蓄電池とは?種類やメリット・補助金について解説
災害による停電への備えや、電気代の削減のために注目されているのが、「蓄電池」です。蓄電池には家庭用と産業用があり、個人の家庭や企業のオフィスなどに導入されています。
本記事では、蓄電池の種類やメリット、導入時に利用できる補助金制度について解説しているので、蓄電池の導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
蓄電池とは?
蓄電池とは、電気を蓄える機能を持った電池のことです。一般的な乾電池は一度使い切るとそれ以上は使用できませんが、蓄電池は充電することで何度でも使用できます。蓄電池はわたしたちの身近なところでも活用されていて、スマートフォンのバッテリーや電気自動車などさまざまな用途で使われます。
蓄電池は災害時の緊急用電源としても活用できることや、節電や省エネに関する意識の高まりなどから、近年注目を集めている装置です。
蓄電池の設備のタイプ
蓄電池は、用途や特徴から以下の2種類に分類されます。
- 家庭用蓄電池
- 産業用蓄電池
家庭用と産業用のそれぞれの蓄電池について、以下で詳しくみていきましょう。
家庭用蓄電池
家庭用蓄電池は、住宅に設置した太陽光パネルで発電した電気や、電力会社から購入した電気を貯めておくための装置です。災害時の停電に備えるためや、ゼロエネルギー住宅の実現のためなどに活用されます。家庭での利用を想定しているため容量は1〜15kWhまでですが、近年は家庭用蓄電池も大容量化が進んでいます。
価格は、設置のための工事費込みで80万円から200万円程度です。一般家庭に問題なく設置できるように、産業用蓄電池と比較するとコンパクトなサイズになるよう設計されています。
寿命や充電できるサイクル数などはメーカーや製品によって異なりますが、目安としてはサイクル数が5000〜15000回程度、寿命は約15年です。
産業用蓄電池
産業用蓄電池は、企業のオフィスや工場、商業施設などに設置する蓄電池です。大規模な施設での利用が多かった産業用蓄電池ですが、東日本大震災をきっかけに災害対策が注目されるようになり、近年では中規模・小規模の施設でも導入が進んでいます。容量は数kWhから20kWhで、家庭用よりも容量が大きいのが特徴です。
数百万円で導入できるものから1000万円を超えるものもあり、価格は製品によって大きく幅があります。サイクル数も製品によって異なりますが、8000回を超える高性能タイプもあり、寿命も充電回数に比例して長くなります。
太陽光発電や産業用蓄電池を導入すると、税制優遇が受けられるのもメリットです。中小企業経営強化税制が2025年まで延長され、対象となる設備を導入した場合、即時償却または10%の税控除が受けられるようになっています。
蓄電池の種類
蓄電池は種類が細かく分かれていて、それぞれ以下のような特徴があります。
蓄電池の種類 | コスト | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
鉛蓄電池 | 5万円/kW | 低コストで高寿命 | エネルギー効率が比較的低い |
ニッケル水素電池 | 10万円/kW | 過充電・過放電に強い 急速充放電が可能 |
自己放電が大きい 寿命が短い |
リチウムイオン電池 | 15.5万円/kW | 充電回数が多い 寿命が比較的長い |
コストが高い |
NAS電池 | 4万円/kW | エネルギー効率が良い 寿命が長い |
ヒーターなどで加温が必要 |
レドックスフロー電池 | – | システムの耐久性が高い 常温運転が可能 |
– |
上記5つの蓄電池について、特徴を以下で解説します。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、電解液に希硫酸、正極に二酸化鉛、負極に鉛を使用する蓄電池です。希硫酸と鉛の化学反応によって電気を蓄えます。構造がシンプルで比較的安価なため、1859年に発明されてから現代に至るまで、さまざまなところで使われてきました。例えば、ガソリン車のエンジンを起動させる際には鉛蓄電池が使用されています。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、電解液にアルカリ溶液、正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金を使用する蓄電池です。1990年に実用化されてから、後述するリチウムイオン電池が登場するまで、主にモバイル機器のバッテリーとして使用されてきました。そのほか、ハイブリッドカーのバッテリーなどにも使用されています。
3リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、電解液に有機溶媒の混合液、正極にリチウムを含む金属化合物、負極にカーボンを使用する蓄電池です。2019年にはリチウムイオン電池の開発に貢献した日本人研究者・吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞したことで話題になりました。ノートパソコンやスマートフォンなど、わたしたちの身近にあるモバイル機器のバッテリーに主に使用されています。また、家庭用蓄電池や産業用蓄電池にも用いられます。
NAS電池
NAS電池は、電解質にファインセラミック、正極に硫黄、負極にナトリウムを使用する蓄電池です。日本ガイシ株式会社が世界で初めて実用化したもので、同社だけが製造しています。メガワット級の電力貯蔵システムで、鉛蓄電池の約3分の1というコンパクトサイズながら、長期にわたって安定した電力を供給できるのが特徴です。電力負荷の平準化や再生可能エネルギーの安定化などに活用が期待されています。
レドックスフロー電池
レドックスフロー電池は、電解液に硫酸バナジウム、正極と負極にそれぞれ価数の異なるバナジウムを使用する蓄電池で、イオンの酸化還元反応によって充放電を行います。電解液や電極の劣化がほとんどなく長寿命で、発火性の材料を用いていないため安全性が高いといった特徴があります。再生可能エネルギーの導入を進めるうえで有効な装置として、高い期待が寄せられている蓄電池です。
4段落 蓄電池導入のメリット
企業や家庭で蓄電池を導入すると、以下のようなメリットがあります。
- 災害時に電気として利用できる
- 電気代の削減
- FITが終了した家庭で蓄電池で自家消費
上記3つのメリットについて、以下で詳しくみていきましょう。
災害時に電気として利用できる
あらかじめ充電によって貯めておいた電気を、必要なときに利用できるのが蓄電池の特徴です。そのため、平常時から蓄電池に電気を貯めておくことで、災害などで停電が発生しても電気を使用できるのが代表的なメリットです。
導入する蓄電池の容量や使用する電化製品によってどのくらい使用できるのかは変わってきますが、例えば家庭用の場合は冷蔵庫やテレビ、携帯電話の充電など生活に必要な電気を1〜3日程度まかなえます。
電気代の削減
蓄電池には、電気代を節約できるというメリットもあります。太陽光発電による電気や、電気料金が割安な時間帯の電気を蓄電池に貯めておけば、電気料金が割高な時間帯でも通常より安い値段で電気が使えます。エネルギー価格が高騰しているなか、電気代を削減できるのは大きなメリットでしょう。
FITが終了した家庭で蓄電池で自家消費
太陽光発電装置を導入している企業や家庭では、FIT終了後の選択肢として蓄電池を使った自家消費もおすすめです。FIT終了後は電気の買取価格が大幅に下がることが見込まれるため、場合によっては販売するよりも自家消費するほうが結果的にお得になる可能性があります。特に近年は電気代の値上がりが顕著なため、蓄電池を導入して自家消費できる仕組みを整えておくのもよいでしょう。
蓄電池導入のデメリット
蓄電池の導入には多くのメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。具体的には、以下のようなデメリットが挙げられます。
- 初期費用が高くなる
- 劣化すると充電量などが減少する
- 設置スペースが必要になる
それぞれのデメリットについて、以下で解説します。
初期費用が高くなる
家庭用・産業用ともに広く普及している蓄電池であるリチウムイオン電池は、高価な装置です。そのため、導入時の初期費用が高くなるのが代表的なデメリットです。価格は製品によって異なりますが、本記事の前半でも紹介したとおり家庭用で80万円から200万円程度、産業用で数百万円から1000万円と、かなり高額です。
ただし、蓄電池の導入には補助金が受けられるケースがあるため、場合によっては導入費用を抑えられるかもしれません。補助金については後ほど詳しく紹介しているので、そちらもチェックしてみてください。
劣化すると充電量などが減少する
蓄電池は、充電と使用を繰り返すうちに徐々に劣化し、充電できる容量が減少していきます。同じスマートフォンを長く使っていると、徐々にバッテリーの持ちが悪くなっていくのを感じたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、蓄電池の劣化によるものです。
