アイ・グリッドの「R.E.A.L. New Energy Platform®」とは? 後編
アイ・グリッドグループでは、「グリーンエネルギーが地域をめぐるサスティナブルな世界の実現」を事業ビジョンに、AI・IoT・クラウド・デジタル技術を活用した、再生可能エネルギーを循環させる分散・集約型の新しい電源マネジメントシステム「R.E.A.L. New Energy Platform®」を構築しています。
今回は当社代表取締役社長の秋田と、R.E.A.L. New Energy Platform®の開発責任者である岩崎に、「R.E.A.L. New Energy Platform®」はどんなものなのか、なぜ必要なのか、このプラットフォームによって、何が実現するのか、わかりやすくご説明するためインタビューを行いました。前編・後編にわけてご紹介します。
秋田 智一
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 代表取締役社長
岩崎 哲
Tetsu Iwasaki Ph.D. 博士(環境学)
株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 執行役員 兼
株式会社アイ・グリッド・ラボ 取締役CTO
目次
前編:R.E.A.L. New Energy Platform®が必要な背景 気候危機回避の勝負の10年間
後編:R.E.A.L. New Energy Platform®が実現する地域の再生可能エネルギー循環とは
― ここからは岩崎さんに伺います。「R.E.A.L. New Energy Platform®」を使うとどんなことができるのか教えてください。
岩崎:「R.E.A.L. New Energy Platform®」を使うことで将来的にはいろいろなことができるようになるのですが、まずは既に取り組みが始まっている2つの事例についてご紹介します。
1つ目は、ホームセンター・スーパーを営む株式会社バローホールディングスとの、余剰電力を活用したルーフトップ型太陽光発電施設の導入事例です。
ホームセンターバロー養老店(左)、スーパーマーケットバロー塩尻店(右)
― バロー様との取り組みは、どのような特徴があるのでしょうか?
岩崎:ホームセンターなど、バローグループで累計50施設を目標に、ルーフトップ型PPAモデル(第三者所有モデル)の自家消費型太陽光発電を設置しています。「R.E.A.L. New Energy Platform®」を活用し、余剰電力を他の利用者にCO2フリー電力として供給を行う「余剰電力循環モデル」が採用されていることが特徴になります。
― 「余剰電力循環モデル」とはどういったモデルでしょうか?
岩崎:まず、ホームセンターなどは電力消費量が比較的少ない施設になります。こういった施設にルーフトップ型の太陽光発電を設置しようとすると、電力消費量より発電量の方が多くなってしまうという課題がありました。
電力消費量と発電量が同程度にならないと、発電した電気が余ってしまいます。一般的に余った電気を管理・コントロールするのは非常に難しいため、こうした施設への太陽光発電は限定的な導入に留まっていました。
― 本当はもっと発電できるのに、太陽光パネルを設置できないケースがある。
岩崎:はい。屋根の発電ポテンシャルを活かしきれないということです。アイグリッドの「R.E.A.L. New Energy Platform®」はこの課題に対する解決策の一つとなります。
「R.E.A.L. New Energy Platform®」を用いることで、発電で余った電気=余剰電力を含めた需給調整が可能になります。これにより屋根上すべてに太陽光パネルを設置することが可能になります。これにより、バローグループのある施設では、再エネ比率が9割近くになる日も出てきました。
・ホームセンターバロー本巣文殊店の1日の電力データ比較
※2021年7月13日のデータ。従来モデルはシミュレーション値。
― なるほど。発電によって余った電気はどうなるのでしょうか。
岩崎:余った電気をコントロールして、他の電力使用者に供給することをしています。このモデルを私たちは「余剰電力循環モデル」と呼んでいます。
― さきほど、余剰電力の管理は難しいと伺いました。なぜアイグリッドは管理できるのでしょうか。
岩崎:余剰電力を管理するには、どれくらい余剰電力が発生するか予測することが必要になります。この余剰電力を予測するためには、「太陽光で発電する発電量」と「施設が使う電力量」の2つの予測を高度なレベルで行う必要があります。
