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自己託送とは?メリットやデメリットをわかりやすく解説

環境問題への取り組みとして、電力の見直しを考えている企業は多いでしょう。再生可能エネルギーの導入を考えているのであれば、自己託送を検討してみるのもひとつの方法です。自己託送は自社の再エネ設備から自社の工場や店舗などの施設へ電力を供給するもので、電気代の削減をはじめとするさまざまなメリットがあります。

本記事では、自己託送制度を利用するための条件や導入の仕方、メリット・デメリットなどを解説します。エネルギーコストの削減や脱炭素の実現に向け、電力に関する改善策を模索している企業の方はぜひ参考にしてください。

自己託送とは?

自己託送とは、遠隔地にある自社の発電設備で作った電気を、自社の工場や店舗などの施設へ送電する仕組みを指します。2013年に国により制度化されたことで、電線などの送配電ネットワークを使って電力を遠隔地へ運ぶことができるようになりました。

従来の自家消費型太陽光発電では、自社の敷地に発電設備を設置する必要があり、敷地が狭い企業は導入が難しい側面がありました。しかし、自己託送は、送配電ネットワークを通じて離れた場所に電力を届けられるため、発電設備を施設から離れた場所に設置することが可能です。

複数の施設に供給したり、定休日などで電力が必要ない施設には供給をストップしたりすることもできるため、電力の有効活用にも役立ちます。

自己託送制度を利用する条件

自己託送制度を利用するための条件として、以下の2つが挙げられます。

・売電目的ではないこと

自己託送はあくまで自社の施設に電力を供給するものであるため、発電した電気を売電することはできません。余った電力を買い取ってもらえるFIT制度やFIP制度との併用はできないため、注意しましょう。

・発電所の所有者と電気の使用者が同じ、もしくは密接な関係であること

自己託送を利用する場合、原則として発電所の所有者と電気の使用者が同じ企業である必要があります。その他、各種要件をクリアした場合に限り、グループ企業など密接な関係がある企業に電力を供給することも可能です。要件については、次の項目で詳しく解説します。

自己託送には3種類のやり方がある

上記で説明した通り、自己託送は自社やグループ企業間など、送電できる会社に制限が設けられています。ただし、一部例外として他社に電力を供給することも可能です。自己託送の3種類の方法について、以下で詳しく解説します。

①自己託送

従来の意味での自己託送とは、自社で発電した電力を自社の施設に供給することです。制度がスタートした当時は、太陽光発電設備が設置されている場所や設備の所有者と、発電した電力を供給する施設の所有者が同じ企業や団体であることが原則でした。2024年現在では規制が緩和され、以下2つの方法も認められています。

②グループ内企業自己託送

一定の条件を満たした場合に限り、グループ内の企業同士で自己託送を行うことも可能です。グループ内企業とは、資本や人材などにおいて密接な関係を持つ企業同士を指します。密接な関係と認められるためには、以下の5つの要件をクリアしている必要があります。

・生産工程による条件

原材料や部品などの受け渡しがあり、他の企業では代替が難しいこと

・資本関係による条件

親会社と子会社の関係、もしくは同じ親会社を持つ子会社同士であること

・人的関係による条件

一方の企業からもう一方の企業へ、過半数の役員が派遣されていること

・生産工程、資本関係、人的関係それぞれ単独では条件を満たさなくても、複数を組み合わせることで密接な関係であると判断できる場合

・生産工程による条件以外で、原材料や製品、役員等の提供が継続的かつ長期的に行われており、ひとつの企業であると判断できる場合

③組合型自己託送

2021年11月からはさらに規制緩和が進み、他社の場合でも条件付きで自己託送を行うことが可能になりました。太陽光発電設備が設置されている場所や設備の所有者と、発電した電力を供給する施設の所有者が異なる場合でも、組合を設立することで自己託送を行えます。

ただし、組合型自己託送を利用できるのは、すでに自社やグループ企業で自己託送を利用している企業が追加で再エネ設備を新設する場合に限ります。また、電力の供給先は原則として1カ所のみです。これを特定供給と呼び、小売電気事業者との区別をつけるために定められています。

