ビジネス・技術

古い業界でイノベーションの種を見つける方法  ~規制/古い慣習の裏側にビジネスヒントが存在する!~ by リブ・コンサルティング

こんにちは。MaaS Hack編集部です。

今回は、タイトルの通り、旧来の業界においてイノベーションを見つける方法について述べたいと思います。

日本では古い業界の一つとされる物流業界において、まさにイノベーションを実現しようとしている実例を取り上げることで核心に迫りたいと思います。

地産地消を推進する サービスを展開する「やさいバス」の事例に触れながら、既存の大量輸送・大量生産モデルだった農業の物流に革新をもたらす舞台裏を書きたいと思います。

旧来のモデルから新しいモデルに脱却するためのヒントになれば幸いです。

▼目次
1、農水産物における物流の歴史
2、世の中のニーズ・ライフスタイル
3、旧来の農作物の物流モデルの限界と新たな仕組みの誕生
4、「当たり前」の打破とビジネスモデルを描く方法
<参考>

1. 農水産物における物流の歴史

農産物流通の仕組みや形態について皆さんご存じでしょうか?

農地で生産された野菜はJAを介して、大ロットの共同輸送により卸売市場を経由して、(又はさらに別の卸売市場に輸送され、)量販店に卸され、最終消費者である私たちの食卓に並びます。

北は北海道、南は九州で生産された農水産物は、需給バランスをすばやく一致させるために卸売市場のシステムに乗って流通することになっています。

【従来の農産物の物流の仕組み】

(出典:九州農政局食品企業課『農産物の物流について』)

このような全国的な大規模な物流網を築くことにより、全国の各家庭に全国の野菜を安価に消費することができるのです。

2. 世の中のニーズ・ライフスタイル

一方で、従来の物流網に対する課題も見えてきています。

従来の物流における弱みは何でしょうか?

農家の目線から見てみると、以下の点で課題があります。

 ・価格決定権がなく、自由に販売単価をあげられない
 ・高齢化が進展し人手が不足している状態で、最寄りの集積所まで自分で配送する手間が負担

消費者の目線からはいかがでしょうか?
現在の物流ではカバーできない以下のようなニーズがあるのではないでしょうか?

 ・手頃な値段で安心・安全な野菜を食べたいが、取り扱いの種類や量が少ない
 ・作った人の顔が見えて美味しい地産の野菜が食べたいが、取り扱いの種類や量が少ない

また、スーパーなどの小売も以下のような考えをもっていると思われます。
 
 ・他店と差別化するために、地産の野菜を取り扱いたいが、どの農家も手一杯で農家数が限られる

このような状況下では、1.で触れたような物流網では、どのステークホルダーのニーズや困り事にも対応できていないのが分かります。

3. 旧来の農作物の物流モデルの限界と新たな仕組みの誕生

前項で触れたように、農家・小売・消費者の立場に立った時、既存の物流網ではカバーできないニーズ・困り事の「スキマ」があることが分かりました。

つまり、すぐに近くにおいしく安全でこだわりの野菜が豊富にあるのに、地元のスーパーには、リーズナブルではあるものの、一旦中央市場を経由した全国の野菜が並ぶ状況にあるということです。

これに目をつけ、ソリューションを考え出したのががの「やさいバス」です。

(出典:『マイナビ農業』より)

小売などの、「新鮮な地元の野菜を買いたい」「生産者から直接買いたい」という課題と、生産者の「販売単価を自分で決めたい」「配送の手間を減らしたい」という課題、消費者の「地元の新鮮な野菜を食べたい」「安心・安全なこだわりの野菜を食べたい」という課題を一挙に解決するモデルが登場しました。

要は、販売したい農家と、産直の野菜を買いたい小売を結ぶプラットフォームと物流網を構築することで上記の課題解決を図ろうというビジネスモデルということです。

4.「当たり前」の打破とビジネスモデルを描く方法

前項の通り、「実施すること」のみに焦点を当てると、「農家と小売を結ぶプラットフォームと物流網を地域で構築する」というある意味当たり前のことを実行しているにすぎません。
ただし、「これは言われれば当たり前だがまだ誰も実行していない」とも言えます。

では、「いわれてみたら、その通りだが、まだ誰も実行していない(又は強力なプレイヤーがいない)領域」を見つけるには、どうすればよいでしょうか?

言い換えると、「イノベーションの種を見つけるにはどうしたらよい」でしょうか?
それは「当たり前を疑う」ことです。

経済学者シュンペーターの『経済発展の理論』によると、イノベーションとは以下の5つに分類されます。

1. 新しい生産物の創出(プロダクト・イノベーション)
2. 新しい生産方法の導入(プロセスイノベーション)
3. 新しい市場の開拓(マーケット・イノベーション)
4. 新しい資源供給の獲得(サプライチェーン・イノベーション)
5. 新しい組織の実現(組織イノベーション)

今回のやさいバスの場合、サービスの工程における効率化を図ったものであることから、2.の新しい生産方法の導入(プロセスイノベーション)が該当すると思います。

次に、経営学者ピーター・ドラッカーによるとイノベーションにつながる7つの機会が提唱されております。

1. 予期せぬ成功と失敗
2. 理想と現実のギャップ
3. ニーズの存在
4. 産業構造の変化
5. 人口構造の変化
6. 認識の変化
7. 新しい知識の活用

今回の場合に当てはめると、人々の健康意識の高まりといった「認識の変化」と、農家や小売に存在する「ニーズの存在」に気が付いたことにより、新たなビジネスモデルが生み出されました。
それは当たり前を疑ったという前提に他なりません。

では、もう一方踏み込んで具体的なHow論として、我々はどのようにして当たり前を疑えば良いのか、実践的なポイントを以下の通り述べたいと思います。

当たり前を疑うためには、以下の6つのポイントがあると考えます。
 ① 世の中の変化を敏感にキャッチ
 ② 自分や周囲の困り事に目を向ける(Ex.事例)
 ③ ビジネスモデルを描いてみる
 ➃ 描いたビジネスモデルから、価値とお金の流れを追って、本当に世の中に求められているものか検証する
 ⑤ 法規制の解除に伴って生まれる市場の発生源に着目する
 ⑥ 海外事例のベンチマーク(タイムマシン経営)を収集する

これが全てとは言い切れませんが、以上のポイントを基に当たり前を疑い、イノベーションの種を見つけるお役に立つことができれば嬉しく思います。

是非皆さんの周りの当たり前を疑い、より良い世界を作る手助けとなれば幸いです。 最後までご覧頂き、ありがとうございました。

<参考>

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