ビジネス・技術

自動車ディーラーにおけるMaaSの関わり方
by リブ・コンサルティング

こんにちは。MaaS Hack編集部の伊藤です。

「100年に一度の大変革の時代」とも言われる変革期の自動車業界。
その中で特に地域に根差して、自動車の販売・サービスを手掛けてきた自動車ディーラー(以下ディーラー)に今回は焦点を当てたいと思います。

ちなみにMaaS Hackを運営しているリブ・コンサルティング社では、全国の数多くのディーラーに、コンサルティング支援を行っております。
そのため、ディーラーにおける経営課題はよく議論させていただいており、今後のディーラーにとってのMaaSとの付き合い方について、示唆できればと思います。

▼目次
1. ディーラーの現状と今後の展望
2. ディーラーにおけるMaaSの視点と事例
3. MaaSへの取り組みにおけるおさえるべきポイント
<参考>

1. ディーラーの現状と今後の展望

まず冒頭には簡単にディーラーの現状をお伝えし、どのような経営課題が生じているかを改めて押さえさせていただきたいと思います。

・ディーラーの現状 ~市場縮小・競争激化~
国内のディーラー業界においては、特にこのコロナ禍の中で、多くの顧客・企業に変化が生じきているものの、業績などの視点で見ると、他業界に比べて堅調な推移を見せている業界となります。
そんな中で、目下ディーラーにとっての最大の関心事となるのは、中長期的な少子高齢化に伴う市場縮小や各地域内での競争激化に伴い、これまで通りのビジネスの在り方では、利益獲得が難しくなることです。

・ディーラーの今後の展望
そうした環境下にあり、多くのディーラー様においては大きく2つの選択肢をとられてきております。

1つは、本業のディーラー業の強化を図ることです。
昨今では、ディーラー同士の統合が数多く進んでおり、エリア重複していた販売店の集約や本部体制の一元化により、間接コストを低減化させています。また、マーケティング・営業プロセスの最適化による顧客関係性の強化や販売・サービス人員の早期育成により、競争力を高めています。

もう1つは、ディーラー業に捉われず、地域に根差した自動車の販売・サービスの強みを生かして、MaaSも含めて新規事業へ取り組むことです。
今回は新規事業の取り組みの中で、各社のMaaSに向けた視点や事例をお伝えいたします。

2. ディーラーにおけるMaaSの視点と事例

ディーラーにおいて、MaaSも含めた新規事業に取り組む際におさえておくべき視点が2つあります。

① 捉える課題
社会課題解決の事業とするか、自社の事業課題の解決にフォーカスするか
② 儲け方
本業であるディーラー業で儲けるか、MaaSなどの新規の取り組みで儲けるか

それぞれ以下のように整理しております。

具体的な事例と合わせて、どんな取り組みがあるかをそれぞれご紹介いたします。

①本業×社会課題の取り組み
ここでは、ディーラーによる小型モビリティの販売を取り上げます。
地方の高齢者において免許返納後の移動手段がなく、移動できない・不便という社会課題が生じています。そこで、車の販売を手掛けるディーラーが小型モビリティの販売メーカーとパートナーを組み、ディーラー地域拠点を活かした販売を行うことで、移動課題の解決を図っています。
一例ですが、鹿児島トヨタ社においては、電動車椅子の販売パートナーとなり、商品展開を広げています。
ディーラーにとっても、販売商品増加による売上向上を図る取り組みとなります。

(出典:鹿児島トヨタ自動車株式会社)

今後、超小型モビリティについては規制緩和に向けた議論が進んでおり、より一層の普及拡大が見込まれる領域となります。

②MaaS業×社会課題の取り組み
ここでは、事例としては、乗り合い送迎など事業を取り上げます。

上述のように地方においての移動課題により、買い物や通院など、各種の移動に課題を抱えている方は多くいます。そこで、乗り合い送迎サービスにより、各地域の移動課題の解決に努めています。地域に根差したディーラーだからこそ、こういったMaaSサービスが展開できる領域となります。
一例では、ダイハツ長崎販売株式会社では乗り合いサービスのチョイソコと提携したサービスの運行展開を開始しております。

