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VPPとは?必要性やメリットについてわかりやすく解説!

再生可能エネルギーを普及させる取り組みのひとつであるVPP(バーチャルパワープラント)。VPPについてはまだ詳しいことが広く知られておらず、一体どんなものなのか疑問に思っている人も多いでしょう。

今回は、そもそもVPPとは何なのか、仕組みや導入のメリット、具体的な導入事例などを解説します。

VPPとは?どんな仕組み?

VPP(バーチャルパワープラント)とは、仮想発電所という意味です。発電所ではあるものの、仮想の存在であるところに特徴があります。

従来電気とは1ヶ所で発電され、各住宅やオフィス、工場などさまざまな施設へとそれぞれ送られてきました。それに対してVPPは点在する小規模な再エネ発電や蓄電池、燃料電池等の分散された発電設備やシステムをひとつにまとめることをいい、専門の会社が管理・調整を行って電力のバランスを取ります。

まずVPPでは、地域全体の住宅やオフィス、工場などにそれぞれ発電システムが設置されています。さらに、地域の各所に太陽光発電やエコキュート、蓄電池、電気自動車の配置などが行われており、地域全体で発電した電気を地域全体でシェアして使います。

地域全体をあたかもひとつの発電所のように見立てていることから、このシステムをVPP(仮想発電所)と呼ぶのです。

VPPでは発電だけでなく、蓄電や需要についても一元的にモニタリングされます。発電して余った電気は足りないところに回され、さらに余剰電力は蓄電に回されるなど、地域全体の発電量を分配して効率良く使うことで、再生可能エネルギーの有効利用を促すシステムとして注目されています。

デマンドレスポンスとは?

デマンドレスポンスとは、電力の需要と供給のバランスを取ることです。VPPでは、地域全体で発電した電気を、地域全体で効率良く使うために、専門の事業者による電力管理が行われる必要があります。

VPPを維持するためには、事業者同士が連携をして、電力の需給バランスを最適化しなくてはなりません。これが、デマンドレスポンスです。デマンドレスポンスは、電力の使いすぎの抑制(下げDR)や余っているときの利用促進(上げDR)をコントロールすることにつながります。

たとえば太陽光発電による発電量が増える真夏の昼間に、工場の稼働を要請したり充電を求めたりすることを促すのがデマンドレスポンスの役割です。反対に、電力供給量に対して、使用量が多いときには節電を呼びかけることも行います。

VPPでは、こうした細やかな管理のもとに地域で発生させた発電量を、家庭や工場、EVで効率良く無駄なく使うのが特徴です。デマンドレスポンスによる適切な管理がなければ、VPPは成り立ちません。

関連記事:デマンドレスポンス(DR:Demand Response )とは?【みるエネルギー辞典】

アグリゲーターとは?

アグリゲーターとは、VPPやデマンドレスポンスを通して電力を統合・制御する専門事業者のことを指します。VPPにおいて、発電された電力はリソース、つまり資源です。電力が必要な需要家とVPPのサービスを契約し、各所で発電されたリソースを管理・制御する役割のことを、リソースアグリゲーターといいます。

また、リソースアグリゲーターが管理・制御した電力を集約し、一般の電気事業者と電力取引をして提供する役割を担うのが、アグリケーションコーディネーターです。

電力を使う場所とは、各家庭や工場、店舗などですが、そこで余った電力は再生可能エネルギー発電事業者や小売電気事業者、一般の送配電事業者などにも分配されます。反対に電力が不足したときには、供給してもらうことが可能です。

わかりやすく言うと、リソースアグリゲーターが行うのは電力の管理や制御で、これに対してアグリケーションコーディネーターが行うのが電力の分配です。実際にはこれらのアグリゲーター同士が緊密に連携することで、電力の需給バランスを最適化し、VPPを適切に運用することが可能になります。

VPPはなぜ必要?

VPPは、二酸化炭素を削減することで、地球温暖化による気温上昇抑制につなげるために必要な仕組みです。

VPPを導入することで電力が効率良く分配できるため、石油・石炭・天然ガスなどの化石由来のエネルギーを無駄に消費することがなくなり、結果として二酸化炭素の排出量を抑えることができます。

何年も前から、地球温暖化による気温上昇が問題視されており、すでに世界各地でさまざまな異常気象が起き始めているのが現状です。日本でも、夏の異常とも言える高温や、時を選ばない豪雨が大きな被害をもたらすことが増えてきました。

再生可能エネルギーの利用割合を増やすことによって、一刻も早い二酸化炭素削減が目指されています。しかし、再生可能エネルギーを代表する太陽光発電は天候に左右されやすく、日射量が落ちると発電量も落ちてしまうのが難点です。

VPPの仕組みがあれば、地域全体で発電を行い共有しながら利用できるため、効率よく運用することができます。足りないところに余った電力を回すことで無駄なく運用ができるほか、電力が足りなくならないよう節電の意識を高めることにもつながるのです。

VPPを導入するメリットは?

