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【簡単解説】マイクログリッドとスマートグリッドの違い|VPPやDERとの関係性についても

近年、再生可能エネルギーを有効活用する 用語として注目されている「マイクログリッド」と「スマートグリッド」。混同されがちな用語ですが、それぞれ意味が全く異なります。この記事では、2つの言葉の意味と、これらに関連するVPP(仮想発電所)やDER(分散型エネルギー源)について解説します。

再生可能エネルギーを有効活用する手段や技術について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

マイクログリッドとスマートグリッドの違い

グリッドとは電力用語で「送配電網」「送配電系統」を意味します。同じワードを含むマイクログリッドとスマートグリッドですが、両者には以下のような違いがあります。

 

  概要 目的
マイクログリッド 地域に小規模な発電施設を作ることにより、安定的に電力を供給する仕組みのこと 災害などの非常時にも安定的に電力供給して被害を軽減すること
スマートグリッド IT技術によって電力の需要・供給を把握し、効率よく送電する送電網のこと 電力の需要・供給のバランスを整えることで、再生可能エネルギーの活用を推進すること

 

上記の特徴をふまえて、それぞれの詳しい仕組みや活用事例を見ていきましょう。

 

マイクログリッドとは?

マイクログリッドとは、一定の地域に小規模な発電施設を作り、大規模発電所に頼らないエネルギーの「地産地消」を行う仕組みのことです。平時には再生可能エネルギーを効率よく利用し、非常時には送配電ネットワークから独立して地域内で発電した電力を供給します。

自然災害などの非常時は送配電ネットワークが被害を受け、大規模停電が発生することが少なくありません。マイクログリッドでは地域で発電する再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電)を活用できるため、非常時にも安定的に電力を供給できるというメリットがあります。

非常時のエネルギー供給には「分散型電源(DER)」という技術が利用されます。詳しくは「4-2.DER(分散型エネルギー源)」で解説するのでチェックしてみてください。

マイクログリッドの仕組み

マイクログリッドでは、平常時と非常時で送配電の流れが異なります。下図を参考にそれぞれの流れを見ていきましょう。

引用元:資料格納先:資源エネルギー庁 第4回 令和元年12月6日(金)資料6 地域MG(地域情報連絡会)[PDF形式]

平常時は「電力系統」と呼ばれるシステムで各家庭や施設に電気が供給されます。電力系統とは発電所で作られた電気を利用者に届けるためのシステムで、系統配電線(グレーの線)を通じて各家庭や施設に電気が届けられます。

一方、自然災害時などの非常時は系統配電線を介さず、地域の発電施設から独自の配電網を用いて電気が送られる仕組みです。マイクログリッドではこのように平常時と非常時で異なる送配電の仕組みを持つことで、非常時でも安定的に電力が供給できるのです。

 

マイクログリッドの事例

マイクログリッドの導入事例として代表的なものは、神奈川県小田原市でスタートした「地域マイクログリッド構築事業」です。これは経済産業省が公募した令和2年度「地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業」にも採択されたもので、京セラやREXEVなどの企業と連携してエネルギーの地産地消を可能にする取り組みを行っています。

具体的には、平常時は小田原市内の一般家庭に設置された太陽電池パネルで発電した電力を大型蓄電池やEV(電気自動車)に供給して蓄電します。そして非常時にはマイクログリッドを発動し電力供給を蓄電池に切り替えることで、電力系統に頼らない分散型電源として安定的に電力を供給しようというものです。一部のEVは「動く蓄電池」としてエリア内の避難所に派遣し、非常用電源に利用するという計画もあります。

【参考】地産地消型の地域マイクログリッド構築事業について|小田原市

 

スマートグリッドとは?

