シュタットベルケとは?特徴や今注目される理由を紹介

エネルギー事業と地域新興を結びつけるための理想的なモデルとされている、シュタットベルケ。シュタットベルケはドイツ発祥の文化で、自治体が出資する公共サービス事業者を指し、日本では「都市公社」と呼ばれています。

ここでは、シュタットベルケの概要や特徴、注目を集めている理由などを解説します。シュタットベルケについて理解し、事業に取り入れたいと考えている企業担当者の方などは、ぜひ参考にしてください。

シュタットベルケとは?

電気・ガス、水道、交通、廃棄物収集などの公共サービスを行う事業者のうち、自治体が資金を提供している事業者をシュタットベルケと呼びます。シュタットべルケはドイツ発祥の文化であり、直訳すると「街の事業」。日本では「都市公社」と呼ばれるものがシュタットベルケに該当し、2016年の電力自由化にともないシュタットベルケの様式を取り入れる民間企業が増えています。

シュタットベルケは、地域が抱える問題を解決する方法の一つです。電力事業など利益の出やすいサービスを軸に公共サービスを広く展開することで、利益が出たサービスの収益を他のサービスに充てることができるからです。公共交通や公共温水プールなどの採算が取りにくいけれど需要のあるサービスを続けるには、シュタットベルケの考え方を取り入れることが一つの解決方法となります。

シュタットベルケの特徴

複数の事業を展開し、収益の出やすい事業の売り上げをそうでない事業に補填・投資できることが、シュタットベルケを採用するメリットの一つです。一般的なシュタットベルケでは、下記の図のようにエネルギービジネスで利益を出し、公共交通や通信など利益の出にくい事業に充てることで地域に必要なサービスを維持しています。これを踏まえ、シュタットべルケの特徴を3つ紹介します。

引用元:【独シュタットベルケの概念図】|ドイツ・シュタットベルケの実態とわが国インフラ・公共サービスへの 適用に向けた課題を整理 ~

会社の元手の多くを自治体が負担する

シュタットべルケは運営を民間企業が行い、自治体が事業に必要な元手を負担することが最大の特徴です。出資金の割合は団体によってさまざまですが、半分以上を自治体が出していることが必須で、多くの場合で100%自治体が出資をしています。自治体が資金を提供し、経営ノウハウを持つ企業が運営を行うことで、より迅速で効率的な運営ができるなどのメリットがあります。

様々な公共サービスを行なっている

シュタットベルケでは、以下のような公共サービスを展開しています。

  • 電気
  • ガス
  • 地域熱供給
  • 上下水道
  • 廃棄物処理
  • 公共交通
  • 公共施設
  • インターネット

 

ドイツでは電力事業を行う事業者が多く、シュタットベルケが電力小売市場全体の約20%のシェアを占めるなど、大手企業に負けない勢いを見せています。地域に密着したサービスと価格競争に惑わされない品質の高さが、消費者から指示を得ているようです。

公共インフラを整備・運営する

日本の公共建築物は1970〜90年頃に建てられたものが多く、その多くが建て替えの時期を迎えています。少子高齢化が進む日本では税収も減少しつつあり、建て替えに多くの予算を取ることは難しいのが現状です。複数の事業を行うシュタットべルケが公共インフラを整備・運営することで、これらの建て替え費用の負担を減らすことが期待できます。

また、シュタットベルケでは地域の廃棄物を利用した発電などによって安定的な収益につなげることが可能です。再生可能エネルギー事業で得た収益を公共インフラの整備に役立てることで、効率的な運営ができるでしょう。

ドイツで生まれたシュタットベルケの歴史

シュタットベルケはドイツにおける1998年の電力完全自由化や、2000年の固定価格買取制度(FIT)以前から存在しています。以下に、日本シュタットベルケネットワークのHP より、シュタットベルケの歴史に関する記載を引用します。