画期的な仕組みであるVPPの導入には、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく解説するので、参考にしてみてください。

再生可能エネルギーの普及・拡大に貢献

VPPを導入することで、再生可能エネルギーの普及や拡大に貢献できるのがメリットとして挙げられます。

VPPでは、複数かつ多数の発電システムから発生する電力を、リソースとして一括制御することが可能です。今まで無駄にされてきた小規模な発電システムから発生する余剰な電力も、まとまった電力として利用できるようになります。

太陽光発電での発電量が不足したときに、地域のほかの場所から電力を供給できるというシステムは、再生可能エネルギーの信頼性を高めさらなる普及や拡大に貢献することが可能です。

再生可能エネルギーは、いまだ十分に普及しているとは言えません。各家庭で太陽光発電によって発電が行われている場合も、これまでは自家消費だけに留まり、余剰の電力が発生した場合は無駄になるリソースもありました。VPPを導入することで、再生可能エネルギーを普及させて無駄な消費を抑え、温暖化防止につなげることができます。

低コストで電力需給バランスを調整

VPPは、従来使われてきた大規模な発電施設などに比べて、低コストで運用できるのが大きな魅力です。

1つの企業が1ヶ所の大規模発電施設から電力を供給する場合、発電施設を運営する費用が膨大にかかっていました。

電力が急にたくさん必要になった場合でも対応できず、余剰発電設備などを準備しなくてはいけないケースがあったのも特徴です。そのうえ、需給バランスを調整したいときには広範囲での調整が必要で、全体としてかなり大きな費用がかかっていました。

VPPの場合は発電システムの一つひとつが小規模なので、コストが抑えられます。さらに、電力は集約して供給されるので、余剰分を集めて不足しているところに回すという低コストでシンプルな方法を用いることができるのも魅力です。

災害時の停電リスク軽減

災害時の停電リスクが軽減できるのも、VPPの魅力のひとつです。大規模発電施設が電力供給を一手に担う場合、災害時に大規模発電施設がひとつ被害を受けてしまうと、大規模な停電が発生するリスクがあります。この施設から電力を供給している広範囲の施設や家庭が、すべて影響を受けるためです。

大規模な施設は復旧のために時間がかかることもありえるので、場合によっては影響が長期に及ぶことも考えられるでしょう。

VPPが導入されていれば、発電は家庭や企業など、小さくて数の多い発電設備で行われます。すなわち、1ヶ所だけが大きな被害を受けるという状態がほぼ考えられなくなるということです。発電設備が小規模であれば被害も小規模に留まるため、何かあっても復旧が早く、災害時でも電力の供給が安定しやすくなります。

VPPの実現に向けて環境は変わりつつある?

海外では、VPPがすでに実現されている国もあります。日本ではまだ聞き慣れない言葉ですが、再生可能エネルギーの普及など、環境は徐々に変化している最中です。

現在は一般家庭においても、太陽光発電や燃料電池、蓄電池などが設置されるようになってきました。また、環境問題を自分の問題として捉える人も増え、省エネの生活も常識的になりつつあります。

従来特定の業者が担ってきた電力システムやガスシステムも、さまざまな業者の参入によりエネルギーシステム改革が行われている最中です。

さらに現在着々と普及しているIoT、すなわち「インターネットにつながったモノたち」も、VPPの強い味方です。家電などエネルギーを消費するモノや、発電システム、蓄電池システムがインターネットにつながることで、電力のモニタリングや自動制御を行うことができるようになりました。

これがVPPの実現、そして再生可能エネルギーを利用した次世代社会システム「スマートコミュニティ」へとつながっていくのです。

VPPの事業化に向けて政府が行っている取り組みはある?補助金は?

VPPの本格的な事業化は、政府がVPP技術に関連する実証を進めることで支援しているのが特徴です。さらに、政府による支援の一環として補助金の申請も受け付けています。

VPPのための補助金は、正式名称を「バーチャルパワープラント構築事業費補助金」と呼びます。補助金が交付される事業は「バーチャルパワープラント構築事業」と「高度制御型デマンドレスポンス実証事業」の2種類。「バーチャルパワープラント構築事業」は、VPPの基盤整備のほかに、アグリゲーター事業も対象です。

「高度制御型デマンドレスポンス実証事業」の場合は、国内の「一般送配電事業者が活用するネガワット取引の技術実証、ネガワット取引に係る共通基盤システムの開発・調査・研究・接続実証」が補助金の対象とされています。

これらの取り組みは2016年に経済産業省によって策定された「エネルギー革新戦略」に明記され、今もなおVPP構築の下支えとして実行されているのが特徴です。

VPPの導入事例はある?

VPPの国内導入事例として代表的なものには、横浜市で2010年に開始された「YSCP(Yokohama Smart City Project)」が挙げられます。日本で初めて、市街地でのエネルギー需給バランスを検討した事例です。

横浜市ではこのとき既に、エネルギー関連事業者や電気メーカー、建設業者など34社の企業を巻き込み、2013年までにHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を4,000件あまり設置しました。

他にもさまざまな実績を挙げ、試験運用としてではありますが一定の成果を挙げています。2016年以降は市内の小中学校やコンビニ、公共施設などを中心にVPPを進める計画を立てています。

海外でのVPP導入事例で有名なのは、ドイツで行われた「Next Kraftwerke(ネクスト・クラフトヴェルケ)」という取り組みです。2009年から行われているプロジェクトで、小規模拠点からの電力を集約、再分配するプロセスを実際に行い、現在もなお再生可能エネルギーの理想的な運用方法を追求しています。

【事例】株式会社アイ・グリッド・ソリューションズが2021年6月から実証実験を始めている「R.E.A.L. New Energy Platform®」についてはこちら

まとめ

VPPは、家庭や企業、工場などの事業者それぞれに太陽光発電システムや蓄電池といった小規模な発電機能を組み込み、地域全体の発電量を「リソース」として有効活用する仮想発電所の仕組みです。

既に日本国内での導入事例もあり、政府も積極的に援助を行っていることから、VPPは今後の脱炭素社会を担う大きなキーワードとなっていくでしょう。二酸化炭素排出量の抑制、地球環境の維持を目指し、個人のレベルから脱炭素社会に貢献する時代が訪れようとしているといえます。

 

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