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燃料費調整額(燃調費)とは?なぜ高いのか仕組みをわかりやすく解説!

燃料費調整額(燃調費)が電気料金として徴収されていることをご存知ですか。ロシア・ウクライナ情勢をきっかけとした物価高騰と、電気料金の値上がり分は、この燃料費調整額に含まれています。

本記事は電気料金を節約したい人、燃料費調整額の仕組みを知りたい人に向けて、燃料費調整額とは何か、仕組み、計算方法を説明します。また、燃料費調整額の影響を少なくする方法やよくある疑問についても説明します。知識を学んで、電気代値上がりに対応していきましょう。

電気代が高い原因?燃料費調整額(燃調費)とは?

燃料費調整額(燃調費)とは、電気料金の算出項目の一つで、原材料の価格変化に応じて上下する金額です。電気事業者が電気をつくるための原材料(原油、石炭、LNG(※液化天然ガス)など)を高く仕入れると燃料費調整額が上がります。

このため燃料費調整額(燃調費)は電気代が高い原因になります。特に2021年にはじまったロシア・ウクライナ情勢で燃料費が急騰して以降、電気代が上がる主な要因は燃料費調整額です。

なぜ燃料費調整額が設けられているかといえば、経済情勢の変化をすばやく価格に反映させ、事業者の経営の安定化を図るためです。もし燃料費が高騰した際、すばやく価格に転化できないなら、事業者はつぶれてしまうかもしれません。それは利用者にとっても困ることです。そこで燃料の多くを輸入に頼っている日本は、燃料費調整額によって電気料金を調整できる「燃料費調整制度」を、1996年1月から導入しています。

近年の燃料費調整額の傾向

燃料費調整額は、燃料価格の急騰にともなって上がっています。下の図をみると、燃料価格がロシア・ウクライナ情勢をきっかけに急上昇したことがわかるでしょう。

出典:規制料金値上げ申請等の概要について|東京電力

2015年時点での価格に比べると、2022年11月時点で石炭は約5.3倍、原油は約2.5倍、LNGは約2.3倍となっています。この経済情勢の変化を受けて、多くの電気事業者は燃料費調整額、つまり電気料金を上げました。

燃料価格の上昇に加えて、円安が進行している点も見逃せません。このダブルパンチによって、東京電力の標準モデルの電気料金は、2023年1月に約5割上昇し、過去最高になりました。経済情勢は依然として不透明で、円安も続く可能性があることから、今後も状況を注視する必要があります。

燃料費調整額の仕組み

燃料費調整額はどのようにして決まるのでしょうか。また、いつ電気料金に反映されるのでしょうか。ここでは燃料費調整額の仕組みを解説します。

電気料金の3つの要素

電気料金は次の計算式で決まります。

電気料金=基本料金+電気量料金+再生エネルギー発電促進賦課金

上式の3項目の内容は次のとおりです。


項目 内容
基本料金 契約プランごとに設定されている固定料金

電気利用料に関係なく支払う料金
電気量料金 電気利用料に応じて支払う料金
再生エネルギー発電促進賦課金 再生エネルギー普及のために負担する費用

燃料費調整額は電気量料金に含まれます。計算式は以下のとおりです。



電気量料金=(電気利用料金単価×使用量)±燃料費調整額

それでは燃料費調整額がどのように決まるのか、次項で解説します。

燃料費調整額の計算式

燃料費調整額の計算式は次のとおりです。

燃料費調整額=燃料費調整単価×使用電力量(kWh)

つまり、使用電力量が多いほど、燃料費調整額の影響も大きくなるわけです。電気利用料金単価は契約プランによって異なりますが、平均は1kWhあたり約27円です。

燃料費調整単価は、簡単にいえば事業者によって自由に決められる値です。原材料や卸電力の仕入れは各社で違うため、常識的にも納得できるところです。しかし、それでは利用者や投資家などが納得しないため、燃料の市場価格と仕入れた原材料の種類(原油、石炭、LGNなど)の割合などによって決めることとし、計算式も原則公開しています。

