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​​BCP対策とは?マニュアルの種類や事例と共に分かりやすく解説!

自然災害などのリスクに備え、BCP対策を検討している企業の方も多いのではないでしょうか。有事の際、BCP対策をしているかしていないかで、企業の運命が決まるといっても過言ではありません。

本記事では、BCP対策の概要や策定するメリット、策定の流れなどを解説します。実際に企業で導入しているBCP対策の事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

BCP対策とは?分かりやすく紹介

BCP対策とは、企業が自然災害やサイバー攻撃などで影響を受けた際に、どのように行動し、事業を継続したり復旧したりするかを考えておく計画のことです。日本語では「事業継続計画」と呼ばれています。BCP対策で想定する緊急事態には、以下のものが挙げられます。

・地震や台風、水害などの自然災害

・火災

・戦争やテロ

・感染症の流行による被害

・サイバー攻撃

・設備事故

帝国データバンクの資料によると、2021年時点でBCPを策定している企業は17.6%とされています。この結果は大企業と中小企業で差があり、大企業では32.0%、中小企業では14.7%と大きく開きがあることがわかります。

また同調査によると、BCP対策を行っていない理由でもっとも多いのが「策定に必要なスキル・ノウハウがない」というもの。これは「方法はわからないけれどBCP対策に興味がある」とも読み替えられるため、企業の担当者はぜひBCP対策について理解し、社内導入を検討してみてください。

参照:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021 年)|帝国データバンク

BCP対策の必要性

bcp

BCP対策が行われるようになった背景には、各リスクに対する個別の対策では事業継続の面で不十分であることが明らかになってきたことが挙げられます。

BCP対策が始まるまでは、地震対策、パンデミック対策、台風対策など個別の対応がとられてきました。

しかし、このような対策では、自社の復旧がスムーズにできたとしても、取引先が営業できなくなったりサプライチェーンが崩壊したりすれば、事業の継続は困難です。そこで登場したのが、幅広いリスクに対応するためのBCP(Business Continuity Plan)です。

特に災害大国と言われる日本では、地震や台風をはじめ、集中豪雨や洪水なども年々増え続けています。また新型コロナウィルスの流行によってリモートワークを余儀なくされたり、それによって企業の生産性に影響を及ぼしたりと、毎年何かしらの非常事態が起こっているといっても過言ではありません。

今後も気候変動や戦争など、さまざまな要因で非常事態が起きると想定されます。その時に備え、事業が継続できるよう事前に対策を行っておくことが、どんな企業にとっても不可欠なのです。

BCP対策を策定するメリット

BCP対策を行うメリットは、主に3つあります。非常事態に備える以外にも会社にとってプラスになる要素があるため、ぜひチェックしておいてください。

緊急時に強い企業になれる

まずは、BCP対策の目的ともいえる「緊急事態にすぐに対応できる」ということが挙げられます。自然災害をはじめとする予期せぬ事態に備えているかどうかで企業のその後が決まってしまうと考えて良いでしょう。

事前に対策をとっておけば、自社が被害を受けた際にスムーズな対応ができるため、被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。また予想できなかった事態が起きても、BCPの策定によって自社の課題が明確になっているため、臨機応変な対応が可能です。

企業の価値や信頼性を高めることができる

BCP対策をとっていることは、社外からの信頼を集めることにもつながります。例えば、自社がBCP対策を行っていても、取引先が何の対策もとっていなければ、自社のBCP対策の効果も弱まってしまうもの。このように、BCP対策をとっていない企業は、企業としての安心感が薄いと考えられてしまう可能性が否めません。

一方で、BCP対策を十分に行っている企業は事業中断のリスクが低いとみなされ、信頼性の向上につながります。その他、競争力の強化にも役立つでしょう。

自社の強みや弱みが把握できて経営戦略の策定にもつながる

BCP対策を練る過程では、自社の強みや弱みを把握することが必要です。自社の課題や優先すべき事業などを洗い出すことで、今後の方針や中長期的な経営戦略も見えてきます。

また、事業の課題が明確になれば、BCP対策だけでなく全体的な業務改善につなげることも可能です。

BCP対策には3つのマニュアルがある

あらゆる方面から非常事態に備えるBCPには、3つのマニュアルがあります。それぞれについて詳しく説明します。

自然災害マニュアル:地震・水害・竜巻など

いつどこで大きな被害を受けるかわからない自然災害。自然災害に分類される項目には、以下のようなものが挙げられます。

・地震

・津波

・台風

・大雨

・洪水

・豪雪

・竜巻

・火山噴火

・高潮

地球温暖化が進む昨今では、今後も更なる自然災害が起きると想定されます。このような自然災害が起きた際に備え、自然災害マニュアルでは以下の内容を検討し、記載しておきましょう。

