ビジネス・技術

MaaSはなぜ儲からないのか? byリブ・コンサルティング

みなさんは「MaaS」という言葉をご存じでしょうか。マーズ?マース?エムエーエーエス…?

正解は「マース」と読みます。

MaaSはMobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略称で、鉄道・タクシー・バス・飛行機など、複数の交通機関や移動サービスを繋いで1つのサービスとして提供することで、利便性を向上し様々な課題を解決していこうという概念です。

日本でも国を挙げて推進しているMaaSですが、「MaaSは儲からない」という声もあります。そこで今回はMaaSHack編集部の西口さんに「なぜ、MaaSは儲からないのか?」という疑問に答えていただきます。

※この記事はMaaS Hackから提供された記事です。

▼目次
1、そもそものMaaSの思想とは「より安く、より効率的に」
2、世界はビジネスモデルの誕生を待っている
3、1つの可能性は「移動」×「まちづくり」×「生活/暮らし」の共創

1、そもそものMaaSの思想とは「より安く、より効率的に」

そもそもMaaSとは、フィンランドのヘルシンキで生まれたサービスコンセプトです。
※世界で最も有名なMaaSアプリである「Whim(MaaS Global社)」のサービスが有名ですね。

ここではWhimの詳細は割愛しますが、そもそも、なぜフィンランドのヘルシンキでMaaSは誕生したのでしょうか?

その背景には、ヘルシンキが持つローカルコンテクストが存在しています。

《ヘルシンキが持つローカルコンテクスト》
・地球温暖化という問題への高い意識
・自家用車を減らすという明確な政策目標
・ノキア発祥の国としての情報通信先進国のプライド
・もともと公共交通が行政に一元管理、運営されている

などなど、こうして見ると日本とは真逆のコンテクストを持っているな・・・と感じます。

このような背景の中で生まれた概念がMaaSであり、
・自家用車の購入&維持コストよりも安く移動が可能
・各種公共交通機関をシームレスに繋ぐ事により、
 都市部の移動においては、自家用車での移動よりも利便性が高い
・行政主体で別々に管理していた鉄道やバスなどが持つデータを
 一元管理/運用し、ストレスフリーな移動が可能
というポイントがあり、結果として多くのユーザーの支持を獲得し、現在に至っています。

2、世界はビジネスモデルの誕生を待っている

上記のような背景の中でスタートしたMaaSですが、現在ではビジネスサイドの可能性の高さから、世界各国でMaaSの導入が進んでいます。

では一体、“MaaSのビジネスサイドの可能性”とは何なのでしょうか?

それは “人の移動・モノの移動”というビッグデータを活用した新たなビジネスあり、一説ではモビリティサービス(MaaS)の世界市場規模は2020年の推計47億ドルから、今後2030年には704億ドルへと大幅な増加が予測されています。

このようにMaaSへの期待値が増す一方で、国内においては十分に利益をあげられるMaaSサービスは存在していないように思います。
(少なくとも現在は・・・)

ではなぜ、十分な利益が出ない(=儲からない)のでしょうか?
理由はシンプルで、“そもそも儲かるビジネスモデルが存在していない”というのが答えです。

例えば、Googleを代表とした「検索エンジン×検索連動型広告」というのは誰もが知っているビジネスモデルですが、このような儲かるビジネスモデルが、MaaS領域には未だ存在していません。
つまり、「MaaS×●●」の●●が未だ発見されていない、というのが私なりの理解です。

そして、MaaSビジネスモデルの発見の旅は、2000年代のGoogleを中心としたインターネット業界の歴史をなぞっているようにも思います。

Googleも創業当時は世界で最も洗練された検索エンジンを開発するという事が出発点であり、最初から今のビジネスモデルがあった訳でなく、検索ワード数が爆発的に増加する過程の中で、検索連動型広告という最強のビジネスモデルが生まれた事は有名な話です。

1つの可能性としてMaaSも同じようなプロセスを踏むのではないでしょうか?
世界中でMaaSの進化が進む中、どこかのタイミングでコップから水が溢れるかのように、これまでの歴史を変えるような新たなモデルが誕生する日は近いと思います。

3、1つの可能性は「移動」×「まちづくり」×「生活/暮らし」の共創

様々な視点からMaaSのビジネスモデル開発が進む中、直近でのキーワードの1つはやはり、「移動」×「まちづくり」×「生活/暮らし」の共創です。

トヨタのウーブンシティのようなスーパーシティ構想がその代表例ですが、要は、まちづくりを中心としたフィジカル領域の中にMaaSや生活サービスを組み込むという発想であり、その世界観ではMaaSはあくまでも1つのパーツとなります。

どれだけ洗練された移動手段やストレスフリーなUIを準備したとしても、移動の目的となる”コトづくり”や、移動のべースとなる”まちづくり”とセットで考えなければ、それは絵に描いた餅。
空気を運ぶ導線が増えていくだけであり、大きな経済圏は生まれないように思います。

実際に大阪メトロではこのような考え方を持ち、次代のビジネスへのチャレンジが始まっています。

都市交通事業
出典:大阪メトロ 2018-2025年度 中期経営計画(2020年12月改訂版)

これまで乗降が少なかった駅やバス停に、新たな「にぎわい」のハブつくることによって、そこに商圏が生まれ、また、その場所に行くための手段としてMaaSを活用し、より多くの移動を実現する。というのが、大枠の考え方のように思います。
また、その世界観の実現に向けては他業界とのアライアンスを前提に考えており、最近注目を集めているフードトラックとの協業を開始させる予定です。

また、別の事例になりますが、昨年末の道路法の改正によって、新たに「歩行者利便増進道路」(通称:ほこみち)制度が創設された事も変化の兆しの1つです。

出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/road/hokomichi/index.html

国土交通省によると、「ほこみちに指定された道路の特例区域(利便増進誘導区域)では、無余地性の基準が緩和され、道路占用許可が柔軟に認められます。」と記載されていますが、要は、「歩道のなかに歩行者が滞留する空間(賑わいが創出される空間)を作りやすくする制度」であり、ほこみちエリアでは今後、イベントやオープンカフェなど街の賑わいスポットとしての活用が期待されています。
※国土交通省は2021年2月12日(金)、ほこみちの全国初の指定事例として、大阪市と神戸市、姫路市にある計3か所の歩道を指定したと発表

このように、今後は主要な駅に偏っていた移動目的地が分散し、様々なエリアでその地域の特性を活かした“街のにぎわいづくり”が始まっていく事が期待されていますが、MaaSのビジネスチャンスもここにあるように思います。

つまり、MaaS単体でビジネスを考えるのではなく、「どのような場所に行きたいのか?」を起点として、街づくりやコトづくりといったフィジカル領域とセットで考える事により、マネタイズの可能性は大きくなっていくはず。
そして事業者の視点としては、3つの変数(移動×まちづくり×生活/暮らし)をトータルにマネジメントする機能が1つの勝ち筋だと考えます。

いかがでしたでしょうか。
今後もMaaSHackは「MaaSの事業化/マネタイズを本気で目指すビジネスリーダーに向けたバイブル」となるべく、出来る限り多くの情報を届けていきたいと思います。
最後までご覧頂き、ありがとうございました。

<参考>

Maas Hackを運営する株式会社リブ・コンサルティングでは、MaaS領域に関しての資料を複数ご用意しております。ぜひご関心の方は以下よりダウンロードください。

コンテンツ提供:リブ・コンサルティング

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