ビジネス・技術

スーパーマーケットから広がる再エネ ~地域インフラにEV急速充電を設置する理由~

アイ・グリッド・ソリューションズ(以下、アイ・グリッド)では、EV急速充電を設置するサービス「R.E.A.L. EV Charger」を手がけ、2025年の7月から順次スーパーマーケットへの設置を開始しています。屋根上での太陽光設置を推進し、自然を傷つけない再生可能エネルギー(以下、再エネ)を生み出し、そして余剰電力の活用を強みとしてきた同社が、このEV急速充電サービスで目指す新たな再エネの活用とは。そして、アイ・グリッドが考える理想の再エネの姿とはなにか、その想いを紹介します。

アイ・グリッドのEV急速充電設置サービスとは?

アイ・グリッドは2024年から流通小売施設に対して電気自動車(以下、EV)の急速充電器を無償で設置するサービス「R.E.A.L. EV Charger」を開始しています。充電器の電力はアイ・グリッドが保有する太陽光発電施設から生み出された再エネを使用します。発電量が少ない夕方や雨天時などは、非化石証書を活用して再エネ電源を調達することで、実質再エネ100%の電力で充電を提供しています。

導入施設が負担なく設置ができる理由は、独自の事業構造にあります。アイ・グリッドでは、小売店や商業施設、物流施設等の屋根上を中心としたPPAモデル※による太陽光発電設備を全国1240施設/305MW(2025年8現在)で保有・運営しています。さらに、通常PPAモデルではその施設で使い切れる分しか太陽光発電を設置しないのが一般的ですが、独自の予測システムによって、電力の需要予測を精密に行うことで、いわゆる「余剰電力」を生み出し、他施設に供給できる仕組みを構築しています。

アイ・グリッドはこの仕組みによって、さまざまな余剰電力を活用した事業を展開しており、今回のサービスもその一つです。EV急速充電設備に供給する電力はこの余剰電力を使用しているのです。

EV普及への課題とは? 

現在、気候変動による気温上昇によって、私たちの暮らしにも影響を及ぼし始めていることは報道等で見聞きすることも増え、身近な問題として感じていることでしょう。この気候変動の影響として考えられているのが主にCO₂排出量の増加です。世界ではCO₂排出削減に向けたさまざまな取り組みが行われています。日本国内でも、この脱炭素社会へ移行させるために、エネルギー構成における再エネ比率を高めることやEVの普及促進など課題解決への取り組みがなされています。


出典:経済産業省ウェブサイト

その中でもEVは、化石燃料に依存しないクリーンな移動手段として注目されていますが、一方でインフラ整備が課題となっています。政府は「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指し、2035年までに新車販売の電動車(EV、HV、PHV等)比率を100%にすること、および2030年までに充電器設置数を30万口に増やすことを目標としています。

しかし、世界のEV普及率が2024年時点で22%なのに対して、日本では2.8%と低い水準にとどまっています。まだまだEVが普及しているといえる段階ではありませんが、今後の脱炭素社会にとって重要な役割を果たすことは想像に難くありません。この普及の鍵を握るのが、都市部から地方まで、誰もが安心して利用できる環境を整えることだといえそうです。

EV普及のために、スーパーマーケットを基点に再エネを循環させる

EVへの切り替えには、充電環境の整備がきっても切り離せない関係にあります。駐車スペースに充電器は確保されていても移動先に給電箇所がなければ、移動範囲も慎重にならざるを得ません。現在、高速道路などへの設置は増えつつありますが、日常生活圏における給電場所は依然として不十分です。今後、EVの需要が増えることを見越して今から給電場所を設置することで、スムーズなEV社会を迎えることができるのではないでしょうか。

そこでアイ・グリッドでは、保有する全国の流通小売業の顧客ネットワークを活かして、急速充電器の設置を推進しています。スーパーマーケットやホームセンターに充電器があれば利用者にとっては「ここで安心して充電できる」という信頼につながり、来場の動機になるかもしれません。現在設置している急速充電は50kW出力です。例えば3kWの普通充電と比較した場合、車種やバッテリーの状態によりますが、約15倍の速さで充電をすることができ、走行距離だと、30分で150〜180km分に相当します。買い物ついでに一定量の充電ができることは、利用者にとって利便性の向上になります。

実際に設置し運用を開始している太陽光発電の余剰電力を活用したEV急速充電

また、供給されている電力は、太陽光由来の再エネです。エネルギーそのものはみえるものではありませんが、充電している電気が化石由来ではなく、再エネからできた電力であれば、環境に良いことをしているという意識はさらに高まるはずです。さらに地域のインフラでもあるスーパーマーケットに充電器を設置することで、それはまさに“電気が見える接点”になりうるかもしれません。

地域インフラにEV急速充電を設置する理由。アイ・グリッドが描くエネルギー循環とは

屋根上で生み出された再エネを自施設で消費し、さらには余った電力を地域住民のEV給電に活用することで、クリーンなエネルギーを無駄なく使うことができます。そしてなにより、地域インフラなどいろいろな場所で「EVを気軽に再エネで充電できる」ことがあたりまえになれば、環境にやさしい移動手段の選択肢として社会にとっても大きな価値になります。今はまだ利便性が優先されているかもしれませんが、近い将来「グリーンエネルギーで走る」という選択肢が、ユーザーにとって誇りになる時代がくるかもしれません。

アイ・グリッドが掲げる事業ビジョンは「グリーンエネルギーがめぐる世界の実現」です。このビジョンには、喫緊の社会課題となっている気候危機の解決に立ち向かうというアイ・グリッドの姿勢にもつながっています。EVチャージ事業も、社会インフラとしての役割、企業ブランドとしての価値、そして未来の循環型社会を支える意義、すべてを同時に検証しながら、一歩ずつ前に進めています。企業から消費者へとエネルギーが循環していくこの取り組みで、再エネの輪を広げ、この事業ビジョンの実現に向けて挑戦し続けるアイ・グリッドの取り組みに、ぜひご注目ください。

 


アイ・グリッドのEV急速充電に関するお問い合わせ等はこちらへ  >> R.E.A.L. EV Charger EV急速充電

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