・人命救急の方法

・避難方法

・安否確認方法

・被害状況の確認方法

・停止した事業を復旧させるための代替案

・緊急時の連絡先リストと優先順位

自然災害の場合は停電のリスクがあるため、紙媒体でも保存しておくと良いでしょう。

外的要因マニュアル:取引先の倒産やサイバー攻撃など

外的要因とは、取引先の倒産をはじめ、サイバー攻撃、通信障害、感染症など、社外での問題に起因したものを指します。自然災害を除くと、事業中断の要因として多く見られるのが取引先の事業中断によるものです。

また、サイバー攻撃などによる顧客情報流出等は企業の信頼性に大きなダメージを与えるため、対策をしっかりとっておかなければなりません。以下のようなマニュアルを作成しておきましょう。

・仕入先の変更先リスト

・データの復旧方法

・データ漏えいの際の顧客への通知方法

・取引先への連絡リストと優先順位

内的要因:自社での不祥事など

内的要因として、設備や機械の故障、人的ミス、社内不祥事などが挙げられます。マイナスな面はもちろんですが、本社移転やシステム刷新にともなう一時中断なども内的要因に分類し、幅広い想定をしておくことが大切です。

内的要因といっても、間接的に自然災害の影響を受けたり(機器の故障など)、バイトテロによるSNS炎上など、思わぬところで事業中断を余儀なくされるケースもあります。さまざまなリスクを考慮し、自社の特性も踏まえたうえで以下のようなマニュアルを作成しましょう。

・社外への謝罪文のテンプレート

・記者会見開催の手順

・取引先の連絡リストと優先順位

BCP対策と防災対策の違いとは?

BCP対策に似たものとして防災対策がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。簡単にいうと、BCP対策は自然災害を含むすべての非常事態に対応するもの、防災対策は自然災害のみに対応しているものといえます。

BCP対策は、非常事態が起こった際に、その後の対応をスムーズかつ的確に行うための 「事業継続計画」です。事業を存続することに焦点が置かれているため、非常事態の際に他社のリスクも踏まえてその後どう対策をとるかを考える必要があります。

一方、防災対策は地震や洪水をはじめとする自然災害のみの対策で、主に人命や実物資産を確保することが目的です。そのため、他社のリスクも考慮するBCPとは異なり、自社のみが対象となります。また、事後ではなく事前の対策のみという点もBCPとの違いです。

防災対策はBCPの一つともいえますが、そもそも目的が違っているため、どちらかのみではなく両方の対策をとっておくことが望ましいでしょう。

BCP対策を策定するステップ

次に、BCPを策定するための手順を解説します。実際に自社に取り入れようと思っている担当者はぜひ参考にしてください。

自社がBCP対策を通して目指すものや方針を決める

まずは、BCP対策を通じて自社で目指すものは何なのかを明確にしておく必要があります。企業理念や経営方針と照らし合わせて考えるのも一つの方法です。社員を守ることが目的なのか、取引先から信用を得ることが大切なのか、BCP対策によって実現したい目標と方針を決定しましょう。

また、有事の際に社員1人1人が適正な行動を取れるよう、理解しやすい目標であることも大切です。他社のBCPを受け売りにするのではなく、自社で起こりうるリスクを想定し、発生頻度や影響度などを踏まえたうえで具体的な方針を考えましょう。

BCP対策を策定するチームを作る

BCP を策定する際は、社内に専用のプロジェクトチームを立ち上げるのが一般的です。総務部が担当することが多いと言われていますが、BCP対策は社内全体に関わるプロジェクトのため、できれば各部署から最低でも1人ずつ参加してもらうのが望ましいでしょう。

本社以外に支社などがある企業では、社内全体にBCP対策の意識が行き渡るよう、マニュアルの作成やチーム編成の工夫をすることが大切です。一部が機能しないだけでもBCP 対策の有効性は弱まってしまうため、その点は十分注意しましょう。

チームを作成したら、プロジェクトの中心となる責任者を決めます。できれば取引先や重要な顧客との連携をしておくと、有事の際にスムーズな対策をとることができるため、検討してみてください。

優先して復旧すべき事業を決める

事業内容が多岐にわたる企業の場合、売上がもっとも多い事業、もしくは遅延が起きると損害が大きくなる事業を優先して復旧するようにします。会社の中核となる事業を迅速に復旧できれば、損害を最小限に抑え、事業継続できる可能性が高まるからです。

