
『さいたま市とジャカルタをGX Cityに!』 芝浦工大 × インドネシアの高校生 × アイ・グリッドのボーダーレスな共創の舞台裏
2040年、さいたま市とジャカルタがGX Cityとして生まれ変わる未来を描く。
芝浦工業大学(さいたま市)と、MAN 2 JEMBER(インドネシア ジャカルタ)の高校生たちが国際的なチームを組み、異なる文化と視点をぶつけ合いながら構築した、次世代の都市像<再エネの地産地消>を実現するためのロードマップを万博会場から世界に発信します。最終プレゼンテーションを目前に控えた今、その裏側と学生たちの“リアルな声”を聞くため、本取り組みの企業メンターを務めたアイ・グリッドによる対談インタビューをしました。
芝浦工業大学 エネルギー・システム工学研究室 武村さん(上)、新美さん(下)
MAN 2 JEMBER (左上から)Galihさん、Donalさん、Khansaさん、(左下から)Rayyanさん、Kinzaさん
※インタビュアー:アイ・グリッド 白石 (本取り組みの企業メンター担当)
※インドネシアチームは英語によるインタビューを本記事ために翻訳したものとなります。
国際学生と企業のタッグによる本取り組みは、環境省主催による国際協働プログラム「SDGs Students Dialogue Expo 2025(SSDE)」の一環として行われています。全国9つの大学と6カ国の学生が参加し、それぞれのメンターとなる日本企業から提示された課題に対し、参加学生が国際チームとしてタッグを組み、約4か月かけて解決策を探ってきました。
日本と世界の若者たちが、異なる社会構造や文化的背景、価値観を持ちながらも、持続可能な未来のために協働し、議論を重ねるこのプログラム。最終成果となるプレゼンテーションが、2025年9月4日(木)、5日(金)に大阪・関西万博の「サステナドーム」で実施されます。
課題は『2040年までに、さいたま市とジャカルタをGX Cityに転換させる方法』
そのメンター企業として参加したのが、アイ・グリッド・ソリューションズ(以下、アイ・グリッド)です。担当したのは、芝浦工業大学 エネルギー・システム工学研究室の大学生6名と、インドネシア ジャカルタのMAN 2 JEMBER校の高校生5名による国際チームです。今回のワークショップでは、同社が掲げる事業構想である「GX City」をメインテーマとし、『2040年までに、さいたま市とジャカルタをGX Cityに転換させる方法』という課題を設定し、課題の抽出から実現ロートマップ構築まで、取り組んでもらいました。
GX Cityとは自然や景観を壊さない再エネの地産地消サイクルによって地域を脱炭素化する都市のあり方です。
そしてアイ・グリッドは、産学官の枠を超えたボーダーレスな連携によってオープンイノベーションを創出し、脱炭素社会の実現や新規事業の創出に取り組むことに注力してきました。本ワークショップへの参画は、国際的な学生チームとともに、その実現に向けた具体的なアイデアを検討し、世界に向けて発信することを目的としています。
GX(グリーントランスフォーメーション)という抽象的で複雑なテーマに、学生たちはどのように向き合ってきたのか?プレゼンテーションを間近に控えた今、そのプロセス、学び、そして最終プレゼンへの想いを聞くため、対談インタビューを実施しました。
芝浦工業大学には訪問対面、MAN 2 JEMBERにはオンラインでインタビュー
― 芝浦工業大学 エネルギー・システム工学研究室は、どのような研究室ですか?
新美さん:僕たちの研究室は、エネルギー問題を「工学の力でどう解決するか」を本気で考えている研究室です。太陽光・水素・バイオマスをはじめとする再エネや電力網の効率化など、GX関連の研究テーマが多いですが、加えて、都市全体のエネルギー管理をどう最適化するか、という大きな視点での研究も進めています。
社会課題に直結するテーマが多いので、企業や自治体との連携も多く、研究が“机上の空論”で終わらないのが魅力です。
国際的な視点からエネルギー課題を考える機会も多いのが特徴の一つで、インドネシアのようなエネルギー転換が求められている地域にも関心があります。
今回のワークショップは、普段している研究テーマに対して国際的な視点とビジネスの視点の両方からアプローチできて、しかもそれを世界に発信できるのはとても貴重な経験になると思い、すぐに参加を決めました。
― アイ・グリッドのGX City構想と、かなり親和性のある研究をしていますね。インドネシアのMAN 2 JEMBERのみなさんは、まだ高校生で、環境領域に特化した勉強や研究をしている訳ではなかったと思います。そうした中で今回のワークショップに参加したのはなぜですか?
Galihさん:はい、確かに環境や再エネについての専門知識はあまりなかったのですが、インドネシアでは毎年、多くの国民が豪雨や洪水などの自然災害の被害を受けていることもあり、若い世代として環境課題解決への使命感があります。そして今回のワークショップでは、国際連携もできることからグローバル人材として知識と経験を積めるとても良いチャンスだと思い、参加しました。
― 今回のワークショップで、大変だったことや難しかったことは何ですか?