(出典:アイシン精機社 チョイソコ紹介)


③MaaS業×事業課題の取り組み
ここでは、特にディーラーにおける事業課題の解決をMaaSで行っている事例を紹介いたします。

大きな社会のトレンドとして、サブスクリプションサービスに代表されるように「所有」→「利用」の波が広がってきています。特に自動車業界においても、高額商品なこともあり、自動車を購入せず、使いたい時だけ利用するという関わり方が増えてきています。

そうなると、車の販売を行うディーラーとしては、将来的な売上ダウンにつながるという事業課題があります。そこで、自動車ディーラー自体も地域MaaSに取り組む中で、「利用」したいユーザーを囲い込み、収益拡大を図っています。

横浜で展開されているマルチモーダルモビリティサービスの「my route」は、神奈川県オールトヨタ販売店が共同設立したアットヨコハマ社が設立し、各種の公共交通機関やタクシー配車、レンタカーなどをシームレスでつなぐサービスとなります。
今までの車の販売だけでは出会えなかった顧客に対して、各移動サービスのプラットフォームとなり、MaaS事業での売上向上を図っています。

(出典:アットヨコハマ社 my route)

各種事例も交えてご紹介しましたが、これらの取り組みにおいては
・どのような課題にフォーカスするか
・どの事業で儲けるか
を、合わせて考える必要があることに留意いただきたいと思います。

3. MaaSへの取り組みにおけるおさえるべきポイント

最後にこのようにディーラーが取り組むにあたって、よくある壁や躓きどころについてもご紹介いたします。

MaaSといってもやはり地域に住む方々にとっては、既存の交通サービスなどと比べたときに、安さや便利さが上回らなければ活用されることはありません。
一方で、安さや便利さを追求して、価格を抑えたりサービスを拡充したりすると、その地方の人口規模や密度と照らした時に十分な収益が生まれないケースも発生します。

そこで先の課題と儲け方について、考えるべきポイントをお伝えします。

課題のおさえるべきポイント
:特に地域における課題が大きく、解決されていない領域であること
どの課題が最も大きいかをしっかりとらえた上での取り組みとする必要があります。
先の事例でいくと、「高齢者の免許返納後の移動課題」のような地域の社会課題は、量・質ともに、大きな課題となります。こういった課題を地域のつながりが強いディーラーがとらえ、どういったアプローチがあるかをぜひお考えいただけますと幸いです。

儲け方のおさえるべきポイント
:MaaS単体ではなく、本業への売上寄与も考慮して企画設計すること
今回、本業とMaaS業で分けてご紹介しましたが、実態としてはMaaS業だけで儲けることは難しい領域ではあります。そのため、MaaSの事業による本業のディーラー業への売上貢献ということも視野に入れた企画設計を行うことをおすすめいたします。
MaaSによる地域の住民とのつながりは、その方々の次の車検討時において、非常に大きなディーラー選びのポイントとなります。これらの収益貢献も視野に入れて、新規の取り組みを適正評価していただきたいと思います。


最後に、ディーラーにおける業界変革は、大きなチャンスが生まれているタイミングだと考えています。
地域とのつながりが強いディーラーの皆様だからこそできる新たな価値は何か、ぜひ未来に向けた新しいサービスを考える契機になると幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

<参考>

自動車領域におけるMaaS領域に関しての資料をご用意しております。ぜひご関心の方は以下よりダウンロードください。

ディーラーのMaaS領域におけるエネルギービジネスの可能性

<執筆者>
株式会社 リブ・コンサルティング
コンサルティング事業本部 
コンサルタント 伊藤隆介

コンテンツ提供:リブ・コンサルティング

モビリティ業界をリードし、「100年後の世界をよくする会社」を中心に支援しています。

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