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アイ・グリッドの「R.E.A.L. New Energy Platform®」とは? 前編

アイ・グリッドグループでは、「グリーンエネルギーが地域をめぐるサスティナブルな世界の実現」を事業ビジョンに、AI・IoT・クラウド・デジタル技術を活用した、再生可能エネルギーを循環させる分散・集約型の新しい電源マネジメントシステム「R.E.A.L. New Energy Platform®」を構築しています。

 

今回は当社代表取締役社長の秋田と、R.E.A.L. New Energy Platform®の開発責任者である岩崎に、「R.E.A.L. New Energy Platform®」はどんなものなのか、なぜ必要なのか、このプラットフォームによって、何が実現するのか、わかりやすくご説明するためインタビューを行いました。前編・後編にわけてご紹介します。

 

秋田 智一

株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 代表取締役社長

 

岩崎 哲

Tetsu Iwasaki Ph.D. 博士(環境学)

株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 執行役員 兼

株式会社アイ・グリッド・ラボ 取締役CTO

 

 

目次

前編:R.E.A.L. New Energy Platform®が必要な背景 気候危機回避の勝負の10年間

後編:R.E.A.L. New Energy Platform®が実現する地域の再生可能エネルギー循環とは

 

― まずは秋田さんに伺います。「R.E.A.L. New Energy Platform®」とはどんなプラットフォームなのか、全体像を教えてください。

秋田:ひとことで言うのは難しいのですが、あえて申しますと「日本に分散型の再生可能エネルギーを循環させるために必要なプラットフォーム」です。

 

― なぜこのプラットフォームが必要なのですか?

秋田:まず世界中で喫緊の課題となっている気候危機の回避がどういう問題なのかを理解しておく必要があります。気候危機回避の対策として「2030年までに世界全体のCO2排出を約半分にし、その後の20年で排出をゼロにする」ということが求められています。

 

- 日本でも2030年にCO2排出量を46%減、2050年にカーボンニュートラルが宣言されました。

秋田:IPCCの発表では産業革命前に比べ既に1℃気温が上昇しており、気温の上昇幅を1.5℃に抑えないと、人間の生活に致命的な影響を与えるという報告が出ています。気温上昇がある臨界点を超えると、自然界で次々に環境変化が起こり、人類の手に負えなくなるということです。それを防ぐ勝負の年が2030年までの10年間と言われています。

 

- なぜ2030年までが勝負なのでしょうか?

秋田: CO2をはじめとする温室効果ガスの性質が関係しています。温室効果ガスは一度排出されると地球の大気中に非常に長い期間留まるという性質をもっています。また、気温上昇に関わる温室効果ガスの影響は、「単年の排出量」ではなく、これまでに排出した「過去の累積排出量」がポイントになります。

 

- 過去にどれくらいCO2排出をしているのですか?

秋田:はい。人類は既に多くのCO2を排出しております。1.5℃上昇に抑えるためのCO2の累積排出量上限はおよそ2600Gtと言われていますが、2017年までのCO2累積排出量は約2200Gtということです。

 

- つまり?

秋田:つまり、1.5℃に抑えるために排出してよいCO2排出量は残り400Gtとなります。

 

- 400Gtとはどのくらいの量なのでしょうか?

秋田:最近の世界の年間CO2排出量は、40Gt前後で、このままいくとこの10年間で400Gtを使い果たしてしまいます。この考え方を炭素予算/カーボンバジェットと呼びます。もちろん不確実性はありますが、炭素予算の考え方は気候危機回避のための世界共通認識になっています。

 

出典:環境省IPCC「1.5℃特別報告書」の概要

 

- 残り10年、つまり2030年までが勝負、ということになるわけですね。

秋田:その通りです。ただし、残り10年でCO2排出量をゼロにするのは不可能に近いので、1年毎に使う量を毎年減らしていく、という考え方になります。年間CO2排出量が仮に半分の20Gtになれば、単純計算で残り期間が倍の20年になります。

 

- 予算を使いきる期間を延長していく?

