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【インタビュー】エシカル消費が企業・消費者・社会を変えるーエシカル協会代表 末吉里花さん

「エシカル消費」という言葉を知っていますか?エシカルとは、直訳すると「倫理的な」という意味で、本来人間が持つ良心から発生した社会的規範を意味します。「エシカル消費」とは地球環境や人、社会、地域に配慮して消費するということです。

エシカル消費は、フェアトレード、オーガニック、地産地消、障がい者の支援、応援消費、伝統工芸など間口の広い消費の形を持っています。

今回は、一般社団法人エシカル協会代表理事 末吉 里花(すえよし りか)さんにエシカル消費について消費者の意識や今後の展開などについてお聞きしました。

—「脱炭素」は世界的な潮流ですが、日本でも菅義偉首相が就任後、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすると「脱炭素」の姿勢を表明し、環境への意識が高まったように思いますが、消費者意識の現状についてお聞かせください。

(末吉さん)コロナ禍の影響で、消費者一人ひとりが「暮らし」と向き合う時間が増え「自分達は見えない繋がりによって生かされている」ということを知ることができました。「見えない繋がり」とは、遠くの国で、私たちのために物を作っている人がいるということや地域の循環の大切さなどです。エシカル協会独自で収集したアンケート結果(調査期間:2019年4月~2021年2月、回答 人数:6076 名、回答者居住地:47都道府県、年齢:10代~50代および60代以上)によると、「エシカルな製品を今後は(も)購入したい」という人が実に9割近くいるという結果が出ており、エシカルな製品の購入意欲が高まっているということがわかりました。しかし、行動実態はまだ低いというのが現状です。原因としては「買いたくてもどこで買えるかわからない」「どれがエシカル商品かわからない」というもの。企業には、商品の背景や情報をしっかり開示して、消費者の「欲しいが選べない」という状況を打破するため協力して欲しいですね。特に流通小売業は最も消費者と繋がっているキーポイントです。情報の伝達や啓発、消費者との共創など、様々な展開が重要だと思います。

—エシカル協会では、講座や講演活動を通じてエシカルを普及、推進されていらっしゃると思いますが、現在はどのような点に力を入れて活動をされていらっしゃるのでしょうか?

(末吉さん)今年から義務教育の中でエシカル消費が取り上げられることになっていくので、教員の方々に向けてエシカル消費の重要性や取り組みについてお伝えしています。それに加えて最近は、日本のシステムや法律、制度、仕組みを作っている国や自治体などに向けて、消費者の声を届け、変革を促していくという活動も始めました。去年12月に2050年カーボンニュートラル国内フォーラムが首相官邸で行われ、民間団体代表として意見を述べてきました。消費者と企業の橋渡しだけでなく、消費者と政府をつないでいくような役割も担っていきたいです。

—消費者が「誰を支えたいか、どんな未来を残したいか」という基準で買い物をする時代にあっては、消費の窓口である流通小売業の役割も重要度を増していきますが企業としての取り組みはいかがでしょうか?

(末吉さん)つまり、企業の姿勢表明と事業の変革や仕組みづくりは重要だと感じました。消費者と生産者、メーカーとを「繋ぐ」役割も持つ流通小売業の方々には、積極的に取り組んでいって欲しいと願っています。

流通小売業の意識と行動が「エシカル消費」のキーになるわけですね。実際エシカル消費を意識したプロジェクトを実施し、経済性と社会性を両輪で叶えたという成果が出ている企業もいらっしゃいます。しかし今もって「SDGsは自分達のビジネスと利益相反になるのではないか?」とお考えの経営者もいらっしゃるようです。エシカル商品は価格が高くて売れないのではないか、まだまだ安く仕入れて安く売ることの方が事業の安定を図れるのではないかと。こうした思考に対して、どうお伝えすれば良いのか、課題に感じています。

—エシカル商品の展開にあたり重要な点というのは何でしょうか?

(末吉さん)やはり、消費者とのきちんとしたコミュニケーションが売り上げに繋がるのだと思います。「エシカルで売れますか?」というより「どうしたら売れますか?」を考えてゆくべきだと思います。そしてなにより、一歩を踏み出す勇気です。全てを整えてからではなく、出来ることから始めて、段階を経て次のステップに進めば良いのです。SDGsやエシカル消費への経営的なリスクを不安材料とする方も多いのですが、コレクティブ・インパクトの発想で、一企業だけで頑張るのではなく、他業種や自治体、NPOや民間団体などと共に踏み出すことも考えて欲しいですね。

—エシカル消費に関しては、消費者、企業とも地方の熱がまだまだ低いようですが、2021年度から、義務教育でのエシカル消費教育が始まると伺いました。具体的にはどのようなことなのでしょうか?

(末吉さん)前述した通り、2021年に中学校の、2022年には高校の教科書が改定されます。その際に、家庭科、国語、社会、公民など教科横断的に「エシカル消費」について掲載されることが決まっています。教科書の出版社によって取り上げ方は様々ですが、2021年度の中学一年生用国語の教科書にはエシカル消費をテーマに私が執筆をしております。また、歴史上初めて、小学校の2017年・2018年)改訂学習指導要領に「持続可能な社会の創り手となることができるようにすることが求められる」という前文が追記されました。教員の方々も生きた実践としてどう教えていくか模索しています。その中で、今後増え続ける実践・体験教育の学びの場としても、エシカル消費に取り組む地元流通小売業の存在は重要になってきます。

—子どもから大人が学ぶ、そして子どもが成長し社会に羽ばたくときにはエシカル消費がごく当たり前の認識となっている時代もすぐそこまできていますね。

エシカル消費はソーシャル・イノベーションの重要なキーとなっていくことになるでしょう。私たち一人ひとりの意識変化が社会の大きな変化につながっていくことを改めて感じました。

末吉 里花(すえよし りか)さん

一般社団法人エシカル協会代表理事

日本ユネスコ国内委員会広報大使

慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験をもつ。エシカルな暮らし方が幸せのものさしとなる持続可能な社会の実現のため、日本全国でエシカル消費の普及を目指している。著書に『はじめてのエシカル』(山川出版社)、絵本『じゅんびはいいかい?―名もなきこざるとエシカルな冒険』(山川出版社)ほか。東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事、地域循環共生社会連携協会理事、ピープルツリー・アンバサダー、中央環境審議会循環型社会部会委員などを務めている。https://ethicaljapan.org

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