燃料費調整単価の計算式はむずかしいため、ここでは省略します。一般の人は契約している電力会社のホームページで公開されている燃料費調整単価を調べるとよいでしょう。

例えば、東京電力の従量電灯、低圧電力などのプランの燃料費調整単価は、2023年1月時点で5.13円/kWhでした。仮に1月の電気利用料が300kWhなら、5.13円/kWh×300kWh=1,539円が電気代に足されます。

参考:過去の燃料費調整のお知らせ一覧|TEPCO

燃料費調整額の反映タイミング

燃料費調整単価は過去3カ月間の平均燃料価格を毎月算出し、2カ月後の電気料金から反映されます。例えば2023年2月末時点で2022年12月、2023年1月、2月の平均燃料価格を加味して計算し、5月はじめに反映されます(下図参照)。


出典:原燃料費調整制度の見直しについて|経済産業省

つまり、仮に燃料価格の急騰があっても2カ月間のタイムラグがあります。家庭レベルなら「2カ月後に電気代が上がりそうだから、今のうちに節約しておこう」といった対応をとれるわけです。

燃料費調整額について知っておきたいこと

燃料費調整額は仕入れコストの調整が目的ですので、電力会社やプランによって変わります。ここでは実際の金額も紹介しながら、現状や仕組みについて解説します。

燃料費調整額は電力会社やプランによって違う


先述したとおり燃料費調整額は電力会社によって違い、電気プランによって変わる場合もあります。旧一般電気事業者で燃料費調整単価を比較したのが、次の表です。
  2023年3月分【円/kWh】 2023年2月分【円/kWh】 2023年1月分【円/kWh】
北海道電力 -3.34 -3.36 3.66
東北電力 -3.53 -3.53 3.47
東京電力EP -3.47 -1.87 5.13
中部電力ミライズ -5.13 -1.64 5.36
北陸電力 -5.23 -5.23 1.77
関西電力(16kWh~) -4.76 -4.76 2.24
中国電力(16kWh~) -3.81 -3.81 3.19
四国電力(12kWh~) -3.19 -4.45 2.55
九州電力 -2.55 -5.06 1.86
沖縄電力(11kWh~) -1.86 -3.02 3.98

2023年2月分から燃料費調整単価がマイナスに転じたのは、国の「激変緩和措置」の影響です。激変緩和措置は、燃料価格の高騰や円安による電気代上昇を抑えるために実施されました。

燃料費調整額には「上限」がある

燃料費調整額は電力会社が任意に決められますが、電気利用者への影響を抑えるために「上限」が設けられています。具体的には、料金プランをつくったときに想定した平均燃料価格の「基準燃料価格」の1.5倍以上にはできません。つまり、「相場変動の影響は料金転化してもいいですが、はじめに約束した料金幅は守ってください」という制度です。

ただし、上限があるのは、旧一般電気事業者の従量電灯プラン、定額電灯などの「規制料金」プランです。電力自由化以降にできた「自由料金」プランに上限規制はありません。例えば新電力のプランや東京電力の「スタンダードS」、関西電力の「eおとくプラン」などは上限がありませんので注意が必要です。

しかし、燃料価格上昇によって、燃料費調整額が上限値を超えるようになってからは、上限を撤廃する電気事業者がたくさん出ました。また法的な縛りのない自由料金プランにおいても、独自に設けていた上限ルールをなくす動きが広がっています。

燃料費調整額の上限を撤廃した新電力一覧

燃料費調整額の上限を撤廃している新電力の一例は、次のとおりです(2023年2月時点)。

  • 0円でんき
  • auでんき
  • ENEOSでんき
  • J:COM
  • Looopでんき
  • イワタニでんき
  • エバーグリーン・リテイリング
  • オカでん0円でんき
  • ソフトバンクでんき
  • ドコモでんき
  • トドック電力
  • はりま電力
  • ピタでん
  • まちエネ
  • みつばち電気
  • 格安電力
  • 楽天でんき
  • 丸紅新電力
  • 須賀川瓦斯
  • 水戸電力
  • 西部ガス
  • 大阪ガス
  • 坊っちゃん電力、など