秋田:期間を延長することで、その間に新たな方策を生み出していくということを目指しています。

 

- なるほど。世界全体の方針についてはわかりました。一方、日本における気候危機対策というのはどのようになっているのでしょうか。

秋田:様々な対策の中でインパクトの大きい電力にフォーカスしますと、再生可能エネルギーの中でも太陽光の比率を上げていくことが重要な位置づけになっています。

まず、日本の2019年度の電源構成では18%が再エネで、これを2030年までに36~38%までに引きあげることが目標になっています。太陽光に期待されるのが全体の14~16%になり、再エネのおよそ半分を太陽光で賄うイメージです。

参照元:経済産業省 第6次エネルギー基本計画の概要※令和3年11月26日更新

参考記事:国のエネルギー政策の方針「エネルギー基本計画」について 経済産業省

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210721/k10013151741000.html

 

- 太陽光発電は日本でどのくらい広まっているのでしょうか?

秋田:2019年度時点で、すべての電源の中で6.7%となり、2018年時点での日本の太陽光発電の規模は世界3位です。

 

- このままのペースを続ければよいのですね。

秋田:いいえ、拡大には問題があります。日本は森林が多く、候補地が限られることが課題の一つです。大規模な発電設備の導入が可能な場所は限られています。また、生物・生態系、水循環などの自然環境への影響を通して、自然資本の損失を招くおそれがあるという議論もあります。

 

- では、どうすればよいのでしょうか?

秋田:法規制の変更や地域住民との合意形成などいろいろな解決方法はありますが、施策の一つとしてルーフトップソーラーの導入があります。これは既に建てられているスーパーなどの店舗や物流施設の屋根に太陽光パネルを設置するものです。

 

- これなら自然環境はこわれない?

秋田:自然環境への影響も少なく、かつ中規模の発電所を分散して作っていくということになります。施設の屋根を活用して作られた発電所が各地域にあると、副次的な効果として、災害リスクの分散という効果もあります。

 

- 1か所がダメになってしまっても、他の発電所でカバーする。

秋田:はい。施設の屋根を活用して作られた発電所が各地域にあると、副次的な効果として、災害リスクの分散という効果もあります。また、太陽光発電と蓄電池を同じ場所に設置していくことで、災害時のバックアップ電源として活用できます。地域のレジリエンス強化にもつながっていきます。

 

- 分散したルーフトップソーラーはメリットが多いように思います。

秋田:分散型のルーフトップソーラーモデルにも課題はあります。一つは天候によって、発電が不安定になってしまうことです。電力は安定供給が重要なポイントになります。

 

- 確かに雨の日に電気が使えなくなってしまうのは困りますね。

秋田:分散型の再エネを増やすためには、一定程度、電気を使う側をコントロールする必要があります。使う量を一定時間制御したり、発電が安定している時間に電気の利用をスライドしたり、発電量が余っているときに蓄電池に充電させたり、細かな調整が必要になります。

 

- 細かい調整、非常に難しそうです。

秋田:これを人力では行えませんので、デジタルの力を活用した新しいプラットフォームが必要となります。長くなりましたが、それがアイ・グリッドのR.E.A.L. New Energy Platform®ということです。

このR.E.A.L. New Energy Platform®を活用して、「日本に分散型の再生可能エネルギーを循環させる」ことを推進しています。

 

― なるほど。よくわかりました。

 

まとめ

前編では、なぜアイ・グリッドがR.E.A.L. New Energy Platform®を構築しているのか、国際的な視点や、日本の脱炭素の対策を踏まえて詳しくお伝えしました。後編では、R.E.A.L. New Energy Platform®を使ってどのようなことが実現できるのかをお届け致します。

後編「R.E.A.L. New Energy Platform®が実現する地域の再生可能エネルギー循環とは」に続く

 

「R.E.A.L. New Energy Platform®」構築にあたって、パートナーである「AWS」のブログ「【寄稿】株式会社アイ・グリッド・ラボによる AI・IoT 技術で再生可能エネルギー活用を最適化する次世代エネルギープラットフォーム①」では、技術的な観点からプラットフォームを解説しています。

是非、こちらも合わせてお読みください。

 

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