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カーボンフットプリントが環境への意識を変える。CFPプログラムの意義と課題とは?

地球温暖化や環境問題に関する話題で、近年耳にする機会が多い『カーボンフットプリント(CFP)』という言葉。直訳すると「炭素の足跡」となる言葉ですが、その正しい意味はご存じでしょうか? 今回は、注目の言葉である『カーボンフットプリント』はいったい何を表した言葉で、どのような意味があるのか、また、その重要性などについて、詳しくご紹介していきます。

炭素の足跡とは…カーボンフットプリントが示す意味

カーボンフットプリントは直訳すると、「炭素の足跡」となります。この言葉の通り、カーボンフットプリントとは、商品やサービスを使用することで排出されるCO2だけでなく、原材料調達、輸送、購入、消費、リサイクルなどの一連の流れの中で発生するCO2排出量を測ることを指します。また、このCO2排出量を商品やサービスに表示する制度のことも意味しています。
炭素は生産活動を行う上で、必ずどこかで排出されます。そのため、商品・サービスの使用時における排出量だけでは正しいCO2排出量はわかりません。カーボンフットプリントは、いままで見えていなかった生産ラインやリサイクルまでを含んだCO2排出量を見える化することで、より低炭素な社会実現に向けた意識変革を生産者・消費者双方に与えることを目的としています。
そして、このカーボンフットプリントは企業だけでなく、一般家庭においても適用されます。

■カーボンフットプリントの例
製品・サービスのカーボンフットプリントはイメージしやすいかもしれませんが、家庭となるとちょっと想像しにくいのではないでしょうか?JCCCA(Japan Center for Climate Change Action:全国地球温暖化防止活動推進センター)が行った調査によれば、家庭のカーボンフットプリントは1世帯あたり約5,203kg(2008年発表)で、最も割合が高いものが電気とガソリンでした。ガソリンはもちろん、電気も主に発電の過程で多量のCO2を排出しているのです。
企業の場合、ライフサイクルアセスメントの手法に基づいて、ライフサイクルごとにCO2の排出量を算出していきます。その結果、ポテトチップを例に取ると、実は原材料のじゃがいもを栽培する工程で最もCO2を排出していた、ということが判明しています。

カーボンフットプリントの重要性とは

カーボンフットプリントの重要性としては、先ほども述べた通り、これまで知られていなかったライフサイクル全体でのCO2排出量を見える化することで、消費者・生産者、双方に低炭素社会を目指すための意識変容をもたらすことがあります。しかし、企業としては、そういった社会的意義以外にも重要性が高まってきています。
その一つがカーボンプライシングです。カーボンプライシングとは一般的に炭素税や排出権取引などを指します。炭素税はCO2排出量に応じてかかる税金であり、排出権取引はあらかじめ排出する量(権利)を決めておき、排出量を越えた場合や余った場合にそれぞれの企業や国で権利を売買することを言います。こうしたカーボンプライシングが今後はさらに強化されていくことが予想されており、排出権取引を売る側に対しては炭素税を免除し、逆に購入者に対しては課税を行うことなどが検討されています。つまり、CO2排出量削減は企業にとって重大なコストカットに繋がることになるのです。CO2の正確な排出量を知ることは削減を目指す企業にとってメリットとなるでしょう。

また、昨今の環境問題への関心の高まりを考えると、CO2削減に取り組んでいる企業はそれだけで競争力が高まることが考えられます。消費者がCO2を削減していることを理由に商品を選んだり、投資家が企業のCO2削減を投資時の重要判断材料とすることが、今後さらに進んでいくことが考えられます。こうした競争力維持のためにもカーボンフットプリントは大きな意味を持っていくでしょう。

カーボンフットプリントプログラムとは?

では、カーボンフットプリントを行っていることを対外的にアピールする方法はないのでしょうか?その方法が、先述した、カーボンフットプリントを表示する制度、カーボンフットプリント(CFP)プログラムです。
カーボンフットプリントプログラムが日本で始まったのは2009年のこと。経済産業省を中心として、4省庁が合同で行う「カーボンフットプリント制度試行事業」として始動しました。当時は2011年までの期間限定で、カーボンフットプリントの申請を受け付けたり、条件に見合う企業に認証を与えるなどを行っていました。
2012年以降は、カーボンフットプリントコミュニケーションプログラムと名称を変え、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が国の事業を継承しています。
現在、登録企業は212社(2021年6月時点)にのぼり、大企業の参加も多いようです。

■CFPマークの取得について
CFPプログラムの最もメジャーな事業が、CFPマークの付与です。CFPマークとはカーボンフットプリントによって、CO2排出量を表示している商品のうち、一定の基準に達している商品につけられるマークです。
重りをモチーフにしたマークで、商品によって実際のCO2削減量に応じた数字が付与されます。このマークをつけていることで、環境問題に取り組んでいる商品であることがわかるため、商品の競争力を高めるためにも、企業としては獲得しておきたいマークと言えるでしょう。
ここでは、その取得までの流れについてご紹介します。

<CFPマーク取得までの流れ>

1:製品(=商品・サービス)ごとのカーボンフットプリントの算定・宣言に関するルールとなる「カーボンフットプリント製品種別基準(CFP-PCR:Carbon footprint of a Product- Product CategoryRule)」を策定

2:CFP-PCRの認定を受ける

3:CFP-PCRの算定基準に基づき、CFPを算出する

4:算定結果の検証を受け、登録・公開手続き、及びCFPマーク使用許諾契約を行う

参照:CFPプログラム

一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)がWebサイトで公開している情報によれば、いま現在、CFPマークを許諾された商品はわずか24商品となっており、まだまだその希少性は高い状態であると言えます。今後、環境問題への関心がますます高まると予想されることを考えると、いまのうちからCFPマークを認証することはプラスに働く可能性も考えられます。

カーボンフットプリントの今後の課題

これまで述べてきたように、カーボンフットプリントはCO2排出量をより正確に把握することができ、企業は削減するための改善ポイントが見つけやすくなるほか、それを広く公表することで環境問題への姿勢を消費者や投資家に対してPRすることができます。また、削減が行いやすくなることで、カーボンプライシングの恩恵を受けることもできます。ブランディングの意味でも、経済的な意味でも、企業にとっては非常に有効な手段と言えるでしょう。
しかしながら、カーボンフットプリントには課題もあります。

その大きな問題の一つが、カーボンフットプリントの知名度です。現在、CFPマークの認証を受けている商品はまだまだ少なく、日本では一般的な認知度が高いとは言い切れません。その反面、CFP-PCRの算定は複雑で、その算出には軽くない労力とコストがかかります。せっかく努力してCFPマークを取得しても、その費用に見合うだけの効果が出るかは不明瞭な部分もあります。
また、日本のCFPマークの場合、3年ごとに更新が必要なため、その都度、申請のための再調査を行う必要があります。

しかし、カーボンフットプリントの大きな意義は生産者だけでなく、消費者に対しても意識変革をもたらすことにあります。そのためにも、より多くの企業、商品・サービスがカーボンフットプリントプログラムに参加することが求められています。カーボンフットプリントでCO2排出量を認識し、低炭素社会実現に向けた取り組みを意識的に行っていきましょう。

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