スマートグリッドとは、IT技術によって電力の流れを供給側と需要側の両方からコントロールし、効率よく送電する送電網のことです。スマートとは「賢い」という意味があり、スマートグリッドを直訳して「賢い送電網」とも呼ばれます。

もともと大規模な停電が問題となっているアメリカで生まれた考え方ですが、近年では日本でも次世代の電力ネットワークとして注目されています。スマートグリッドを導入することで、各家庭や事業所の電力需要を「見える化」し、必要な電力を無駄なく送電できるため省エネ効果が期待されています。

またスマートグリッドは、再生可能エネルギーの安定供給を促進する技術としても注目されています。太陽光発電や風力発電のような自然エネルギーは発電量が不安定なため、安定的に供給するためには電力の需給バランスの調整が不可欠とされているからです。

スマートグリッドの詳細はこちらの記事でも解説しています。
【関連記事】スマートグリッドとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説|グリラボ  

スマートグリッドの仕組み

スマートグリッドは各家庭や事業所の電力需要をリアルタイムに把握し、それに応じた電力を送電する仕組みを持っています。電力需要をリアルタイムに把握するためには「スマートメーター」が欠かせません。

スマートメーターとは、通信機能を備えた電力メーターのこと。従来は電力会社の担当者などが各家庭に訪問して設置されている電力メーターの電力使用量を計測していました。一方、スマートメーターでは通信機能を利用して電力使用量のデータがリアルタイムに電力会社に送られます。スマートメーターによって「見える化」した電力使用量をもとに、電力会社は必要な量の電力を無駄なく送電できる仕組みとなっているのです。

スマートグリッドの事例

日本では2009年頃からスマートグリッドの導入事例が増えてきています。代表的なものは前述したスマートメーターの導入です。たとえば、首都圏エリアで電力の供給をおこなう東京電力パワーグリッドでは2014年から各家庭にスマートメーターの設置を始め、2020年度末までにほぼ全ての世帯・事業所に約2,840万台を設置しています。

スマートメーターの設置は首都圏エリアに限った話ではありません。国のエネルギー基本計画においても2020年代早期に全世帯・全事業所に導入することを目標としており、2024年度末までに日本全国の家庭などにスマートメーターの設置を完了させることを目指しています。

この事例や計画からわかるように、スマートグリッドはすでに私たちの生活に身近な存在となりつつあるのです。

4.マイクログリッド、スマートグリッドに近い用語について

マイクログリッド、スマートグリッドに関連する用語として「VPP(仮想発電所)」や「DER(分散型エネルギー源)」があります。これらの用語についても再生可能エネルギーを有効活用する手段として知っておきましょう。

 

VPP(仮想発電所)

VPPはVirtual Power Plant(バーチャルパワープラント)の略語で、日本語では仮想発電所を意味します。VPPは住宅やオフィス、工場など地域全体に設置された発電システムをひとつにまとめ、IoT技術を活用してコントロールする仕組みのことです。このように地域全体の発電システムをつなぎ合わせて、あたかも一つの発電所のように見立てていることが「VPP(仮想発電所)」と呼ばれる由来となっています。

具体的には企業・自治体などが所有する生産設備や自家用発電設備(例:太陽光発電やエコキュート)、蓄電池やEV(電気自動車)といった地域に分散するエネルギーリソースをアグリゲーターと呼ばれる事業者が一括で監視・制御して、地域全体にシェアします。これにより地域で発電した再生可能エネルギーを有効活用できるのです。

VPPについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】 VPPとは?必要性やメリットについてわかりやすく解説!|グリラボ  

DER(分散型エネルギー源)

DERはDistributed Energy Resourcesの略語で、日本語では分散型エネルギー源と呼ばれます。DERは、従来の発電所からの電力供給ではなく、住宅やオフィスなど各地に分散するエネルギー源のことです。

DERの代表的な例としては、太陽光パネルや蓄電池、EV(電気自動車)などがあります。前述のとおり、DERはマイクログリッドで非常時に供給されるエネルギー源としても利用されるものです。

詳しくはこちらの記事で解説しているのでチェックしてみてください。

【関連記事】分散型エネルギー源(DER)とは?メリット・デメリットについてわかりやすく解説|グリラボ  

まとめ

「マイクログリッド」と「スマートグリッド」はどちらも再生可能エネルギーの有効活用に関する言葉です。どちらも送配電網や送配電系統を意味する「グリッド」という言葉が使われていますが、それぞれ「マイクログリッド」は仕組みを、「スマートグリッド」は技術を表しています。この両者の違いを正確に把握することで、再生可能エネルギーについて深く理解することができます。

グリラボはエネルギーの世界をわかりやすく紹介しているメディアです。再生可能エネルギーの知識を深めたい人はぜひ参考にしてみてください。

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