ビジネス・技術

海水で充電できるランタン「WaterLight」
by IDEAS FOR GOOD

春の季節は「蛍の光 窓の雪」という節を耳にすることがある。夜間、百貨店などの閉店間際になるとかかる『蛍の光』は、昔、夜に日の光がなくても、蛍雪の光をたよりに勉学に励んだことを歌ったものだ。しかし実はこのような一節は、いまだ過去の話となっていない。現在、世界では8億4千万人もの人が、生活に必要とされる電気が十分にない環境で暮らしている。

南米の最北端にあるグアジラ半島は沿岸の砂漠地帯で、最も貧しい地域の一つだ。工芸品の生産が盛んだが、電気へのアクセスがないため、夜間に職人は手元がよく見えず、作業をすることはできない。暗闇では、漁師が海に出て漁をすることもままならない。子供たちが勉強する際はろうそくを使用しているが、十分とは言えない光の量で、火傷や火事などのリスクもある。

そんな中、現地のスタートアップE-Dinaにより、なんとも摩訶不思議なライトが考案された。「Waterlight」と呼ばれるこのランタンは、水筒のようなものに塩水を入れるだけで、マグネシウムが電気エネルギーに変換されて光が灯る仕組みとなっている。子供の頃に行った理科の実験で、食塩水から電気をつくったことを思い起こす人もいるだろう。まさにその原理だ。

Waterlightは、わずか0.5リットルの塩水で、最長45日間光が持続するランタンである。海岸まで行って、海水を汲めば生活や仕事に必要な光を継続的に確保することができるのだ。海の面積は地球全体の71%に相当する約3億6,000万平方kmで、海水はふんだんにあるため、ランタン内のマグネシウムと組み合わせることで持続的なエネルギー源となる。また、ランタン自体も100%リサイクルが可能な素材で作られている。

デザインは、コロンビア北部の先住民族であるワユ族と、その海とのつながりをモチーフにしている。値段は1つ、60~100米ドル(約6,000~約10,000円)。決して安くはないが、それでも一般的なソーラーライトの費用の数分の一におさまる価格だ。

国連によると、2035年までに世界の電力需要は70%増えることが見込まれている。気候変動への影響を最小限に抑えるためには、クリーン・エネルギーで需要をまかなうことが非常に重要となる。

中南米では貧困のため、焼畑農業をなくすことにも苦労しており、貴重な熱帯雨林が破壊されている。Waterlightは貧しい地域の生活を光によって改善するだけではなく、それ自体も再生可能であり環境にも優しい。まさに一石二鳥のソリューションだ。

【参照サイト】WHAT IS WATERLIGHT?

コンテンツ提供:ハーチ株式会社

・IDEAS FOR GOOD

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