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スマートグリッドとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

スマートグリッドとは、電力ネットワークに情報通信技術を組み合わせた次世代型エネルギーシステムです。電力の有効活用が可能になるため、再エネ電力のさらなる普及や脱炭素の実現を目指す上で必要不可欠な取り組みといえます。

この記事では、スマートグリッドの仕組みやメリット・デメリット、導入事例などをわかりやすく解説します。

スマートグリッドとは?

スマートグリッド(smart grid)とは、直訳すると「スマート=賢い、グリッド=送配電網」という意味です。従来の一方的に電力を送り出す電力設備と異なり、通信ネットワークや情報システムにより電気の供給側・需要側の双方から電力量や流れをバランスよく制御して、電力利用を最適化するという次世代型エネルギーシステムです。

脱炭素社会を目指す上で再エネ電力は欠かせない存在ですが、再エネの一つである太陽光発電は天候に左右されやすく安定供給が難しいというデメリットがありました。スマートグリッドでは、ICT(情報通信技術)によって電力の需要をリアルタイムに把握し、効率的な電力利用をコントロールします。

さらに、リアルタイムの電力データが把握できることで電力需要の正確な予想が可能になり、発電設備の最適化や再エネ電力の導入促進にも貢献できるのです。

スマートグリッドの仕組み

スマートグリッドを実現する上で欠かせないのが「スマートメーター」という通信機能を持った電力計測器です。スマートメーターを一般住宅やオフィスに設置することで、電力の使用量や発電量、売電量などのデータを自動的かつリアルタイムで計測でき、電力の「見える化」が実現されます。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「スマートメーターで変わる使用量の確認方法」

スマートメーターによって見える化された電力データは「HEMS」というエネルギー管理システムに送られ、電力の最適化に活用されます。例えば、電力の需要ピークを予想して蓄電池の解放を行ったり、余剰電力を蓄電に回したりできるようになります。

スマートグリッドのメリット

スマートグリッドを導入することで、次のようなメリットがもたらされます。

  • 電気の見える化ができる
  • 効率的に電力供給できる
  • 電力網全体が安定する

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

電気の見える化ができる

スマートメーターを用いることで電気の流れや需要のピークを「見える化」できる点が最大のメリットといえるでしょう。

スマートメーターでは30分ごとの電気使用量が自動で計測され、そのデータがリアルタイムで管理システムに共有されます。従来の電気メーターは計測作業員が家庭や施設を直接訪問して計測を行っていたため、一定期間の電気使用量の合計しか把握できませんでした。スマートメーターでは、使用量だけでなく、電気の使い方や時間帯まで割り出せるのです。

得られたデータは、電気利用の効率化の他にも、高齢者の見守りや空き家の把握といった様々な分野の事業で活用されています。

効率的に電力供給できる

スマートメーターで得られた電気利用の詳細なデータによって、電気需要の正確な予測が可能になります。その予測をもとに、需要に合わせた細やかな発電や蓄電、調整ができるようになるのです。

電力の調整が容易になると、急な電力ピークに合わせて遠くの発電所から送電してもらうケースも少なくなります。送電による電力ロスの低減につながるため、より安定的に、低価格での電力供給が期待できます。

電力網全体が安定する

大型発電施設を電力網の中心としている従来の「集中型電源」では、災害や事故の発生によって発電所が停止すると大規模なブラックアウトが発生するなど、非常時の電力確保が課題でした。

スマートグリッドによって、小規模な発電設備を有効活用する「分散型電源」が実現すれば、非常時のリスク低減につながります。平常時は従来通り集中型電源を利用し、余剰電力を蓄電に回して、非常時には再エネ電力に切り替えるなど、電力網全体の効率化をはかることで、安定した電力供給が実現できるのです。

スマートグリッドのデメリット

一方で、スマートグリッドには次のようなデメリットがあることも把握しておく必要があります。

  • 設備の導入コストがかかる
  • セキュリティ対策への懸念がある

設備の導入コストがかかる

スマートグリッドの導入には、少しでも多くの一般家庭やオフィスビルにスマートメーターを設置しなくてはいけません。そのための費用負担と時間、手間が発生することは無視できない課題です。

標準的な仕様のスマートメーター本体の単価は約1万円ですので、1万世帯に導入しただけでも約1億円の費用がかかる計算です。さらに、設置にかかる人件費や修繕費、システム保守費なども必要になります。設置にかかる費用は、利用者負担ではなく電力会社の負担となりますが、莫大な費用となるため、安直に導入を進めるわけにはいかないのです。

 

セキュリティ対策への懸念がある

スマートメーターは情報通信技術やネットワークを用いて電気データの送信を行うため、情報漏洩のリスクに注意が必要です。
「電気利用量だけならセキュリティの対象にならないのでは」と考える方もいるかもしれませんが、自宅に滞在している時間帯など、電気データから読み取れる個人情報もあるのです。外部からハッキングされるリスクは否定できないため、万全のセキュリティ対策が求められます。

日本のスマートグリッドの導入事例

脱炭素に向けた動きが加速する中、日本でもスマートグリッドの導入が進められています。その中から、3つの事例を紹介します。

東京電力

日本を代表する電気事業者である東京電力は、2020年度までに一部の取り替え作業が困難な場所などをのぞく全ての世帯・事業所に対して、約2,840万台のスマートメーターを設置しました。現在では、電力使用量を30分ごとに送信・処理するプロジェクトに取り組み、スマートメーターシステムの安定運用を目指しています。

この取り組みによって、運用コストや設備投資を削減し、新たな収入源の確保に成功したといいます。

シンフォニアテクノロジー ナチュエネ

ナチュエネは、シンフォニアテクノロジー株式会社が事業者向けに販売している小規模スマートグリッドシステムです。気候によって発電量が左右されやすい再エネ電力を効率よく蓄電・制御することで、災害時や突発的な電力ピークを迎えた時でも、安定した電力供給が可能になります。
このような一般事業者向けのスマートグリッドシステムが登場したことで、学校や公民館などの公共施設、離島でも導入が広がっています。

トヨタ スマートセンター

脱炭素に向けた取り組みを強化しているトヨタでは、2010年に車・住宅・電気事業者・利用者をつないでエネルギー消費を統合的にコントロールする独自システム「トヨタ スマートセンター」を開発しました。これは、プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)、HEMS(エネルギー管理システム)を装備したスマートハウスを活用して、電力の需要・供給全般を管理・調整するものです。

このシステムによって、入居者に対して電力使用量やCO2発生量をリアルタイムで提供し、生活パターンに応じた最適なエネルギー消費計画が立てられるようになります。

 

まとめ

スマートグリッドは、電気の利用量や使い方をリアルタイムで把握し、そのデータを活用して電力の有効利用を実現する次世代型エネルギーシステムです。電力需要を正確に予測することで、需要に応じた発電や余剰電力の蓄電が可能になるため、再エネ電力の普及に欠かせないシステムとされています。
一方で、多大な設備投資が必要となるため、簡単に進められるものではありません。国と地方自治体、民間事業者が連携して取り組む姿勢が求められます。
グリラボでは、環境保全や脱炭素に関する様々な記事を定期的に発信しています。自分にもできる環境アクションを知りたい方は、ぜひ他の記事もご覧ください。

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