ビジネス・技術

生活者起点でのMaaSの在り方とは?
~送迎バスで移動課題を解決する~ by リブ・コンサルティング

・自宅からバス停が遠く、歩いていくのは大変・・・
・毎回、病院への送り迎えを娘に頼むが申し訳ない・・・
・夫が免許返納したら移動の足が無くなってしまう・・・

などなど、これらは実際に過疎地域の高齢者へインタビューをした際に、
“日常の移動の困りごと”として頂いたお話。

過疎地域では路線バスやタクシー会社の撤退が進み、交通空白地の増加が叫ばれる中、如何にして高齢者の“移動の足”を確保していくのか?

今回はこの問題にフォーカスしてみたいと思います。
キーワードは「地域に存在するアセットの利活用」
最後までご覧いただけますと幸いです。

▼目次
1、消滅可能性都市に繋がる7つのステージ
2、地域に既に存在するアセットとは?
3、送迎バスで地域の移動課題を解決する

1、消滅可能性都市に繋がる7つのステージ

まずは以下の図をご覧ください。

こちらは、地方の生活者が直面している交通・生活課題をステージ別に整理したものです。
多くの地方部においては既にStage5に移行しており、以下の図が指し示す通り、年々、公共交通維持に対する行政負担が増大しています。

(出典:総務省資料より、国土交通省総合政策局作成)

このままでは、交通空白地の増加(Stage6)は不可避であり、買い物難民や通院難民は増える一方です。

とはいえ、過疎化/高齢化が進む地方において、公共交通を充実させるためには多額の行政補助が必要であり、地方の財政状況では現実的ではありません。
実際に地方のコミュニティバスの収支率(運賃収入を運行経費で除した値)は10%程度。
運営コストの殆どは行政負担で賄っており、持続可能なモデルでは無いように思います。

その一方で、地域には移動課題を解決するためのアセットが眠っています。
それは、様々な事業者が持つ「送迎バス」です。

2、地域に既に存在するアセットとは?

以下は私が担当したプロジェクトで行った「地方部A町における送迎バスの実態調査」の一部です。

人口3万人弱の地方都市において、スーパーや病院、福祉施設などの事業者が、合計100台以上の送迎バスの運行をおこなっており、これらの送迎バスは公共交通が衰退したこの地において、既に“日常の交通インフラ”と化していました。

住民の“無くてはならぬ”になっている一方で、利便性の観点ではいくつか問題を抱えています。

❶原則、自宅⇔目的地までの運行であり、“ちょっと寄り道”ができない
❷各事業者の運行ルートが決まっており、カバーできないエリアが多数存在

このように、あくまでも各事業所(目的地)への送迎が目的であり、かつ、自前での運行のため、オペレーションやコストの問題で全てのエリアをカバーできないという実態があります。

また、事業者側の視点で考えると、ドライバー確保の問題や、車両維持/運行コストの負担感が増しており、今後、送迎バスが維持できなくなる可能性もあります。

公共交通が衰退したエリアにおいて、各事業者が運行する“送迎バス”の重要性が増す中、これらの問題を解決し、移動課題を解決していくための実証事業が始まっています。

3、送迎バスで地域の移動課題を解決する

解決の糸口は、「送迎バスの利活用」という発想であり、その代表例が、
一般社団法人ソーシャルアクション機構が運営する「福祉Mover」です。

「デイサービスの送迎網を地域の第3の交通網に」というコンセプトの元、
地域で運行する送迎バスを日常の買い物や通院などに利用できるサービスです。

▼以下、福祉Moverのサービスモデル

福祉Moverの利用はいたってシンプルです。スマホに専用のアプリをダウンロードし、事前に行き先を登録。(病院や役所、近所のショッピング施設などを登録する例が多い)
福祉Moverを利用する際は、アプリを開いて事前に登録した行き先を選択するだけ。
近くにいて同じ方向に向かっている送迎車をAIが瞬時に選び出し、車と人をマッチングします。
車の場所と到着時間がアプリの地図上に表示されるので、それでよければ『決定』をタップ。
利用者は待つだけです。

このサービスを考えたきっかけは、とあるデイサービス利用者の“ちょっと寄り道”へのニーズ。
送迎バスの運行ルートに点在するスーパーや役所などに寄り道したい、という小さな声です。
「ルール上、無理です。」と言ってしまうのは簡単ですが、この小さな声に耳を傾け、どうすれば実現できるかを考え続けた結果が、この福祉Moverのサービスです。

福祉Moverの詳細については今後の記事に譲るとして、このように“地域に既にあるアセットを利活用する”ことで、移動課題の解決に繋げていく事例が生まれ始めています。

また、この事例を参考とし、様々な事業アイデアが考えられるのではないでしょうか?

福祉Moverではあくまでも送迎バスの「ちょっと寄り道」を実現するサービスですが、例えば、複数の事業者が送迎バスをシェアリング化し、運行ルートを拡大する/運行頻度を増やす等、地域の移動ニーズに合わせた最適化も可能なはずです。
実際に多くの地方部では、スーパーや役所、病院等の主要目的地は同じエリアに位置するケースが多く、各事業者がそれぞれ個別に送迎バスを運行するメリットは少ないように思います。

このように、各事業者がPoint to Pointで人を運ぶのではなく、地域の事業者が協力し合い、公共交通に頼らない“送迎バスのシェアリングモデル”が実現できるのではないでしょうか?

以上、今回は利活用可能なアセットとして送迎バスに注目してみましたが、それ以外でもまだまだ地域に眠るアセットはあるはず。
そのアセットを発見するためにも、地域で生活者の実際の声を聴き、生活者起点でMaaSを考える。
その中で、持続可能なMaaSモデルに繋がっていくのではないでしょうか。

<参考>

上記の記事に関連したオンデマンド交通の資料をご用意しております。ぜひご関心の方は以下よりダウンロードください。

コンテンツ提供:リブ・コンサルティング

モビリティ業界をリードし、「100年後の世界をよくする会社」を中心に支援しています。

MaaS事業の調査、企画設計・実行推進に関するホワイトペーパーやセミナー情報などはこちら

・MaaS Hack

日本におけるMaaSを加速させるべく、MaaSの事業化/マネタイズを目指しているビジネスリーダーのために、ノウハウ・事例・インサイトを提供しています。

https://note.com/maashacker


▷グリラボSNSのフォローお願いします!!

Twitter @gurilabo

▷アイグリッドグループ

シェア