2021年環境における世界最大イベントCOP26

「人類にとってのターニングポイント」(英ジョンソン首相)とも言われるCOP26が2021年11月13日、閉幕しました。私見ですが、人類にとってというより「地球」にとってのほうがしっくりきますね。

COPって何?

近年よく聞くけどつまりどういうこと?

本記事ではそもそもCOPとは何か、今回何が決定したのか、どう変わったのかを話していきます。

COPとは

始まりは1992年のブラジルで開催された地球サミット

公式的な環境面での多国家会議はここから始まりました。

ここではまだ温暖化というものとのつながりが明確ではなかったため(人類の活動と地球温暖化の関連性はフィフティフィフティと言われていました)、概念的に環境配慮しようよということで、「気候変動枠組み条約(UNFCCC)」が採択され、すべての国連加盟国が気候変動対策に世界全体で取り組んでいくことに合意しました。

これに基づいて定期的に打ち合わせをしていこうと、1995年からほぼ毎年開かれているのが「国連気候変動枠組み条約締約国会議(Conference of Parties=COP)」で今回は26回目なのでCOP26となります。

ここから教科書にも載っている有名な、具体的なルールとしての京都議定書(1997年COP3)、先進国のみならず全世界でルールの制定と義務化をしたパリ協定(2015年COP21)とつながっていきます。

京都議定書では限られた国のみ(先進国、厳密には55か国以上で有効)が対象となったことで不平等の面があり(米ブッシュ大統領時代にこれを理由に離脱も、その3年後にロシアが参加により2005年再度発効)、一方でパリ協定では目標の達成義務がないことから不完全との声もあります。とはいえ、京都議定書は2020年まで、パリ協定はそれ以降のレールのため、今後このパリ協定を軸に各国どれだけ厳しく自国の削減に向かい合っていくかが重要となります。

当初は日本でも報道が少なく、COPを聞いたことがある人は少なかったかもしれませんが、世界ではパリ協定時から第一の指標として捉えられております。

      参加者も年々増え、今年はコロナ禍でも4万人超

今回のCOP26で何が決まったのか

まず今回優先項目として大きく4つの目標が定められました。

①1.5℃目標(気温上昇を1.5℃程度に抑える)を目指して、2050年までにCO2排出を実質ゼロ達成へのコミットメントと野心的な2030年排出削減目標の提示

②地域社会と自然を守るための適応策

③資金の動員

④パリ協定実施ルールの最終合意

それぞれどうなったか見ていきましょう。

【1.5℃目標(気温上昇を1.5℃程度に抑える)を目指して、2050年までにCO2排出を実質ゼロ達成へのコミットメントと野心的な2030年排出削減目標の提示】

結論:1.5℃目標達成には不十分、各国2022年末までに2030年目標の見直しを求める

会議期間中に見直しを表明した国もあり、すべての国が不十分となったわけではないのですが、それぞれ思惑がありまだまだ危機感の足りない目標、温度感が目立ちます。

ネットゼロ目標に対して現在G20の設定目標

法制化   8か国・地域    カナダ、EU(仏、独、伊含む(2045年))、日本、韓国、 英国
政策文書9か国アルゼンチン、豪州、米国、南アフリカ、トルコ(2053年)、中国(2060年)、ブラジル(2060年)、ロシア(2060年)、 インドネシア(2060年)
表明2か国サウジアラビア(2060年)、インド(2070年)
目標なし1か国メキシコ
※年表記がない国は2050年

COP26前後に124か国・地域が国別削減目標(NDC)を更新

これをすべて達成することに加えて、各国のネットゼロ目標を到達してようやく1.8℃上昇まで抑えられると言われています。

つまりまだまだ各国見直しが必要ということです。

参考:1.5℃と2℃の上昇でどれだけ違うのか?

出典:World Resources Institute2018

【地域社会と自然を守るための適応策】

結論:途上国が求めていた適応資金(再エネ普及のための資金や技術援助、自然破壊による経済メリットの代替案採用の資金など)は増加、一方「損失と被害」においてはまだまだ溝が深いままで閉幕。

 損失と被害(Loss&Damage)とは?

もともと地球サミットの頃から議論の対象にはなっていたものの、COP21パリ協定で初めてL&Dが独立した問題として認識されました。

※ただしこれを根拠に法的責任や補償の根拠とならないことも合意

今回はL&D資金立ち上げが議題に上がるも今回は否決、今後議論を深めていくことで合意しています。

【資金動員】

結論:途上国から、年間1000億ドル目標の早期達成と、2025年までの継続を強く要請。

こちらも上記同様先進国への不信感が募る内容となりました。

先進国がコミットしたはずの目標が未達に終わり、これを原因として後述するインドの最終日の石炭への反対に繋がったとも言われています。

彼ら(途上国)からしたら、自分たち(先進国)は過去にガンガンCO2を排出してきて、ここにきてあれをやるな、これもやるなと言ってきて、挙句約束も守らない、ふざけるなというのが本音でしょう。