そのためには、売上高や顧客の数、市場シェアの大きさなど、客観的な判断材料をもとにさまざまな観点から優先順位を決める必要があります。この作業は自社の強みや弱みを洗い出すことにも役立つため、しっかり検討しておきましょう。

損失がどのくらいになるのかを分析する

BCP対策では、どのような非常事態が起こったときにどのくらいの影響が出るのかを、部署や事業内容ごとに把握しておくことも重要です。損失がどのくらいになるかをしっかり分析できていれば、優先して復旧すべき事業の再確認にもなるでしょう。

分析方法として、まずは自然災害、外的要因、内的要因それぞれのケースにおいて、中核となる事業がどのくらいの被害を被るかを検討します。

・被害を受けた際の損失

・復旧にかかる費用

・自社でどの程度まかなえるか

・非常時に利用できる補助金や補償制度

次に復旧にかかる時間を予測し、目標を決めます。どのくらいの遅延が生じたら社外に迷惑がかかり、信頼を失うかというタイムリミットから逆算するとわかりやすいでしょう。

各事業ごとに具体的な対策を考える

どのくらいの損失が出るかがわかったら、事業ごとに具体的な対策を考えます。各事業が停止した場合にどのくらいの時間なら会社が持つのか、復旧にどのくらいの時間がかかるか、それぞれシミュレーションを行いましょう。

非常事態によって労働力や資金、情報データなどが失われてしまった場合の代替案も考えておく必要があります。

迅速にテレワークに移行できる環境を整えておく、他企業の力を借りる、アウトソーシング先を考えておくなど、あらゆる手段を考慮しておくことが重要です。特に中核となる事業についてはより具体的に、より多くの手段を考えておきましょう。

BCP対策を発動する基準や発動時の体制を決める

BCPの策定で一番忘れてはいけないのが、BCPを発動するタイミング(基準)と、発動した際の体制・要員を決めておくことです。せっかく具体的なBCP対策を決めていても、発動基準が曖昧がゆえにタイミングを逃すと大きな損失につながることもあります。

また、誰が指示を出して誰が行動に移すのかも具体的に決めておきましょう。緊急時はただでさえパニック状態に陥りやすく、冷静な判断が困難になる人も出てくると予想されます。

細かい部分まで決めておくことで、スムーズで的確な判断ができるようになるでしょう。とにかくマニュアルに細かい行動まで落とし込み、見れば誰でもわかる状態にしておくことが大切です。

社内全体にBCP対策の文書を共有する

作成したマニュアルは社内の全部署、全社員に共有します。非常事態がどの部署で起きても対応できるようにするためと、事前にBCP対策について全社員が共通の認識を持つことが目的です。

データでの共有でも良いですが、停電時に備えて紙の媒体でも各部署1つは用意しておくと安心です。もしくは、緊急時用のノートパソコンを用意しておき、マニュアルの最新版を常に更新しておけば、突然の停電にも対応できます。

BCP対策を運用するうえで重要なポイント

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BCP対策を行ううえで特に重要なポイントを2つ紹介します。非常事態の際にスムーズで的確な対応がとれるよう、日頃から適切なBCP対策を行ってください。

全社で認識・意識を統一して正しく行動できるようにする

BCP対策の内容を会社全体で把握し、1人1人がいざというときにとっさの行動を取れるようにしておくことが大切です。マニュアルの共有はもちろんですが、自分ごととして捉えなければ本当の意味で活用することはできません。経営目線で策定することはもちろん大切ですが、運用するのは社員であることを忘れないようにしましょう。

マニュアル以外の周知方法は以下のようなものがあります。

・研修会を定期的に開催する

・ポスターを貼る

・社内ディスカッションを行う

・社員教育の一環にする

自社のスタイルに合った取り入れやすい方法で、BCP対策の認識を深めておきましょう。

策定後のテストや改善を行う

BCPは一度策定して終わりではありません。定期的にテストを行うことで、より精度の高いものに仕上がっていきます。テストで想定と違っていた場合や課題が残った場合は、改めて社内で内容を検討し、マニュアルを更新しておきましょう。

非常事態は実際にその場面にならなければわからないことも多いものです。だからといって諦めず、定期的なテストを繰り返し行いあらゆる非常事態に備えておきましょう。

BCP対策の事例を紹介!