アイグリッドでは、二つ目の施設が使う電力量の予測について、これまでの事業で培った累計6,000施設のエネルギーマネジメント事業を通して蓄積した電力ビッグデータを活用しています。
このビッグデータをAI解析する事で、24時間先までの電力使用量を施設毎に予測する要素技術を保有しております。この技術をベースに、余剰電力の管理が可能になっています。
― AIを活用されているのですね。
岩崎:AIがディープラーニングしていくので、予測精度が高まっていくことになります。この「余剰電力予測」を「R.E.A.L. New Energy Platform®」で行うことで、バローグループ様の施設の屋根いっぱいに太陽光パネルを設置することができるようになりました。
独自の余剰電力予測AI技術を用いた需給調整を相互データ共有で高度化
― 2つ目の取り組みについて教えてください。
岩崎:スーパーマーケット事業を営む、株式会社ヤオコー様との取り組みをご紹介します。ヤオコー様の川越的場店では、次世代型店舗の実証として、太陽光発電/蓄電池/ネットスーパー用EV車両/EVと蓄電池などを繋ぐV2Hを導入しています。
― わかりやすく教えていただけますか。
岩崎:まず太陽光発電の屋根への設置はバロー様の店舗と同様です。ここに、蓄電池やEVの充電施設、ネットスーパーで利用する宅配用車両としてEV(電気自動車)を導入しています。
― 太陽光発電とEVがあるスーパーですか。まさに次世代なイメージですね。
岩崎:こういった店舗を、GX(グリーントランスフォーメーション)化された店舗「GXストア」として提案しています。この太陽光発電・蓄電池・EVをつないでコントロールする役割を「「R.E.A.L. New Energy Platform®」が担っています。
― 太陽光発電・蓄電池・EVがどのようにつながっていくのですか。
岩崎:一例として、太陽光発電量が余っている時間帯をAIが予測し、余った電気を蓄電池やEVに充電します。逆に、太陽光発電がされなくなってくる夕方以降の時間帯では、蓄電池やEVに充電された電気を施設に送ります。これらをEVでの宅配スケジュールを加味しながら行う必要があります。こうしたAI予測、各機器の自動制御などを「R.E.A.L. New Energy Platform®」上で行っています。
― どのようなメリットがあるのでしょうか。
岩崎:いくつかメリットが考えられるのですが、まずEV車両を店舗運営・宅配業務いずれの快適性と運用性も損なわない形で導入することが可能になると考えています。
もう一つは、太陽光=再エネが余っている時間に再エネを溜めて、再エネが足りない時間に溜めておいた再エネを使うことができるので、できるかぎりCO2排出量を出さずに電気を使うことができるようになります。副次的な効果として、他から電気を買う量が少なくなるので電気代の削減にもつながります。
また、スーパーマーケットをはじめとした小売の施設は、地域の生活圏に必ずと言っていいほどありますので、そうした施設に太陽光発電や蓄電池などの導入が進んでいくと、災害停電時に地域住民に電気を融通できるような可能性もあります。
― スーパーが災害時のハブになる可能性があるのですね。最後に秋田さんに伺います。
今後のR.E.A.L. New Energy Platform®の展開について教えてください。
秋田:アイグリッドでは「R.E.A.L. New Energy Platform®」を活用して、「グリーンエネルギーが地域をめぐるサスティナブルな世界の実現」に本気で取り組んでいます。
バローグループ様やヤオコー様のような次世代型のGXストアが全国に広がることで、GXストアがある地域に再エネが循環していくことが現実的に進んでいきます。
これまでアイグリッドが培ってきた経験・ノウハウ・技術と、なによりお客様との信頼関係をつないでいくことで、分散型の再生可能エネルギーを循環させていくことが使命だと思っています。そのために「R.E.A.L. New Energy Platform®」も進化させていきます。
「R.E.A.L. New Energy Platform®」構築にあたって、パートナーである「AWS」のブログ「【寄稿】株式会社アイ・グリッド・ラボによる AI・IoT 技術で再生可能エネルギー活用を最適化する次世代エネルギープラットフォーム①」では、技術的な観点からプラットフォームを解説しています。
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