先進国には2023年までの1000億ドル目標達成に向けて、具体的な計画と取組みが求められます。

【パリ協定実施ルールの最終合意】

結論:NDC提出の各国共通での期限の合意とパリ協定6条ルールブックの採択。

 NDCの提出は最低でも5年サイクルで提出することで合意を得ました。

表現は「推奨」と少々弱いものの、2025年に2035年の目標を、2030年に2040年の目標を各国提出することが決定しました。

 またCOP24で合意に至らなかったパリ協定6条(主要概念として2項、4項、8項該当)の採択がなされました。

 6条はおおまかに言うと二国間クレジットなど国際枠組みのなかで各国協力しましょうという内容です。クレジットについては二重計上防止は決定したものの、詳細ルールについては今後も整備が必要です。

総評

2019年、グテーレス国連総長は1.5℃の目標を国際規範とすることを明言、G7でコミットも、G20でコミットできなかったことから今回のCOP26では脱炭素へ向けてかなり強い決意を持って各国臨んでいました。

議長国であるイギリスとしては1.5℃を含んだ成果文書の合意(基本的に全会一致が原則)はマストでした。最終日に注目を浴びたシャルマ議長の涙は何を語っていたのでしょうか。

会議も後半の10日目、原案文書には「石炭の段階的な廃止」が盛り込まれました。

これは各国が想定していた以上の要求であり、サウジやインドの反対もあり、「排出削減対策が取られていない石炭の火力発電」→「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な廃止のための努力を加速する」、最終的には火力への削減言及に異を唱える反対国に対してアメリカ、中国が立ち回り、「段階的な削減」と表現がかなり弱まり合意となりました。この結果への不満と成果文書の合意という達成の間で多くの感情が溢れ出たのだと思います。

COP26においては「妥協の産物である」「歴史的な合意だ」などいろいろな声がありますが、私としては人類が環境への意識をさらに変革させる要因となったことは小さな一歩であるが確実に大きな前進であったと思います。

環境面への配慮から、各国の目論見や戦争などを超越して、文字通り「国を超えて」未来のために世界が手を繋いでいくことを期待します。

補足-化石賞-

岸田首相の演説により日本は前回のCOP25同様に化石賞となりました。

もちろん環境配慮への後ろ向きな姿勢という皮肉ですので、喜ばしいことではありませんが、そんなに悲観するものでもありません。

こういう賞を取ってしまった、だから日本はもっと脱炭素社会に向けて国民一人一人が危機感を持って取り組まなければならない、そういう警鐘の意図があってであれば良いのですが、メディアの報じ方を見ると少し疑念が、、

まずこの賞は国際環境団体NGOの気候変動ネットワーク(CAN)が会期中に毎日発表しており、日本が世界で金メダルを取ったわけではないということ(オーストラリアやアメリカ、議長国であるイギリスは今会期中もっと受賞しています)、あくまでCANの独断でブラックジョークといわれることもあるほど受賞国の受賞理由や定義、尺度がはっきりしていないこと、などなどあまりメディアでこういった情報が流れることはありません。

日本が受賞した理由はいくつか言われておりますが、「脱炭素の手段としてアンモニアや水素を使う」=「火力発電の推進」というのが一つ大きな理由かなと。

水素もアンモニアも燃焼の際にCO2は排出しないので、つまりCO2を排出しない火力発電を推進すると言っています。そうなると、じゃあ良くない?となりますが、どちらも高コストかつ現在の実用レベル(経済合理性を伴って継続的に使える状態)に無いことから、夢を見ていないで現実的に取り組みなさい、ということである。実際に水素やアンモニアは国内でよくクリーンだと目にするが、それらを精製する際に多くのCO2を排出するのが現実であり、かつどちらも結局は輸入に頼らざるを得ないというところが問題です。

またもう一方で岸田首相はアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)を持ち出してアジア全体で取り組んでいくと明言したのですが、このAEITに疑問が残ります。これは今年発表されているのにも関わらず、この会議の脱炭素へ向けた話し合いのレベルにおいては時代遅れと言わざるを得ません。詳細は割愛してざっくり言うと、脱炭素よりまずは低炭素化しよう、低炭素化した火力発電を輸出しよう、そんな時に作成されたものですから、各国ネットゼロを公言、なんとか1.5℃を達成しようという気概で始まった会議において、つるし上げにあうのは仕方なかったのかもしれません。

最後に

みなさん、ドラマ「日本沈没」は見られていますでしょうか。

脱炭素とは異なりますが、日本の危機に政治家・官僚が災害に立ち向かうという内容で、主演の小栗旬がとてもかっこいいです。

その中で、「生きてさえいればそれで良いのか、みなその先に人生が続いていくんだ」というセリフがあります(少々うろ覚えですが、、)。もしかしたら寒冷化の到来で温暖化にはならないかもしれない、2050年なんてまだ先だから、自分にはもう関係ないし、という気持ちは十分理解できます。だからCOPがどうたら、日本がうんたら言われてもなんかピンとこないなあという人も、自分の人生、そして次世代のこどもたち、祖先へ誇りある未来を手渡せるように、使わない電気はこまめに消す、車を使わずにたまには歩いてみる、、、などほんの小さなことを少しでも日々の生活で意識して行動できたらきっと良い未来が見えてくると思います。

参考資料:地球環境戦略研究所、IEA、IPCC、UNFCCP報告書

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