BCP対策といっても、具体的にどんなものか想像がつかないという担当者もいるのではないでしょうか。そこで、実際にBCP対策を行っている企業の事例を2つ紹介します。BCP対策の具体例を知りたい人はぜひ参考にしてください。

東京海上日動

災害時に保険金の支払いを行うことが任務である東京海上日動では、いかなる場合でも業務を途絶えさせることのないようBCP対策を行っています。

被害想定は、首都直下地震。本店ビルとメインのシステムセンターが使用できなくなったと想定しています。この際優先すべき事業に設定しているのは、以下の3つの業務です。

・保険事故受付業務

・保険金、満期返戻金等の支払い業務

・保険契約締結業務

これを実現するため、東京海上日動では以下のようなBCP対策を行っています。

<組織や体制を構築し整える>

社長を本部長とし、「本店災害対策本部」を立ち上げ。本店と3時間以上連絡が取れない場合には関西地区に「関西バックアップ対策本部」を設置。

<緊急時の代替拠点を事前に定める>

本店が機能を失った場合に備えて、多摩、新宿、横浜、大宮、幕張、立川の6つを拠点として設置。

<緊急時に使用する備蓄物資や機器を用意する>

本店+6つの拠点に、緊急時用の備蓄物資や通信機器を用意。災害専用各種通信機器や、社内イントラネット用配線等を整備。

<自動的に稼動するバックアップシステムを設置する>

メインの多摩システムセンターが機能しなくなった際は、千葉の第2システムセンターにて24時間以内にバックアップシステムが自動的に稼働する仕組みを設置。

<社員や家族等の安否確認システムを準備する>

東京海上日動のBCP方針「生命の安全の確保」に基づき、社員や家族の安否確認、出社可否判断等を迅速に把握できるよう安否確認システムを準備。

<緊急時の応援要因確保ルートや動員計画を完備する>

緊急時でも早急に事業体制を整えるため、業務遂行の応援要因を確保するルートや動員計画を事前に完備。

<定期的な訓練を実施する>

災害対策推進チームによる実践的な演習や、全社員対象の災害対策基礎研修など、社内でマニュアルの共有や訓練を日頃から実施。

参照:災害に関する基本方針|東京海上日動

参照:事業継続の考え方と中枢機能のバックアップ|東京海上日動リスクコンサルティング

イオングループ

食料品や日用品などの生活必需品を多く扱うイオングループでは、非常時でも商品の供給を途絶えさせないためのBCP対策を実施。グループが所有するインフラ技術を活用することで、自社の社会的責任を果たすことを目的としています。

イオンで策定しているBCP対策の内容の一例は、以下のとおりです。

<商品・物流>

イオンBCPポータルサイトでグループ会社と取引先とをクラウドでつなぐシステムを運用。ポータルサイト上で商品を一元管理し、被災地等にも迅速に物資を届けられる仕組みを構築。

<情報システム>

災害が発生したエリアの店舗を検索できるよう地図情報システムツールを構築。店舗の被災状況の入力や確認が可能に。

<施設>

全国100ヶ所に防災拠点を設置し、災害時にも早期営業再開を実現するため、エネルギーの供給体制を確保。バルーンシェルターなどの一時避難場所や救援スペースの提供も実施。

<訓練>

年2回、グループ58万人が参加する「グループ総合防災訓練」を実施。発生直後から発生後72時間を想定し、対策本部立ち上げから外部パートナーとの連携まで、一連の流れを実際に行う。

<外部連携>

1,000を超える自治体、80の外部パートナーと防災協定を締結。災害対策基本法に基づく指定公共機関として認定。

イオングループでは、実際に自然災害が起きた際にBCP対策を実行し、その都度課題や問題点を改善させています。

参照:イオンのBCPへの取組みについて|イオン株式会社

VPP JAPANなら緊急時も太陽光発電で経営が継続できる

自然災害をはじめとする非常事態は、いつ誰が被害に遭うかわかりません。企業の場合は会社の信用や事業存続に大きな影響を与えるため、BCP対策を講じておくことは不可欠といえるでしょう。いざというときに慌てないよう、すぐにでもBCPを策定しておくことをおすすめします。

VPP JAPANでは、緊急時でも自社施設の太陽光発電で電力をまかなえるサービスを提供しています。投資負担なしで自社の屋根に自家消費太陽光設備を導入できるため、緊急時以外のコスト削減に役立てたい企業にもおすすめ。いざというときは、自社以外で発電したエネルギーを使って事業継続が可能です。

まずは停電時の対策を行いたいという方は、ぜひVPP JAPANのサービスも併せてチェックしてみてください。

 

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