状態であるところに、さらなる追い打ちをかけています。少しでも生産量を増やしてカカオ収穫から得られる収入を増やそうと、森林伐採が広がっていることも深刻です。カカオ生産量世界第1位のコートジボワールは、国土の25%あった熱帯雨林が4%未満にまで減少してしまったと報告されています(2017年ガーディアン紙)。

私たちが日頃何気なく手にする商品の裏側では、実はこのような深刻なことが起こっているのです。その商品を作っている人のことやその作り方に関心を向けず、とにかく安ければそれでいい、という消費行動をとり続けていたら、サプライチェーン上で起こっている人権侵害や環境破壊は、ますます悪化することになりかねません。

人と環境のサステナビリティを目指すフェアトレード

世界では、いまだ7億人以上が「極度の貧困」状態にあり(出所:世界銀行)、その6~7割は小規模農家といわれています。こうした世界の貧困課題を解消し、地球を守り、すべての人に平和と繁栄を確約するための17の目標、それが国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」です。17の目標の基礎となる169のターゲットのうち、食料や農業に一切関連しないものはほとんどありません。そのぐらい、SDGsの達成には、いかにサステナブルな農業を促進していけるかがカギなのです。

Francis Kokoroko

Photo: Francis Kokoroko

フェアトレードは、人と環境に配慮して生産された開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、生産者やその家族たちの生活改善と自立、ひいては地球全体のサステナビリティを目指す貿易のしくみです。フェアトレードは、貧困削減だけではなく、人権、ジェンダー、環境、気候変動など、SDGsの17の目標のほぼすべてをカバーしています。サステナブルな農業と貿易を促進し、持続可能な消費の具体的な選択肢としてフェアトレード商品の普及を進めてきた国際フェアトレード認証のしくみは、SDGsとの繋がりも強く、世界的に取り組みが広がっています。

SDGsターゲット年の2030年まで残り8年。誰ひとり取り残さない社会、すべての人が尊厳をもってより良い未来を描ける社会。その実現までに残された時間は長くありません。SDGsはとても高い目標ですが、地球上に暮らす私たちみんなでその実現を目指すと決意した目標です。フェアトレードが広がることは、SDGsの達成に大きく寄与します。買い物という日常のアクションで誰もが取り入れることができる取り組み。それがフェアトレードです。

Francis Kokoroko

Photo: Francis Kokoroko

最終的なカギを握るのは私たち消費者

現在、日本国内では、240以上の企業・団体が、フェアトレード認証に取り組んでいます。コーヒー、紅茶、チョコレートだけでなく、バナナ、スパイス類、ごま・ごま油、ジャム、蜂蜜、ワイン、バラ、衣類、タオル、コットン雑貨、サッカーボール・ラグビーボールなどのボール類に至るまで、フェアトレード認証製品の種類も、そして販路も広がっています。皆さんのお近くのスーパーやコンビニでも、ぜひ認証ラベルを目印にフェアトレード商品を購入し、食べて、飲んで、身に着けて、使って、遊んで、商品を楽しんでみてください。商品が見つからなかった時には、お店のひとに「フェアトレード商品はどこですか?」と聞いてみることもお忘れなく!商品を扱っていなかったら、ぜひリクエストしてみてください。

フェアトレード

 

買い物の際、目印になる国際フェアトレード認証ラベル。

第三者が定期的に監査をし、国際フェアトレード基準を遵守して生産・取引されていることが確認された商品にのみ、この認証ラベルの表示が許可されています。

 

フェアトレード認証ラベル

 

国際フェアトレード認証ラベル

 

よく「買い物は選挙の投票と同じ」と例えられます。私たちがどのような商品を選ぶかによって、それを作っている人びとや生産地域、ひいては私たち自身も含めた地球全体のサステナビリティに多大な影響を及ぼします。買い物という、とても身近な行動一つ一つの積み重ねが、社会をいい方向に変えていくことができるのです。

Brandon Marsh

Photo: Brandon Marsh

毎回フェアトレード商品を選ぶのは難しいかもしれません。まずは、これまで年に1回だったのを2回に増やしてみる、月に1回だったのを2回に増やしてみるなど、少しずつ無理なくフェアトレード商品を選ぶ回数を増やしていくのはどうでしょうか。または、大切なひとへのプレゼントに、フェアトレード生産者のストーリーを添えるなどして、フェアトレード製品を贈るのもお勧めです。作った人やその子どもたちの笑顔につながる特別な贈り物になることでしょう。

5月14日は世界フェアトレード・デー。ミリオンアクションキャンペーン展開中!

私たちフェアトレード・ラベル・ジャパンでは、5月をフェアトレード月間と位置づけて「ミリオンアクションキャンペーン」を展開しています。日本全国の皆さんに、フェアトレード商品の購入やSNSの投稿、イベント参加など、フェアトレードに関するアクションを呼びかけ、今年は150万アクション達成を目指しています。ぜひこの機会に、フェアトレードの商品に触れ、楽しみながら参加してみてください。

 

あなたのその1アクションが、世界をよりよくすることに繋がっていきます。

皆さんのアクションをお待ちしています!

 

■Youtube

フェアトレードを選ぼう、私たちの未来のために。

ミリオンアクションキャンペーン2022

https://www.youtube.com/watch?v=F7ACB7hto0g&t=11s

 

■フェアトレード ミリオンアクションキャンペーン2022開催中!

https://fairtrade-campaign.com/index.html

 

寄稿:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン

 

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