家庭用や産業用の蓄電池の場合、導入から10年で容量が最初の7割程度になります。蓄電池は高額な設備ですが、「一度導入すればずっと使える」というわけではないことを覚えておいてください。
設置スペースが必要になる
蓄電池は屋外用と屋内用のものがありますが、どちらにせよ設置スペースの確保が必要になります。家庭用の蓄電池はエアコンの室外機よりやや小さいサイズですが、「直射日光が当たらない」などの条件があるため、設置場所に困るケースもあるでしょう。
蓄電池を導入する際は、導入候補の製品のサイズをあらかじめ調べておき、具体的な設置場所までイメージしておいてください。
蓄電池の補助金制度について
蓄電池は環境保護や災害対策に有効なため、国も導入を推進しており、補助金制度も用意されています。ここでは、家庭用と産業用のそれぞれで利用できる補助金制度を紹介するので、参考にしてください。
家庭用蓄電池の補助金
家庭用蓄電池を導入する際の補助金として、以下の制度があります。
補助金名 | 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業 |
---|---|
申請先 | 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII) |
対象 | 産業用蓄電池を新たに設置する場合 |
予算 | 詳細未定 |
補助額・補助率 | 詳細未定 |
公募期間 | 詳細未定 |
こちらの補助金制度は、令和5年度の執行団体が3月10日に決定しました。詳細が決定次第、申請先となる一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)のホームページにて公開されます。
公募期間中でも、申請金額の合計が予算に達した場合は受付停止となるため、利用を検討している人はSIIのホームページをこまめにチェックしておきましょう。
参考:令和5年度「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業」について
産業用蓄電池の補助金
産業用蓄電池を導入する際の補助金として、以下の制度があります。
補助金名 | 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業 |
---|---|
申請先 | 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII) |
対象 | 家庭用蓄電池を新たに設置する場合 |
予算 | 詳細未定 |
補助額・補助率 | 詳細未定 |
公募期間 | 詳細未定 |
こちらの補助金制度も、家庭用と同じく令和5年度の執行団体が3月10日に決定しました。詳細が決定次第、申請先となるSIIのホームページにて公開される予定です。
公募期間中でも、申請金額の合計が予算に達した場合は受付停止となるため、利用を検討している人はSIIのホームページをこまめにチェックしておきましょう。
参考:令和5年度「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業」について
蓄電池導入に関するよくある質問
最後に、蓄電池導入に関するよくある質問を2つ紹介するので、参考にしてください。
蓄電池は何年で元が取れる?
蓄電池は太陽光発電とセットで導入すると、元を取りやすくなります。何年で元が取れるかは製品の購入価格や電気の販売価格、そのときのエネルギー価格などによって変わってきますが、多くは約15年以内には元が取れる計算になります。
蓄電池をやめた方がいい人・おすすめな人は?
蓄電池の導入をやめておいたほうがいいのは、以下に当てはまる人です。
- 毎月の電気代がそれほど高くない
- 昼間に電気をほとんど使わない
- 蓄電池の設置スペースを確保できない
反対に、以下のような人は蓄電池の導入がおすすめです。
- 太陽光発電装置を設置している
- 毎月の電気代が高い
- 災害時の備えをしておきたい
まとめ
蓄電池には家庭用と産業用があり、容量や導入価格などが異なります。停電への備えや電気代の削減など、家庭でも企業でも蓄電池の導入にはメリットが多くあるため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。価格が高いのがデメリットですが、補助金を活用できる可能性があるため、詳細が公開されたらチェックしてみてください。
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