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EV普及のトリガーとは!? ”環境に良い”だけでは人は動かない
byリブ・コンサルティング

こんにちは。MaaSHack編集部の横山です。

菅義偉首相は2020年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明しました。いわゆるカーボンニュートラルと言われるものです。

その後2021年1月18日に始まった通常国会の施策方針演説で、国内の自動車販売は「2035年までに電動車100%を実現する」と表明しました。これまで「2030年代半ば」とされてきた達成時期をより明確になった事で、日本の基幹産業である自動車製造業としては、非常に大きなインパクトです。
そのような方針の中、日本のEV車の販売比率は、僅か数%と普及には程遠いのが実態です。というわけで今回は、「EVを普及させるためのトリガー」について、私なりの考えを記載させて頂きます。

▼目次
1、EV普及が必要な背景は?
2、EV購入におけるハードルとは?
3、環境に良いだけでは、人は動かない。EV普及におけるポイントとは?

1、EV普及が必要な背景は?

この記事をご覧頂いている皆さんは良くご存じだと思いますが、世界中が今、EVに注目する最大の理由は「地球温暖化」と「ピークオイル」という2つの社会問題です。 この2つの社会問題に直面し、これまで通りのエンジン車の持続可能性の低さから、EVシフトが進んでいます。

■地球温暖化
これも聞き馴染かと思いますが、改めて記載します。石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすと大量の二酸化炭素(CO2)が発生し、このCO2によって、まるで温室のように太陽光で地球が温められ、地球全体の平均気温が上昇します。これが地球温暖化と言われる問題です。
自動車はガソリンや軽油などの化石燃料を燃やして走ります。当然、大量のCO2を排出しています。
このような事情もあり、世界の自動車メーカーはこぞって、EVの開発に取り組んでいるのです。

■ピークオイル
石油は地下資源ですので、汲み出し続ければいつかは無くなってしまいます。中国やインドなどの新興国の需要増大により、石油の生産量は増え続けてきましたが、それに伴って急速に地下の石油量が減少しています。そのうち生産量が減少を始め、やがて枯渇します。このような生産量の頭打ちをピークオイル、と言います。

エネルギー供給の安定性を考えると、エンジン車には石油以外だとバイオ燃料などごく限られた選択肢しか存在しません。一方EVでは、電気を作る手段として現時点で実用化されているものだけでも、天然ガス、石炭、原子力、水力、太陽光・熱、風力、地熱など多様な選択肢が用意されています。

ただ一点注意が必要なことが、EVは走行中にCO2を排出しませんが、使用する電気を作る(発電する)時にCO2が排出されます。現状日本では、ベース電源の多くを火力発電が担っています。そのため、そもそも日本の電力施策として、自然エネルギーをいかに増やすかという観点を抜きには語れない状況です。今回はこの領域について記載はしませんが、この点も考慮に入れる必要があります。

2、EV購入におけるハードルとは?

上記のような背景の中、EVシフトの重要性は、容易に想像できます。ただし、冒頭記載した通り、現状のEV普及率は数%が現状となっています。ではいまEVを購入される方は、何を求めてEVを購入するのか?何がハードルで購入を控えるのか?について、確認してみましょう。

《EVの購入動機について》
EVの購入動機について、デロイトトーマツコンサルティングによる「次世代に関する消費者意識調査結果(2019年)」によると実際にEVの購入動機の1位は「環境にやさしそうだから」です。

一方でEVの購入におけるハードルも存在しており、以下のような調査があります。

一番のハードルは「製品に対して、価格が高い」ことです。
このような回答から購入者自体がEV車にメリットを大きく感じているというよりは、いわゆるイノベーター層と言われる新しい物好きの層が購入しているのが現状だと思います。
また、回答数はそれほど多くはありませんが、「走行距離の短さ」「充電インフラ設備へ懸念」もEV購入の障壁になっている点も見逃せません。

3、環境に良いだけでは、人は動かない。EV普及におけるポイントとは?

上述の通り、EVを買うときに大義として「環境に良いから」というのはわかりますが、いざ自分のことになると、そこまで高いEVを買うまでは踏み切れないというのが現状であり、一般のユーザーは、やはり目の前の「実利」が重要です。

「環境に良い」から、顧客の「実利」を感じる商品へ移行し普及したベンチマーク事例とは?
これは一昔前の太陽光発電システムと同じだと私は考えています。
環境に優しい自然エネルギーの重要性は分かるけれども、電力価格が高いので、系統電力から電気を買うというものです。ただし、今現在太陽光発電システムは一般化し、家の屋根に搭載している家庭も多いのではないでしょうか?

ここで太陽光発電システムが普及したポイントは明確に「政策の後押し」、「金融スキームの構築」の2点だと考えています。この2点が製品価格の低減に繋がり、普及を押し進める事に繋がっています。

太陽光発電システムについては、FIT(フィードインタリフ)という、「国が自然エネルギーで作った電力を通常の電力市場より高い金額で購入する仕組み」と、「国による導入補助金」により実際にユーザーが「実利」を感じる仕組みになったこと。

もう一点は、そのシステムを導入する際に初期費用が掛かるため、ローン会社と金融スキームを整え、初期費用を抑えることが、顧客の導入を大きく後押ししました。

上記の2点のポイントは今回のEV普及にもベンチマークできるのではないでしょうか。


① 環境価値の可視化
EVの購入補助サポートは国/自治体として様々な施策が存在しますが、その中でも、「ユーザーに実利を感じてもらう」という観点で面白い事例が佐賀市の事例です。キーワードは「環境価値の可視化」です。

・ブロックチェーンを活用した環境貢献価値の可視化 

環境貢献意識だけでは再生可能エネルギーやEVへの切替が難しいため、ブロックチェーンの技術を活用し、環境貢献価値に対するインセンティブを地域通貨として発行し、よりユーザーが実利を感じ、普及を促す実証実験を行っています。
政府が現在推進しているエネルギー/環境分野における「J-クレジット制度」との連携も視野にいれることで、環境に良いだけではなく経済価値を付与することで、EVの普及を後押しする仕組みです。

②EV普及に向けた金融スキームの検討
もう一つはEV普及に向けた金融スキームの検討です。現在、ガソリン車自体もトヨタのKINTOに代表されるサブスクリプションモデルが普及してきている状況です。そのような背景もあり、金融スキームによって、EVの普及スピードを早める事が可能ではないかと考えています。

こちらは太陽光発電システムのソーラーローンと同様の考え方で、初期費用が大きいEV車普及のため金融スキームを整え、初期費用を抑え、かつ月々の支払を出来るだけガソリン車に近い金額で提供するイメージです。ただ実際の車両価格自体は高いので、投資家や企業のESG投資の文脈でファンドを組成し、その差額を埋めるなどの可能性があるのではと考えています。

いかがでしたでしょうか。
EVを普及するには、環境に良いだけでは、人は動かない。普及におけるポイントはいかにユーザーに実利をもたらすか?そのポイントとしての「①環境価値の可視化」・「②金融スキーム」についてご紹介いたしました。

まだまだEV普及については、インフラの問題など様々ありますが、エンドユーザーが動くには?という視点で私なりの考えをまとめさせて頂きました!!!

最後までご覧頂き、ありがとうございました。 (記:横山)

<参考>

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