武村さん:時間的制約と物理的制約、そして言語の壁の3つです。最終プレゼンまで、オンラインかつ1時間半のワークショップが6回しかなく、また英語でのコミュニケーションの必要がありました。そうした中でインドネシアの学生たちとひとつのプレゼンを作り上げることは、高いハードルがありました。
Donalさん:やはり環境やエネルギーに関する前提知識があまりなかったので、そこはとても挑戦でした。そして僕たちは高校生なので、すでに授業が多く詰まっていて、この取り組みに使える時間が限られていたことも苦労しました。
― 時間と、距離と、言語と、共通理解。4つのハードルをどのように連携しながら超えましたか?
武村さん:僕たちはエネルギーを専門に研究しているので、日本チームがインドネシアチームをリードできるように心がけました。具体的には、まずは日本チーム全員で全体方針を話し合い、各メンバーそれぞれ得意な領域で役割分担を行い、インドネシアチームが使えるプレゼンフォーマットを作っていきました。
インドネシアチームは高校生で、再エネや脱炭素領域の専門知識はない中での、取り組みだったと思いますが、とても素直に真っすぐに頑張っていて、積極的にインドネシアの再エネ事情等の調査分析を進めてくれました。英語力は僕たちよりも高く(笑)、ワークショップではGalihさんを中心に積極的に意見を出してくれたので、とても刺激になりました。
一番最初のワークショップであるオリエンテーションは、5月。そこから約4ヶ月近く国を超えて議論を続けている
Khansaさん:全体の方向性が定まるまでに、何度も何度もプレゼン内容を書き直しました。日本チームはアウトプットのスピートが早く、また非常に理解しやすかったので、とても助けられたと思います。日本チームのタイムマネジメント力と、責任感の強さに触れられたことも、今回のワークショップでの大きな学びにつながりました。
― ありがとうございます。素敵なチームワークができたみたいですね。それでは最後に、最終プレゼンに向けた意気込みを教えてください。
武村さん:最終プレゼンでは、2040年までにさいたま市とジャカルタをGX Cityに転換させるためのロードマップと、両都市の再エネ課題の比較から見えてきた新しいビジネスチャンスを発信します。僕たちは日ごろから、『環境課題解決と経済性の両立をいかに効率的な方法で実現できるか』を考えて研究をしていて、これまでの研究の積み重ねを活かしたコンテンツにできたと思うので、その点にも着目して欲しいですね。
新美さん:特に、ビジネスチャンスの部分は、日本チームで20個以上のアイデアを出し合いました。その中から、最も自信作のひとつを発信します!ぜひお聞きください!
たくさん出たアイデアの一部を見せてくれる新美さん(左)と武村さん(右)
Rayyanさん:ジャカルタチームからも、ビジネスチャンスを発表します。ポイントは、両都市の電力需給や再エネポテンシャルを比較した際に、多くの相違点があることに気づき、ジャカルタ特有の脱炭素課題に有効な解決策として今回のビジネスチャンスを考案したところです。
Kinzaさん:インドネシアは、ゴミ・エネルギーなど多くの環境課題を抱えています。若い世代として、ジャカルタをGX Cityに転換させることは最も有効な策のひとつだと思いますし、そうすることで私たちの次の世代の地球環境がより良いものになって欲しいです。最終プレゼンで、私たちの想いやアイデアを世界に発信できることが楽しみです。
異なる国、異なる言語、異なる価値観。それでも、「より良い未来をつくりたい」という想いは、学生たちに共通していました。学生の皆さんたちは、「15年後のGX City実現」という壮大なテーマのもと、エネルギーや都市のあり方についてゼロから議論を重ね、ときに意見をぶつけ合いながらも、未来のビジョンを丁寧に描き上げてくれました。
そのゴールである最終プレゼンは、万博内の現地会場またはオンラインにて無料でご聴講いただけます。
<開催概要>
日時:9月4日(木)11:00〜18:00 / 9月5日(金)11:00〜18:00
【 芝浦工業大学、MAN 2 JEMBER、アイ・グリッドは9月5日(金)に登壇 】
・9月5日(金)12:05~12:45 最終プレゼン(発表/総評 各20分)
・9月5日(金)15:10~16:40 パネルディスカッション(芝浦工業大学 武村さんとアイ・グリッド 白石が参加)
リアル会場での聴講: 大阪・関西万博 サステナドーム(ジュニアSDGsキャンプ)内
・現地参加の場合は、別途、EXPO2025の入場チケットが必要になります
・会場の定員数に達した場合、入場をお断りさせていただくことがございます
オンラインでの聴講: YouTubeによるライブ配信を以下リンクでご視聴いただけます
・https://www.youtube.com/live/NsflJDCSUJc (9月5日の視聴リンク)
詳細はこちらからもご確認いただけます
>>【PRESS RELEASE 】環境省主催「SDGs Students Dialogue Expo 2025 (SSDE)」の メンター企業として、アイ・グリッドが参画
編集後記 (企業メンター 株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 白石 優樹)
今回のワークショップは、単なる発表の場にとどまらず、参加者それぞれの興味や専門性を社会課題と結びつけ、互いに連携しながら具体的な解決策を模索するという、極めて実践的な取り組みとなりました。参加された学生の皆さまには、ビジネスの視点から社会変革や社会貢献が可能であることを体感していただき、それを通じて、学生自身にとっても社会にとっても持続可能なキャリアのあり方を考えるきっかけとしていただければ、たいへん嬉しく思います。
学生の皆さまが築き上げた『GX City実現に向けたロードマップ』が、一人でも多くの方の目に触れ、脱炭素社会に向けた新たな気づきや行動に繋がることを心より願っています。