上限を撤廃する新電力も出てくることが予想されるため、詳しくは契約している新電力のホームページなどで確認してください。

自由料金を採用している新電力では、燃料費調整額の上限規制がもともとありません。しかし、新電力は同じ地域の旧一般電気事業者一覧の燃料費調整単価に合わせているのが一般的です。しかし、こうした独自の上限ルールの撤廃によって、割安な新電力のメリットがなくなってしまうケースが増えていることに注意が必要です。

燃料費調整額の上限を撤廃をした旧一般電気事業者一覧

燃料費調整額の上限を撤廃している旧一般電気事業者一覧の一例を挙げると、次のとおりです(2023年2月時点)。

旧一般電気事業者 対象プラン
北海道電力 エネとくポイントプラン
エネとくS/M/Lプラン
エネとくシーズンプラス
エネとくスマートプラン
eタイム3プラス
エネとく動力プラン
エネとくスノープラン
Web・eプラス
ドリーム8
ドリーム8エコ
eタイム3
eタイム3[S/Mプラン]
低圧時間帯別電力
深夜電力A/B/C/D
ホットタイム19/22
ホットタイム19/22エコ
ホットタイム22ロング
など
東北電力 よりそう+ファミリーバリュー
よりそう+ファミリーバリュー
よりそう+シーズン&タイム
よりそう+ナイト8(時間帯別電灯A)
よりそう+ナイト10(時間帯別電灯B)
よりそう+ナイト12
よりそう+ナイトS(時間帯別電灯S)
よりそう+ナイト&ホリデー
よりそう+サマーセーブ(PS季節別時間帯別電灯)
よりそう+eねっとバリュー
深夜電力A/B/C
など
中部電力 ポイントプラン
おとくプラン
とくとくプラン
スマートライフプラン(朝とく・夜とく含む)
スマートライフプランforスマート・エアーズ
ビジとくプラン
Eライフプラン(3時間帯別電灯)
タイムプラン(時間帯別電灯)
ピークシフト電灯
低圧季節別時間帯別電力
低圧高利用契約
低圧深夜電力A/B
第2深夜電力
わくわくホット(沸増型電気温水器契約)
融雪用電力
防霜用プラン
など
四国電力 でんかeプラン
でんかdマンションプラン
時間帯別eプラン
ホリデーeプラン
季節別時間帯別電灯
時間帯別電灯
ピークシフト型時間帯別電灯
スマートeプラン[タイプL/L+/H/H+]
深夜電力(A/B)
第2深夜電力

※以下プランは2023年5月分以降
おトクeプラン
スマイルAPプラン
でんか引渡しプラン
ビジネススタンダードプラン
低圧スタンダードプラン
九州電力 スマートファミリープラン
スマートファミリープラン
スマートビジネスプラン
電化でナイト・セレクト
季時別電灯
時間帯別電灯
深夜電力A/B
第2深夜電力
ピークシフト電灯
高負荷率型電灯
低圧季時別電力
など

旧一般電気事業者の上限撤廃は流動的な状況です(2023年2月時点)。最新情報は契約している新電力のホームページなどで確認してください。

なお、旧一般電気事業者も新電力も同じですが、上限撤廃だけでなく割引サービスなども終了している事業者もあることに注意が必要です。電子メールや郵送で連絡が届いている場合は、内容を今一度よく読んでおきましょう。

燃料費調整額を安くするコツ

「電気代を少しでも安くできないものか」と悩んでいる人はたくさんいます。個人でできる対策としては、やはり節電が効果的です。また、電力会社やプランの乗り換えによって電気料金が安くなる可能性もあります。それぞれについて解説します。