組合を結ぶための要件は、以下の6つです。

・組合契約書に組合を長期にわたり存続する旨が明記されていること

・組合員名簿などに組合員双方の氏名もしくは名称が記載されていること

・組合契約書に、電気料金の決定方法と送配電設備の工事費用の負担方法が明記されていること

・組合契約書が特定の組合員に対し不当な扱いをする内容でないこと

・組合契約書に供給者が相手方の利益を阻害するような内容が記載されていないこと

・組合員が新設し、かつ維持管理を行う再エネ発電設備 による電気取引であること

自己託送を利用するメリット

次に、自己託送を利用するメリットを紹介します。

電気代を削減できる

自己託送は、電気代の削減が見込まれる方法です。電気代の高騰によってコストが増加してしまうことは、企業にとって大きな痛手となるでしょう。自社の発電設備で作った電力を使う自己託送では、電気を購入しなくて良いため円安や戦争などによる電気代高騰の影響を受ける心配がありません。

また、自己託送は小売電気事業者を介さないため、再エネ賦課金がかからないこともメリットです。再エネ賦課金は年によって大きく変動する可能性があり、場合によっては大幅に高騰することも考えられます。再エネ賦課金を負担する必要がなければ、その分エネルギーコストを抑えることが可能です。

脱炭素を推進できる

自己託送は、太陽光発電で作った電気を使用するため、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を削減することができ、地球環境の保護に貢献できます。これまで自社の施設や敷地内に太陽光設備を設置できなかった企業でも、脱炭素への取り組みを進められるようになります。

自己託送によってグループ全体で脱炭素を推進すれば、「RE100に加盟する」「ISO14001(環境マネジメントの国際規格)を取得する」などの目標も達成しやすくなるでしょう。また、脱炭素への取り組みが取引先や顧客などのステークホルダーから高く評価されれば、ビジネスチャンスを増加させることも期待できます。

敷地内に設備が設置できない企業でも導入できる

自己託送は、自社の施設内や屋根に太陽光パネルを設置するスペースがない企業にとっても、再エネ化を進める大きなチャンスとなります。また、スペースはあっても日当たりが悪い、塩害がある、建物の老朽化が進んでいるなどの理由から、これまで再エネ設備を置けなかった企業でも導入できることがメリットです。

自己託送では施設の敷地外に太陽光発電設備を設置するため、施設内の敷地が太陽光発電設備の設置に適していなくても問題ありません。遊休地や使っていない畑などを所有している企業にとっては、土地を有効活用しながらエネルギー問題を改善できるようになります。

自己託送を利用するデメリット

自己託送は、エネルギーコストの削減や脱炭素推進などのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

1つめは、自己託送は設備の設置やメンテナンスを自社で行う必要があることです。発電所の規模が大きければ大きいほど導入費用も高くなる傾向にあり、土地を所有していない場合はさらに土地の購入費も必要です。メンテナンス費用も自社で負担することになるため、電気代以外の負担が大きくなる可能性があります。

2つめは、送配電事業者に電力の需給計画を提出しなくてはならないことです。送電線には容量があるため、あらかじめどのくらいの電気を作ってどのくらい使うか計画し、実際の値を30分おきに報告することが義務付けられています。計画値と実際の値が異なった場合は、差分をインバランス料金として支払うことになるため注意が必要です。

3つめは、送電量に応じて託送料金を支払う必要があることです。託送料金は送配電事業者ごとに料金が定められているため、業者の比較検討を行い余分なコストを抑えましょう。

4つめは、不足した電力は購入する必要があることです。再生可能エネルギーは気候や時間帯によって発電量が変化するため、常にすべての電力をまかなえるとは限りません。不足分は従来通り電力会社から調達することになるため、その分のコストも確保しておく必要があります。

自己託送で、コスト削減と再エネ導入を実現

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業の脱炭素への取り組みは喫緊の課題といっても過言ではありません。一般生活者がより環境に優しい製品やサービスを選んだり、環境への取り組みに積極的な企業に好感を抱いたりする傾向も強まっています。

自己託送スキームによる再エネ電力の導入は、電力価格の高騰リスクへの対策はもちろん、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量削減を同時に実現でき、環境経営に大きく貢献する可能性があります。

自己託送の導入を検討することはもちろん、自社で発電設備を持っているもののうまく活用できていない、発電設備の設置や維持管理が困難など、自社にどの導入方法が合っているのかがわからない企業の方は、ぜひ、アイ・グリッド・ソリューションズにご相談ください。

 

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