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電力市場の新たな可能性?DSF(デマンド・サイド・フレキシビリティ)とは?

太陽光発電などをはじめとした再生可能エネルギーの活用は、世界的な環境意識の高まりとともに年々その注目度を高めており、 SDGsやCOP26等、脱炭素化がグローバルトレンドとなっています。

これまで脱炭素は、CSRのような文脈で考えられていましたが、今はESG投資の拡大という形で、実質的な企業活動や経済活動にも大きく影響してきます。

そのため、再生可能エネルギー/分散電源(風力・太陽光、及びそれらを蓄放電する蓄電池やEV等)やその制御が一層重要になります。

そこで今回は、欧米を中心に発展している電力市場の新たなビジネスとして注目を集めるDSF(デマンド・サイド・フレキシビリティ)について、詳しくご紹介していきます。

DSF(デマンド・サイド・フレキシビリティ)とは?

DSFはデマンド・サイド・フレキシビリティの略称で、VPPやDR(デマンドレスポンス)、デマンドサイドマネジメントなどを含有する包括的な言葉です。一言で言えば、需要家側のアセット(自家発、コージェネ、生産プロセス、蓄電池等)を制御して電力負荷パターンを変えることで、電力システムへの価値を提供して収益を得るビジネスモデルのことです。日本ではまだまだ馴染みの少ない言葉ですが、欧米ではすでに重要な取り組みとなっています。

電力の安定供給には、需要と供給のバランスが保たれた「同時同量の原則」があり、これが乱れてしまうと電力の周波数が乱れ、大規模停電を引き起こしてしまうことにもなりかねません。この需給バランスを保つため、従来は系統運用者が各発電所の出力の増減などで調整してきましたが、蓄電池や太陽光発電の浸透などに伴い、需要家側がエネルギーリソースを持つようになりました。こうしたエネルギーリソースが生み出す調整力の制御による新たなビジネスモデルが生まれています。

DSFが求められる理由とは

では、なぜDSFが求められるようになったのでしょうか?そこには従来の給電方式の抱えるリスクなどさまざまな要因があります。ここでは、DSFが求められる背景についてご紹介していきます。

■大規模需給バランス調整の限界
先に述べたように、電力の安定供給のためには、電力の供給量と使用量が同量でなければならない「同時同量の原則」があり、この需給バランスの調整は従来、系統運用者による各発電所の出力増減に依存していました。これまでは「発電所 → 送配電 → 需要家」という一方向の流れだったため発電所側の出力増減で対応することができましたが、火力発電の減少や、需要家側の分散電源での発電/放電の増加等により、旧来の発電側での出力増減では系統の両端の需給バランスを制御し切れなくなりました。そのため、需要家側(デマンドサイド)の制御が重要になるのです。

DERを有効に活用するために、重要になってくるのが「アグリゲーター」です。
アグリゲーターとは需要家側/分散型エネルギーリソースを統合制御し、エネルギーサービスを提供する事業者のことで、リソースを制御する「リソースアグリゲータ」と、リソースアグリゲーターの集めた電力を束ねて電力取引を行う「アグリゲーションコーディネータ」という役割があります。


こうしたアグリゲーターたちは、電気使用量のピーク時には需要家へ節電を呼びかけて需要を低下させたり、反対に、太陽光発電量が多く見込める夏の日中などでは需要を発生させたりと、電力需要のパターンを制御・管理しています。こうした行動を「デマンドレスポンス(DR)」と言い、電力の需給バランスを調整するための新しい仕組みとなっています。

DSFのビジネスモデルとは

分散型エネルギーリソースを用いた需給調整力を取引し、ビジネスモデルとして成立させたのがDSFビジネスです。では、この調整力とはどのような仕組みで取引が行われているのでしょうか。実際のビジネスモデルの事例を交えながら、詳しくご紹介します。

■DSFビジネスモデルは「コスト回避」と「収益獲得」
DSFを活用したビジネスモデルは、大きく分けて「コスト回避」と「収益獲得」の2軸に分けることができます。この2軸をさらに細かく分けると5つの領域で活用が進んでいると言われています。
1つ目のコスト回避については、需要家の電力供給コストの削減への活用です。
具体的には「託送料金の削減」と「卸電力市場・バランシング市場」の2種類があり、電力需要や市場価格に基づいてDSF創出の判断を行います。

①託送料金とは、送配電ネットワークの利用料金のことで、DSFを創出しデマンド(kW)を抑制することで、託送料金の基本料金の上昇を回避します。

②また、卸電力市場やバランシング市場の時間別価格の変動性を利用することで、電力量(kWh)の調達コストを削減します。さらに、アービトラージ取引によるインセンティブの獲得も可能です。

2つ目の収益獲得については、送電事業者(TSO)や配電事業者(DSO)と契約し、それら送配電事業者からの発動指令に基づいて、DSFの創出を行うことで、インセンティブを獲得する方法です。具体的には③「アンシラリーサービス(需給調整市場)」、④「容量市場」、⑤「DSOサービス」の3種類があります。
アンシラリーサービス(需給調整市場)は、送電事業者が需給調整時に必要とする調整力を提供します。この調整力は「ΔkW(デルタキロワット)」と呼ばれ、実需給時点で必要な”短時間で出力調整可能な電源”をあらかじめ確保することを言います。容量市場は必要となる供給力(kW)を提供することを表し、これらを取引市場に提供することで、事業者はインセンティブを獲得できます。
また、DSOサービスは配電事業者が需要家側/分散電源の増大に伴い配電設備を増強する代替手段として、DSFをすることで、設備投資を抑制し、その分のインセンティブDSOから獲得します。


欧米での普及が進んでいるDSFビジネスですが、日本でも徐々に市場整備が進んでいます。今後、再生可能エネルギーの重要性はさらに高まり、それに伴い、DSFの重要性はますます高まっていくでしょう。
VPPなどを始めとした、今後のDSFビジネスの動向をしっかり抑えていくことが重要です。

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