『ドイツのシュタットベルケの歴史は古く、19世紀後半から、ガス供給や上下水道、電力事業(発電・配電・小売り)、公共交通サービスなど、時代の変遷とともに時代のニーズに合わせたサービスを提供してきました。

2000年頃からは、電力自由化やFIT導入などの背景もあり、再生可能エネルギーなどが事業の大きな軸のひとつとなり、安定した収益をあげています。』

引用元:日本シュタットベルケネットワーク|シュタットベルケとは

シュタットベルケが今注目される理由

ドイツで昔から行われてきたシュタットベルケが日本で注目されているのは、2016年の電気自由化が大きく関係しています。新電力にまつわる新たなビジネスを、地域活性化や雇用の創出にリンクさせることで多くのメリットを得られるからです。

2050年のカーボンニュートラルに向けた取り組みを行う際にも、シュタットベルケの考え方は参考になります。廃棄物などの地域資源を活用したエネルギーを地域で消費する仕組みができれば、カーボンニュートラル実現に一歩近づくことができるでしょう。

また、電力事業は利益が出やすい分野のため、その収益で他の公共サービスの赤字を補うことが可能です。赤字を補填できるだけでなく、利益を調整することで節税できるという

メリットもあります。

ドイツのシュタットベルケの事例

実際にシュタットベルケがどのように収益化を図っているのか、ドイツの2市における事例を紹介します。

Stadtwerke München

ミュンヘン市のシュタットベルケはドイツ内でも上位の売り上げを誇り、地域の雇用創出にもつながっています。特徴は、100%市が出資していることと、再生可能エネルギーの供給に力を入れていることです。2025年までにミュンヘン市の約7TWhの電力需要をすべて再生可能エネルギーでまかなうこと、また2035年には最大8.4TWhまで再生可能エネルギーでまかなうことを目標に、設備投資などを進めています。

ミュンヘン市の主な事業は電気やガスなどのエネルギー事業です。中でも、地下水や小川などを利用した地域冷房に力を入れており、今後増えるであろう冷房需要に対応しています。地域冷房は住宅用空調システムと比較して70%程度の電力を節約できるといわれています。

スマートシティ化が進んでいるミュンヘン市では、個人のデータを一つのインフラに統合する動きも強まっています。電力、地域熱供給、モビリティシステム、通信などを一元管理できる「M-Login」というサービスを提供しており、個人のアカウントから公共交通のチケットを購入したり、ライブチケットを購入したりすることが可能です。2022年時点でM-Loginは100万人を超えるユーザーが利用しており、今後も利用者は増えていくと考えられます。

Wuppertaler Stadtwerke

ヴッパータール市のシュタットベルケは、市が99.3%出資しているシュタットベルケです。ドイツ企業の上位10社に入るほど規模が大きく、エネルギーから廃棄物処理、公共交通、公共プールなど幅広く事業を展開しています。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で交通部門が赤字だったものの、エネルギー事業や水道事業、廃棄物事業などで利益を出したことで全体では大きな利益を出しています。

ヴッパータールシュタットベルケの特徴は、エネルギーを節約するためのアドバイスを行ったり、省エネ製品を購入する際に助成金が利用できたりと、顧客へのサービスが充実していることです。エネルギー節約のアドバイスは顧客に合わせてオーダーメイドで行われ、3つのプランから選択できます。また、2022年現在、節電設備「電子ラジエーターサーモスタット」を購入する際に最大30ユーロの助成金が出るサービスなどを実施。ヴッパータールシュタットベルケの顧客になることで、多くのメリットを得られる仕組みづくりに力を入れています。

まとめ

ドイツで多くの自治体が導入しているシュタットべルケは、今後カーボンニュートラルに進む中で日本でも注目を集めています。シュタットベルケは地域資源を有効活用できるだけでなく、地域の活性化や雇用の創出につながるなど多くのメリットがあることもポイントです。ドイツの成功事例を取り入れ、今後日本でも多くのシュタットベルケが誕生することを期待します。

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