基本的な節電をする


燃料費調整額は使用電力量に応じて増える金額です。節電で使用量を減らせば、燃料費調整額も減ります。もちろん、燃料費調整額以外の電気量料金の節約にもつながります。

今すぐはじめられる手軽な方法を幾つか紹介すると、次のとおりです。



こまめにスイッチを切る・コンセントを抜く

使っていない照明や家電のスイッチをこまめに消します。また、テレビやエアコンなど待機電力が多い家電は、できる範囲でコンセントを抜くと節電になります。

家電の運転設定を変える

家電の運転設定を少し変えるだけでも、節電できます。手軽にできて効果の高い節電例は以下のとおりです。

家電 節電例
エアコン 冷房温度を27℃→28度で年間約940円の節約
暖房温度を21℃→20℃で年間約1,650円の節約
冷蔵庫 設定が「強」→「中」で年間約1,910円の節約
冷蔵庫の冷蔵室を満杯→半分で年間約1,360円の節約
テレビ テレビ(32V型)の輝度を最大→中間で年間約840円の節約

※金額は平均的な利用を想定した一般財団法人省エネルギーセンターの実測値

出典:省エネ行動と省エネ効果|経済産業省

電力会社を見直す

燃料費調整単価は電力会社によって違うため、単価の安い電力会社を選ぶのも一つの方法です。多くの新電力は地域の旧一般電気事業者と同じ金額ですが、独自に設定しているところもあります。また、同じ電力会社でもプランによって燃料費調整単価が違う場合があります。プラン変更で安くならないか調べてみましょう。

「自由料金」の電力会社に加入している場合は「規制料金」の電力会社に乗り換えて安くならないか調べてみます。新電力に多い自由料金プランは割安なのがメリットです。しかし、燃料費調整額の上限がない自由料金プランでは大幅値上げが増えており、規制料金プランより高くなる逆転現象が起こっています。

燃料費調整額についてよくある疑問

ここでは燃料費調整額についてよくある疑問に回答します。

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金との違いは?
  • 燃料費調整を行わない電力会社を選ぶべき?

再生可能エネルギー発電促進賦課金との違いは?

再生可能エネルギー発電促進賦課金と燃料費調整は、徴収目的が違います。

燃料費調整額

経済情勢の変化をできるだけ早く電気量料金に反映させて、事業者の経営を安定させるための費用。

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ発電促進賦課金)

再生エネルギーの普及のために電気利用者が利用量に応じて負担する費用。固定価格買取制度(FIT)を運用する財源として使われます。計算式は「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価×使用量」です。

このように目的が違うため、燃料費調整額は電気量料金で算出されますが、再生可能エネルギー発電促進賦課金は別に徴収されます。電気料金の領収書では、燃料費調整額と再エネ発電促進賦課金が別々に記入されているため、金額を簡単にチェックできるでしょう。

燃料費調整を行わない電力会社を選ぶべき?

燃料費調整額がない電力会社も存在します。「燃料費調整額がなければ、燃料価格が上がっても大丈夫なのでは?」と考える人もいるでしょう。

しかし、燃料費調整額がなくても、違う名目で燃料費調整額を徴収しているケースがほとんどです。代表的なのは「電源調達調整費」「市場調達調整費」「燃料費等調整費」です。これらは電気の仕入れコストを調整する金額で、実質的に燃料費調整額と同じと考えてかまいません。

結局のところ、燃料価格が上がっているうちは、旧一般電気事業者も新電力も月額料金を上げるしかない状況です。影響を受けない電力会社を探すのはむずかしいでしょう。

まとめ

ロシア・ウクライナ情勢をきっかけに燃料費調整額が高騰し、電気代の値上がりが続いています。まずは燃料費調整額の影響で、電気代がどれくらい変わるのか調べてみるとよいでしょう。電力会社やプラン変更によって、影響を小さく抑えられる場合があります。

根本的な対策としては、電気の使い方を見直したり、太陽光発電システムの導入を検討したりする方法もあります。視野を広くすれば、よりよい対応の仕方をみつけられるかもしれません。

グリラボでは、電力に関するコンテンツを幅広く発信しているメディアです。省エネや地球温暖化などの話題も扱っていますので、ぜひ他の記事も御覧ください。

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